移行作業が1 回で済み、移行コストを削減できました。また、これまでのように特別な保守延長サービスではなく、製品標準の保守サポートを受けることができるのもメリットです

—株式会社 りそな銀行 システム部 グループリーダー 一井 豊氏,

Business Challenge story

ジャンプアップによるOSの移行を模索

りそな銀行の基幹システムは、2002年のシステム再構築でハブ&スポーク型を採用。「コミュニケーション・ハブ」と呼ばれるシステム連携基盤を中核に、年金信託システムや勘定系システムなどが疎結合されています。最大の特長は、りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行のりそなグループ3行が同じプログラムを使っていることです。

この基幹システムが稼働しているメインフレームに搭載されていたオペレーティングシステム(OS)「z/OS V1.6」は、製品サポートが終了しており、特別な保守延長サービスを利用していましたが、この保守サポートもやがて終了することからOSをバージョンアップすることが必要でした。また、この保守延長費用の削減も取り組むべき課題の一つになっていました。

りそな銀行 システム部 グループリーダー 一井豊氏は、「一般的には、互換性のある上位バージョンに移行するのがリスクも少なく、問題が発生した場合も比較的短時間で元に戻せます。しかし互換性のあるz/OS V1.10も、その時点では保守期限が終了しており、2段階のバージョンアップが必要でした」と、2012年1月の検討開始当時を振り返ります。また互換性のあるソフトウェアでも、基幹システムの移行作業では、すべてのアプリケーションの動作テストをしなければ品質を保つことができません。そのため移行作業には、かなりの労力とコストが必要になります。一井氏は、「移行作業を2回繰り返すのは、労力的にも、コスト的にも現実的とはいえませんでした」と語ります。

そこで2012年度上期より、「ジャンプアップ」(製品サポートのある移行パスを越えた大幅なバージョン間の移行)によりOSをz/OS V1.6からz/OS V2.1に、勘定系のデータベース(DB)をIMS V9からIMS 13に移行するためのプロジェクトを立ち上げ、実現の可能性や制約などについて、IBMの技術者やりそな銀行の基幹システムをサポートするNTTデータソフィア株式会社(以下、NTTデータソフィア)の技術者とともに検討を開始しました。

    Transformation

    米国IBM本社で開発チームとミーティングを実施、入念な検討を実施

    ジャンプアップによる基盤ソフトウェアの移行を検討するにあたり、りそな銀行では2012年11月と2013年10月、米国ニューヨーク州アーモンクのIBM本社を訪れ、開発チームとのミーティングを実施しました。1回目の訪問では、ジャンプアップによる移行の可能性を確認し、2回目の訪問では最新バージョンの仕様やリリースのスケジュールを確認しています。

    一井氏は、「旧システムでは、IMSバージョンアップの経験があったので、IMS 13にジャンプアップしても基本的には大丈夫だろうと思っていました。ただし前回のV7からV9の時は移行パス内でしたが、今回は範囲外となります。そこで特に互換性に関わる問題の情報を集め、プロジェクトをスタートする前に十分な検証が必要でした。そこで渡米してIBMの開発チームに話を聞くことにしました」と話します。 

    しかもz/OS V2.1も、IMS 13も正式出荷(GA:General Available)前であり、IBMの海外開発部門を含めた全社的なサポートが得られることがジャンプアップの必要条件でした。りそな銀行 システム部 グループリーダー  片山光輝氏は、「GA前に基盤ソフトウェアのジャンプアップを決めるのは、日本の銀行では初めてのケースであり、NTTデータソフィアとも情報収集と検証を入念に繰り返しました」と話します。

    NTTデータソフィア システム管理本部 システム管理部 シニアプロジェクトマネージャ平山文昭氏は、次のように語ります。「ジャンプアップは、移行パスが保証されていない作業が多かったので、移行作業時に、やるべきこと、やってはいけないことを事前に確認することが必要でしたが、IBMのサポートは非常に的確でした」。

    IBMの開発チームやNTTデータソフィアの担当者と仕様や品質、スケジュール、サポート体制などを協議した結果、ジャンプアップは可能であると判断。りそな銀行では、2013年6月にGA前のz/OS V2.1 ESP(Early Support Program)版を入手し、基盤ソフトウェアの導入作業および検証作業を開始しました。

    平山氏は、「z/OS V2.1のESP版では、約2週間ごとに公開されるPTF(Program Temporary Fix)を適用することに若干の労力が必要でしたが、IBMのサポートがあったので特に問題もなく対応できました」と話します。さらに2013年9月には、z/OS V2.1のGA版による本格的な構築・検証作業を開始しました。

    稼働している業務システムで捉えると、まずは2013年2月から基幹システムの設計および構築を開始。その後、2014年3月には基幹システムの中核となるコミュニケーション・ハブを本番稼働させ、引き続き同年11月に年金信託システムを本番稼働して、2015年1月に勘定系システムを本番稼働するというスケジュールで進められました。

    コミュニケーション・ハブは、z/OS V2.1の上で稼働するIBM WebSphere Message Brokerで実現されています。片山氏は、「コミュニケーション・ハブは、止まると全システムに影響を及ぼす重要な仕組みです。そのため安全・確実に他のシステムをつなぐことが必要ですし、非常に短期間での本番稼働も求められました」と話します。

