昨今の営業人材不足や、コロナ禍による対面機会の減少により、ニューノーマルな営業スタイルへの変革を迫られている企業は多いのではないでしょうか。今回ご紹介する日本サニパック株式会社(以下、日本サニパック)では、全国に広がる小規模事業者との取引拡大を図るため、LINEと既存の基幹システム (IBM i ) の受注の仕組みを連携した新たなチャットボット発注システムを導入。ユーザー目線でデザインされたデジタル・プラットフォームを短期間で構築し、抜本的なビジネスモデルの変革を実現しました。効率的な発注業務の実現のために、レガシーな基幹システムと外部サービスとの連携をいかに図ったのか?その鮮やかなDX事例の裏側を、日本サニパック デジタルトランスフォーメーション推進部 宇野様と、開発パートナーのベル・データ株式会社(以下、ベル・データ)津﨑様、田村様より紹介いただきます。
ポリ袋・ゴミ袋の開発・製造・販売を手がける日本サニパックでは、大きく家庭用(B to C)と業務用 (B to B)に分けて、事業を展開しています。B to B領域のうち、裾野が広くポテンシャルが高いのが小規模事業者との取引であり、収益安定化を目指すためこの領域の強化が課題となっていました。 しかし、小規模事業者は一度の取引が少額で顧客企業数が多いため、すべて営業担当が対面でフォローするのは人的リソースの観点から難しいと言わざるを得ません。また、FAXなどで注文を受け付けていましたが、注文内容を確認・入力するといった業務負荷の問題もありました。 さらに大きな問題となっていたのが、与信リスクです。小規模事業者は、経営者が高齢化し後継者がいないケースも多く、廃業・倒産などのリスクがあるほか決算内容も開示していないため経営状況を判断しきれず、与信リスクから取引を断るしかないケースも出ていました。 そのなかで、世の中ではECサイトが普及。業務利用の小規模事業者が一般的なECサイトで購入するケースが増加し、ビジネスチャンスの損失になりかねない事態に陥っていたのです。2020年、人手不足に悩む地域の営業担当者からの相談を皮切りに、新たに目指すべき姿を再定義すべく、日本サニパックはDXの第一歩を踏み出しました。
課課題解決策として日本サニパックが新たに導入したのが、LINEを利用した「チャットボット発注システム」でした。日本サニパックでは基幹システム基盤としてIBM iを活用し、在庫情報や取引先情報などのデータベースを構築していますが、チャットボットサービスから、クラウド基盤となるIBM Cloud上の連携アプリケーションサーバを経由してIBM i上のデータを参照することで、在庫の有無や金額などを自動で返信し、顧客側から簡単に発注できる仕組みを、パートナー企業であるベル・データ株式会社(以下、ベル・データ)と共創しました。
さらに、ヤマトクレジットファイナンス株式会社が提供する決済代行サービス「クロネコ掛け払い」とも連携。注文を受け付ける前の段階でクロネコ掛け払いによる与信をおこなうことで、日本サニパックは与信リスクから解放されます。
チャットボット発注システムにより、注文書の受け取りや入力などの作業が不要になり、営業担当の工数をかけずに受注できる仕組みが整った結果、営業の活動量を変えることなく売上・利益の向上が実現しました。与信リスクも解消され、これまでは諦めざるを得なかった事業者とも取引できるように。請求書の発行や未入金への督促といった業務が不要になる点も業務の効率化の観点からも大きなメリットです。
また、日本サニパックでは同じ商品でも顧客や発送先ごとに価格が異なるため、これまでは商品価格や配送手数料を、手作業で受注入力する段階で指定していました。チャットボット発注システムでは、商品検索の時点で、手作業で受注入力する際と同様の条件で判断し金額を表示。金額や在庫情報などIBM i上のデータをリアルタイムに顧客へ提示できる仕組みのメリットは大きく、顧客にとってもより使いやすい仕組みとなりました。
もう1つ、新たにLINEという顧客接点を持てたことにより、キャンペーンや新商品の情報などを発信することも可能になりました。コロナ禍でニューノーマルな営業スタイルが求められるなか、営業が取引先を1社ずつ訪問するには限界があります。こういった新たなデジタル・ツールを活用した仕組みの価値は大きく、今後、労働人口が減少し人材確保の難易度が上がっていくなかでもビジネスを継続できるようになると考えています。
今回、基幹システムに複数のサービスを連携させることを考慮し、 IBM Cloud上にベル・データのアセットを利用した連携用アプリケーション(B-Core API-HUB)を構築。B-Core API-HUBは、利用者からのリクエストに応じてIBM iのデータベースとのやり取りを中継する機能がメインであり、基本的な機能はすべてIBM iの既存システムを活用しました。注文時の「カート機能」のみ、既存システム内に該当する機能がないため追加開発しましたが、その他はすべてIBM i上の既存システムの仕組みを活用。既存資産を活かすことで、開発工数を最小限に抑えることができ、実質開発期間は約半年と、迅速なシステム開発を実現しました。
また今回、連携用アプリケーション基盤に採用したIBM CloudではAIソリューション「IBM Watson」と連携するための「Watson API」が提供されています。照会応答や知識探索、画像・音声・言語認識など幅広い分野のAPIがそろっているほか、学習済みのモデルが提供されるため、容易に機械学習をスタートできます。今後は、IBM Watsonを活用し、チャットボット発注システムで受注することで蓄積されるデータをもとに傾向分析、販売予測など様々な展開が可能になるのでは、と期待しています。
今回、複数の外部サービスと既存基幹システムIBM iをつなぐ役割を果たした「B-Core API-HUB」は、ベル・データが持つ複数の技術ノウハウやシステム連携ソリューションを束ねた総称になり、お客様の予算規模に合わせながら、簡便・迅速なDX推進をお手伝いします。
DX は必ずしも何かの画期的なテクノロジーによってもたらされるわけではありません。むしろ異種のシステム、異種のアプリケーションを連携させる事で、新たなビジネス価値が生まれます。現場の複雑な課題を解消する複数のテクノロジーやサービス = 点と点 = と、基盤となるIBM iをつなぎ合わせ、新たなビジネスモデルを最小限の投資で生み出すことができます。
ベル・データのシステム間連携ソリューションは、今回ご紹介したチャットボット発注システムの他にも、基幹システムと外部サービスやアプリをつなぐ、さまざまなユースケースに対応可能です。このソリューションを具体的にイメージできるデモをご覧いただき、経験豊富なスペシャリストがお客様の課題や環境をお伺いして最適なご提案をいたします。