スバル~富士重工業株式会社様は、運転支援システム「アイサイト」で多くのファンを獲得、「安全と言えばスバル」というブランディングを向上させることに成功しています。さらに「自動車事故をゼロにする」という“究極の目標”の達成に向けてのアクションを始動、その一環として今年4月にIBMとの協業により実験走行時にアイサイトで取得した映像データの解析をスタートしました。 
スバルが考える「安全」、そしてそれを実現するための開発論と今後の開発の展望を、「アイサイトの生みの親」スバル第一技術本部車両研究実験第四部部長、樋渡穣様にお伺いしました。


「ぶつからないクルマ?」の誕生

――スバルの安全技術の伝統に関してお聞かせください。

スバルの企業としての源流は、中島飛行機という航空機メーカーに端を発しています。飛行機は小さな事故が人命を奪いますから、高い安全技術の開発が求められます。戦後、飛行機を開発していたエンジニアが中心となってスバルの自動車開発を進めましたから、日本の他の自動車メーカーに先駆けて自動車の安全技術の開発を進め、常に日本の自動車業界における先進安全技術をリードしてきました。アイサイトの開発はこうしたスバルの自動車開発の伝統の中から生まれたイノベーションです。

(写真) 撮影:風間仁一郎

――樋渡様は、27年前にアイサイトを企画して世の中に送り出した生みの親です。国内での搭載車数は累計で40万台を超えるヒットを生みました。

アイサイトはステレオカメラを用いて人やモノ、道路を認識して運転を支援する、スバルにしかない独自システムです。「自動車事故をゼロにする」という私たちの目標を実現するためのキーテクノロジーが詰まっています。

スバルの運転支援システムの歴史をまとめた図です。評判のアイ・サイトは1989年からその開発は着手されています。

私は、1989年に原理が確立したのち、1999年に発表した世界初のステレオカメラによる運転支援システムADA(Active Driving Assist)の開発から携わっているのですが、最初は、高額だったことと、そもそも強いニーズがなかったので、まったく売れずにとても苦労しました。今思えば、時代を先取りしすぎてしまっていたのかもしれません。

ですが、あきらめずに地道に精度を高め、アイサイト ver.2を出した2010年に「ぶつからないクルマ?」という宣伝文句でニーズの掘り起こしに成功。おかげさまでアイサイトは、2008年からの累計で40万台を国内で出荷しました。

今ではスバルの全車種のうち約90%にアイサイトを搭載することが可能で、汎用的なオプション製品になりました。スバルを代表するオリジナルシステムに成長したと自負しています。正直に言って、ここまでヒットするとは思いませんでしたので、私自身もこの状況に少々驚いています。


スバルの独自技術の世界展開をIBMと加速

――他社も運転を支援するシステムを開発していますが、アイサイトは何が違うのですか。

独自開発の2つのカメラを内蔵したステレオカメラを用いて、走行時の画像データを分析し、車両制御に用いていることです。他社はレーダーや単眼カメラを用いて人やモノを認識しているのですが、ステレオカメラで撮影した映像のほうが精度が高い。

私たちはこのステレオカメラの優位性を開発当初から信じて採用し続け、高所得者だけでなく、たくさんの人に利用してもらえるように、価格を抑えて量産化することに成功したのです。

安全に貢献した実績の一例を挙げると、平成23年〜26年のデータですが、アイサイト搭載車は非搭載車に比べて61%事故発生率が軽減されており、追突だけでみれば83%減少しています。他社の話はここでは避けますが、私たちのような精度の高さを証明できているカーメーカーはほかにはいません。

――今回、実験走行時にアイサイトで取得した映像データの解析を、IBMのシステムで行うことを決めました。

私たちは、とにかく認識精度を高めることに集中しています。そのために世界中で走行実験を行い、累計で200万キロ以上のデータを保存しています。アイサイトはver.3で取得映像データをカラー化し、実験する国も増やしています。年々扱うデータは増えており、それを効率的に管理する方法が必要になっていました。

お恥ずかしい話ですが、取得したデータはハードディスクに入っている状態で山積み、体系立てて管理されていない状態でした。ハードディスクの管理自体もしっかりされていたかと言われれば、自信をもって答えられる状況では決してなかったのです。

実験の精度を上げ研究開発スピードも上げていくためには、データの統合管理システムは必須だと思い、日本IBMに協力をお願いしたのです。

(写真) 撮影:風間仁一郎

――今回の協業を皮切りに、将来的には「Watson」を含むIBMのコグニティブ技術の採用など協業範囲を広げることを検討しています。Watsonが自動運転にもたらす効果をどのようにみていますか。

人工知能とクラウドの組み合わせに興味を持っています。走行データをリアルタイムで収集しネットワークを通じてクラウドに格納。そのデータを人工知能が解析して、ドライバーに情報として戻す。こうしたIoTの仕組みをつくりたい。

この仕組みをつくることができれば、たとえば、過去に事故が発生していた交差点に3分後に着くとする。その事象をドライバーに知らせて注意を促したり、経路変更を提案したりといったことも可能になるはずです。

止まっている状態であれば、容易かもしれませんが、走っている中でそれを連続的に行うにはビッグデータとクラウド、そして人工知能が必要になってくるでしょう。私たちの目標である自動車事故をゼロにするという目標達成に貢献してくれるテクノロジーがあると思っています。

スバルの人工知能への取り組みをまとめた図です。アイ・サイトは車の事故を見極めるシステムですが、人工知能を搭載することにより、より事故が少ない自動車へのレベルアップさせることができるでしょう。

――今後はどのように進化していくのでしょうか。

アイサイトは今、現行のver.3から次世代ステレオカメラ実現のための研究開発を進めています。人やモノの認識技術の精度をさらに高めるのがテーマで、たとえば、死角からいきなり飛び込んできた自転車を瞬時に認識して自動でブレーキを踏むといった、突破的な状況に対応できるようにします。

その先にあるのは「自動運転の実現」。2020年までに達成するという目標を掲げています。スバルは人間中心の開発思想にもとづき、人が運転するのと同等、もしくはそれ以上に安全なクルマを、IBMとともに実装し、日本から世界へ発信していきます。

※この記事は、NewsPicks Brand Designが制作した 「『技術のスバル』が未来の車でIBMをパートナーにした理由」 https://newspicks.com/news/1634437/body/ (IBM外のWebサイトへ) を、IBMが再編集したものです。

(写真) 撮影:風間仁一郎

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