Business Challenge story

全世界20万人の社員が利用する次代のコミュニケーションの姿を描き、実装を目指す

パナソニックは2012年1月、従来の16ドメインの会社を3事業分野・9ドメインの体制へと移行する大規模な事業再編を行いました。パナソニック、パナソニック電工株式会社、三洋電機株式会社の3社の一体化は、これまでのパナソニックグループの事業を根本から整理して見直す大改革でした。

パナソニックの情報システム部門を担う、パナソニック コーポレート情報システム社(以下、CISC)インフラソリューションビジネスユニット ビジネスユニット長の村田賢一氏は、次のように話します。

「今回の事業再編では、システムにも複雑な対応が求められました。しかし、事業再編を“ワン・パナソニックの環境革新ITプラットフォーム基盤づくり”の絶好の機会ととらえ、“お客様にご迷惑をお掛けしない”“事業を止めない”ことを最優先の対応方針と定めました」

CISCは、「再編前」にまず3社のインフラを統合・連携させ、2012年1月の「再編時」にアプリケーション(業務システム)をつなぎ、「再編後」に新生パナソニックのIT基盤として最適化・標準化するというステップで、リスクを分散しながらシステム対応を推進してきました。

インフラやアプリケーションについては、リスクを最小限に抑えるため、新事業体制に応じた仕組みを一から作るのではなく、既存システムに片寄せ・併用・連携させて、最大限に有効活用することにしました。しかし、再編後の事業成長を支え、3社が入り交じって事業創造を進めるコミュニケーション・コラボレーションの場となる「Global Work Place」(GWP)は、統一社員IDと統一イントラネットとともに新たに構築することとしました。

コラボレーション基盤の構築を担当した、CISCインフラソリューションビジネスユニット グローバルコミュニケーショングループ グループマネージャーの多田信彦氏は、こう説明します。

「もともと、業務システムをはじめ、イントラネットやコミュニケーション基盤は地域ごとに構築され最適化されてきたため、グローバル共通で利用できる環境ではありませんでした。そこで、それらを統一するだけではなく、次の時代のコミュニケーションのあり方を考え、先駆的な機能を備えていくことができないか、という強い課題認識がありました」

CISCでは、将来のコラボレーションの姿を描くため、ITを使いこなすインターネット世代の若者を集めて対話の機会を設けるなど、かねてから検討を重ねていました。

Transformation

グローバル展開と将来の機能拡張を見据えてクラウドを採用。パートナーとしての信頼感も併せてSCSBを選定

コラボレーション革新の検討プロジェクトは、2010年1月にCISC内でスタートしました。世界各地域の情報システム担当者とグローバル共通のコラボレーション基盤のあり方と実現方法について討議した結果、本社が全拠点のニーズを踏まえてシステムを自社開発し、世界に展開することは困難と判断し、クラウド・サービスの利用を検討することになりました。

クラウドの検討に至った経緯を多田氏は次のように説明します。

「日本の仕組みを基にメニューを多国語対応にする、もしくはアメリカ、ヨーロッパ、アジアのいずれかで利用されてきた環境を拡張する案もありました。そもそも初期の計画では社員20万人すべてが利用することは想定しておらず、グローバルなコミュニケーションが不可欠な部門や、社外取引先との協業が頻発する部門など、特定層を対象に検討していました。しかし、事業再編が2010年8月に発表され、新体制となる2012年1月以前にグローバル統一基盤を運用させるように前提条件が変わりました。グローバルな大規模展開を1年足らずで実現するには時間もコストも見合いません。ならば、既にあるクラウド・サービスをいかに安全に、かつ品質を確保して活用するかに注力する方がいいという話になったのです」

クラウド・サービスの利用について、社内で不安視する声がなかったわけではありませんが、多田氏は抵抗感はなかったと話します。

「今や、世の中全体がパブリックなクラウド・サービスを利用する方向に進んでいます。インターネットを利用してビジネスが行われているわけですから、クラウドで仕事をすることに違和感はありませんでした。ただ、心配だという声に対しては説明責任を果たす必要がありました。例えば、クラウド上でデータはどのように管理されるのか、データセンターの設備およびオペレーションのセキュリティーはどう担保されるのか、個人情報や機密情報を載せることは可能なのか等。情報システム部門だけでなく、人事、法務、経営企画などとも連携し、あらゆる問題を洗い出し、IBMの支援も得て一つひとつ方針を決め、解決していきました」(多田氏)

