Business Challenge story

各業務部門やプロジェクト単位の事業計画策定が求められた

携帯電話と非接触ICカード技術「FeliCa」を融合させた「モバイルFeliCa」。一般に「おサイフケータイ」として知られている同プラットフォームは、さまざまな携帯アプリをダウンロードすることで、携帯電話を交通乗車券や電子マネー、クレジット・カード、キャッシュ・カード、ポイントカード、映画のチケット、マンションの鍵などとして利用できるようにしてきました。

そして、この「モバイルFeliCa」のさらなる普及と高度化を担う推進役として、マーケットの最前線に立っているのが、ソニー株式会社と株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモなどの出資により2004年に設立されたフェリカネットワークスです。

同社管理部の課長を務める斉藤孝幸氏は、「モバイルFeliCa」のビジネスを次のように話します。「『モバイルFeliCa』が提供するのは、これまで“貨幣の投入”、“ボタンを押す”、“サインをする”など、人間の行為を起点としていたさまざまなサービスを、携帯電話を“かざす”だけで受けることができる便利な世界です。おかげさまで、国内の携帯電話機市場における『モバイルFeliCa』の累計出荷数は、1億7,000万個(2011年3月末)を超えるまでになりました。対応するサービスも、ますます拡大しています。引き続き今後も、同サービスが一つの社会基盤となるように普及と拡大に努力し、日常生活の中に新しい利便性を生み出していくことで、新しいライフスタイルの創出を目指します」

こうしたビジョンのもとで同社は、(1)「モバイルFeliCa」ICチップを中心とするデバイスやOSの開発・製造・販売に関するライセンス事業を展開。その後、(2)「モバイルFeliCa」を用いたサービスを展開する事業者向けのプラットフォームの運営事業、(3)情報処理サービス、情報提供サービスおよび広告業へと事業領域を拡大してきました。

ただ、手がけるビジネスの多様化は、一方で事業計画策定や予実管理をはじめとする計数管理やデータ分析の作業を、次第に困難にしていきます。

「従来のようなMicrosoft Excelを使った集計のみでは、対応できなくなってきました」と語るのは、同社管理部のマネジャーを務める植村浩太郎氏です。

「当初は、全社単一のものさしで売上や経費を把握すればよかったのですが、事業が多様化していく中で、各業務部門やプロジェクトごとにしっかりした損益計算を行う必要性が高まってきました。例えば、ICチップ開発のために投入されるコストと、営業部門や 管理部門で発生する経費では、まったく違った会計・経理処理を行う必要があります。一方では、経営の意思決定のベースとなる全社視点で損益を集計した帳票類もこれまでどおり作成しなければなりません。結果、スプレッドシートの数がどんどん膨らんでいき、バージョン管理の手間も煩雑化していったのです」

この課題を解決するため2010年4月、同社は新たな経営管理システムの導入に向けた検討を開始しました。

Transformation

PDCAサイクルをサポートするIBM Cognosを基盤に採用

同社は当初、パッケージアプリケーションに照準を合わせ、事業計画策定や予実管理を支援するソリューションの導入を検討していました。しかし、同社の要求を満たす製品にはなかなか出会えませんでした。

「パッケージアプリケーションの多くは、期初に策定した計画に対して、期中に見直しをかけ、業績見込みに反映するのが困難だったのです」と植村氏は振り返ります。

そこで同社は、いわゆるBI(Business Intelligence)ツールにまで枠を広げ、ソリューション選定にあたりました。そして、Webを中心とした情報収集やさまざまなベンダーへのヒアリングを重ねた結果、同社の目にとまったのがIBM Cognosでした。

IBM Cognosは、財務情報を用いたビジネス分析や計画値の最適化、シミュレーションが簡単かつ素早く実行できるオンデマンド分析ソリューションです。インメモリーで稼動するOLAPデータベースを持ち、リアルタイムの読み込み/書き込み、複雑な計算ロジックなどビジネス・ルールの一元管理、モデルの変更の即時反映、大量データの高速なレスポンス、対話型のWhat-if分析やシナリオ分析などを実施できるのが特長です。

「『モバイルFeliCa』のような新しいビジネス・モデルにおいて、最初に策定した計画どおりに物事が進んでいくとは限りません。むしろ、その時々の経済環境や市場トレンドといった外部要因、サービスを提供するお客様の意向などをくみ取りつつ、常に計画を見直しながら変化に対応していくことが、ビジネスの重要なポイントとなります。計画を立て、予算を割り振り、実績とのギャップを分析し、その結果を新しい業績見込みに反映させていきます。このようなPDCAサイクルを実践していく上で、IBM Cognosであれば柔軟に対応できると考えました」と斉藤氏は話します。

