Business Challenge story

顧客データを活用したOne on Oneのセールス対策が必須

わが国においてゴルフは、老若男女を問わず誰もが楽しめる身近なスポーツやレジャーとして定着し、人気を集めています。しかし、2000年代初めまで1,000万人を超えていたゴルフ人口は、少子高齢化や景気の低迷、東日本大震災などの影響を受け、ここ数年減少傾向にあります。

これにともない、ゴルフ場を取り巻く環境は、今後ますます厳しい顧客獲得競争の時代に入っていくと予想されており、運営各社には「選ばれるゴルフ場」になるための経営手腕が問われることになります。

そうした中でPGMは、旧来の会員権ビジネスや法人主体の営業活動から脱却し、個人顧客を重視したマーケティングへの転換を図っています。「市場や社会環境の変化に対応し、メンバーの維持拡大、ビジターの呼び込みやリピーター化を目指した取り組みが、自社の生き残りと、さらなる成長のために必須なのです」と話すのは、同社社長室データ戦略部のシニアマネージャーを務める正司 真美氏です。

「お客様一人ひとりの行動、嗜好、属性を把握した上での商品開発とプロモーションがきわめて重要であり、今後の売上向上には顧客データを活用したセールス対策が欠かせません。B to B(企業から企業)からB to Cへの移行を進め、さらに、お客様が新たなお客様を呼び込んでくるC to Cのビジネス・モデルを確立することをTo-Be(将来像)として描き、One on One(1対1)マーケティングのためのさまざまな施策を展開しています」。

Transformation

分析結果をビジネスに展開するPDCAサイクルの確立が重要

PGMが推進する新たなマーケティング戦略の大前提となる、顧客情報の一元化と資産化(利活用)における重要な役割を担っているのが、IBM SPSS Modeler、IBM SPSS Text Analytics for Surveys、IBM Cognos TM1の3つのツールです。

積極的なM&A戦略によってビジネスを拡大してきたPGMは、日本全国に127コース(2013年5月現在)を所有。2012年年間来場者数は700万人以上に達しています。

PGMは、従来ゴルフ場ごとに個別管理されていたこれらの顧客情報を、IBM SPSS Modelerを用いて名寄せ、クレンジングして一元化するとともに、約160万人のアクティブなポイントカード会員のセグメント分析、RFM(Recency:直近来場日、Frequency:来場頻度、Monetary:利用金額)分析、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)分析などを実施しているのです。さらに、IBM SPSS Text Analytics for Surveys を活用し、年間約17万件寄せられるCS(顧客満足度)調査に記載されたフリーコメントのテキストマイニングを行っています。

これにより、顧客を性別、年齢、エリアといった属性からカテゴライズし、コメントの重要度ポイント(プラス、中立、マイナス)を付加してPCA(Principle Component Analysis:主成分分析)を行うなど、各ゴルフ場のコースコンディションやサービス、施設に対する満足、不満足の要因を詳細に可視化しました。また、CS調査を通じて他のメンバーやビジターに対して、ゴルフコースを推奨している優良顧客の分類と分析を行うことが可能となりました。

ただし、こうした分析を単に行うだけでは意味がありません。「分析結果をいかにビジネス現場で使える形で展開し、実際のプロモーションなどのアクションにつなげていくかが重要です」と正司氏は話します。その役割を担っているのが、IBM Cognos TM1です。ITやアナリティクスの専門家ではないビジネス・ユーザーも、必要なキューブ(多次元データベース)を自ら作成し、Microsoft Excelベースのインターフェース上で自由な切り口でデータを閲覧、集計できる手軽さが、IBM Cognos TM1導入の決め手となりました。

PGMにとって分析業務のネックとなっていたのは、そこで必要となるデータ・ソースを常にIT部門に依頼しなければならないことでした。また、調達したデータをその都度クレンジングしたり、分析結果をゴルフ場ごとに切り分けて配布したり、アナリストにも煩雑な手間がかかっていました。IBM SPSS Modeler、IBM SPSS Text Analytics for Surveys、IBM Cognos TM1を組み合わせて連携させることで、こうした分析にまつわる一連の作業を大幅に効率化することができるのです。

正司氏は、「分析業務をスピードアップするとともに分析のバリエーションを拡大し、さまざまなプロモーションの効果測定を繰り返しながらビジネスでの精度を高めていく、PDCAサイクルを確立することができました」と話します。

Benefits

顧客セグメントに応じた最適なサービス提供で収益力を向上

現在、PGMでは顧客をRFM分析によって「年間利用額の高いグループ(=A)」「年間利用額が普通のグループ(=B)」「年間利用額が低いグループ(=C)」の3つのグループに分類し、セールスを展開しています。正司氏は、「顧客セグメント別に最適な商品とサービスを提供することで、無駄な割引や過剰な優待をやめて、経費の削減と売上の最大化を実現することが狙いです」と説明します。

