ERPシステムのメリットとデメリット

 事業開発リーダーがオフィスで進捗状況、マイルストーンを確認し、チームに伝達するための会議の準備を行っている様子

エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)ソリューションは、日常業務を管理するためのワンストップショップを組織に提供します。組織が変化する状況に対応しようとするなかで、ビジネス管理ソフトウェアがビジネスの世界で活用されるようになっています。ほとんどのビジネス・ソリューションと同様に、ERPシステムにも考慮すべきメリットとデメリットがあります。

エンタープライズ・リソース・プランニングが組織とその能力に対して、どのように機能するかを詳細なレベルで理解することが重要です。ここでは、ビジネスのあらゆる側面を管理するにあたって、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムがもたらす主なメリットをご紹介します。

ERPのメリット

カスタマー・サービスを改善

ビジネスの世界は非常に競争が激しく、顧客を引き付けて維持することに関しても同様です。カスタマー・サービス・エクスペリエンスは、組織にとって重要な部分であり、ERPソリューションは顧客関係管理を促進するのに役立ちます。ERPソフトウェアのような新しいシステムは、一か所にすべての顧客情報をまとめることで、迅速なカスタマー・サービスを促進し、よりパーソナライズされたアプローチを容易にします。

ERPは、連絡先情報、注文履歴、過去のサポート・ケースなどを1つの簡素化されたシステムに保存します。これとは別に、過去の注文とリアルタイムの在庫を追跡できるため、顧客が正しい商品を時間どおりに受け取る可能性が高くなります。これらの要素が整っている場合、顧客が満足して帰って、将来さらに多くのことを求めて戻ってきてくれる可能性がはるかに高くなります。

レポートのカスタマイズ

リアルタイムのデータ・レポーティングは、ERPソリューションの強みの1つであり、他のビジネス管理システムと比較して大きなメリットとなる理由です。ERPのレポート・ツールを使用することで、財務、在庫、調達、人事などの部門ごとにレポートをカスタマイズし、組織の最重要事項に基づいて計算することができます。このカスタマイズ性を通じて、最も重要であると判断したKPIを測定し、さまざまなビジネス・コンポーネントのパフォーマンスを追跡できます。

もう1つの利点は、最新のデータをリアルタイムで提供できることです。従業員が問題を評価しようとした場合、分析対象が古いデータではなく、参照できる最も正確かつ最新のデータを持っていることを意味します。カスタマイズ・レポートは、組織として情報に基づいた意思決定を行うのに役立ちます。ビジネス環境が絶えず変化する場合には、極めて大きなメリットと言えます。

コラボレーションの拡大

ERPソリューションの設計は、さまざまな部門間の優れたコラボレーションを可能にします。すべてのアプリケーションとデータ・ストレージが1つのソリューションに統合されることで、各チームはそれぞれがどのように機能し、ビジネスに貢献しているかを明確に把握できます。

ERPシステムを導入ことで、組織全体のチームが別々のプラットフォームを使用することがなくなり、自由にコミュニケーションできるようになります。バックエンドでの統合は非常に重要であり、従業員が団結して、一丸となって業務を遂行するのに役立ちます。すべてのデータにアクセスできるため、まったく関係のないチームの従業員であっても、誤動作や重複作業を削減できる部分を指摘できる可能性があります。この拡張されたコラボレーションにより、すべてのデータ入力の信頼できる唯一の情報源となると同時に、意思決定が強化されます。

持続可能性の向上

目まぐるしく変化するビジネスの世界において、サステナビリティーに重点が置かれています。経営幹部は、取締役会、投資家、顧客などから、二酸化炭素排出量による悪影響を規制するようにプレッシャーをかけられています。

組織がERPの実装通じて、どのようにサステナビリティー目標を達成しているかを調べるために、 IBM Institute for Business Value (IBV) と SAPは、Oxford Economicsと共同で、世界中のさまざまな業界で組織の環境サステナビリティー戦略に携わっている2,125名以上の上級管理職を対象に調査を実施しました。環境面でも財務面でも競合他社を凌駕している企業は、ERPの実装に最も深く関与しているという驚くべき結果が出ました。