こうして同社は、2010年7月にIBM Cognosの導入を決定。日本IBMより紹介されたSIベンダーの日本ラッド株式会社の協力を得ながら、経営管理システムの構築に着手しました。

もっとも、2011年度の計画策定に間に合わせるには、遅くとも2010年11月の初旬までに、すべての構築作業ならびにユーザーへの導入を終えておく必要がありました。残された期間は、実質3カ月ほどしかありません。

今回の経営管理システム構築において最大の難関だったのは、IBM Cognosをベースとしたコア部分と経理システムをつなぐインターフェース部分です。

各業務部門やプロジェクトといった単位で事業計画策定や予実管理を行うためには、そこで発生する売上や経費を各プロジェクト、ビジネス・カテゴリーに分計できるように経理システムに計上しなくてはなりません。しかし、同社はこれまで全社的な視点のみで集計や損益計算を行っていたため、経理システムが個別のビジネス・カテゴリーやプロジェクトの枠組みに対応していなかったのです。「プロジェクトコードをどう設定するのか、開発や営業、管理など各部門ごとの費用をビジネス・カテゴリーにどのように配賦するのかなど、データ入力や集計を行う際の前提となる細かなルールや仕様をゼロから作り込んでいく必要がありました。この問題を解決し、予定どおりにシステムをサービスインできたのは、日本ラッドの親身なサポートと的確なアドバイスによる貢献にほかならず、とても感謝しています」と植村氏は話します。

Benefits

経営判断のための重要資料の作成リードタイムを大幅短縮

2010年11月末に運用を開始した経営管理システムは、現在、管理職クラスの約30名によって利用されています。その実務を通して、あらためて気づいたIBM Cognosの導入メリットとして同社が評価するのが、Excelとの親和性の高さです。

「多くのユーザーが慣れ親しんだExcelの計画入力フォームを、ほとんどそのままのイメージで経営管理システムに流用することができました。こうした使い勝手の良さを含め、IBM Cognosの導入におけるハードルは非常に低く、ユーザーに違和感を持たせることなく移行することができました。実際に一部のパワー・ユーザーは、経営管理システム上で自発的にデータの加工や帳票作成を行っています」と植村氏は話します。

こうした積極的な活用を促すことで、経営管理システムは最大の目的である事業計画策定や予実管理でも大きな成果をもたらしています。

まず、これまで困難だったプロジェクトごと、ビジネス・カテゴリー別の集計や損益計算を行えるようになったことで、より緻密な事業計画策定や予実管理が可能となりました。

加えて同社が強調するのが、事業計画を審議する会議において重要資料となる帳票類の、作成リードタイムの飛躍的な短縮です。「同会議に際して私たち管理部では、各業務部門から寄せられてくる計画値を積み上げ、全社的なPL(損益計算書)などにまとめて提出します。IBM Cognosの導入によってデータ集計に要する作業負荷が軽減され、従来は1週間半ほどかかっていた集計と資料準備が3~4日間で完了し、各業務部門に対してこの集計結果を、会議に先立ってフィードバックすることが可能となったのです。各業務部門は、全社的なPLからあらためて自分たちの事業計画のあり方を見直し、修正を施した上で正式な事業計画を提出します。こうして、従来よりも格段に練り込まれた資料を会議で提示できるようになりました」と斉藤氏。

さらに、植村氏がこのように言葉を続けます。

「予実管理についても同様です。期初に策定した事業計画どおりに各プロジェクトが進捗しているのか、あるいはコストや工数に業績見込み値とのずれが生じていないかなど、より詳細な状況をリアルタイムに近い形で把握できるようになりました。これを受けてプロジェクトの責任者は、それぞれ担当するビジネスのオーナーシップを高めています。また、経営層からのさまざまな分析依頼にも容易に対応することが可能となり、迅速な意思決定をサポートできるようになりました。」

将来の展望

現場レベルにおける情報活用をさらに活性化

管理部ではプログラミングなどを行わずに規則式を修正できるというIBM Cognosの特長を生かして、IT部門にサポートを依頼することなく、独自に予算計画モデルの修正や保守を行い、ビジネス環境の変化に迅速に対応しています。

