Business Challenge story

早期のサービス開始によってデファクトスタンダードとなることを目指す

国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)は、海上における人命の安全のための国際条約(The International Convention for the Safety of Life at Sea: 以下、SOLAS条約)を改正し、船舶の基本構造図、詳細構造図、強度計算書といった図書をShip Construction File(以下、SCF)として船上に保管することを採択しました。また、同時にSCFに含めるべき情報に関するガイドラインも承認しました。これによって、2016年7月以降に建造契約を結ぶ船舶や2020年7月以降に引き渡される船舶のうち、長さ150メートル以上のタンカーやばら積み貨物船では、SCFに含まれる情報を船上に保管しなければならなくなります。ただし、船体線図や強度計算書などの高度な知的財産である情報は、陸上のアーカイブセンターでの保管が許されています。

ClassNKは、世界の船級協会に先駆けてSCFアーカイブセンターを設立することを2011年5月に発表しました。SCFアーカイブセンター設立のプロジェクトマネージャを務めるClassNK 業務執行委員 船体部長 研究開発推進室 木戸川充彦氏は、「改正されたSOLAS条約が発効されるまで、まだしばらく時間があります。しかし、私たちは、セキュリティーがしっかりしているSCFアーカイブセンターの設立をいち早く宣言し、できるかぎり早くサービスを開始してデファクトスタンダードになることを目指しています」と、早期にSCFアーカイブセンターを設立する理由を話します。

ClassNKは、「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約」(通称、シップリサイクル条約)に対するソリューションでの実績も考慮して、SCFアーカイブセンター設立のためのパートナーとしてIBMを選びました。「船舶のライフサイクルは25~30年です。したがって、アーカイブセンターでも、SCFの情報を30年間保管しておかなければなりません。このため、私たちが選ぶパートナーにも、30年後まで存在していてもらわないと困ります。また、SCFアーカイブセンターは、造船所、船主、機器メーカーなど、知的財産権を持つさまざまの方々に国際的に均一なサービスを提供する必要があります。さらに、セキュリティーがしっかりしていて、年間を通して常に稼働するシステムでなければなりません。このような点からIBMをパートナーとして選び、SCFアーカイブセンターをクラウドサービスとして提供することにしました」と話す木戸川氏は、さらに次のように続けます。「IBMと組んでアーカイブセンターを設立すると発表したことに対して、多くの関係者から高い期待の声が上がっています。日本国内だけでなく海外からの期待も大きいです」。

Transformation

最適なコストで習得しやすいIBM Blueworks Liveを使って検討を開始

しかし、実際にSCFアーカイブセンターで行われる業務のプロセスは、以前から存在するものではなく、新たに検討して決めなければならないものです。このため、どのように業務を進めていき、そこにどのようにシステムを位置づけていくかを一から考えていく必要がありました。さらに、ClassNKは、SCFアーカイブセンターのサービス開始を2013年初頭と決めたため、要件定義のために費やせる時間はそれほど長くありませんでした。

従来、業務プロセス改善などの案件では、表計算ソフトウェアを使って個々の業務内容を示す一覧表が作成され、それを基に業務フローを表す絵が描かれ、関係者による確認や検討が繰り返されます。しかし、このような方法では、業務内容をまとめたり、それを元に絵を描いたりといった作業に多くの時間が費やされてしまい、関係者による確認や検討を終えるまでに長い時間がかかってしまいます。そこで、ClassNKとIBMは、SaaS(Software as a Service)アプリケーションとして提供され、プロセス可視化とプロセスに関する情報整理の機能を特長とするIBM Blueworks Liveを使って、SCFアーカイブセンターの業務プロセスを検討することにしました。この製品を利用することで、従来の方法に比べて作業時間を約3分の1に短縮できます。

IBM Blueworks Liveが選ばれた理由は2つです。1つは、IBM Blueworks Liveが廉価であり、利用開始のための投資がほとんど必要なかったことです。もう1つの選択理由は、習得時間が数時間程度と非常に短く、すぐにSCFアーカイブセンターの業務プロセス検討を開始できたためです。この2つの理由からClassNKとIBMは、IBM Blueworks Liveを利用することにしました。

Benefits

変化する要件も柔軟に処理し、短期間で合意

IBM Blueworks Liveを使うことで、新規登録、審査、承認、照会、開示といった業務プロセスのフローを表す絵をセッション中にその場で描き、関係者で討議して、出された意見をすぐに反映できました。また、例えば、審査すべき項目などはコメントとして書き込み、業務プロセスのフローと合わせて表示しておくこともできました。即ち、IBM Blueworks Liveを利用することで、業務プロセスのフローを定義するセッションがスムーズに進み、セッション中に資料を作成して関係者間で確認できました。