透明性とインサイトの向上

ERPの利点の1つは、組織内のすべてのビジネス機能とプロセスへのフルアクセスを1か所で提供することです。ERPを導入することで、役員レベルの従業員はあらゆる部門のデータにアクセスできるようになります。ERPソリューションはデータを毎日監視し、日々の情報を提供することで、組織が在庫レベルや業務運営などを可能な限り正確に把握できるように支援します。

ERPが提供する完全な可視性により、組織のリーダーはより優れた部門別のビジネス・インサイトとより正確なビジネス予測を得ることができます。その結果、タスクを合理化し、より明確で簡潔なワークフローを構築できます。さらに、正確な予測モデルを所有することで、データに基づいた戦略と意思決定を改善できるため、競争上の利点となります。ERPにより、各部門を監視し、すべてのデータを1か所に保管できるため、より効率的なプロセスと改善された相互コラボレーションの機会が生まれます。さらに、オンプレミスとクラウドベースのERPシステムの両方で、組織全体のビジネス・データのセキュリティーを向上させることができます。

ERP導入の成功例としては、フィンランドのエスポーに拠点を置く再生可能なディーゼル、持続可能な航空燃料、再生可能ポリマーおよび化学品の市場リーダーであるNeste社が挙げられます。同社は、新しいERPシステムの導入に関して共同チームのアプローチを採用しました。IBM Consulting for SAPと連携して、再生可能エネルギーのサプライチェーンを含むほとんどの業務において、Microsoft Azureクラウド上にSAP S/4HANAソリューションを展開しました。Neste社の新しいERPプラットフォームは、サプライチェーンのプロセス効率を向上させて、データの透明性を高めています。Neste社のIntegrated ERP責任者であるMarko Mäki-Ullakko氏は、「最も大きなメリットの1つは、プロセスの非効率性を特定して解決できることです」と述べています。

「SAPのプロセス検出機能を使用して、サプライチェーンと生産のボトルネックを特定することができました。統合されたSAPはこれまでも、そしてこれからも、当社のプロセス最適化の取り組みにおいて重要なツールであり続けるでしょう」

柔軟性と拡張性の向上

ERPソフトウェアのユニークな機能の1つは、さまざまなビジネス・ニーズに対応可能なアプリケーションまたはモジュールが組み込まれていることです。調達、サプライチェーン管理、在庫管理、プロジェクト管理などのERPアプリケーションは、すべてERPの下で提供される個別のアプリケーションです。

ERPアプリケーションは単独で実行できますが、ERPシステム全体に統合することもできるため、組織内での拡張性と構成が容易になります。ERPはアプリケーションを追加または削除できるため、時間の経過とともにビジネスの規模を拡大するのに役立ちます。

拡張性は、組織がどのERPソリューションを採用するかによって異なります。クラウドERPシステムは、リモート・サーバー上で実行されるため、ビジネスが急速に成長することを見込んでいる場合は、クラウドベースのERPシステムが最適な選択肢となります。

プロダクティビティーを高める

ERPソフトウェアはさまざまなタスクを自動化することで、従業員はより適切なタスクに取り組むことができ、効率が向上します。ERPシステムは、基本的なタスクの自動化やプロセスの簡素化など、さまざまな方法で生産性を高めます。ERPシステムの合理化されたアプローチにより、情報を掘り起こすために費やす時間が少なくなり、従業員はより速く他のタスクを実行できるようになります。手動でデータを入力する必要がないため、在庫管理などのタスクが簡素化され、メトリクスの追跡もはるかに容易になります。

組織全体を見渡すレンズがあれば、従業員は正しいデータセットを探し出したり、特定のプロセスの仕組みを知っている従業員を探し出したりする必要はなく、より重要なタスクやプロジェクトに集中できるようになります。ERPソリューションは、人工知能(AI)、機械学習ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)技術を通じてこれらの機能を提供します。これらの技術は、ERPソフトウェア・アプリケーションの自動化とインテリジェントな提案機能をサポートしています。

コストの削減

ERPソリューションの構造により、データ入力は一度だけ行われますが、組織全体で複数の目的に使用できます。これにより、冗長なタスクを合理化し、ビジネスの時間とコストを節約できます。初期費用とコストの削減量は、選択するERPソリューションの種類によっても異なります。