IBM Cognosが持つ各種機能を今より一歩踏み込んだレベルで使いこなしていくことで、さらに洗練された予測型の経営管理を実現していくというのが同社の考えです。

そうした中で、すでにさまざまなチャレンジが始まっています。その1つが、キューブビューア機能の活用です。

「予算入力は基本的にExcelクライアントから行っているのですが、毎月行う業績見込みの修正プロセスに関しては、キューブビューアによる運用を開始しました。これにより、多岐にわたる実績値と見込み値を同じ表の中で、切り口を自在に切り替えながら対比させて閲覧することが可能となりました。また、修正を施した見込み値を即座に集計結果に反映することができます。こうしたキューブビューアならではの特長を生かしていくことで、多角的な視点に基づいた、現場レベルでのデータ活用のノウハウを高めていければと考えています」と植村氏は今後を見据えています。

さらに、この取り組みを後押ししていくため、同社はサンドボックス機能の導入も検討しています。これは簡単に言えば、さまざまな経営管理のための数値を自分のワークスペースに取り込み、試行錯誤を可能とする機能です。

「経営管理システムの本番環境に影響を与えない形で、各プロジェクトの責任者が自ら経営分析や財務分析を行えるようにすることで、より戦略的で密度の高い事業計画策定や予算編成を促していければと思います」と斉藤氏は話します。

例えば、「おサイフケータイ」を使ってクーポンを提供するといっても、家電量販店とファーストフードのように業界が違えば、そのサービスの狙いや内容はまったく違ったものになります。また、ICチップのライセンス事業では年単位の長期的なスパンで投資計画 を策定しますが、リアル送客アフィリエイトサービス(フェリカネットワークスが提携する大手モバイルサイトに企業が店舗の広告を掲載し、その広告を閲覧した携帯電話ユーザーの来店・購買数に応じた成果報酬がフェリカネットワークスに支払われるサービス)では先週の実績をもとに来週実施する施策を今日中に策定しなければならないといったことも日常茶飯事に起こります。

こうした多様性こそが、同社のビジネスにおける最も難しいポイントです。そして、その課題を乗り越えていくため、各業務部門やプロジェクトにおける現場レベルでの情報活用力を高めていくことが重要なテーマとなっています。

IBM Cognosを基盤に構築した経営管理システムにより、同社はそうした新たな飛躍のための足場を固めました。

お客様情報

ソニー株式会社(約57%)、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(約38%)の出資により2004年1月7日に設立、2004年6月3日に東日本旅客鉄道株式会社(約5%)が資本参加。ソニーによって開発された非接触IC技術「FeliCa」と携帯電話を融合させることによって広がる便利で楽しい世界の提供を目指している。現在、おサイフケータイ機能対応サービスは、電子マネー、交通乗車券、会員証、ポイントサービス、映画のチケット、住宅の鍵など、さまざまな用途に拡大している。同社では、ICカード技術の進化を支える開発を強化するとともに、サービス・プロバイダーが魅力的なサービスを展開できるよう、最適な環境づくりにも注力している。

パートナー情報

1971年の創業時からシステム受託開発事業を中心に事業展開しているシス テム・インテグレーター。2010年末から商用開始した新型データセンターを 活用したクラウド事業の拡大を図るとともに、プロダクト販売、組み込み系 システム開発、ビジネス・ソリューション提供などの事業でも業績拡大を 目指している。

テクノロジープラットフォーム

IBM ビジネス・アナリティクスについて

IBM のビジネス・アナリティクス・ソフトウェアは、業績改善に取り組む意思決定者に対し、実践的な洞察を提供します。IBMは、ビジネス・インテリジェンス、予測分析と高度な分析、財務パフォーマンスと戦略の管理、ガバナンス、リスクおよびコンプライアンス(GRC)、そしてアナリティック・アプリケーションからなる包括的なポートフォリオを用意しています。

IBMソフトウェアは、ビジネスの傾向やパターンあるいは異常の発見、仮説に基づくシナリオの比較、潜在的な脅威や機会の予測、重要なビジネス・リスクの特定および管理、さらには経営資源に関する計画、予算および予測を実現します。IBMの世界中のお客様は、この充実したアナリティクスを使うことで、業績への理解を深める一方、成果への予測を高め、目標への確かな道筋をつけることができます。

ソフトウェア

Solution Category

  • IBM Hybrid Cloud