Beyond basics:優れたカスタマー・サービス戦略のための6つのヒント

2023年12月5日

読了時間:7

著者

Keith O'Brien

Writer

IBM Consulting

カスタマー・サービスを通じて顧客体験を向上させることは、あらゆる組織にとって最も重要な分野の1つです。その理由は単純です。顧客がいなければ、組織は一夜にして崩壊してしまうからです。カスタマー・サービスはカスタマー・ケアまたはカスタマー・サポートとも呼ばれ、顧客のニーズが満たされていることを確認するために組織が行う活動に関連します。

顧客とのやり取りはそれぞれ異なりますが、顧客維持を向上させ、顧客基盤を拡大したい組織は、効果的なカスタマー・サービス戦略を策定する必要があります。そのためには、カスタマイズ、そして顧客が抱える問題への対応方法に関する組織全体のルールを併用して、パーソナライゼーションと拡張性の最適な組み合わせを生み出さなくてはなりません。

カスタマー・サービスの重要性が高まっている理由

カスタマー・サービスはこれまで以上に重要になっています。Salesforce社の『State of the Connected Customer Report』によると、サービスの質の悪さが、消費者が企業からの購入をやめる最大の理由となっています。組織は同意しており、サービス専門家の大多数は、パンデミック以前と比べて顧客の期待が高まっていると述べています。

現在、顧客が別の製品に切り替えたり、メンバーシップをキャンセルしたりする傾向が直近のどの時期よりも高まっています。コロナ禍で在庫切れ、注文のキャンセル、実店舗での買い物が困難な状況が発生したため、通常の顧客体験が得られなくなり、カスタマー・ロイヤルティが低下したのです。

McKinsey社は、消費者の75%がパンデミック中に新しいショッピング行動を試み、39%が既存のお気に入りブランドよりも新しいブランドを選んだことを発見しました。この傾向はZ世代とミレニアル世代の間でより顕著で、顧客ニーズへの対応の重要性が今後も高まることを示しています。

顧客は依然として製品の価格、入手しやすさ、利便性など多くの要因に惹かれていますが、組織が顧客の問題点を理解し、製品やサービスについて直接コミュニケーションを取って回答を得るシンプルな方法が欲しいとも考えています。Zendesk社によると、約70%の顧客が、カスタマー・サービスのエクスペリエンスに基づいて購入の決定を下していると報告しています。

そのため、大手組織は優れた顧客体験の提供にこだわっています。顧客のニーズを満たし、一瞬で発生する問題への対処に備え、顧客の期待に応えるべく可能な限りのことを行わなければなりません。

優れたカスタマー・サービス、良いカスタマー・サービス、悪いカスタマー・サービスの違いとは、顧客を維持できるか、競合他社に奪われてしまうという違いとなる場合があります。

優れたカスタマー・サービス戦略のための6つのヒント

1. 顧客中心主義を戦略の中核に据える

今の顧客は、商品やサービスを購入する組織の価値と、組織がもたらす価値をより意識しています。また、組織から望むものを得られない場合、かつてないほど簡単にソリューションや製品を切り替えられることも知っています。つまり、組織はロイヤル・カスタマーを引きつけ維持するために最善を尽くす必要があるのです。見積もりは業種・業務によって異なりますが、既存の顧客を維持するよりも新規顧客を募る方がはるかにコストがかかることは十分に文書化されています。

組織のカスタマー・サービス・ビジョンでは、従業員が優れたカスタマー・サービスを提供する上で自分の役割がいかに重要であるかを理解するための指針を定めることができます。

このような点から、組織はカスタマー・ジャーニーにおける潜在的なあらゆるタッチポイントについて、価値を強化し、顧客が体験に満足していることを確認する機会としてさらに留意しなければなりません。組織は高い価値を持つ既存顧客を驚かせ、喜ばせるために、どうすれば一層の価値を提供できるかを問う必要があります。その方法の例としては、限定版や限定特典を提供するか、可能であれば他の方法で顧客を驚かせたり喜ばせたりすることが挙げられます。前もって顧客に満足してもらうことで、将来何か問題が発生した場合の影響を軽減できます。