例えば、プレー回数の少ないビジター中心のCグループの顧客に対しては、メールマガジンやWebを通じたタイムセールを実施してラウンド回数のアップを図ります。プレー回数の多いメンバー中心の顧客に対しては、ワンランク上のコースの紹介、メンバー交流会の案内といったアプローチにより、グループCからB、BからAへのランクアップを促していきます。また、富裕層の多いAグループの顧客に対しては、利用料金に見合った満足度を維持、向上することで来場頻度を増やすとともに、支配人が直接コンタクトしてワンランク上のプランを紹介するなど、さらなる単価アップを図ります。

さらにPGMでは、顧客との関係性強化のため、各ゴルフ場のWebサイト内のお客様満足度アンケートに、顧客が直接評価やコメントを投稿できる仕組みを整えています。

もっとも、毎月大量に寄せられてくる多様な顧客のコメントを、何のチェックも経ることなくそのままWeb サイトに掲載するわけにはいきません。そこで活用しているのが、IBM SPSS Text Analytics for Surveysによるテキストマイニングです。「自分がプレーしたゴルフコースを、他のメンバーやビジターにも推奨したい」という顧客のコメントをセレクトし、個人攻撃やプライバシー侵害などの社会通念上、不適切なコメントを除外した上で、Webサイトに掲載しているのです。また、掲載されたコメントに対して、必ずゴルフ場からの返信を行うことで顧客とのコミュニケーションを活性化させています。

また、顧客から寄せられるコメントはポジティブなものばかりではなく、ネガティブな内容も含まれるのですが、PGMはあえてそのすべてを公開しています。

例えば、「レストランの食事のメニューが少ない点は不満だったが、安価でプレーできて良かった」といったコメントから、そのゴルフ場に対する総合的な評価を読み取ることができます。あらゆる面で最上級のサービスを期待する顧客には物足りないかもしれませんが、限られた小遣いの中でできるだけ多くラウンド経験を重ねて腕を磨きたいと考えている顧客にとっては、十分満足できるゴルフ場ということになります。 正司氏は、「期待と実際とのミスマッチを少なくすることが、お客様満足度の向上につながっていくのです。結果として、Webサイトからの予約率が高まっており、2012年期の来場者数は対前年比で10.3%増加しました」と話します。こうした取り組みが功を奏し、PGMはビジネスを着実に成長させています。2013年2月に発表された2012年12月期の決算概要によると、売上高は対前年同期比7%増の757億1,800万円、営業利益は同41.4%増の102億1,200万円、経常利益は同58.3%増の78億600万円という大きな伸びを示しています。

 

将来の展望

C to Cのビジネス・モデルを体現する新たなSNSの仕組みづくりへ

PGMは今後、顧客セグメントに応じたプロモーションやWebサイトによるコメント機能を、さらに強化、発展させていく考えです。例えば、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上にPGM主催のゴルフコミュニティーを開設するなど、顧客同士の交流によってC to Cのビジネス・モデルを体現していく新たな仕組みづくりに向けた計画にも着手しています。

ただし、こうした構想は思い付きだけで軌道に乗せることはできません。さまざまなアイデアを具現化するためには、統合データベースや分析ソフトウェアなど新たなITインフラが必要であり、経営陣による投資判断が欠かせません。また、その実装プロセスには、アナリストだけでなく、セールス現場の担当者も巻き込んでいかなければなりません。

正司氏は、「経営陣による明確な意思決定、IT、アナリティクス、業務オペレーションの4輪が一体となって駆動することで、はじめて本当の意味でのデータ活用が可能となるのです。その本質は、新たな企業文化をつくり上げていくことにあります」と話します。

PGMは、「個人重視のマーケティングへの転換を図る」という経営陣の意向を受け、そのビジョンを最短距離で実現するためのロードマップを初期段階から作成。常に関係者間で“変革”に向けた意識のすり合わせ、再確認を行いながら、CSアンケートの実施、各種調査データの統合を進めてきました。そして、2010年から2012年にかけて、IBM SPSS Modeler、IBM SPSS Text Analytics for Surveys、IBM Cognos TM1の一連のソリューションへの重点投資を行い、全社的な分析プロセスに向けた基盤を整えてきました。

このロードマップに基づき、今後は分析結果から導き出された多様な施策を実際のビジネスに展開、実証していくPDCAサイクルが、いよいよ本格的に回り始めることになります。そうした中で、正司氏をはじめとするデータ戦略部のデータ・サイエンティストが担う役割も、ますます大きくなっています。

 

お客様情報

2001年3月に事業を開始し、北海道から沖縄まで全国127カ所(2013年5月31日現在)のゴルフ場を保有運営するパシフィックゴルフマネージメント株式会社の持ち株会社。運営・マネジメントは、ゴルフ場に付帯する飲食、プロショップ、ホテルなどといった幅広い分野にまで及び、全国で約8,500人の従業員を抱える。PGMグループでは、スケールメリットを生かしたマーケティングやセールス・プロモーションを実施しながら、各ゴルフ場の個性を損なうことなく効率性と収益性の向上を図っており、総務、資産・財産管理、ITといった専門性が求められるバックオフィス業務は本社で統括し、個別ゴルフ場の負担を軽減するサポート・スタイルを確立している。2012年12月に株式会社平和の連結子会社となった。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Solution Category

  • IBM Hybrid Cloud
    • Cognos TM1
    • SPSS Modeler