未来は今:AIを活用して、35億米ドル規模の生産性の飛躍的向上を実現

2025年3月26日

執筆者

Joanne Wright

Senior Vice President, Transformation and Operations

IBM

業界や地域に関係なく、すべてのビジネス・リーダーは成長を望んでいます。そして、企業がそこに到達する方法は一辺倒ではありません。業界トレンドは変化し、経済状況は変動し、政府の政策は変わります。

どのような道を選ぶにせよ、AIとオートメーションによって実現される生産性が変革を伴う成長の中心となることとなるでしょう。今起きていることは、私たちが生涯で経験する中で最も大きな可能性に満ちた機会です。

ノーベル賞を受賞した経済学者ポール・クルーグマンはかつて、「生産性がすべてではないが、長期的には、これがほぼすべてである」と述べています。生産性とは、単なるコスト削減や効率化ではなく、成長と繁栄を促進するイノベーションへの投資を可能にする自己資金調達メカニズムを構築することだからです。

AIが変革をもたらすのは、そのためです。AIは、これまでにはなかったレベルまで生産性を引き上げる方法を提供します。どれほど生産性を向上できるか、その可能性には驚くべきものがあります。IBMでは、これが単なる理論ではないことを認識しています。実際、AIとオートメーションにより、2023年1月以降、IBMの会社全体で35億ドル相当の生産性向上を実現しました。

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しかし、どこから始めればよいのでしょうか

あらゆるエンタープライズ・トランスフォーメーションの旅は、テクノロジーに関する疑問ではなく、ビジネス・ストラテジーと成長を目指す心構えに関する疑問から始まります。

その文脈で、ビジネスの運営方法のあらゆる側面を再考し、作り変える機会があったら、貴社は何をしますか。

IBMでは、CEOのArvind Krishnaがこの機会を見出し、2023年初頭には、IBMを世界で最も生産性の高い企業にするために再考し再構築するという課題を従業員に与えました。

私たちはトランスフォーメーション・ストラテジーとビジョンである「IBM as Client Zero(IBMをクライアント・ゼロと捉える)」に着手しました。このビジョンでは、ハイブリッドクラウド、AI、オートメーションを社内で実際に導入し、戦略的パートナーのテクノロジーとコンサルティングの専門知識を組み合わせて、新たな成長の時代を切り開き、世界で最も生産性の高い企業となるべく取り組んでいます。

あれから2年。35億米ドルに相当する生産性向上を実現しただけではなく、2024年には127億米ドルのフリー・キャッシュフローを創出し、人材育成、イノベーション、買収を通じて、成長に投資してきました。

専門家の混合 | 2024年12月27日

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現状を打破する

自分たちが目指すものは明確でした。しかし、このような大規模な取り組みには、生産性向上イニシアチブを運用するための適切なフレームワークが不可欠でした。強固な基盤を確立することで、私たちはスピーディーかつ柔軟に行動できるようになりました。

IBMには、「常に現状に挑戦する」というモットーに基づく3つの指針があります。

1つ目は、運用の複雑さを排除すること。ピーター・ドラッカーの有名な言葉に、「本来行うべきではないことを効率化することほど生産性の低いことはない」というものがあります。私たちは、何かが期待どおりに機能しているかどうかだけでなく、そもそもそれを実行する必要があるかどうかも検討します。

2つ目は、エンドツーエンドのワークフローを簡素化し、高速化すること。IBMでは、IBM Z©とRed Hat上に構築されたハイブリッドクラウド・インフラストラクチャーと、企業全体からの信頼できるデータの単一ソースとなり、従来のデータ・サイロを排除するデータ・プラットフォームであるEnterprise Performance Managementが鍵となりました。これにより、見積から入金、調達から支払い、エンドツーエンドの人材ライフサイクルなどの重要なビジネス・プロセスを迅速かつ正確に完了できるようになりました。

