風は西から——地域から日本を元気に。(「ビジア小倉」グランドオープン・レポート)

2025年5月9日

 

 

福岡県北九州市のJR⼩倉駅から徒歩7分、100年の歴史を刻む⽇本でも有数の⼈気商店街「旦過市場」からもすぐという好⽴地にグランドオープンしたBIZIA KOKURA(ビジア⼩倉)

そのグランドオープン式典が2024年12⽉13⽇(⾦)に⾏われました。

テープカットを⾏う(左より)北九州市 武内和久 市⻑、株式会社ワールドホールディングス 伊井⽥栄吉 会⻑、⽇本IBM 加藤洋 副社⻑


 

13階建てのビジア⼩倉は、北九州市の再開発促進事業「コクラ・クロサキ リビテーション(リビルド(建替え)+インビテーション(引き込む)の造語)」の第1号適⽤物件として建設されたオフィスビルで、11階から上の3フロアには、IBM 九州DXセンターが⼊居しています。

オープン式典に併せて開催されたIBM九州DXセンター新オフィス内覧イベントには、多数の来賓の⽅がたに加え、テレビ・新聞を中⼼とした多くの報道関係者の皆さまにご参加いただき、多くのご質問やご感想をお聞かせいただきました。

当記事では、当⽇の様⼦と、テレビ局のインタビューを受けた2⼈のIBM九州DXセンター所属社員の「本⾳トーク」をお届けします。

 

ビル⼊り⼝脇の開放的な公開空地で⾏われたグランドオープン式典は、⼩倉祇園太⿎⿃四(⿃町四丁⽬)チームによる迫⼒ある⼩倉祇園太⿎の演奏でスタートし、フィナーレのテープカットは⼩倉織テープ(当記事冒頭写真参照)が使⽤されました。

 

IBM九州DXセンター新オフィス内覧と式典後には、⼊居テナント専⽤コミュニケーション・スペース「BIZ-LAB」で、北九州市武内市⻑と株式会社ワールドホールディングス代表取締役会⻑兼社⻑の伊井⽥⽒、⽇本IBM 加藤副社⻑の3名による記者会⾒が⾏われました。

 

以下は、式典での挨拶と上記記者会⾒の中で、筆者が個⼈的に興味深いと思った3者の⾔葉です。

 

◆北九州市 武内和久 市⻑

•     新しいチャレンジを求めて集う若者を⽀え、他世代が混じりあう新しい北九州市へ。新たな歴史を刻む今⽇がその1⽇です。

•     本当にIT企業やデジタル⼈材が集積できる街なのか。理解して納得していただいて集っていただきたい。まずは⾒て知って試してほしいと思っています。

•     ものづくり企業のDX化を後押しし、ワクワク感とチャンスの溢れる「稼げる街」北九州へと、ビジア⼩倉とともに⼤きく⼀歩踏み出しました。

 

◆株式会社ワールドホールディングス 伊井⽥栄吉 会⻑

•     BIZIA(ビジア)は、ビジネスと「集まる場所」を意味するラテン語を重ねた名前です。

•     北九州市初となる「CASBEE-スマートウェルネスオフィス認証」(働く⼈の健康配慮や省エネ環境、安⼼と安全に関する性能などの多⾓評価・認証制度)を来年春に取得予定です。

•     先⽇、インフルエンザ接種に⾏った病院の待ち合いで、近くのご⽼⼈に「伊井⽥さん、明るい街に(なるように頑張ってくれて)ありがとう」と⾔われ、感無量になりました。

 

◆⽇本IBM 加藤洋 副社⻑

•     「我われは地域の皆さんに受け⼊れていただけるのだろうか?」——不安な⽇々を過ごしていたのが嘘のように、地域⾏政・企業・住⺠の⽅たちの温かい歓迎に喜びを感じています。

•     北九州はたくさんの⼤学があり優秀な学⽣の多い街。市⻑が掲げている「稼げる街」づくりを、多くの若者や地域企業のみなさんと⼀緒に進められるのが⾮常に楽しみです。

本⽇(2024年12⽉13⽇)提供開始を発表した、「IBM地域デジタル変⾰パートナーシップ包括サービス」の実施第⼀弾となるのがIBM 九州DXセンターです。エンジニア志望や理系の学⽣が多い北九州市で、IT⼈材不⾜という社会課題の解決に⼀緒に取り組みましょう。

駆けつけた多くのテレビ局や新聞社向けに会⾒中の(右より)北九州市 武内和久 市⻑、株式会社ワールドホールディングス 伊井⽥栄吉 会⻑、⽇本IBM 加藤洋 副社⻑


 

