Business Challenge story

各担当者に分散した商品情報の管理をマスターに集約

1933年に大阪で創業した井内盛栄堂商舗を起源とするアズワンは、科学技術立国を掲げて前進してきた日本の産学界とともに、理化学機器の総合商社(卸し問屋)として発展してきました。

同社の成長を支えてきたのが、カタログをメディアとして活用したビジネス・モデルです。さまざまなメーカーの商品を横断的に1冊のカタログに集約し、「豊富な品揃え」を提案。さらに、「ビーカーひとつ、試験管1本でも、必要なときにすぐにお届けする」というお客様本位の発想のもと、全国約6,000社の販売代理店と提携したサプライチェーンを構築し、現在、大学の研究室や企業の研究・開発部門、病院などのユーザーに向けて、数十万点(カタログ掲載数約6万5,000点)に及ぶ各種備品や消耗品の流通を担っています。

基盤を支える情報システムの継続的な改善を重ねる中で、近年浮上してきたのがマスター管理の問題です。同社の取締役でありメディア本部の本部長を務める金子泰雄氏は、次のように話します。

「ここ10~15年におけるバイオテクノロジー関連の研究の隆盛により、理化学分野で必要とされる器材や試薬、消耗品は、かつてなく多様化しています。一方、薬事法改正に伴う危険物や劇薬物の取扱基準の厳格化、含有化学物質の規制強化など、新たなコンプライアンス対応のため、対象となる商品の流通・販売をきめ細かくコントロールしていく必要も出てきました。すなわち、商品マスターとして管理すべき項目や属性情報が急速に膨らみ、複雑化してきたのです」

アズワンは1990年にオンライン・システムを構築し、購買系および販売系の商品マスター・データベースを運用してきました。しかし、その仕組みで扱えるデータは、商品名や型番、商品コード、仕入・販売価格、サイズなどの基本的な項目に限られていました。その結果、多岐にわたる属性情報の管理は、取引先や商品分野ごとに分かれた担当者の手に委ねられ、分散化していたのです。商品情報のカタログへの掲載、基幹システムへの登録、Webサイトをはじめとする外部システムへの配信など、それぞれ業務プロセスが異なるシステムと個別の人的フローによって運用され、マスター・データの鮮度や正確性が劣化するという問題が生じていました。

こうした状況を踏まえつつ、アズワンは2007年頃より今後のマスター管理のあるべき姿を模索してきました。

「今から20年も前に基本形が出来上がったマスター管理の仕組みをそのまま踏襲し、場当たり的なカスタマイズで対応しようとしても無理があります。マスター管理のコンセプトそのものを根本から見直し、商品にかかわる情報が今後さらに増えても高い自由度を持って柔軟に対応できる、新たなシステムを構築すべき時期を迎えていると感じていました」と金子氏は話します。

Transformation

商品情報を複数の切り口で管理することで変化に対応

そうした課題を抱えていたアズワンに対して2008年末、販売代理店としても取引関係にあったMRO(間接材)商社の株式会社アルファパーチェス(以下、アルファパーチェス)から、一つのソリューションが提案されました。IBMのInfoSphere MDM Server for PIMをベースに構築した商品・得意先・仕入先などの統合マスター管理システムです。

アルファパーチェスの常務執行役員でありコンサルティング事業部長を務める田辺孝夫氏は、同システムを次のように説明します。

「アズワンと同様にマスター管理に関する課題を抱えていた当社は、2002年頃からその解決に取り組む中で、InfoSphere MDM Server for PIMを導入しました。マスター管理システムと各基幹システムを、高い独立性と整合性を兼ね備えた構造で実装することに成功しました。具体的には、仕入先・外注先を含めた商品情報登録フローを自動化することで、商品開拓からマスター化までのリードタイムを数カ月から1カ月に短縮。さらに、変更・廃番といった処理についても、商品マスターへのタイムリーな反映を実現しました。このシステムは、業態のよく似た他企業のビジネスにも必ず貢献できると考え、ソリューションの外販に乗り出したのです」

特に田辺氏が課題解決におけるポイントになると考えたのが、InfoSphere MDM Server for PIMが持つ「階層の管理」や「属性の管理」といった特長です。InfoSphere MDM Server for PIMでは、「商品の種類」や「メーカー」、「地域」といった複数のカテゴリー(切り口)により、さまざまな商品の階層を定義することが可能です。階層の数や深さに制限はなく、さらに「型番」や「外形サイズ」といった属性項目を自由に付加することができるのです。

「カテゴリーの上位階層に属性項目を設定し、下位階層に継承させることで共通項目とするほか、個々の商品レベルで異なる属性項目を付加するなど、柔軟なデータ・モデルの運用が可能となります。加えて、その後に行った変更の履歴も合わせて管理することができ、多種多様な商品を取り扱うアズワンのような企業にとって、効率的なマスター管理を実現できます」と田辺氏は、そのメリットを強調します。

実際、この仕組みはアズワンのビジネスに非常にマッチするものでした。

「例えば医療分野の商品の場合、改正薬事法により人体に与えるリスクの大きさから4段階にクラス分類されており、取得している許可・届出クラスに応じて販売代理店ごとの取り扱いの可否を判断しなければなりません。InfoSphere MDM Server for PIMを活用することで、こうした流通のコントロールも効率化できます」と金子氏。

