IBM Industrial Forum 京都 2017 コグニティブがものづくり企業にもたらすイノベーション ロゴ画像

先の読めない時代にあって、多くのモノづくり企業の経営者が強い意思を持ってイノベーションの創造に取り組んでいる。京都フォーラムでは、人工知能(AI)を活用したコグニティブ・システムを導入したお客様の事例が披露された。従来は不可能だったことが可能になる、目覚ましい取り組みに注目が集まるが、成果を手中にできるか否かは、ビジネスを支えるIT基盤をいかに構築できるかにかかっている。
企業の構造改革とグローバル展開を支え、ビジネスの成果を引き出すためにはどのようなIT基盤が必要なのか―。最終回の今回は、クラウドとAIの活用のポイントについて紹介する。
(当記事は、2017年2月16、17日に行われた「京都フォーラム」の講演内容を編集・構成したものです。)

1. ビジネス変革のためのクラウド

日本IBM 取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長 三澤 智光

クラウドを中心としたインフラ整備の必要性

製造業に限らず、さまざまな分野でAIへの関心が高まっているが、実際に活用するためにはどのような準備が必要なのだろうか。

コグニティブ・ソリューションに用いられるAIのエンジンはデータ量が多ければ多いほど賢くなる、というのはよく知られていることだが、問題になるのが必要となるデータが多種多様であることだ。基幹系システムに格納されている構造化データだけでなく、音声や画像、自然言語といった非構造化データも対象になる。データソースもソーシャルメディアからIoTデバイスなど、急速に広がりつつある。
日本IBM 取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長の三澤智光は「大量に発生するデータを格納してアナリティクスやAIに活用することが求められていますが、対象となるデータは多岐にわたり、世界中から上がってきます。これらにオンプレミスの仕組みで対応するというのは、ほぼ不可能なのではないでしょうか」と話す。そこで期待されるのが、クラウドの活用だ。

クラウドの活用にはもう一つの利点がある。コグニティブのような新しい概念を取り入れたアプリケーションはどこまで広がるかわからない。うまくいけばグローバルで活用することにもなり、うまくいかなければ撤退することもある。「だからこそスモールスタートができて、柔軟に拡張できるクラウド・プラットフォームとAIは相性がいい」と三澤は指摘する。

実際にIBMではクラウド・プラットフォーム上でAIを提供している。そのプラットフォームがIBM Cloudである。現在12種類もの様々なマシンラーニングとディープラーニングのエンジンが公開され、「どれも実績があるものばかり」(三澤)であることが特徴だ。実績のあるアプリケーションをすぐに利用できる環境がIBM Cloudなのである。
しかも、IBM Cloudで開発したコグニティブなアプリケーションは、いつでもオンプレミスに移行することが可能だ。三澤は「IBMのクラウド・プラットフォーム、IaaS、PaaS、IBM Cloudと呼ばれるクラウド・プラットフォームは、オープンスタンダードとオープンソースですべて作り上げました。これが基本的なコンセプトになっています」と語る。

オープンソースとオープンスタンダードのテクノロジーで作られることでどんなメリットが生じるのか。三澤は「オンプレミスとの互換性が取りやすく、ハイブリッドな仕組みが作りやすいだけでなく、クラウド間での互換性も確保しやすくなります」とそのメリットを強調する。クラウドの課題として指摘される“ベンダーロックイン”を回避することができる。

既存のアプリケーションをクラウドに移行するために

クラウド活用を検討する際にしばしば懸念材料として挙げられるのが、既存のオンプレミスのアプリケーションをクラウドに移行できるのかという点だ。移行できると聞いていたのに、いざ既存の仕組みをクラウドに移行してみると、トラブルが発生したり、コストがかかったりするというケースも多い。その理由について三澤は「既存のアプリケーションがクラウド・ネイティブなデザインではない」ことを指摘する。
「既存の基幹系のアプリケーションは、完成後はあまり変更することはありません。それよりも、24時間365日安定して動かすことが求められます。そのために、サーバーの管理や監視、バックアップなどの非機能要件はインフラ側に組み込まれています。パブリッククラウドに移行するとその部分をクラウド側に実装する必要が生じて、アプリケーションを作り直さなければならなくなります。それがトラブルやコストアップに結び付いてしまうのです」(三澤)。

三澤

しかし、IBMクラウドでは、ベアメタルというIaaSの選択肢が用意されている。このベアメタルにOSやミドルウェアをインストールすることで、元々の非機能要件をそのまま利用することができる。例えば、VMwareで仮想化してプライベートクラウドを構築している場合に、IBMクラウドであればそのまま移行することができる。これは既存の仕組みをクラウド化する際の重要な留意点になるだろう。

「現在、お客様のところでは、すべての業務システムがクラウド上で動いているわけではないと思います。だからこそオンプレミスとクラウドをうまくデザインしていくことが求められます。それに対応できるのがIBMクラウドなのです」(三澤)

2.コグニティブを支えるITインフラストラクチャー

日本IBM 専務執行役員 GTS事業本部 インフラストラクチャーサービス統括 金子 岳人

ハイブリッド・クラウドの実現に向けたサービス・フレームワーク

AIに代表されるコグニティブ・コンピューティングは、いよいよ実験段階から実証段階へと移りつつある。
企業の内外にゼタバイトのデータが飛び交う中、コグニティブをどう実装できるかが競争優位を左右する時代になる。
しかも、データのほとんどは企業の外にある画像や音声、映像などの非構造化データであるため、企業内にあるデータを組み合わせて、効果的にビジネスを展開することが求められる。

