この記事は、2017年11月15日、日本IBM 本社で開催されたIBM生産革新セミナー・秋にて、パナソニック株式会社 コネクティッド ソリューションズ社プロセスオートメーション事業部 ビジネス イノベーションセンターソリューションエンジニアリング総括部 部長 島田篤人 氏の講演をまとめたものです。

部長 島田篤人 様

パナソニック株式会社
コネクティッドソリューションズ社 
プロセスオートメーション事業部 
ビジネスイノベーションセンター 
ソリューションエンジニアリング総括部 
部長 島田篤人 様

製造業のデジタルトランスフォーメーションが加速している。
だが、変革は待ったなしと言われる一方で、「どこから取り組むべきか」という疑問の声もしばしば聞かれる。こうしたなか、生産現場における情報の流れとモノの流れを融合することでスマートファクトリーの実現に取り組んでいるパナソニックの島田篤人氏は、「今あるデータに着目し、スモールスタートで進める」と説く。ここでは、パナソニックのスマートファクトリーへの取り組みと具体的な実施事例の紹介を通じて、人的作業の効率化や自律する生産ラインがもたらす新しい価値について考えてみたい。

1. 製造部門がデジタル化のラストピース

デジタル時代の製造業を取り巻く課題の背景として、労働人口の減少やトレーサビリティの厳格化などの環境要因がある。また、市場の急変に柔軟に対応したいという経営上の要請は一層高まると同時に、現場では労働生産性のさらなる向上が求められている。
こうした課題に対して企業では、究極のモノづくりであるマスカスタマイゼーションを実現すべく、設計から調達・製造・販売までバリューチェーンをデジタル化し、高速回転させようと取り組んでいる。高品質と低コストの追求により、PLM(Product Life-cycle Management)やERP(Enterprise Resource Planning)、CRM(Customer Relationship Management)の分野はデジタル化が進んでいる。しかし、製造のところだけバリューチェーンが途切れている。未だに手作業で情報を収集し、生産計画を立てている。

デジタル時代のモノづくりは、この空白部分である“工場のデジタル化”が不可欠だ。それを実現することにより、結果として製造の自動化や省人化、あるいは自律化や予兆保全もできるとパナソニックでは考えている。

2. 今あるデータに着目し、スモールスタートで進める

では、どのように工場をデジタル化するのか―。我々は、顧客から情報を得て、生産計画を立て、部材調達を行う際の「情報の流れ」をCyberと呼び、実際に部品を調達し、実装フロアで組み立て、最終製品を顧客に届ける「モノの流れ」をPhysicalとし、この2つをうまく連動させることがスマートファクトリーのあるべき姿だととらえ、その実現のためにデジタル化を進めている。

CyberとPhysicalの連動、融合について具体的に見ていきたい。 
これは製造オペレーション管理と言われているものだが、そこにはスケジューリングや製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)があり、後者は材料管理、仕掛品の進捗管理、完成品管理、トレーサビリティで構成されている。これらに加えて、現場のデータを集めて経営指標の達成度について分析するBusiness Intelligenceを組み合わせ、PhysicalのエリアとCyberのエリアを連動・融合させようと取り組んでいる。

Cyberソリューションについてパナソニックは、機能ごとにモジュールを構成し、会社あるいは工場のニーズに従って部分的に拡張あるいは更新することでトータルの生産性を上げていく。Physicalは、実装工程で高度に自動化されているため、密度の濃いデータ連携を各設備が行い、それを組み立て工程に展開していこうと考えている。 
製造部門のデジタル化についてどこから着手するかという点については、今あるデータに着目してソリューションを構築し、分析をして改善に役立てていくことをお勧めしたい。また、その際には最初にデータ活用の目的を明確にした上で、スモールスタートで進めていくことがポイントになるだろう。