2. テクノロジーを採用する

どのようなカスタマー・サービス戦略においても人間の担当者は依然として重要な要素ですが、人工知能(AI)のような技術的進歩のおかげで、組織はより多くの顧客に、より効果的にサービスを提供できるようになります。AIは、自動チャット支援、担当者が顧客と電話する際のライブ・スクリプトの提案、問題の予測的解決、そしてカスタマー・サービス担当者がさらに迅速かつ効果的に仕事を行うために役立つその他の強化機能を提供できます。

3. カスタマー・サービスがオムニチャネル・サービスであるよう徹底する

今日のカスタマー・サポート管理はかつてないほど複雑化しています。顧客が組織に個別連絡を取ろうとしたら、カスタマー・サービスに電話するか手紙を書くのが主流チャネルだった時代は、とうに過ぎ去りました。多くの場合、組織はカスタマー・サービスの問題すべてを1つのヘルプデスクに集約するというカスタマー・サポート戦略を展開します。顧客からの問題は、専門知識や空き状況に基づいて対応可能な担当者に送られます。

顧客は今や、テキストベースのソーシャルメディア、オンラインビデオ、チャットルーム、ヘルプフォーラム、チャットボットなど、さまざまなチャネルを使って通信を送受信できます。

それ故、最前線にいるカスタマー・サービス・チームは、顧客の問題がどこで提起されたとしても、リアルタイムでの対処に熟達していなければなりません。チームに求められるのは、組織が顧客の質問に対応しているかどうかは他の顧客から簡単に見えると理解すること、そして、自らの説明内容を正確に把握することです。

現代のカスタマー・サービス・アプローチでは、多くの組織が将来に向けてカスタマー・サービス担当者を準備するための人材開発イニシアチブに投資する必要があります。

たとえばカスタマー・サービスは現在オムニチャネル環境で行われており、複数のチャネルで発生する会話に優先順位をつけなければならない場合があります。組織はチャットボットをデプロイして顧客の一般的なリクエストを理解することにより、応答までの時間を短縮できます。

このオートメーション戦略はコストを節約してくれますが、チャットボットが顧客の問題をうまく解決できない場合、組織はカスタマー・サポート・チームの人間オペレーターに素早く切り替える必要があります。高水準のカスタマー・サービス基準を維持することは非常に重要です。

これらのリクエストを複雑にしているのは、数百万とは言わないまでも数千人の目にさらされ、口コミによる情報交換を通じてさらなるカスタマー・サービスの問題が引き起こされるという点です。たとえば、購入後わずか数日で製品が動かなくなったと顧客が苦情を言うと、そのメッセージを読んだ一部の見込み客が同じ製品の購入を思いとどまるでしょう。もちろん、これは両刃の剣となり得ます。顧客がブランドでのよい体験を話してくれれば、その組織は新しい顧客を獲得できる可能性があるのです。

4. 包括的なセルフサービスのナレッジ・ベースを作成する

多くの顧客は担当者と直接話すことを好むかもしれませんが、自分で問題の解決策を調べて解決する方がよいという顧客もいます。したがって、組織はよくある質問(FAQ)や大規模な情報データベースなどの教育リソースに投資して、自分で答えを見つけたい人に豊富な情報を提供する必要があります。このアプローチを取るとカスタマー・サポート担当者がコストのかかる1対1の会話を行う必要がなくなるため、一定層の顧客に対するソリューションの有用性が高まり、総コストが部分的に軽減されます。また他のサポート担当の手が空き、担当者から解決策を聞きたい顧客に、より多く直接対応できるようになります。

5. 顧客情報の追跡

顧客関係管理(CRM)システムは、既存顧客と新規顧客をより詳しく知るための優れた方法です。CRMはカスタマー・サービスのオペレーションにとって、顧客に問題が発生したかどうか、その発生と解決はいつだったか、そして必要になるかもしれないフォローアップ手順を把握するために非常に重要です。また、あるタイプの顧客が以前より多くの製品を購入しているか、それとも購入する製品が減っているかを判断することもできるため、組織は適切なリソースを効果的に配置して価値を最大限に引き出せるようになります。ただし、顧客情報の保護に関しては法的および信用上の義務があるため、組織は何としてでも顧客データを守らなければなりません。