3つ目は、手動タスクを自動化し、あらゆる場所にAIを組み込むこと。IBMの最先端のIBM© watsonx AIおよびオートメーション・ツールにより、反復的なタスクを排除して従業員のスキル強化を支援します。これにより、優秀な従業員は節約できた時間を活用して、よりやりがいがあり、より影響力のある仕事に集中できるようになります。節約できる時間は2024年には390万時間になると推定されています。

スピード、測定、スポンサーシップ

IBMの実行フレームワークは、スピード、測定、スポンサーシップを特徴としています。
 
  • スピードは短い期間で最初から最後まで全速力で取り組む「スプリント」方式で実現されます。MVPが開始されるまで、継続的に再評価と再調整を行いながら2週間のプロジェクトをスプリント方式で取り組みます。このアプローチにより、IBMのITサポート機能は、構想から開始まで100日未満で完了しています。
  • 測定は、「クラス最高」がどのようなものかを理解するための外部ベンチマークから始まりました。現在、私たちはあらゆるステップにガードレールを設けて独自の基準を設定しています。
  • 一方、私たちが組織として正しい軌道で取り組むことができるのは、トップダウンのスポンサーシップとボトムアップのエンパワーメントのおかげです。CEOが率いる運営委員会が、文化の変化と導入の必要性を推進する一方で、従業員はAIを活用して仕事のやり方を変える権限が与えられています。一例として、IBM Watsonxチャレンジが挙げられます。昨年は178,000人のIBM従業員がチームを結成して参加し、それぞれの職務に特化したAIソリューションの構築について共同作業と実践経験を積みました。私たちは、そこでの成功事例をAIスキルのライブラリーにまとめ、IBM従業員全員が閲覧できるようにしました。

究極の生産性とは、私たちが希望する野心的な速度と規模を実現した生産性です

このアプローチの結果、クライアント、パートナー、従業員のエクスペリエンスが向上し、IBMの生産性が大幅に向上しました。特に注目すべき成果には次のようなものがあります。

  • 人事のトランスフォーメーション:AskHRを使用することで、従業員は電話を何時間も待ったり、Eメールでの返信を何日も待ったりする必要がなく、昼夜を問わずいつでも、人間の介入なしに、一般的な問い合わせの94%に対して数分以内に回答を得ることができました。また、管理者は、従業員の昇進査定などのタスクを平均して75%も短い時間で完了することができます。
  • 顧客サポート:顧客とサポート・プロフェッショナルの両方のエクスペリエンスにAIを統合することで、問い合わせの70%がデジタル・アシスタントで解決され(従業員の作業時間が節約できたため)、より複雑な問題の解決時間が26%も短縮されました。顧客満足度は25ポイント上昇し、IBMは2022年と比較し、1億6,500万米ドルの運用コストを削減しました。
  • ITのモダナイゼーション:Apptioによって実現された財務の透明性を活用し、IT運用の総コストを正確に把握し、スマートなトレードオフを行って生産性を向上させることで、2022年以降、企業のITコストを約6億米ドル削減するという組織の目標達成をサポートすることができました。

近い将来には、エージェント型AIによる次世代のエンタープライズ・グレードのトランスフォーメーション機能が実現するかもしれません。その一方で、部門横断的なワークフローをまとめるための「人間的な温かみのある橋渡し」とプロセスの引き継ぎは依然として必要です。エージェントを使用すると、AIは前例のない推論と自律性により、複雑な複数ステップのワークフロー・オートメーションに導くことができます。

まだ始まったばかりです

私たちが学んだ教訓はIBMに特有のものではありません。テクノロジーは大きな推進力となりますが、トランスフォーメーションを持続可能にするのは新しい行動とリーダーシップです。

貴組織で何を達成しようとしているかに関わらず、当社はパートナーシップ、テクノロジー、他社に追随を許さない卓越したコンサルティング専門知識を備えており、適切な戦略についてアドバイスし、すべてを統合します。

IBM社内での経験では、パイロットや理論をはるかに超えて、実際の生産性が向上しました。しかし、これはAIが実現することのほんの始まりに過ぎないと私たちは考えています。IBMは、お客様と協力して、企業で究極の生産性を実現できるようお手伝いいたします。

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