3. パナソニックのスマートファクトリー、実装フロアでの実施事例

  • 材料管理の事例

航空機向けのエンタテインメント・システムを製造する当社の大阪工場では、材料管理システムを導入している。航空機の寿命は約50年と長いため、修理用に部品を長期間供給する必要がある。数千種ある基板の中から、注文が入ると我々は1日で出荷している。大阪工場では、温度・湿度管理や先入れ先出しの管理をデジタルを使い自動化した。かつては部品の供給にあたって3名のキッティング要員で90秒かけていたが、今は1名で30秒に短縮され、生産性は9倍になった。帳票入力等も自動化され、間接業務も大幅に効率化した。
また、実装工程の設備から、どれだけの部品を消費したのかがリアルタイムに分かるため、部品切れを予測できるようになった。この残数予測によって在庫切れによる停止ロスを最小限にでき、生産性向上につながっている。

  • 統合ライン管理の事例

次に、統合ライン管理の事例を紹介する。実装ラインは工程ごとに専業メーカーがあり、専門の検査工程があるため、複数社の設備をインライン化することが多い。従来は各社が個別に管理していたが、パナソニックはラインコントローラーiLNB(Integrated Line Network Box)を開発し、ライン全体の制御を可能にした。これにより、前後の設備の状態がリアルタイムに把握できるようになり、どの基板がどの機種に流れているのかが一目瞭然になった。
その結果、従来は全ラインが空になってからオペレーターが機種切り替えをしていたのに対して、iLNBによって1台ずつの稼働が終わる度に順次機種の切り替えができるようになった。切り替えにかかる所要時間も20分程度から10分の1の2分で完了するようになるなど、稼働率が大きく向上した。 
設備間で通信を行うことで自律制御を可能にしたことで、実装の良品率を上げることも可能になっている。はんだを印刷、検査、検査結果に従って実装機が電子部品を置くという一連の工程では、はんだの微妙なズレに合わせながら電子部品を装着するような制御が可能だ。

  • 実装フロア管理―Panasonic×IBM協業事例

こうしてラインの管理ができるようになってくると、今度はフロアの管理が可能になる。ここでご紹介したいのは、電子機器の受託製造を行うパートナー企業、フィリピンのIonics(アイオニクス)社の事例だ。
Ionicsは以前から生産性の改善を目指しており、生産性を次のレベルに引き上げるためにパナソニックのスマートファクトリー・ソリューションを採用した。今回、新しい工場を作るにあたって、ゼロからスマートファクトリーづくりに取り組んだ。我々パナソニックが実装機のところからモノづくりを支援し、IoTの基盤づくりはフィリピンIBMがIonicsとともに行っている。 
パナソニックのスマートファクトリー・ソリューションは、遠隔地から接続し、工場の稼働状況の監視や分析することができる。複数社の設備から成るIonicsの工場のラインは、以前は個別に管理せざるを得なかったが、iLNBによってラインの一括制御が可能となり、生産計画が立てやすくなったほか、自動機種切替機能も実現した。電子部品の吸着エラーのような細かいトラブルがあってもリモートで操作し、最短時間で製造ラインを復旧させることが可能だ。同システムはCRM、ERP、受注、生産計画、人事の各システムともつながっている。データの活用方法を最初に決めて、そのためのデータ取りをして、経営に活かしているという非常に良い事例だととらえている。

4. 今後の課題と展望

THINK

設備中心のシステムの話を紹介したが、CyberとPhysicalをつなぐところには人間が必要であり、オペレーターあるいはメンテナンス担当者の負担をいかに軽減していくかが今後のスマート化の重要な要素になるだろう。今後は音声対話ソリューション、スマートグラスを使ったソリューション、骨伝導ヘッドフォン、動線・所在分析をするBeaconの活用、両手を使える状態で問い合わせをしながらの作業、あるいは作業中に発話をテキスト化し、レポートとして活用する、といった方法を導入することも想定。人と設備をうまく融合させながら、スマート化を実現していくことが、これからの我々のテーマだと考えている。
さらには、生産計画を最大限に達成するにはどのような工程の並びがいいのか、どのラインで流すと生産計画どおりに実現できるのか、といったことをシミュレーションしながら開発をしている。構内物流や材料供給は、まだまだ人間の力が必要なところであると考えており、このあたりのソリューションを順次拡大していきたい。

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