一元化されたERPソフトウェア・ソリューションがない組織は、ビジネスを運営するために多数のシステムに依存することになります。システムの数が多いほど、潜在的なITコストは高くなります。ERPシステムを導入することで、これらのコストを削減できる可能性があります。これとは別に、エンドユーザーは1つのシステムで学習するだけで済むため、トレーニング要件も軽減できます。これにより、収益性が向上し、混乱が軽減される可能性があります。

ビジネス・プロセスの標準化

ERPソリューションを実装する目的は、組織のベストプラクティスと一貫性を強調し、そこから構築することです。これにより、業務を合理化し、ワークフローを標準化することができ、最終的にはビジネス全体での手作業とヒューマン・エラーを削減できます。顧客関係管理(CRM)などのプラットフォームは、ERPシステムに簡単に統合できます。

ERP フトウェアには多くの利点がありますが、標準化は最も重要なメリットの1つです。標準化と構成を活用することで、プロジェクトのコストを削減し、摩擦を減らしてチーム間のコラボレーションを改善することができます。

ERPのデメリット

複雑になる

ERP包括的なビジネス管理ツールですが、極めて複雑になる場合があります。ソフトウェアは、エキサイティングなものですが、その興奮に巻き込まれて、ERPを導入するための綿密な計画を立てることができないリスクがあります。

組織のプロセスによってでは、ERPソリューションが大きすぎて、ニーズに適していないことが判明する場合があります。これは、ROIの低下につながる可能性があるため、可能であれば回避する必要があります。こうした落とし穴を回避する最善の方法は、ロール・ベースのユーザー向けトレーニングを構築して、組織のニーズに合わせてERPソフトウェアを簡素化することです。

短期的なコストになる

ERPソフトウェアへの切り替えを検討する際には、考慮すべき複数の要素があります。その1つがコストです。ソフトウェアのコストだけでなく、システムの導入とすべての部門にわたる従業員のトレーニングに必要な時間とリソースのコストもかかります。

コストのもう1つの側面は、ERPソリューション、特にオンプレミスERPソリューションにかかる継続的な運用コストです。継続的なコストを回避する最善の方法は、どこからでも実行できるSoftware-as-a-Service(SaaS)ソリューションであるクラウドベースのERPシステムを活用することです。

考慮すべきもう1つの要素は、ERPシステムを導入する際に必要になる変更管理です。ERPを導入するにあたって、ビジネス・プロセスとワークフローの変更が必要になります。これらの変化は、時間とリソースへの大きな投資です。ERPソフトウェアを選択する際には、次の要素を考慮して、組織のニーズに最適なシステム・タイプを選択するようにしてください。

時間がかかる

ERPはカスタマイズ可能であり、One-size-fits-all(万能の)ソフトウェアではないため、非常に時間がかかる可能性があります。カスタマイズ性はERPソリューションの大きな利点ですが、ゼロから構築する必要があるため、難しい場合があります。

導入プロセスには時間がかかるので、組織は長期にわたるプロセスに備える必要があります。ERPシステムへの移行にかかる時間は、使用しているレガシー・システムによって異なります。この問題を回避する最善の方法は、明確かつ簡潔で、実装チームの割り当てを含む、ERP実装計画を策定することです。

IBMとERP

レガシー・システムからERPソフトウェアへの移行は、組織の規模に関係なく、大規模な作業になる可能性があります。ERPソリューションを検討する際には、専門家の支援を受けて、スムーズで透明性の高い導入計画を実行することが重要です。

IBM Consultingのエキスパートが既存のERPアプリケーションをクラウドに移行し、データ、AI、自動化を活用するプロセスを再設計し、財務をビジネスにおける競争上の優位性に変えるお手伝いをします。

アプリケーションとERP統合のためのSAPマネージド・サービスは、組織のワークロードの管理に役立ち、イノベーションと新しい機会に集中する時間を増やすことができます。SAPアプリケーションのマネージド・サービスは、基盤となる運用機能をサポートおよび最適化することで、アジリティーを実現し、リソースの最適化を可能にします。セキュリティーやコンプライアンスのレポート作成、アプリケーション管理、基幹業務へのサービスの提供などの領域が、コスト、リソース、ワークロードの観点からより予測可能になります。

 

著者

Jose Paredes Hernandez

IBM Consulting - Global SAP Consumer Industry Leader & Global SAP Direct-to-Consumer CTO