そして、2010年9月からクラウド・サービスの選定に着手しました。グローバル標準として使える機能が用意されていること、事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning)対策とセキュリティー・リスクへの対応が十分なこと、経営環境の変化に即応できる柔軟性があること、短納期で利用が開始できることなどを要件に挙げ、その結果、SCSBが選定されました。

「選定にあたっては、まず社内システムと柔軟に連携できることも含め、既存のグローバルなIT環境との親和性が高いことを重視しました。加えて、グローバル・ベンダーとしての対応力や実績に重きを置きました」と多田氏。

村田氏も、パートナー選びの重要性について補足します。

「コミュニケーション基盤を任せることになるので、選定は慎重に進めました。単に既存のサービスを選択するのではなく、必要なものを一緒に作り上げていく戦略的パートナーとして考え方が合うかどうか。さらに、ある程度大規模な企業ユースを前提とした機能を作り上げられるかどうかを選定基準としました」

Benefits

世界でさまざまな業務での利用がスタート。プロモーション・サイトを充実させ、さらに利用を促進

SCSBの採用を決めたパナソニックでは、2011年10月からグループ全社にGWPを展開することとし、順次導入を開始しました。並行して構築された統一社員IDの認証基盤とも連携しており、現在はシングル・サインオンでGWPが利用可能になっています。

既に、先行導入が始まっていた海外の拠点を中心に、さまざまな業務でGWPの利用も始まっています。以下は代表的な活用例です。

アジア:プロジェクト管理

アジアでは、9カ国15社の販売会社と物流会社の事業再編プロジェクト運営に活用されています。非同期で議論ができる場としてアクティビティーを用意し、FAQの準備、進捗確認などを実施。資料を事前にファイル共有をして、Web会議を実施するなど、グループ内のコラボレーション基盤として利用されています。

ドイツ:産学協業プロジェクト

ドイツの研究開発部門と大学との間の産学協業プロジェクトに活用されています。ここでは、ゲスト・アカウントを自由に発行できるコミュニティー機能を利用し、複数の大学と結んだディスカッションや成果報告会をWeb会議で実施するといった使い方をしています。

アメリカ:ディーラー協業

アメリカでは、販売会社と取引先ディーラーとの協業に活用されています。Web会議を利用してインターネット経由で商品説明会を実施することで、営業生産性の向上、出張旅費などの経費節減、トレーニング参加率の向上などの効果が得られています。

日本:社内研修

研修に応じてコミュニティーを作成し、研修内容や宿題をアクティビティーで管理するような使い方をすることで、運営の効率化や管理費用の軽減が期待できます。

「従来、外部とのコラボレーション環境を用意するには、社内のセキュリティー基準を満たすものを数カ月かけて構築していました。GWPを利用すれば、従業員が普段使っている環境をベースに、すぐにコミュニティーを構築することができます。特に、社外との協業をリードタイムなしで開始できるところが非常に喜ばれています」(多田氏)

さらに、GWPをパナソニックグループ全社に展開するにあたって、社内ではプロモーション・サイトを開設し、利用を促しています。

「GWPは、活用例にあるように、海外あるいは社外とのコミュニケーションについては便利さが伝わりやすいのですが、そうした困り事のない従業員にとっては、価値が伝わりにくいところがあります。そこで私たちは、社内向けの専門サイトを用意して、うまく活用するための小技を紹介したり、親しみやすいマンガやビデオ配信コンテンツを使ってさまざまな活用例を見せることで、GWPへの積極的な参加を呼びかけています。こうした道具立ては、GWPを社内に広く普及させるために重要なポイントの一つだと考えます」(多田氏)

全社員の夢を詰め込んだ“HATSUNI”イベントでもSCSBの強みを発揮

プロモーションの一環として、大きなイベントも企画しました。それが、2012年1月の事業再編に際して実施された、グローバル全社員のバーチャル決起大会「HATSUNI Message Relay」です。

HATSUNI(初荷)とは、お客様の商売繁盛を願い、毎年年始に商品を送り届けるパナソニックの伝統行事です。1930年に名古屋支店で初めて行われ、翌年から全社に展開し定着してきました。

