Business Challenge story

「クラウド」に「持つIT」から「使うIT」への変革を予見。自社における「クラウド」の意義の検討を開始

「2008年に『クラウド』がITの新たな動向として登場した時から注目していた」と三菱ケミカルシステムにおけるクラウド・サービス・プロジェクトを主導したソリューションサービス事業部 アプリケーションインフラ部 部長の臼井芳明氏は語ります。「クラウドという技術が世の中に出てきた時、クラウドがITの潮流を『持つ』から『使う』に根本的に変えるのではないかと感じました。振り返ってみると、これが、わたしたちがクラウドに注目した根本的な理由です。そして、MCHCグループのIT中核企業として、この流れにどう取り組むのかを検討しなければならないと思いました」

そして、翌2009年には本格的にクラウドへの取り組みを始めました。しかし、臼井氏とともに、中心的なメンバーとしてプロジェクトを牽引したソリューションサービス事業部 アプリケーションインフラ部のチームリーダー 高橋浩氏は当時をこう振り返ります。「システム・エンジニアとして、初めは形のない『クラウド』というものを検討するこのプロジェクトに参加することには抵抗を感じました。だからこそ、検討を進めるにはクラウドとは何か、果たして実現できる議論なのか、を理論的に積み上げる必要があると考えました」

Transformation

豊富な知見を発揮する。IBMのコンサルティングを採用。本質的な議論を尽くして事業化の礎を築く

自社におけるクラウドの定義を確立するため、外部のコンサルティングの活用を考えた三菱ケミカルシステムには複数の候補がありました。その中で、IBMは「クラウド」への考え方において一歩先んじていたと臼井氏は述べます。「当時はまだクラウドの定義も定まっていない黎明期でしたが、IBMは同社がグローバルな知見によって開発したアセットをベースに検討を進めていくことを提案してきました。自社の製品を売るためのいわゆる『もの売り』のコンサルティングも多い中、IBMはアセットをベースとしながらもそれを押し付けることはありませんでした。三菱ケミカルシステムの立場で、プロフェッショナルな経験とアセットや方法論を活用し、議論を進めてくれました」 高橋氏は続けます。「そもそも実現できるのかという議論から始めました。実現できないものをまじめに考えても仕方ありません。クラウドとは何か、仮想化とクラウドは何が違うのかを議論し、三菱ケミカルシステムがサービス・プロバイダーとしてクラウド基盤構築に手を出してもよいか、どのような領域をスコープとするのかをIBMのアセットを使ってコンサルタントとディスカッションを重ねる中で、問題を発見し、解決するという作業を繰り返しながら、検討を進めました」

その結果は、2009年12月までには、三菱ケミカルシステムが考えるクラウドの構成要素と取り組むべき領域としてまとめられました。その過程を「自分たちだけで机上で考えていたら議論が発散し、より長い時間をかけたとしてもまとまることはなかった」と三菱ケミカルシステムは高く評価します。そして、この検討で最も重要な成果は「サービス志向への意識改革」であったと高橋氏は振り返ります。

Benefits

サービス化の検討をユーザー視点で促進。ニーズと標準化のバランスを追求したカタログ設計でMCHCグループに最適なクラウド・サービスを早期に実現

本格的なクラウド基盤の設計を開始したのは、2010年に入ってからでした。

サービスのデザイン、すなわち、サービスの標準化はユーザーのニーズをとらえていなければできません。「最初のフェーズでは、マルチテナント型サービスを提供するための技術基盤を検討するとともに、サービス・メニューの骨格であるカタログを設計し、サービスの値付けも検討しました」(臼井氏)。ここでも、IBMのコンサルタントは標準化とカタログ化の議論を促進し、また、サービスの価格について情報の提供を行いました。

こうして設計したサービス・カタログが実現できるかどうかを検討し、技術的なギャップを埋めることが次のステップでした。この段階で、三菱ケミカルシステムはベンダー固有の技術を使うことなく、一般的な技術での解決を目指しました。「構成するパーツを組み替えてもクラウドを利用するユーザーは気づくことなく、少しずつサービスを増強していけるということもクラウドの特性でしょう。この特性を考えると、単一ベンダーに依存することが正しいとは思えません。部材には特殊なものを使わず、一般的な技術を活用して技術課題を解決していくのがわたしたちの方針です」(高橋氏)。

