企業のシームレスな取引を支援
IBM Blockchainが国際商取引を促進

国際的な取引により、新たな収益源を生み出し、利益を増やすことで、企業は社内への投資を増やし、成長を加速することができます。 ただし、海外の顧客との取引には、長く困難で費用のかかる交渉が伴う可能性があり、リスクが伴います。たとえば、購入者が支払いを行わなかった場合などです。

銀行はこれまで、貿易取引の仲介者としての役割を果たし、取引に資金を提供してきました。 しかし、銀行は何十年もの間、トレード・ファイナンスのデジタル変革を進めておらず、トレード・ファイナンスは銀行にとってスケーラブルでないか、もしくは大半の企業にとって複雑でコストがかかりすぎるため、約70%の企業がトレード・ファイナンス・サービスを利用できずにいます。さらに、国際貿易取引に関わる法的手続きも長くて煩雑である場合が多く、企業がアジャイルにビジネスを行う妨げとなっています。

we.trade Innovation社は、12の銀行、テクノロジー・プロバイダーの IBM、世界的な信用調査機関および、ビジネス情報プロバイダーのCRIFが共同で所有する合弁会社です。 同社は2017年1月に「Digital Trade Chain」というプロジェクトの下で9つの銀行とともにスタートし、2017年10月に正式にwe.tradeに名称を変更しました。we.trade社は、IBM® Blockchain Platform上で実行されるLinux FoundationのHyperledger Fabricをベースにしたデジタル取引プラットフォームを開発しました。 we.trade社のデジタル・プラットフォームは、トレード・ファイナンスとロジスティクスにわたる世界的な貿易取引に信頼性、シンプルさとセキュリティーを提供しています。 顧客は、銀行を通じて、we.tradeに登録することができます。

CaixaBank、Deutsche Bank、Erste Group、HSBC、KBC、Nordea、Rabobank、Santander、Société Générale、UBS、UniCredit、IBM及びCRIFがwe.tradeの株主であり、ドイツのUniCredit AG、ギリシャのEuroBank、ならびにチェコ共和国のČSOB、Komerční Banka、およびČeská Spořitelnaがライセンシーです。

会員数の拡大

 

we.tradeのプラットフォームには、15の銀行が加盟

 

グローバル・プレゼンス

 

会員はは16か国に拡大

we.tradeは、従来のトレード・ファイナンス・モデルを変革し、よりシンプルで効率的かつ安全な業界にすることで、あらゆる規模の企業が国境を越えて取引できるようになり、世界経済の成長を促進できると信じています。 Mark Cudden 最高技術責任者 we.trade

we.trade社の最高技術責任者であるMark Cudden氏は次のように言います。「歴史的に、銀行が採用していた従来のトレード・ファイナンス・モデルは何十年も進化していませんでした。 銀行も企業もその制約を受けてました。 銀行はプラットフォームを拡張して、すべての顧客が利用できるようにすることはできず、企業もカウンター・パーティ・リスクにさらされることを望んでいませんでした。

we.trade社は、従来のトレード・ファイナンス・モデルを変革し、よりシンプルで効率的かつ安全な業界にすることで、あらゆる規模の企業が国境を越えて取引できるようになり、世界経済の成長を促進できると信じています。

ブロックチェーンでの自動化

we.trade社は、Linux FoundationのHyperledger Fabricフレームワークを使用し、IBM® Cloud上で実行されるIBM Blockchain Platformをベースとしたブロックチェーン取引ソリューションを開発し、国境を越えた取引に伴う摩擦を軽減し、国際取引を簡素化する手段を企業に提供しています。

企業は提携先の銀行によってブロックチェーン・プラットフォームに登録されるため、取引相手を信頼できるかどうかに関する、潜在的な懸念が解消されます。 以前は、海外パートナーとの取引に関連する多くの法的、財務的、文化的リスクにより、国際取引を思いとどまるケースもありました。 we.tradeプラットフォームのすべてのユーザーは、適用されるマネーロンダリング防止規制に準拠していることを確認するための国際的なKYC(本人確認)手続きすでにパスしており、これらのリスクを大幅に軽減しています。

