Business Challenge story

営放システムのクラウド化を見据えたFNS標準営放システムV2

地上波テレビ局は、放送法によって放送対象地域が定められており、キー局(東京)、準キー局(大阪・名古屋)、地方局(基幹局・ローカル局)が放送網を組み、全国放送を行っています。FNSには、フジテレビをキー局とする全国28局が参加しています。特に企業規模がさほど大きくないローカル局の場合は、限られた人員の中で、ITシステム管理者を養成して、独自にIT専門組織を設け、システムを運用するのは容易なことではありません。

そこでFNS各局は、個別に情報システムを整備するのではなく、合同会議体の「FNS情報システム会議」のもとで標準化を行い、共同開発にあたるという方針を打ち出しました。この一環として構築されたのが「FNS標準営放システムV1」です。

営放システムとは、1日24時間のタイムテーブル作成を行う番組編成情報の管理から、CM販売にかかわる営業情報の管理、生放送およびVTR放送の切り替えなど放送準備情報の管理にいたるまで、放送にまつわる業務全般を扱う最も重要な基幹システムです。2004年に運用を開始したFNS標準営放システムV1は、各局のコスト削減や情報システムの運用負荷軽減などで一定の効果を上げてきました。

この成果を踏まえて、FNS情報システム会議は、さらなるシステム標準化と運用効率化を目指して、標準営放システムのクラウド化を見据えた「FNS標準営放システムV2」の検討に着手し、2010年10月に「FNS情報システムセンター」の立ち上げを決定。さらに、同センターからクラウド・サービスを提供していく事業体として、2011年4月にフィンズが設立されました。同社クラウドサービス本部の本部長兼企画部長を務める久保祐治氏は、「各局に対して満足度の高いクラウド・サービスを提供するためには、放送業界の業務を熟知し、中長期的な視点から課題解決をリードしていくことができる事業体でなければなりません。また、各局に対する中立性を維持するためには、キー局であるフジテレビの直接的な資本が入っていない事業体が望ましいと考えられました。こうした議論を重ねた結果として、フィンズがその役割を担っていくことになりました」と話します。

    Transformation

    クラウド化による共同利用を支える新たなデータベース基盤としてIBM Db2を採用

    フィンズ設立の2011年当時、クラウドでの企業システムの運用実績はほとんど見当たらず、標準営放システムのようなミッションクリティカルな基幹システムのクラウド移行は、FNS各局の間でも懸念を拭い去ることができませんでした。万が一、標準営放システムがトラブルで停止した場合、放送そのものがストップすることもありえるのです。

    そうした中で、フィンズの取り組みを支えたのがIBMです。

    「これまでもIBMには、FNS各局の情報共有基盤(イントラネット)である『FNS系列情報基盤ネットコム』の構築のほか、ネットワーク・セキュリティーの検討やアプリケーション開発など、さまざまな場面で協力をいただいてきました。そうしたIBMの技術力と実績を評価し、クラウド化を目指した早い段階からFNS情報システム会議への参加を要請し、一体となったチームとして共に課題解決に取り組んできました」と久保氏は話します。

    期待に応えるべくIBMは、サーバーやネットワークを冗長化した高可用性構成をはじめ、東日本・西日本をまたいだDR(災害復旧)体制、仮に標準営放システムがダウンした場合でも各局が放送を継続できる放送系設備(マスター)とのインターフェースなど、安全対策を徹底したクラウド環境の包括的なアーキテクチャーを策定しました。フィンズクラウドサービス本部企画部の課長を務める岩下利光氏は、「IBMの提案は私たちの要件を完全に満たすものであり、FNS情報システムセンターのサービス提供拠点として、IBMのデータセンター・サービスMCCS(Managed Cloud Computing Service)を採用することを決定しました」と話します。

    一方でフィンズが取り組んだのが、FNS標準営放システムそのもののアーキテクチャーの刷新です。これまで各局がオンプレミスで運用してきたFNS標準営放システムV1は、データベース基盤にOracle Databaseを採用していました。クラウドを通じてサービス展開を行うFNS標準営放システムV2では、これをIBM Db2に変更しました。

    フィンズクラウドサービス本部SI部の課長を務める大倉嘉氏は、この基盤変更の理由を「運用ノウハウを継承するという観点から、当初はFNS標準営放システムV2でもOracle Databaseを第一候補に検討していたのは事実です。しかし、万が一、システムに障害が発生した際に、サポートが分断してしまう不安がありました。これに対してIBM Db2であれば、データセンター・インフラからアプリケーションまでカバーしたIBMのワンストップ窓口により、迅速なサポートを受けられるという安心感がありました」と説明します。

    もう1つの大きな理由が、ユーザー価値の向上です。システムの「所有から利用へ」の転換を図る各局に寄り添ったクラウド・サービスとして、FNS標準営放システムV2は今まで以上に高い利便性とコストメリットを実現するものでなければ意味がありません。