技術設計を終えたのが2010年夏のこと。そこから実際にクラウド基盤を構築し、サービスインしたのは2010年10月でした。

RECSという名称でサービスインしたクラウド基盤は、2011年12月現在、グループ内外の数十社に利用されています。従来はグループ内とはいえ、ネットワーク的に分離された複数の企業がリソースを共用することは考えられなかったといいます。プロジェクト開始当初から参加し、ユーザーへのプリセールスも担当していたソリューションサービス事業部 アプリケーションインフラ部の佐々木貴雄氏は、次のように語ります。

「サービス開始当初は、セキュリティーに関しての不安の声もあり、IBMから技術的なアドバイスをもらって説明し、理解をしてもらったというケースもありました。サービス開始後は、継続して利用していただいており、クラウド・サービスとして評価を受けていると考えています」

クラウド・サービスの提供を開始してみて、その意義を臼井氏は次のように述べます。「一般的にクラウドというと、パブリック・クラウドとの比較になり議論が難しくなります。スケール・メリットではパブリック・クラウドのサービス・プロバイダーを凌ぐことはできません。しかし、パブリック・クラウドがMCHCグループにとって最良のサービスではありません。そこにはわたしたちには必要のないサービスもあり、一方、必要でありながら提供されていないサービスもあります。わたしたちは、標準化とユーザー・ニーズのバランスをとりながらサービス内容の見直しを行うことができます。使ってもらえるサービスを作ることにより、利用が増え、増えれば増えるほどコストが下がりエンド・ユーザーに貢献する、というサービス志向の好循環を生み出すための、一歩を踏み出すことができました」

そして、臼井氏はクラウド基盤に関するIBMのITコンサルティングを次のように評価しています。

「最大のメリットは、スピードです。おそらくわたしたちだけでクラウド基盤を構築しようとしたら、検討の議論が発散し、1年たっても何もできていなかったと思います。コンサルティングを利用して『時間を買った』と言っても過言ではありません」

「IBMのITコンサルタントは、高いプロジェクト遂行能力を発揮しました。プロジェクトでは、さまざまな問題に直面しますが、スケジュール内にどうやって解決し、先に進めていけばよいか、わたしたちの議論をリードしてくれました。そこがIBMの強みではないでしょうか」(高橋氏)

 

将来の展望

エンタープライズ・アーキテクチャーに整合したより可用性の高いクラウド・サービスへ

三菱ケミカルシステムにとって次の取り組みはプロビジョニングの自動化です。クラウド・サービスの実装にあたって、三菱ケミカルシステムはスピードを重視しました。計画段階で検討を尽くしたとしても、すべての要件を網羅することは難しく、いたずらにプロジェクトを長引かせることになりかねないからです。そのため、当初においては自動化機能を盛り込むことを見送りました。しかし、実際にクラウド・サービスを開始してみると、「その手軽さからサービス・リクエストの頻度が非常に多くなってきている」と高橋氏は語ります。今後は「誰でも運用できる体制=運用に携わる人的リソースのクラウド化」を図り、リクエストの増加に対処をしていかなければなりません。このため三菱ケミカルシステム\\では、サービスがどのようにリクエストされ、どのように使われているか、というユーザーの振る舞いや周辺のプロセスの可視化を進めています。さらに、グループのエンタープライズ・アーキテクチャーに整合させながら、より可用性とコスト効率の高いサービスへと進化を続けます。三菱ケミカルシステムはこれらの取り組みにおいても、IBMコンサルティングの知見を活用したいと考えています。

クラウドにITのサービス化の予兆を見出し、取り組みが開始された三菱ケミカルシステムのクラウド・プロジェクト。その成果であるRECSは三菱ケミカルシステムの「社長賞」を受賞しました。

「三菱ケミカルシステムは基本的に、コストを積み上げていくことで事業を展開してきましたが、クラウドに取り組むことで、お客様のニーズを探り、市場を見てサービスと価格をデザインし、それを実現するための技術を検討するという、『ITのサービス化』という認識が生まれました」(臼井氏)

今回のプロジェクトは、従来、MCHCグループという『ものづくり』企業の一員として、高い品質を追求してきた三菱ケミカルシステムに、サービス志向=『ことづくり』の意識改革をもたらしたプロジェクトとして、他の部門のビジネスの発想をも大きく変えたのです。

 

お客様情報

三菱ケミカルホールディングスグループの中核IT機能会社。コンサルテーションから開発、運用まで一貫した情報システム・サービスを提供。グループ企業の数多くの案件で培った技術力や運用ノウハウを活用して、ビジネスの変革に呼応するITの提供を行っている。

 

テクノロジープラットフォーム

サービス

Solution Category

  • IBM Cloud
    • IBM Infrastructure Strategy and Design Services for Cloud