また、アルファパーチェスが実際のビジネスに活用している点が採用の大きな決め手となりました。

Benefits

カタログ非掲載の商品群の販売機会を高める

アズワンは2009年5月、新たな統合マスター管理システムの導入を正式に決定。その後、アルファパーチェスは、実質4カ月間という極めて短期間で構築作業を終え、同年9月にアズワンに引き渡しました。

「これまで各担当者に分散して管理されていた商品情報を新たなマスター管理の仕組みに統合していく過程では、さまざまなデータ間の整合性を維持したり、データ登録の際のルールを標準化したりなど、いわゆるクレンジング作業に苦労したのは事実です。逆に言えば、このハードルさえ越えられれば、その後の処理は既に実績のあるInfoSphere MDM Server for PIMの標準機能をそのまま利用することができるため、複雑なプログラム開発や稼働テストといった作業に時間をとられずに済むのです」と田辺氏は話します。

こうして整備されたアズワンの新しいマスター管理システムは、同社の売上拡大に向けても大きな可能性をもたらそうとしています。現在、アズワンの売上の約90%を占めているのが、カタログに掲載された約6万5,000点の商品です。しかし紙媒体であるがゆえに掲載点数を増やせないとういう課題がありました。先にも述べたように、実際にアズワンが取り扱う商品は、その何倍もの数十万点に及びます。「現在は売上の10%程度でしかないこれらの商品群の販売機会をいかに高めていくか、そこに新しいマスター管理システムが役立てられそうです」と金子氏は話します。

「一元化されたマスター管理システムのもと、商品の起案から購買、カタログへの展開、販売、廃止まで、商品ライフサイクル全般にわたる管理が可能となりました。また、InfoSphere MDM Server for PIMでは構造化データだけでなく、画像やPDFなどの非構造化データを併せて管理することも可能です。この仕組みを生かし、掲載品目数に制約のない電子カタログ・ビジネスを拡充していけたらと考えています」

 

将来の展望

業界全体としてのサプライチェーンの自動化を目指す

2010年6月現在、新しいマスター管理システムは十分な検証を終え、まさに既存システムからの切り替えのタイミングを計っている段階にあります。

「これまで各担当者に任せていた商品情報の登録やメンテナンス作業を、購買部門内の専任チームに移管し集約することで、マスター管理のさらなる効率化を図りたいと考えています。私たちのビジネスにとってマスターは不可欠ですが、その制約に縛られてしまっていたのでは本末転倒です。あまりにもカタログに寄りすぎていた従来のマスター管理の考え方から脱却し、より機動的に人を生かし、ビジネスの全体最適化を推進していくことにこそ、今回のシステム構築の本当の意義があります。あらゆる業務を統合する視点からマスターをコントロールしていくため、組織や業務の改革の準備を整えた上で、いよいよ新システムへの切り替えを実施します」と金子氏は話します。

そして、その先にアズワンとアルファパーチェスの両社が見据えているのが、メーカーや販売代理店などの取引先とのマスター管理システムの連携です。

「現在、マスターのデータをどのように入手し、鮮度をいかに維持していくかが一つの課題になっていますが、取引先各社が持つマスター管理システムと私たちのシステムをシームレスに連携させることができれば、より迅速かつ正確な商品情報や関連コンテンツの共有化が可能となります。こうした連携は、すでにアズワンとアルファパーチェスの間では実現されており、その輪をより多くの取引先へ広げていきたいのです」と金子氏。

さらに、田辺氏が続けます。

「どの取引先にとっても、ビジネス・チャンスの拡大や情報管理作業の省力化につながる施策であり、その多大なメリットを知っていただければ、決して無理な構想ではないと考えます」

自社の効率化だけにとどまらない業界全体を包むサプライチェーンの標準化や自動化を目指し、アズワンとアルファパーチェスの取り組みが加速し始めました。

 

お客様情報

業界に先駆けてカタログを活用したビジネス・モデルを打ち出し、発展してきた理化学機器の総合商社。大学や企業の研究所に向けて研究用機器・消耗品を総合的に提供する科学機器分野、各メーカーの生産施設に無塵手袋や工具を提供する産業機器分野、病院に看護用品を提供する医療分野などに進出している。また、これらの分野にきめ細かくスポットを当て、研究設備品や食品菌検査などの専門性の高い分野も手がけている。

 

パートナー情報

電子商取引を通じて消耗品や保守・補修用品などを提供するMRO(間接材)商社として、2000年に事業をスタート。以降、具体的で測定可能な成果を迅速に提案する「アウトソーシング機能をもった間接コスト削減の総合コンサルティング会社」へと変革を遂げてきた。その業務領域も、オフィス・工場・店舗などで使用される消耗品、プロユースの工具、理化学用品、電子部品といったMRO商品の調達コストから、システム構築、ファシリティ・マネジメント(施設メンテナンス)、クレンリネス(清掃)、保険、光熱費などの業務コストまで、大きく拡大している。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Solution Category

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    • InfoSphere Master Data Management Enterprise Edition
    • Retail: Smarter Merchandising and Supply Networks