2012年1月、新生パナソニックとしてお客様にさらなる満足をお届けしていくにあたり、全世界全社員の決意表明をメッセージリレーするというバーチャル・イベントが企画され、その基盤としてGWPが活用されました。GWP上に登録されている社員の顔写真とメッセージを収集し、イントラネット上の特設サイトにメッセージを表示しました。

「HATSUNI Message Relayの推進は、新体制発足の一体感を高揚する経営トップのアイデアがきっかけでした。企画から実施まで1カ月ほどでしたが、パナソニックグループの一体感の醸成に貢献したと考えています。GWPを使ってどんなことができるか、従業員に気付きを与えることもできましたし、CISCにとってはGWPのナレッジを蓄積する良い機会にもなりました」(村田氏)

多田氏は、「1カ月の間に4万6,000のメッセージを共有できたことで、新パナソニックグループのポテンシャル、コミュニケーション・コラボレーションの可能性を感じるとともに、それだけの声を集める基盤を手に入れることができたと実感しました」と手応えを語ります。

もちろん、HATSUNIの成功はGWPだけで実現できたわけではありません。イントラネットでの告知をはじめ、経営層が先陣を切って参加したり、さらにはグループカルチャー創造委員会といった活動等、実際の活動とバーチャルな活動をミックスした働きかけがなされました。

将来の展望

グローバルに衆知を集め、価値創造を支える働き方への革新をもたらす

今後の具体的な計画としては、2012~2013年度には現行のメール、およびスケジュールのシステムをGWPへ移行することが計画されているほか、社内ポータルの機能拡張や、マルチデバイスへの対応も検討されています。さらに大きな目標として、GWPのコンテンツをベースにいかに働き方を変えられるかがテーマとなっています。

「今後、ソーシャル系の機能が強化されることで、これまでのメール中心のコミュニケーション・モデルは、コラボレーションの姿に変わってくると思います。また、スマートフォンやタブレットなど新たなデバイスの活用により、時間・場所の制約を受けない働き方がさらに進化すると考えています。働き方の革新には、これらの進化に合わせ、社員一人ひとりの仕事の中に、新しいコラボレーションの仕組みをいかに組み入れることができるかがカギになります。利用者に、それぞれの業務シーンに応じた効果的な活用シナリオを提供し、教育・啓発を推進していきます。

一人ひとりの働き方の変革により、グローバルレベルでの経営の意思決定のスピードアップを実現するとともに、新たなビジネス・新たな価値創造に貢献していきます」(多田氏)

「パナソニックに限らず、企業の活力や価値創造の源は、社員が一体となってコラボレーションを行うことで、生み出されていきます。パナソニックには、“衆知を集めた全員経営”、“日に新た”という経営理念があります。これからの新しい働き方をITで実践していくにあたり、IBMにはより強いパートナーシップを期待しています」(村田氏)

村田氏と多田氏は、コラボレーションの進化に向けたIT部門の決意を熱く語りました。

お客様の声

“単に既存のサービスを選択するのではなく、必要なものを一緒に作り上げていく戦略的パートナーとして考え方が合うかどうか。さらに、ある程度大規模な企業ユースを前提とした機能を作り上げられるかどうかを選定基準としました”

パナソニック株式会社 コーポレート情報システム社

インフラソリューションビジネスユニット

ビジネスユニット長 村田賢一氏

“1カ月の間に4万6,000のメッセージを共有できたことで、新パナソニックグループのポテンシャル、コミュニケーション・コラボレーションの可能性を感じるとともに、それだけの声を集める基盤を手に入れることができたと実感しました”

パナソニック株式会社 コーポレート情報システム社

インフラソリューションビジネスユニット グローバルコミュニケーショングループ

グループマネージャー 多田信彦氏

 

お客様情報

1918年創業。部品から家庭用電子機器、電化製品、FA機器、情報通信機器、および住宅関連機器等に至るまでの生産、販売、サービスを行う総合エレクトロニクスメーカー。コーポレート情報システム社(CISC:Corporate Information Systems Company)は、2000年4月に設立されたパナソニックの社内分社。パナソニックの事業成功をIT基盤によって支えることを目的とする。従来、パナソニックグループでは事業部体制別に情報システムが構築されていたが、プラットフォームを統一し、システム開発や運用機能の集約化・効率化を図ることで、ビジネス・プロセスの改革を推進している。

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Solution Category

  • Social Business
    • Electronics: Mktg Sales and Service Transformation