Business Challenge story

電子自治体実現に向けて取り組んだHARP構想をクラウド化

北海道には179の市町村が存在しますが、これら市町村の多くは財政難によるIT予算不足といった課題を抱えています。また、政令指定都市の札幌市から人口千人程度の村まで多様な自治体が同じ道内に存在するなど、住民サービスにも大きな格差を抱えています。

こうした背景を持つ北海道は、電子政府実現を目指したe-Japan戦略を機に、北海道をITで活性化するための取り組みを開始しました。北海道 総合政策部 科学IT振興局 情報政策課 地域情報化担当課長の近藤晃司氏は、約10年前から電子自治体の実現を目指してきた北海道の取り組みについて次のように説明します。「e-Japan戦略と同時期に、北海道では高度情報化計画というものを発表していました。日本の北端に位置し、広大な面積を有する北海道は、常に距離や時間という点で不利を被ってきた訳ですが、ITはこうした制約を取り払ってくれる、さらにネットワークを通じて情報やサービスを発信することにより、新たなチャンスが生まれるのではないかと考えたのです」

この取り組みを具体化するものとして、2003年に発表したのが「北海道電子自治体プラットフォーム構想(HARP構想)」です。 HARP(Harmonized Applications Relational Platform)構想は、大きなシステムを構築するのではなく、共通プラットフォームを用意して複数のシステムを共同で利用できるようにするという考え方を採用しています。できるかぎり機能を細分化・モジュール化し、再利用性を高めた上で、ネットワークを介して利用することで効率的・効果的にシステムを構築・運用できるようにしているのが特長となっています。

2004年には、道内の各市町村と「北海道電子自治体共同運営協議会」を設立したほか、情報システムの構築や運営を担う事業体として第三セクターの株式会社HARPを設立し、北海道内の地場IT企業も含め、官民が協同しながら電子自治体という公共財を創造していけるような体制を整えました。

今回の「自治体クラウド開発実証事業」への参加について、近藤氏は次のように説明しています。「国から電子行政の中にもクラウド・ コンピューティングの技術を取り入れようという動きが急に出てきました。そして昨年度、総務省から自治体クラウド開発実証事業の公募がありました。北海道としては、最新のクラウド・コンピューティング技術やビジネスモデルなどをいち早く勉強させてもらい、共同アウトソーシングやHARP構想に活かしていきたい、そして国の自治体クラウド構想に貢献したいという思いで公募に手を上げ、この度の開発実証事業に参加させていただくことになりました」

Transformation

自治体ごとのアプリケーションを実行できる北海道型自治体クラウドを開発

クラウド・コンピューティングを実現する場合、ASPのような統一化されたアプリケーションを利用するという方法もありますが、規模等により自治体が求めるシステム要件は異なります。また、すべての処理や事務内容を統一化することは難しく、統一アプリケーションを利用した場合でも独自対応が求められるのも現実です。このほか、統一アプリケーションを採用すると、大規模開発案件となるため、地場の中小IT企業の参入が困難になるという問題もあります。

こうした課題を考慮したのが、北海道で実施されている「自治体クラウド開発実証事業(北海道)」です。共通化可能な汎用的な業務 はSaaS(Software as a Service)として、業務アプリケーションを提供し、各自治体の独自性が高い業務はIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)として、インフラストラクチャー(ハードウェア、OS等)レベル、プラットフォーム(アプリケーション開発環境、実行環境等)レベルを提供し、その上で、各団体がそれぞれの独自性を確保した業務アプリケーションを稼動できるクラウド・コンピューティング環境を開発しています。

この環境を構築する上で選ばれたのが、TivSAMでした。TivSAMは、仮想マシンイメージのデプロイメント、プロセスのガバナンス、監査証跡、統合化管理など、クラウド・コンピューティング環境で求められる管理機能を一元的に提供する製品です。Webベースのポータル画面を利用して、クラウド・コンピューティング環境全体のリソース管理を行うこともできます。

日本IBMを選択した理由について、株式会社HARP 常務取締役プロジェクト推進部長の白井芳明氏は次のように語っています。「クラウド・コンピューティングを提供しているベンダーはたくさんありますが、サービス提供基盤としてクラウド環境の構築サービスを提供しているベンダーは限られています。このうち、サービスの利用状況で課金できるといったクラウド環境で求められる基本的な機能を提供していたのが日本IBMでした。また、クラウドに関する世界標準をきちんと定めている点も評価しました。これは重要なことで、地場IT企業であっても、世界標準に準拠しさえすれば、誰でも参加できるのです」