アーカイブセンター設立のプロジェクトリーダーを務めるClassNK テクニカルサービス部 主管 髙橋方彦氏は、IBM Blueworks Liveを使った作業の感想を次のように話します。「業務に関する内容をIBMのメンバーと会話しその場でIBM Blueworks Live上に書き出し、その業務内容のイメージを見ながら、関係者全員で『この部分はこうですね』と話し合い、その場で対話しながら最終的な答えを導き出す形で作業を進められました」。

同じくプロジェクトリーダーを務めるClassNK 資源エネルギー部 酒井竜平氏は、「人の流れと時間の流れが明確に分かりました。単に話し合っているだけでは、関係者の理解度を一致させるのに時間がかかります。IBM Blueworks Liveの画面を見ながら作業したことで、話し合っている内容への誤解がありませんでした」と話します。

しかし、SCFアーカイブセンターに求められる要件は、検討期間中に何度も変化しました。

「セッションを行っている間、私たちの要望や要求は、海事業界の動きを参考にしながら変わっていきました。昨日はこう言いましたが、その後の話し合いで変更になりましたので、このようにしてくださいとか、昨日の内容は間違っていましたので変更してくださいなど、何度も変更がありました。通常であれば、この要件はこのように決めましょうという形になるのでしょうが、SCFアーカイブセンターでの業務は要件自体が固まっていない状況でした」(木戸川氏)

このような状況でも、IBM Blueworks Liveを使用していたため、画面上で業務プロセスの順序を入れ替えたり新たに追加したりするだけで、簡単に変更内容を反映できました。

「従来のやり方でセッションのたびに議事録を作成し、それを持ち帰って要件定義を作成していたのでは、セッションの半分近くが議事録作りになってしまっていたと思います」(木戸川氏)

要件定義を終えた髙橋氏は、IBM Blueworks Liveの有効性を次のように評価します。

「新しいことを考えながら進めるときに、IBM Blueworks Liveは非常に有効です。自分が考えていることがその場で絵になり、相手にきちんと伝わっているかがすぐに分かります。絵にすることで、実際に行う業務内容をイメージして、それを共有できます。また、新しい業務のプロセスはもちろんのこと、既存の業務プロセスでもIBM Blueworks Liveを活用することで、業務理解の共通化や業務改善に役立つと思いました」

 

将来の展望

コスト検討や他の業務の「見える化」にも利用

今後、ClassNKは、IBM Blueworks Liveで作成したSCFアーカイブセンターでの個々の業務に単価や作業時間を設定し、それぞれの業務プロセスでの工数を見積もってみようと考えています。これによって、業務プロセスを実行したときのコストが見えるようになります。また、ClassNK内の既存業務をIBM Blueworks Liveで表してみようとも思っています。「これまで口頭で伝えられてきたルーティンワークなどは、文書で残すよりもIBM Blueworks Liveで残したほうが分かりやすくなると思います」(酒井氏)

要件定義を終えたSCFアーカイブセンターの設立プロジェクトは、システム設計やプログラム実装の段階に入ります。木戸川氏は、今後の予定を次のように話します。「2012年半ばくらいまで作業を行い、その後は機能確認テストと改善のサイクルに入り、2013年初頭から第一段のサービスを開始します。また、条約で要求されている情報以外にも、船舶の設計図は膨大な量があり、造船会社はそれを保管しなければなりません。船主も、船舶の就航からスクラップになるまで、点検情報や機器の変更などさまざまな情報を保管しなければなりません。このような情報を対象としたストレージサービスも行っていこうと考えています」。IBM Blueworks Liveによって要件定義に関する関係者の合意を短期間で形成したSCFアーカイブセンターの設立プロジェクトは、次のステージに大きく舵を切り始めています。

 

お客様情報

一般財団法人 日本海事協会は、海上における人命と財産の安全確保、海洋環境の汚染防止を使命として、船舶の安全確保のために独自の技術規則を制定し、建造中や就航後の船舶がそれらの規則に適合していることを証明する検査を実施した上で、船級の登録を行っています。また、船舶の登録国が国際条約に基づいて行う検査の代行、材料や機器などの承認業務、ISOに基づく品質および環境マネジメントシステムの審査登録、各種技術コンサルタント、その他海事業界に貢献するための各種研究開発など、幅広く活動しています。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Solution Category

  • Social Business