ブロックチェーンは、単一のエンティティによって制御できず、単一障害点を持たない安全な共有データベースとして機能します。 ブロックチェーン上のすべての入力には、タイムスタンプと一意の暗号署名が与えられます。 we.trade社とIBMが開発したブロックチェーン・プラットフォームには、あらゆる規模の企業が国際貿易に参加できるようにする2つの主要な機能、分散型台帳技術(DLT)とスマート・コントラクトがあります。

分散型台帳技術は、すべての関係者が貿易取引に関する同じ情報に同時にアクセスできるようにし、いかなる当事者もこのデータを管理できないようにするものです。A社がB社との取引契約の条件を変更した場合、ブロックチェーンの暗号ハッシュが変更され、変更内容がB社、銀行、その他の仲介者を含む他のすべての当事者に即座に通知されます。

多くの企業にとって、海外の企業と取引する際の障壁は、契約の履行を保証することが難しいことです。キャッシュフローが貿易契約のタイムリーな履行にかかっている場合があるため、支払いやデリバリーの遅延は大きな損害につながる可能性があります。

we.trade社が組み込んだスマート・コントラクトは、こういったカウンター・パーティー・リスクを排除します。 スマート・コントラクトは、取引の一方の当事者が、事前に合意されブロックチェーンに記録されたとおりに必要な要件を満たした場合、支払いプロセスが自動的に実行されることを保証します。 スマート・コントラクトにより、すべての当事者が、一方がどのように合意に従っているかを示し、支払いの送金などにより、一方が契約を履行する時期になったタイミングで、もう一方に通知する即時トリガーを確実に受け取ります。 契約がプラットフォームのコードに書き込まれるという事実により、拠り所となる法制度や執行手段が不要になります。

we.trade社がテクノロジー・パートナーとしてIBMを選んだ理由は、IBMの金融サービス分野での深い専門知識と実績にあります。また、世界中で複雑なプロジェクトを遂行できるIBMのグローバル・リーチにも感心しました。これは、we.trade社の世界的な野心に応えるために不可欠な要素です。 競合他社とは異なり、プラットフォームのあらゆる側面を開発およびサポートできるIBMの能力も、もう1つの重要な差別化要因でした。

we.trade社はIBM Blockchain Servicesと緊密に連携し、プラットフォームの実装と運用を行っています。 IBMのチームは最初に、we.trade社の要件の機能分析を実行し、プラットフォームに対する同社の目的を明確にするために、一連のディスカッションを行いました。 そして、本番環境の商用プラットフォームに進む前に、実行可能な最小限のネットワークを確立しました。

Cudden氏は、いくつかの理由から、IBMがこのプロジェクトに相応しいパートナーであると言います。「第一に、IBMは銀行セクターの大手企業と素晴らしい関係を築いています」と同氏は言います。 「これは重要です。なぜなら、より多くの企業を惹きつけ、長期的にプラットフォームにより多くの流動性をもたらすためには、銀行に基盤となるシステムを信頼してもらう必要があるからです。私たちは、金融サービス業界において、IBM ほど信頼できるパートナーはないと信じています」

Cudden氏は続けます。「第2に、当社は最初からIBM Cloudの強みに惹かれていました。当社のビジネスの性質上、柔軟性と拡張性に優れ、高可用性と真のグローバル・リーチを備えたクラウド環境が必要でした。 IBM Cloudは当然の選択でした」

Cudden氏は、IBM Blockchain Services チームの取り組み方に感銘を受けたと言います。「当社より先にこの分野で事業をローンチした企業が他にもいくつかありましたが、IBMと連携したことで9~12か月ほど期間を短縮し、競合他社よりも先に市場に投入できました。主に、IBM Blockchain Servicesのスピードとプロフェッショナリズムによるものです」