上記で加藤が話している「IBM地域デジタル変⾰パートナーシップ包括サービス」とはどのようなもので、それが「IT⼈材不⾜」という課題解決にどうつながるのでしょうか。

そのサービス内容を簡単に確認してみましょう。

「IBM地域デジタル変パートナーシップ包括サービス」骨子

・ サービス概要(趣旨)

各地の産業集積の特性を踏まえた、地域企業の「デジタル人材育成」と「先端技術を活用した企業のデジタル変革」を両輪で進め、全国8カ所の「IBM地域DXセンター」を軸に、地域共創を進めながら包括的な支援を提供。

・ サービス開始の背景

デジタル人材は東京圏に集中し、全国的に不足状況。地域ではデジタル変革を推進する人材の確保・育成が難しく、デジタル変革の阻害要因となっている。

・ サービスが企業と地域にもたらすもの(解決する課題)

AIや先端テクノロジーを活用しながら、業界知識をもとに地域企業のデジタル変革を推進するデジタル人材。そしてデジタル人材が、企業の枠を超えて各地域の共創やイノベーションの中核を担うエコシステムの構築。

・ 5つの重点強化領域

1.   デジタル変戦略の推進 | 新しいデジタル・ビジネスモデル創出支援や変革推進部門の立ち上げ、ほか

2.   産官学連携による多様なデジタル材育成 | 産官学で企業・地域のイノベーションをリードするデジタル推進人材の育成・支援

3.   先端技術を活⽤した業務改⾰ | 「デジタル変⾰のためのAIソリューション」ほかを活⽤した、業務効率化や市場

4.   開発・保守運⽤とビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の⾼度化 | 開発・保守運⽤の効率化や、AI BPO業務の⾼度化による企業競争⼒強化

5.   新しいワークスタイルの確⽴ | リモートワーク導⼊⽀援やAI活⽤プラットフォームによるプロジェクトの⽣産性・効率性向上

IBM 九州DXセンターのオフィス視察を終えその感想を古⻑センター⻑に伝える武内市⻑


 

ここまで、12⽉13⽇に⾏われたビジア⼩倉のグランド・オープニングと、同⽇発表された「IBM地域デジタル変⾰パートナーシップ包括サービス」、そしてそれらへの期待について、公式発表を中⼼にご紹介しました。

 

最後に、2⼈のIBM九州DXセンター所属社員が感じている「今、北九州で働くリアル」についての本⾳トークをお届けします。

 

⼭下 舞(やました まい)| アプリケーション開発者

2024年2⽉に東京から「Uターン」にて北九州へ。IBM 九州DXセンター所属。

 

——Uターン、並びにIBM 九州DXセンターへの転職理由が「おもしろそうだし、チャンスかなと思った」とお答えになられていました。

⼭下:私にとっては慣れ親しんだ学⽣時代の友⼈がいて、勝⼿知ったる北九州」で働けることと、地元の企業や学校とのつながりを感じられる仕事ができることは、とてもおもしろいことだし嬉しいことです。

北九州市にIBMが来ていなかったらおそらく私がやりたいと思う仕事はここにはなかったと思います。そして私はきっと戻ってきていなかったなあと思います。

 

——友⼈や仕事内容の他にも、北九州に戻られた理由はありますか?

⼭下: 北九州市が積極的に誘致施策を展開していたことも⼤きかったです。⼀定の条件を満たせば、単⾝世帯でも60万円の⽀援⾦が頂けるという市の⽀援事業があり、それが理由で北九州に決めました。それまでは福岡市を候補に考えていましたが、IBMの求⼈があって、誘致⽀援⾦があって、私と同じように東京から北九州に戻った友⼈たちが少なくともすでに10⼈は街にいて。「これって北九州に戻らない理由なくない?」と。

 

——もともとの地元ということで、移住の⼼配はなかった?

⼭下: 「地元」というのはもちろん⼤きな理由ではありますけど、でも、私はUターン・Iターンや移住が、重たく捉えられ過ぎている気がします。

私の場合は勝⼿知ったる⼟地ではありましたが、そうじゃない場合でも、必要以上に、あまり重たく考え過ぎなくても良いのでは、というのが個⼈的な意⾒です。もちろん、「⼈によるだろうな」とは思いますが。

 

——たしかに、国をまたぐわけでもなく、「ちょっと距離のある引越し」に過ぎないとも⾔えます。

⼭下: そうです。移住先での⽣活や仕事がもし合わなかったり、違和感が強かったりしたら、また別のところに移ればいいだけのこととも⾔えます。

私は東京が嫌で帰ってきたわけではないので、またいつか「やっぱり東京の⽅がいいかな」と思うことがあるかもしれません。

そのときはまたそのときに考えればよいと思います。

 