6. SMART目標を特定・追跡する

メトリクス、KPI、継続的な測定なしでカスタマー・サービス戦略は完成しません。組織は顧客満足度を高めるために適切な重要業績評価指標(KPI)を設定し、それを定期的に追跡する必要があります。

組織は、定義が明確で達成できるカスタマー・サービス目標を確実に設定することが求められます。その優れた方法が、SMART(具体的かつ測定可能で、妥当な期間内に達成可能な)フレームワークの使用です。目標に具体的なターゲットが設定され、目標を達成したかどうかを組織が簡単に評価できます。

たとえば、顧客を100%完璧に満足させるのはほぼ不可能です。カスタマー・サービス担当者に問題を提起した顧客が全員、完全に満足した上でその場を去る可能性も低いでしょう。組織はまず、これらの重要領域における取り組みを基準に照らして評価し、具体的な改善目標を設定し、進捗状況を追跡する必要があります。

各組織にはそれぞれの基準、したがって独自の目標がありますが、SMART目標を設定するための測定可能なメトリクスをいくつか紹介します。

  • 初期応答時間の改善: 組織は、カスタマー・サービス・チームのメンバーが、カスタマー・サービスに関する問題をどれだけ迅速に特定し、対応できるかを追跡する必要があります。
  • 解決にかかる時間: 残念ながら、すぐに解決できるカスタマー・サービスの問題はごくわずかで、解決までに数日、数週間、あるいはそれ以上かかるものもあります。最近の調査によると、経営者の約60%が顧客との最初の関わりが質の低いまたは不十分だったと感じていることがわかりました。そのため、顧客の問題が解決され、顧客が満足していることを確認できるまでにかかる時間を計る必要があるのです。
  • 顧客満足度(CSAT): カスタマー・サービス戦略の成功を理解するために組織ができることとして、顧客満足度調査の作成と追跡があります。組織は顧客が考えていることや感じていることについて、理解を深めることができます。これを行うことで、組織は顧客への価値提供に優れているのか、それとも不足しているのかを、確実に知ることができるのです。多くの場合、組織は調査を通じて満足度を測ります。
  • ネット・プロモーター・スコア(NPS):このスコアは、顧客が自分のネットワークに製品やサービスを薦める可能性がどの程度あるかを問うものです。顧客1人1人がそのソリューションをどれほど満喫しているかを進んで友人、家族、同僚に伝えるほど、その組織が大きな価値を提供していることを示す強力なデータ・ポイントです。
  • 顧客維持率:顧客が組織のソリューションを引き続き購入するかどうかを把握することは、組織全体の健全性を測る上で重要です。高い定着率は顧客満足度とロイヤルティを示すよい指標であり、組織が顧客の期待に応えているか、それを上回っていることを証明します。

次のステップ

組織は既存顧客を確実に維持し、紹介や肯定的な口コミを通じて新規顧客を獲得するために、カスタマー・サービスへの投資を継続する必要があります。競合他社より優れたカスタマー・サービスを提供することは、ビジネスを成長させ、高い評判を維持する方法の1つです。上記のガイドラインに従うことで、組織は競争が激化する市場で成功できます。

IBVによるCEO(最高経営責任者)向けカスタマー・サービス用生成AIガイドによると、CEOにとってカスタマー・サービスが生成AI投資における最優先事項となったのは驚くことではありません。顧客の需要と運営コストの増大という二重の課題に対処できるよう組織を支援するという目標は、AIに最適です。

IBMは10年以上にわたって、企業が信頼できるAIをこの分野に適用する取り組みを支援してきました。生成AIは、複雑な問い合わせを理解し、より人間に近い会話型の応答を生成する能力によって、カスタマー・サービスやフィールド・サービスを大幅に変革するさらなる可能性を秘めています。IBMコンサルティングは、エクスペリエンス設計とサービス、データ、AIトランスフォーメーションにおけるエンドツーエンドのコンサルティング・ケイパビリティーを提供します。IBM watsonx™のAI製品ポートフォリオと、市場をリードするIBMの対話型AIソリューションであるwatsonx™ Assistantを併用することによる、対話型AIの強化、エージェント・エクスペリエンスの向上、コールセンターのオペレーションとデータの最適化を実現するAI価値創造プロセスを通じて、当社はお客様と連携します。