Benefits

遠隔地が抱えるサポートへの不安を解消した日本IBM

北海道で行われている自治体クラウド開発実証事業では、クラウド・コンピューティング環境を実現するTivSAMのほか、SOA環境を実現する WebSphere Process Server、WebSphere Service Registry and RepositoryといったIBMの製品が採用されています。これらを採用したことで、柔軟性の高いHARPシステムの移行に適していること、特に電子申請システムと連携しやすい点が評価されています。

また、TivSAMベースのクラウド・コンピューティング環境への移行作業において、日本IBMのサポートも高く評価されています。北海道のように、遠隔地が抱える問題のひとつが、サポート環境が不十分になるという点です。プロジェクトの開始時は手厚い対応が行われていても、時間がたつと当初と同じ対応を得られなくなるという経験を過去何度もしてきたと白井氏は語ります。 「現在、作業を進めている段階ですが、一番感じているのが日本IBMの対応の良さです。北海道のように、距離的に遠い地域の開発案件は、最初は手厚いサポートがあっても、徐々にフェードアウトされがちです。しかし、日本IBMは発注前にしっかりとしたサポートを提供すると宣言したとおり、クラウドに関する定例会を北海道で開催したり、サポートを手厚く行っていただいたりと、いい意味で予想を裏切る対応をしていただいています。実際、我々がなにか質問をすると、日本IBMだけでなく米国本社からも回答が返ってくることがあります。こうした丁寧な対応をされるのは本当に頼もしいです」と、語っています。

自治体クラウド開発実証事業の実施責任者である株式会社HARP プロジェクト推進部 統括マネージャーの新真千恵氏は、「現在、年末に向けて開発を進めていますが、来年以降の運用フェーズにおいて、さまざまな課題が発生すると思われます。この面においても、日本IBMのサポートを期待しています」と、本格稼働に向けて、これまでどおりの手厚いサポートを期待するとコメントしています。

 

将来の展望

多くの自治体・IT企業が利用可能な自治体クラウドを目指す

自治体クラウド開発実証事業は、北海道のほか、京都府、佐賀県を中心に徳島県・大分県・宮崎県という3地域・6道府県で行われています。このうち、北海道は、大都市から小さな村まで、対象となる自治体規模がさまざまであることが大きな特長となっています。また、HARPシステムで培ってきた柔軟性も特長となっています。今後は、これらの特長を生かし、利用者である自治体と作り手である民間企業が共同利用できるクラウド環境の構築を目指すとしています。 近藤氏は、「今回の実証実験では、利用する自治体がクラウドを便利と感じていただけるかどうかが大きな評価点になると考えています。クラウドというものはこんなに容易にサービスを利用できるのかと実感されるようにしたいですね。そうなると、作り手側にも、この環境を利用してサービスを提供してみようと考える民間企業も出てきますので、地場IT企業の活性化にもつながっていくものと考えています。アイデアさえあれば、誰でも参入できるクラウド環境になるのが目標です」と、柔軟に利用できる環境作りとサービスとして利用できる利便性をゴールとして掲げています。 また、提供されるサービスに関し、白井氏は「ふるさと納税や人事給与、公有財産管理などのアプリケーションをサービス化する予定です。さらには、現在HARPプラットフォーム上で稼働している施設予約などのアプリケーションも順次移行したいと考えています。ぜひ、多くの自治体にご利用いただきたいですね」と語っています。

 

お客様情報

お客様名:北海道(外部サイトへリンク)

URL:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/

北海道は日本の総面積の約20%超を占める約83,400km2の面積を持ち、179の市町村が存在します。従来から住民サービスの向上、行政の効率化、高度化、地域経済の活性化のために「北海道電子自治体プラットフォーム構想(HARP構想)」に基づいた共同アウトソーシング方式による電子自治体の取り組みを進めています。

お客様名:株式会社HARP(外部サイトへリンク)

URL:http://www.e-harp.jp/

2004年に北海道の電子自治体専門の第三セクターとして設立され、便利で効率的な地域社会を支える電子自治体を官民協働で創り上げていくためのシステムを利用する行政側とシステムを開発する民間側をつなぐ、公的性格と民間のノウハウを併せ持つ事業体です。「自治体クラウド開発実証事業(北海道)」を北海道から受託し、中心となって推進しています。

 

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