ガートナー社の調査によると2030年までに、生成AIテクノロジーを利用してインターネット上のデータの90〜99%が作成されるそうです。中でもAIの影響を受けると予想されるデジタルマーケティングのプロセスにおいては、コンテンツ生成が56% と最も大きく、次いで分析やクリエイティブの最適化が続きます。
こうした予測やAI技術の進化により広告・マーケティングにおける業務フローは全てAIで効率化されることが可能であり、IBMでは広告・マーケティング分野における生成AIの活用を推進しています。特に銀行業では金融取引やデジタル接点などの行動履歴を活用した上で、広告のパーソナライズ・クリエイティブ生成・ブランド保護という3つのポイントを意識した生成AI活用により、広告・マーケティングの効果を最大化し、業務効率化を図ることに期待が集まっています。
改正銀行法により銀行にとって広告ビジネスが身近になったことに加え、DXの推進により顧客接点や顧客体験がデジタル化されていることを背景に、最もAI影響を受けると予測されている広告・マーケティングのコンテンツ生成について、昨年IBMは複数の地方銀行と共同実験を行いました。
実証実験では生成AIのポテンシャルを把握するために、広告業務のプロセスにおける作業効率や画像や動画といった各種コンテンツのアウトプット品質を検証し、良し悪しを理解する有効な実証となりました。
また、その際、AIで生成された広告の効果を評価するために、複数のLLM(Large Language Models、大規模言語モデル)を用いたLLM合議判定という手法も実施しました。
さらにこの分野におけるAI活用の幅を広げるためIBM社内で研究開発を進めており、広告商品分析・バーチャル市場調査・複数ペルソナジェネレーターといった機能を構築し、広告のターゲットとなる顧客の詳細なプロファイルに基づくパーソナライズされた広告を作成する検証を行っています
広告作成・評価時に生成AIを活用することで以下3点を実証しました。
- 生成AIの活用による、広告コンテンツ作成業務の作業時間短縮
- ターゲットに合わせてパーソナライズされた効果的かつ多種多様な広告クリエイティブの生成
- 広告の審査や評価を複数の視点から行うことによる、公平かつ客観的な評価とブランド保護への貢献
広告・マーケティングに生成AIを活用することで作業効率が高まり、広告のインパクトや明確性が高まりました。このような広告はユーザーの興味・関心を獲得することに繋がり、結果として広告の効果が向上するでしょう。
また、LLMを用いた合議判定により、広告の評価が迅速かつ正確に行われ、事前に効果の予測やコンプライアンスチェックによるブランド保護が可能になりました。これにより、広告戦略の立案から実行までのプロセスがスムーズに進み、全体のマーケティング効果が向上することが見込まれます。
広告・マーケティングの業務フローは全てAIで効率化することが見込まれます。従来はビジネスゴールの設定や市場機会の評価といった企画に数週間から数ヶ月かけて行うケースがありますが、今後はAIエージェント等の活用が進み数日や数時間に短縮されることだけでなく、外注依存を脱却して内製化が進むこと十分にあり得るでしょう。また、顧客のトランザクションデータやデジタル接点の行動履歴データなどあらゆるデータとの連携が進み、PDCAサイクルそれぞれにAIが活躍する時代が来ています。
膨大なターゲット顧客に関する情報と過去のデータを基に、訴求したい広告商品の魅力を深掘りし、効果的なコンテンツを効率よくアプトプットできるようになり、広告戦略の立案から実行までのプロセスがスムーズに進み、全体のマーケティング効果の向上が進むと予想されますが、課題も残っています。
特に、信頼が大きな訴求力となっている銀行においては実用性の実証は慎重かつ回数を重ねて行う必要があるでしょう。業務単位で個別最適されたAI活用が進んでいますが、AIガバナンスの観点を伴った全体最適が必要となるでしょう。例えばIBM Granite GuardianといったLLMがプロンプトや生成物のリスクを事前検知し、ガバナンスと安全性を担保しながら広告が掲載・配信される世界が実現されていくことでこれらの課題も一つ一つクリアされ、AI活用が広告・マーケティングの分野で着実に進んでいくと思われます。皆様も広告・マーケティングにおけるAI活用を是非ご検討ください。