当然ながらデータ量の増大に伴いシステムも増幅している。より迅速かつ効率的にシステムの構築・運用を行うためには自動化技術の活用が欠かせない。また、提供形態が多様化するクラウド・サービスを様々な形でつないで活用する、ハイブリッド・クラウド環境の構築が不可欠な要素となる。

こうした中でIBMは、コグニティブ・ソリューションの提供と、クラウド・プラットフォームに特に注力している。
IBMクラウドの特徴としては、様々なサービスやIBM Watson、IoTなど先進のテクノロジーと、インフラやデータを最適な形で組み合わせることができること、オープン・スタンダードなテクノロジーを活用したプラットフォームであること、オンプレミスからパブリッククラウドにスムーズに移行できるツールを有していること、そして、50のクラウドデータセンターを世界各地に配置し、高速でセキュアなネットワークで繋いだグローバル企業向けのクラウドであることが挙げられる。

金子 岳人 写真

サービスの提供方法も、ITの成果を達成するための”システム・インテグレーター”から、ビジネスの成果を引き出す”サービス・インテグレーター”へのシフトを進めている。日本IBMの専務執行役員で、GTS事業本部インフラストラクチャーサービス統括担当の金子岳人は「今までシステム・コンポーネントや複数のシステムをインテグレートする”システム・インテグレーター”としてお客様を支援してきましたが、今後は、クラウド、デリバリー・モデル、モジュール、ソリューション等の多様化に合わせて、システムではなくサービスという観点からインテグレーションを行う”サービス・インテグレーター”として、市場に価値を発揮したいと考えています」と話す。

具体的には、統一されたアーキテクチャーのもとに様々なコンポーネントやクラウド・サービスを統合し、それらを選択、追加、変更できるようにすることで、スムーズかつオンデマンドなサービス提供を可能にし、コグニティブ環境に迅速かつ柔軟に対応できる基盤を整える。

ハイブリッド・クラウド環境を実現するエンタープライズITのサービス・フレームワーク 概要図縮小

このアーキテクチャーでポイントとなる点は3つある。1つは、アセットやツールを活用してIT構築、運用、アプリケーションにかかわる自動化を行う”オートメーション(自動化)”、2つめは、ITサービスの内容や対象、価格などをあらかじめ定義し、複数種類を用意して業務部門に選択可能にする”モジュール型サービス”、そして3つめに、ITサービス、特にクラウドに関する計画や調達、管理などの一連の業務をモデル化して浸透させる”ブローカー・サービス”である。モジュール型サービスを、業務部門が消費しやすい形で提供することにより、スピードとアジリティー改善、コスト低減を同時に可能にするのだ。

金子は「クラウド、およびハイブリッド・クラウドに関するお客様の課題解決とビジネス変革をご支援します」と結んだ。

3.データ活用実現のための3つの成功要因

日本IBM 理事 GBS事業本部 コグニティブ推進 鈴木 至

「戦略」「人財:分析力」「データ」を軸にプロジェクトを推進

ビジネスを支える基盤としてのクラウドの価値は前述のとおりだが、さらにコグニティブを導入し、ビジネスに成果をもたらそうという動きが活発化している。

日本IBM理事で、GBS事業本部コグニティブ推進担当の鈴木至は、「コグニティブ・システムの目的は、ビッグデータの中から知見、知恵、知識を見いだし、それを業務に活かすことであり、そのためのテクノロジーがWatsonなのです」と話す。

そして、お客様がデータ活用を実現させるための成功要因として、「戦略」、「人材・分析力」、「データ」の3つを挙げる。「人工知能さえあれば、何かできるのではないか」と考えられがちだが、それだけでは本当に価値のある知見は得られない。やはりデータの整備が不可欠だ。

鈴木 至 写真

データを考える手順としては、まずどんなシーンでどのように使うのかの検討を行う。次に、対象となるデータができたら、その適合性や用途等について分析・活用するための能力を会社の中で育てなければならない。加えて、ツールやWatsonのようなテクノロジーを使うにあたり、何が正解なのか、どれを正解にするのかを見極めていくところは人材にかかってくる。そして、いかにビジネス施策を立て、効果を生むか―。

データ活用実現の成功要因 3つのケーパビリティーの向上:戦略・人材・データ 概要図縮小
講演の模様 写真

「AIを自動化ツールとして使うこともできるが、どういうノウハウを集めたら最も効果が上がるのかといったところは、活用現場におけるアイデアやユースケースを出していくための戦略が重要になります」と鈴木は説明する。

IBMは、「戦略」「人材:分析力」「データ」の3つを軸に、実際の計画や実装、進め方のアドバイスなど、多くのお客様でプロジェクトを支援している。鈴木は、「お客様が取り組まれる領域に対して、どこがキー・サクセス・ファクターなのかを一緒に見極めながら、具体的な計画、実装に結び付けられたらと願っています」と結んだ。

結び

今回の「IBM Industrial Forum京都2017」で発表された事例の多くには、IBMクラウドとコグニティブ・ソリューションが活用されています。今、世界中の製造業は、「経営のデジタル変革」に直面しており、この変化に対応し、さらなる成長の機会をとらえていくためには、IBMクラウドとコグニティブ・ソリューションがお役にたてることと思います。

記事の中で紹介されていたIBMの取り組みに関する情報はこちらもご参照ください。

Industrial Forum 京都 Digital

Industrial Forum 京都で発信された製造業の経営革新情報をまとめたポータルサイトです。

強い日本の生産現場力を、更に強化するCognitive Manufacturing戦略

AI+IoTを活用したスマートファクトリーで、QCDを劇的に向上させ匠の技術継承を実現する。

デジタル革命に勝利する「AI+IoT モノづくり戦略」

IBM Watsonで新しい顧客価値を創出し、AI & IoT時代の新しい製品開発プロセスを構築する