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人工知能は、患者の質問への回答、手術の補助、新しい医薬品の開発まで、医療のあらゆる分野で使用されています。
Statistaによると、2021年に110億ドルと評価された人工知能(AI)ヘルスケア市場の価値は、2030年には1,870億ドルに達すると予測されています。この大幅な増加からは、医療機関、病院、製薬企業、バイオテクノロジー企業など、医療業界の組織の運営方法が、今後大きく変化する可能性が高いことが読み取れます。
機械学習(ML)アルゴリズムの改善、アクセスできるデータの増加、ハードウェアの低価格化に加え、5Gの実用化によってヘルスケア業界のAIユースケースが増えることで、変化のペースは加速しています。AIおよびMLテクノロジーは医療記録、臨床研究、遺伝情報などの膨大な量の医療データを選別して、人間よりもはるかに速く分析を行えます。
医療機関では、AIを活用してバックオフィス業務から患者のケアまであらゆる種類のプロセスを効率化しています。以下は、AIを活用することでスタッフと患者にもたらされる主なメリットです。
ハーバード大学公衆衛生学部によると、AIを使用した診断はまだ初期段階ではありますが、治療費を最大50%削減し、健康転帰を40%改善できる可能性があります。
たとえば、ハワイ大学のユースケースでは、研究チームがディープラーニング・AIテクノロジーの導入が乳がんリスクの予測精度の改善につながることを発見しました。さらなる研究が必要ではありますが、主任研究者はAIアルゴリズムを、放射線医よりもはるかに大量の、100万枚以上の放射線画像でトレーニングを行えると指摘しています。また、そのアルゴリズムの複製には、ハードウェア以外の費用はかかりません。
MITのグループは、人間の専門家が必要なタイミングを判断するMLアルゴリズムを開発しました。胸部X線写真で心肥大を特定する際など、場合によっては、人間とAIのハイブリッド・モデルが最良の結果を生み出すことがわかりました。
公表された別の研究では、皮膚がんの診断において、AIが経験豊富な医師よりも優れた認識能力を発揮することがわかりました。米国、ドイツ、フランスの研究者は、ディープラーニングを使用して10万枚を超える画像で皮膚がんを特定しました。AIとさまざまな国の皮膚科医58人の結果を比較したところ、AIの成績のほうが優れていました。
ヘルス・モニターやフィットネス・モニターが普及し、健康状態を詳しく記録・分析するアプリを利用する人が増えています。これらのリアルタイム・データセットを医師に共有して、健康上の課題を監視し、問題が発生した場合はアラートを送信できます。
ビッグデータ・アプリケーション、機械学習アルゴリズム、ディープラーニング・アルゴリズムなどのAIソリューションは、臨床などの意思決定に役立てるために大規模なデータセットの分析に使われるかもしれません。AIは、新型コロナウイルス感染症、結核、マラリアなどの感染症の検知や追跡にも活用される可能性があります。
AIの使用が医療制度にもたらす1つのメリットは、情報の収集と共有が容易になることです。AIにより、患者のデータの追跡を効率化できます。
たとえば糖尿病の場合、米国疾病管理予防センターによれば、米国の人口の10%が糖尿病を患っています。患者は、ウェアラブル・デバイスなど、血糖値に関するフィードバックがわかるモニタリング・デバイスを使用して、自身の血糖値を確認したり、医療チームに共有できるようになりました。プロバイダーはAIを活用することで、情報を収集、保存、分析し、多くの人から集めたデータに基づくインサイトを提供できます。医療従事者はこうした情報を使用して、より適切な病気の治療方法や管理方法を決定できます。
また、さまざまな組織が医薬品の安全性向上に向けて、AIの活用を始めています。たとえば、SELTA SQUARE社はファーマコビジランス(PV)プロセスの変革に取り組んでいます。このプロセスは、医薬品の副作用を発見、報告し、その影響を評価、理解、予防するために法的に義務付けられています。PVは、臨床試験の段階から医薬品の発売から販売終了まで実施されるため、製薬会社に多大な労力と不断の努力を強います。Selta Square社はAIとオートメーションを組み合わせてPVプロセスのスピードと精度を高め、世界中の人々のために医薬品の安全性向上に貢献しています。
AIを使用することで候補となる創薬化合物を物理的に試験する必要性が減る場合があり、大幅なコスト削減につながります。忠実度の高い分子シミュレーションをコンピューター上で実行できるため、従来の方法のような高額なコストがかかりません。
また、AIは分子の毒性や生物活性などの特性の予測や、未知の薬物分子の創製に役立つ可能性を秘めています。
医療サービスにおけるAIの重要性が高まり、AI医療アプリケーションの開発が増えるなか、倫理および規制のガバナンスの確立が必須です。懸念される問題として、バイアスの可能性、透明性の欠如、AIモデルのトレーニング用データのプライバシーに関する懸念、安全性と法定責任に関する課題などが挙げられます。
Gartnerでバイス・プレジデント兼アナリストを務めるLaura Craft氏は次のように述べています。「特にテクノロジーを臨床に活用するなら、AIガバナンスは必要です。しかし、ほとんどの[医療提供組織]にとって新しいAI技術はほぼ未知の領域であるため、意欲的な起業家がパイロット版を設計する際に守るべき一般的なルール、プロセス、ガイドラインがありません」
世界保健機関(WHO)は18カ月間をかけて倫理、デジタル・テクノロジー、法律、人権の各部門の第一人者や、保健省のさまざまな職員と協議を重ね、「医療における人工知能の倫理とガバナンス」という報告書をまとめました。このレポートでは、AIを医療に使用する際の倫理的な課題とリスクを特定し、以下の公共の利益に貢献するAIの実現に向けて、6つのコンセンサス原則の概要を述べています。
また、WHOの報告書では、テクノロジーの可能性を最大化するとともに、医療従事者が自身が協働する人々やコミュニティーに対応し、説明責任を果たすよう、医療向けのAIガバナンスを実現するための推奨事項も示しています。
AIを活用することで、ヒューマン・エラーを減らし、医療従事者や医療スタッフを支援し、患者サービスを24時間365日体制で提供できます。AIツールは進化しており、医療画像、レントゲン、スキャン画像の読影、病気やけがの診断、治療計画の作成にさらにAIを活用できる可能性があります。
AIアプリケーションは、電話応対、公衆衛生の傾向分析など、今後もさまざまなタスクの合理化に活用されます。また、まだ検討されていない適用方法が出現する高い可能性があります。たとえば、未来のAIツールによって、自動化または補完される臨床医やスタッフの業務は今より増えるかもしれません。そうすれば、医師やスタッフはより多くの時間をより効果的で思いやりのある対面での専門的ケアに費やせるようになります。
患者は助けが必要なとき、待たされたくない(または待てない)ものです。医療施設のリソースには限りがあるため、24時間365日、いつでもすぐに支援が受けられるわけではありません。また、わずかな時間の遅れでも、患者がフラストレーション(イライラや不満)や孤独感を感じたり、症状が悪化したりする恐れがあります。
IBM watsonx AssistantのAIヘルスケア・チャットボットにより、医療従事者は必要な場所に集中的に時間を使い、簡単な質問で電話をかけてきた患者がすばやく回答を得られるよう支援するという2つの業務を行えます。
IBM watsonx Assistantは、ディープラーニング、機械学習、自然言語処理(NLP)モデルを基盤としています。対話型AIを使用して質問を理解し、最適な回答を検索し、トランザクションを完了します。
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