Cudden氏は、we.tradeプラットフォームのような画期的なプロジェクトを実装する際には、予期せぬ課題に遭遇するのは自然なことだと指摘します。 「しかし、IBMのチームはプロジェクト全体の雰囲気を決めるという点において、とても貴重な存在でした」と同氏は言います。 「IBMのチームは非常にアジャイルに対応し、問題が発生した場合でも解決できるように支援してくれました」

国際貿易の簡素化

we.tradeプラットフォームは、2019年1月に完全な運用を開始しました。 同プラットフォームは、未知の相手との取引に伴うリスクを取り除き、すべての当事者が閲覧できる、あらゆる取引に関するリアルタイムの情報を「ワンストップショップ」で提供します。スマート・コントラクトを通じて自動支払いをトリガーすることに加えて、企業が国際的な取引に参入することを後押しするさまざまなメリットを提供します。

その中でも重要なのが輸出者宛支払確約(BPU)です。 売り手にとって、BPU は、プラットフォームの性質によって、すでに最小限に抑えられている取引相手のリスクを銀行に移転します。 つまり、企業が取引相手に支払うべき代金を支払えない場合に、取引を仲介する銀行が暫定的な支払いを行います。買い手にとっては、BPUはトレード・ファイナンスを提供する確約であり、取引の完了が大幅に容易になります。

we.trade社はさらなる成長とより幅広い顧客ベースの獲得を目指しています。 現在、同プラットフォームのユーザーのほとんどは金融サービス企業であり、伝統的にブロックチェーン技術に最も関心を示してきた分野の企業です。 しかし、we.trade社は物流業界や保険業界からも大きな関心を集めており、まもなくこれらの業界の企業との提携を目指す予定です。

プラットフォームが成長するにつれて、IBM Blockchain Servicesは新しい会員のオンボーディングを支援します。 より多くの参加企業を獲得することで、we.trade社は収益源を拡大し、多様化することができます。 同プラットフォームを使用するビジネスの数と種類が増加すると、貿易会社自体にも好循環が生まれます。潜在的なパートナーのプールが増えるほど、同じプラットフォームでより多くのユーザーが成果を達成できるようになるからです。we.trade社は、企業がプラットフォーム上で適切な取引相手を簡単に検索し、話し合いに参加し、取引を決定できる、貿易のための便利なディレクトリ・サービスを効果的に構築しています。

we.trade社は、トレード・ファイナンス業界全体を変革する可能性があります。 信頼できるパートナーの特定、トレード・ファイナンスのソーシング、規制への遵守、債務の追跡調査など、取引プロセスにおけるステップを排除または最適化することで、国際間取引をより迅速、シンプル、かつ透明性の高いものにしています。同プラットフォームが成長し、より多くの銀行や企業が国際間取引を行うようになるにつれて、中小企業を含むより多くの企業がwe.tradeプラットフォームを通じてビジネスを成長させ、収益を多様化できるようになります。

Cudden氏はこう締めくくりました。「we.tradeとともに、大きな成果を上げ続けていきます。IBMと連携することで、ヨーロッパだけでなく、世界中でサービスを拡大し、貿易を簡素化できると確信しています」

we.tradeとともに、大きな成果を上げ続けていきます。IBMと連携することで、ヨーロッパだけでなく、世界中でサービスを拡大し、貿易を簡素化できると確信しています。 Mark Cudden 最高技術責任者 we.trade
we.trade社のロゴ
we.trade Innovation DACについて

we.trade(ibm.com外部へのリンク)は、欧州の主要銀行12行によって開発された革新的なブロックチェーン・プラットフォームで、企業と銀行のために、透明で安全かつ、簡素化された取引環境を構築することを目指しています。

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ブロックチェーン・トレード・ファイナンス・ソリューション ソリューション ビジネスのためのブロックチェーン ソリューション ブロックチェーンで世界貿易を推進 PDF(556 キロバイト)
脚注

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2021年8月アメリカ合衆国で制作

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