コグニティブとIoTが生み出す“モノづくりの新しい価値”とは

コグニティブIoTをイメージする画像

IoTがもたらす世界は、世の中を大きく変えようとしている。IoT家電が普及することで、家電が進化するだけでなく、家という空間が最適化される。IoTにつながれた医療機器は、患者の様子を24時間見守るだけでなく、これまで見えなかった変化や予兆を明らかにしてくれる。製造工場自体もIoT化で進化する。インダストリー4.0が目指す世界がそれだ。

こうしたIoTソリューションのメリットを最大限引き出す技術として注目されているのが、コグニティブ・コンピューティングである。自ら考え、学習し、答えを出すコグニティブ・コンピューティングと、リアルタイムにデータを収集するIoTを組み合わせることで、膨大なデータの中から、リアルタイムに知見を見出すことができる。

この「コグニティブIoT」と相性が良いのが、自動車の世界である。ここではコグニティブIoTが自動車の世界にもたらす価値を通して、コグニティブIoTの持つ可能性について考えてみたい。

コグニティブIoTが“つながるクルマ”を生み出した

Cognitive IoTとつながるクルマを表す画像

 

自動車は以前から“走るコンピューター”と言われてきた。
搭載されている部品はITで制御され、カーナビゲーションも進化している。
ETCが普及し、高度道路交通システム(ITS)が全国をカバーし、渋滞の解消などに役立っている。
IoTの先端を走っているように思える。

しかし、コグニティブIoTの出現で、自動車はさらなる進化の時代を迎えた。これが 私たちの言う“つながるクルマ”であり、“クルマのインテリジェント化”である。コグニティブIoTは、コグニティブ・コンピューティングによってさまざまなことを学習しながら進化するIoTである。また、コグニティブ・コンピューティングでは、これまでの計測可能だった数値データでけでなく、文章のテキスト情報や、画像、音声までも分析の対象にすることができるようになった。自動車は、走りながらにして膨大なデータを解析して得られるInsightを生み出し、それを自動車自身の機能拡充だけでなく、これまでなかったような新しいビジネス・モデルを構築することができるようになっている。

さらにクラウドというIoTを通して結ばれたプラットフォームの存在がコグニティブIoTの価値を高める。
個々の自動車で発見された気付きをクラウドに預けて集約する。クラウドには他のデータソースからの情報もさまざまな情報が蓄積される。コグニティブIoTでは、この膨大なデータから学習し、さらにそこから新たな気付きを得ることができるのである。

コグニティブIoTは新しいビジネス領域を生み出す

自動車の画像

コグニティブIoTがもたらす、“つながるクルマ”は新しいビジネスチャンスを生み出す。それがコグニティブ・ビジネスの世界だ。自動車産業の場合、その鍵となるのは、移動時間の収益化である。
今まで自動車による移動時間は運転以外に使うことができなかった。しかし、自動運転が現実になれば、ハンドルから手が離れることになる。ドライバーにとっては自由な時間がそこにある。この時間を何にどう使うのか。そこに新たなビジネスモデルが生まれる。

その嚆矢となるサービスがすでに始まっている。2016年10月ラスベガスで開催された「IBM World of Watson 2016」で発表され、大きな注目を集めた、ゼネラル・モーターズ(以下、GM)が展開するテレマティクスサービス「OnStar」である。

1996年にスタートしたこのOnStarは、2016年さらなる進化を発表した。IBM Watsonを搭載した新しいサービス「OnStar Go」の提供である。OnStarのサービス基盤がインターネットに接続され、そこにIBM Watsonのコグニティブ機能が加わることで、より個人に寄り添ったサービスが提供されることになる。操作はダッシュボードに装備されたタッチスクリーンによって行い、直感的に操作できる。

こうした運転に付加価値をもたらすこの基盤が、外とつながるための基盤にもなる。ガソリンスタンド、駐車場、レストラン、ホテルと自動車がIoTでつながったとする。そうすると自動車を運転しながら、今晩宿泊するホテルを探し、予約を入れる。そこではIBM Watsonが過去の予約から好みに合ったホテル探しをサポートすることができる。

こうした自動車以外とのサービスの連携は、自動車メーカーのサービスモデルを変える。自動車を作って売るという製造販売モデルから、自動車を軸にしたサービス提供モデルへの変換である。このように、コグニティブIoTの新しいビジネスモデルは、新しいビジネス領域を生み出していくきっかけになるものと予想される。

コグニティブが何を変えるのかを考えるIBM Cloud Garage

今後のコグニティブ・ビジネスの創造で重要になるのは、こうした変化を先取りしてオープンイノベーションに取り組むことだ。仮説検証を繰り返してPDCAサイクルを回し、成功したものがサービスとして世の中に広がっていく。IBMではこの取り組みを支援するサービスを提供している。それが「IBM Cloud Garage」である。
IBM Cloud Garageでは、IBMが提供する開発フレームワークであるIBM Cloudを使って、市場のニーズに応える革新的なアプリケーションを設計し、実証し、開発する。そこではIBMのコンサルティングとすぐに利用できる130を超えるIBM Cloudサービスが提供され、ユーザーと一緒にIBM Cloudを使いながら、短期間で新しいアプリケーションを開発していく。

夜間の道路に自動車のヘッドライドが流れる画像

全体の流れとしては、アイデアを視覚化して整理し、アプロケーションフローに落とし込み、IBM Cloud上でテスト開発と検証を行い、さらに既存システムと接続して、そのまま本番環境へと展開する。テスト開発と検証までが約6週間。全体では約13週間を見込む。アプリケーションフローに落とし込むまでのプロセスでは、IBMの独自の開発手法である「IBM Design Thinking」が使われる。
2016年の後半には、このIBM Cloud Garageを使った、新しいビジネス領域を考えるイベント「BlueHub」が開催された。9月16日に始まり約3カ月で本当のビジネスを作ろうという仮説検証の試みだ。自動車の大手メーカーとスタートアップ企業が集まり、業種を超えたコラボレーションを横並びで検討してきた。12月7日には一応のとりまとめを終了し、次のステップへと向かっている。

こうしたIBM Cloud Garageは自動車業界、金融業界、保険業界、小売業界、エレクトロニクス業界、医療業界などで行われ、高い成果を上げている。“協調”と“共創”をキーワードとして、各業界でのオープンイノベーションが加速している。是非、ご活用いただきたい。

江崎 智行の写真

著者・インダストリー・エキスパート

日本アイ・ビー・エム株式会社
インダストリー・ソリューション事業開発
Connected Vehicle&IoT担当

江崎 智行

1985年日本IBM大和研究所に入社後、製造・装置産業を中心としたエンジニアリング領域のソリューション・ビジネスに幅広く参画。製品企画・開発、経営企画、ニューヨーク勤務を経て、2004年から自動車産業担当のソリューション部長、営業部長、ビジネス開発担当を歴任。2009年からはIBM Automotive ビジネス開発推進担当として、自動車業界に対するグローバルIBMのノウハウを結集し、新しいビジネス・モデルの提案によるお客様への価値提供に従事。

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