川上 聡⼀ (かわかみ そういち)| プロジェクト・マネージャー

2024年8⽉に中国・⼤連から「Iターン」。出⾝地は北海道で、これまでに東京・⼤阪などでも勤務経験あり。IBM 九州DXセンター所属。

 

——テレビ局のインタビュー取材、なんだかすごく慣れている感じがしました。

川上: そうでしたか? 取材の経験はほとんどないのですが、普段考えていることをお話しさせていただく機会は結構あり、いただいた質問が⽇常的に考えていることや感じていることだったので、分かりやすくお伝えすることができたのかと思います。

よい機会をいただきました。

 

——⽣活環境の良さを⼤プッシュしていましたね。「北九州の⽣活に⼀切不満はないです」とも。…本当に?

川上: ……。……。……改めてじっくりと「不満」を探してみましたが、やっぱり⾒つかりません。ないです。街中にも公園が多いし、ちょっと⾞を⾛らせれば若松のきれいな海岸があって、温泉もあれば美味しい⾷べ物もたくさん。そして家賃はもちろん全体的に物価が低いので⽣活費が安い。

ここでずっと暮らしたいって思っています。

 

——ここ数年は中国・⼤連で暮らしていて、その前は⼤阪さらに前は東京と、いろんな街で暮らしてきた川上さんには、刺激や学びの機会が少なくはありませんか?

川上: 数年前だったら状況は違ったかもしれませんが、今はセミナーもオンライン配信が多く、技術者として最新テクノロジーを追いたいという気持ちや知識欲の部分は⼗分満たされています。これはコロナ禍がもたらした社会変⾰のおかげと⾔ってもいいかもしれません。

 

——なるほど。本当に満⾜し切っているんですね。

川上: ただ、これは私がITエンジニアのバックグラウンドを持っているからかもしれません。ITの仕事は環境の制約が少ないのが⼀つの特⾊ですから。

その点から考えると、今後も必然的に北九州にテクノロジー⼈材は集まるでしょうし、そうすると街も発展を続けるのではないかと思います。

 

——それでは、北九州への移住をどなたにもお勧めしますか?

川上: 基本的にはそうですが、「移住と転職」をセットで考えるとなると、少し話は変わってくるのかもしれません。

たとえば転職先がミスマッチだったとき、札幌や福岡のようにIT産業が発達している都市とは違いがあり、今はまだIT企業がたくさんあるという状況ではありません。そうすると「再転職」しづらい可能性があります。その視点から考えると、特に家族がいる⽅などは、それなりに慎重にならざるを得ないかと思います。

「今後、北九州がIT都市として発展していき、⼟壌が整うことは重要だと思います。これからそうなっていくのは間違いないと思いますが、今はまだ『これから』というところもあるので」と先⽇のテレビ局の取材でも、そんな話をさせていただきました。

 

——なるほど。半年前まで暮らされていた⼤連と⽐べて、真っ先に頭に浮かぶ違いはなんですか?

川上: 仕事⾯での話になりますが、⼈材確保の難しさです。ただ、これは北九州に限らず⽇本全⼟に共通の問題です。そしてもう⼀つの違いは、教育環境だと思います。北九州に⼤学は数多くありますが、それよりも⼿前の⼩中⾼です。

今、有名な海外の⼀貫教育校の誘致などの話も進んでいるという話も⽿にしているのですが、それが実現したら⼀気にアジアの裕福層の移住が進み、⼤連をはじめとした中国や東アジア・東南アジアからの優秀な⼈材の流⼊にも弾みがつくのではと考えています。 ——それでは最後の質問です。「北九州は優しくて温かい⼈が多い」とお話しされる⼈が多いのですが、川上さんもそう思いますか。

川上: たしかにそうなんじゃないでしょうか。

僕は札幌の出⾝なのですが、「江⼾時代末期以降に発達した街」という共通点のせいか、ちょっと似たところがあると感じています。外から⼊ってくる⽅たちを積極的に受け⼊れて、共創を進めていったという街の成り⽴ちや⽂化・歴史が、どこか似ている⾵⼟を作っているのかもしれないです。

 

⾵は⻄から——ビジア⼩倉から、IBM 九州DXセンターから。

クリエイティブ⼈材と先進テクノロジーで、新しい化学反応を起こし、新たな地域共創と新しいビジネスモデルを。地域から⽇本を元気にしていきましょう。

八木橋 パチ

日本アイ・ビー・エム株式会社、Partner Ecosystem、コラボレーション・エナジャイザー