    「例えばOracle Databaseの可用性を担保するには、RAC(Real Application Clusters)構成を導入しなければなりません。こうしたコストや運用に関する負担から各局を解放したいと考えました。また、IBMソフトウェア研究所が実施したシステム性能検証の結果も考慮した結果、IBM Db2はクラウド・サービスに最適な信頼性と拡張性を持ち、かつ大容量トランザクションに対応できるデータベース・システムとして、安定したサービスを提供できると判断しました」と岩下氏は話します。

      Benefits

      システム利用のTCOを20%削減し同時にパフォーマンスも向上

      クラウドからサービス提供を開始したFNS標準営放システムV2は、2013年3月から順次導入が始まり、同年10月にローカル23局への展開を完了しました。

      これにともない、各局が個別に運用していた8台以上のサーバーは、2台のみへと大幅に削減されました。また、このネットワークも、FNS情報システムセンターから集中的に状態監視が行われるため、各局の現場サイドでの運用負担はほとんど発生しません。

      「このFNS標準営放システムV2を、各局は従量制のサービス料金で利用することが可能です。システム初期投資の大幅削減に貢献するほか、オンプレミスで運用する場合に比べてTCO(総所有コスト)を約20%低減しています」と岩下氏は話します。また、パフォーマンスについても「従来のFNS標準営放システムV1と比べて明らかに改善され、操作が快適になった」というユーザーの声が各局から寄せられており、加えて大きなトラブルを起こすことなく安定した稼働を続けています。「IBMが提供する包括的なアーキテクチャーのもと、FNS標準営放システムV2を支えるIBM Db2は、その能力を最大限に発揮しています」と、大倉氏は評価します。

       

      将来の展望

      業界に先駆けて築いてきたサービスを系列外の放送局にも提供していく

      フィンズは今後に向けて、FNS標準営放システムV2のサービスをFNS以外の放送局にも展開していくことを目指しています。 「FNS標準営放システムV2は、放送業界の基幹システムを日本で初めてクラウド展開した試みとして、他系列の地方局からも注目されており、実際に多くの問い合わせをいただいています。次世代の業界標準システムを築いていく中でフィンズが先行してきたサービスやノウハウを、系列を越えて広く提供していくことで、ビジネスを拡大していきたいと考えています」と久保氏は話します。

      加えて注力しているのが、放送局の業務を熟知したフィンズだからこそ提供可能なサービス・ラインナップの拡充です。具体的には、「SaaS」「SaaS支援(インフラ/プラットフォーム提供)」「IaaS・PaaS(ストレージ系)」「IaaS・PaaS(通信系)」といったカテゴリーのもと、さまざまな業務システムの標準化ならびにクラウド移行を推進しています。例えばSaaS支援の分野では、FNS標準営放システムV2に続き、放送局向けトータル事務システム「ActDesk」(開発元:西日本コンピュータ株式会社)のクラウド化を推進中。同システムでもOracle DatabaseからIBM Db2への基盤変更を決定し、2015年4月のリリースを目指して開発が進められています。

      SaaS分野でもすでにリリース済みのMicrosoft ExchangeやMicrosoft SharePointを利用した「情報サービス」に続き、ファイル転送やデータ・アーカイブといったサービスの展開も検討中。フィンズは多彩なクラウド・サービスを通じて、放送業界にイノベーションを起こそうとしています。

       

      お客様の声

      株式会社フィンズ クラウドサービス本部 本部長兼企画部長 久保 祐治氏

      「次世代の業界標準システムを築いていく中でフィンズが先行してきたサービスやノウハウを、系列を越えて広く提供していくことで、ビジネスを拡大していきたいと考えています」

       

      株式会社フィンズ クラウドサービス本部 企画部 課長 岩下 利光氏

      「IBM Db2はクラウド・サービスに最適な信頼性と拡張性を持ち、かつ大容量トランザクションに対応できるデータベース・システムとして、安定したサービスを提供できると判断しました」

       

      株式会社フィンズ クラウドサービス本部 SI部 課長 大倉 嘉氏

      「IBM Db2であれば、データセンター・インフラからアプリケーションまでカバーしたIBMのワンストップ窓口により、迅速なサポートを受けられるという安心感がありました」

       

      お客様情報

      株式会社フジ・メディア・ホールディングスのITソリューション企業である株式会社フジミック、放送システムに豊富な実績を持つ西日本コンピューター株式会社、および日本IBMの3社の共同出資によって、2011年4月に設立。日本で初めて放送業界に対応したクラウド・コンピューティング環境を構築し、放送局各社に向けて共同利用型のサービスを提供している。

       

      テクノロジープラットフォーム

      ソフトウェア

      サービス

      • IBM マネージド・クラウド・コンピューティング・サービス

      Solution Category

    • IBM Hybrid Cloud