    本番稼働後の状況を一井氏は、「テスト環境ではうまくいっても、本番環境に移すと問題が発生することはよくあります。そこで本番データを使って新システムを動かし、旧システムと同じ結果になることも確認しました。本番稼働後に、システム全体に影響を及ぼす問題は発生していません」と話しています。

      Benefits

      ジャンプアップで作業を効率化しコストを削減

      基盤ソフトウェアをジャンプアップで移行した効果を、一井氏は「移行作業が1回で済み、移行コストを削減できました。また、最新の基盤に移行することで、これまでのように特別な保守延長サービスではなく、製品標準の保守サポートを受けられることがメリットです」と話します。さらに「最新の基盤ソフトウェアを導入したことで、これまでは独自に開発しなければ使えなかった機能を標準機能で利用することも期待できます」と続けます。

      またリスクコントロール面での取り組みを片山氏は、次のように語ります。「IBMから技術的には可能であるという報告はもらえていましたが不安はありました。そこで、まずは作業が順調に進んだ場合の計画を立て、要所要所にチェックポイントを設けて、随時確認を行いました。もし修復不能な問題が発生し、予定どおりに進まなかった場合には、チェックポイントに応じてリカバリーが可能な予備のプランも確立しておきました」。

      特にコミュニケーション・ハブの移行では、短期導入および本番稼働が必要なこと、1つの問題が全システムに影響することから、段階的、効率的に作業することが必要でした。また年金信託システムや勘定系システムは、一括移行が必要なことから、もし問題が発生したときには、バックアップから旧システムに復旧させる手順を、システム面はもちろん、業務オペレーションの面でも確立しておかなければなりませんでした。

      一井氏は、「問題対策の手順を銀行全体で見直すことができたのは、銀行にとっても大きな意味がありました。今回作成した手順書は、使う人の判断が必要ない、誰が使っても同じ結果が出せるものになっています。このような“あたりまえのことを、バカにせず、ちゃんとやる”ことが重要であり、りそな銀行では「ABC経営」と呼んでいます。ただし今回は、無事に移行が終了したので手順書を使うことはありませんでした」と話します。

      一方、IMS 13へのジャンプアップについて片山氏は、「IMS 13のジャンプアップは、GA版のリリースまで待って作業したので、こちらも短期間での導入が必要でした。ただIMS 13へのジャンプアップも移行計画がきちんと作成されていたので、予定どおりに終了することができました」と話します。

      IMS 13にジャンプアップした効果を平山氏は、次のように語ります。「ログ出力などの機能が強化されたので、業務処理の性能がかなり向上しています。たとえば、20ms程度かかっていたトランザクション処理が1桁のms単位まで高速化したり、2時間以上かかっていたバッチ処理が半分程度の時間で終わっていますので、夜間処理でも安心して朝を迎えられています」。

      今回のジャンプアップの成功についてNTTデータソフィアの常務取締役 システム管理本部長 梅田進一氏は、「基幹システムは、IBM製品だけで構築されているわけではありません。そこでジャンプアップ後に、他社製品が問題なく動くことを一つ一つ確認することも必要でした。非常にリスクの大きい作業でしたが、常に現場で何が起きているかを確認し、情報交換をしたことが成功のポイントだったと思います」と話しています。

       

      将来の展望

      24時間365日サービス提供に向けた基盤を実現

      お客さまのライフスタイルの変化に合わせてサービスの向上を図るとともに、全銀が24時間365日稼働に向けた検討を行っていることも踏まえて、りそな銀行としても24時間365日稼働を検討していく必要があります。これまでの為替取引は15時までで、他行向けの決済処理は15時で終了でしたが、全銀が24時間365日稼働になると、土曜日や日曜日にも他行からの為替取引を処理することが必要になります。

      片山氏は、「銀行としても、こうした変化に柔軟かつ迅速に対応していくことが必要になります。そのためにはシステムを停止することなく、メンテナンスができる24時間365日稼働の基幹システムが必要になります。今回の基盤ソフトウェアの移行により、そのためのシステム基盤を構築することができました」と話します。

      また一井氏は、「旧システムでも24時間365日稼働は可能ですが、かなりの機能を独自に構築しなければなりません。最新のOSとDBに移行し、新しい機能を標準的に利用できるようになったことで、より少ないコストで、より早く、変化に対応できる環境が整いました。今後も最先端の技術情報の提供や最新化の提案などをIBMには期待しています」と話しています。

       

      お客様の声

      株式会社 りそな銀行 システム部 グループリーダー 一井 豊氏

      「移行作業が1回で済み、移行コストを削減できました。また、これまでのように特別な保守延長サービスではなく、製品標準の保守サポートを受けることができるのもメリットです」

       

      株式会社 りそな銀行 システム部 グループリーダー 片山 光輝氏

      「GA前に基盤ソフトウェアのジャンプアップを決めるのは、日本の銀行では初めてのケースであり、NTTデータソフィアとも情報収集と検証を入念に繰り返しました」

       

      NTTデータソフィア株式会社 常務取締役 システム管理本部長 梅田 進一氏

      「ジャンプアップにより他社の製品も問題なく動くことが必要であり、一つ一つ確認することが必要でした。非常にリスクの大きい作業でしたが、現場で何が起きているかを常に確認し、情報交換をしたことが成功のポイントだったと思います」

       

      NTTデータ ソフィア株式会社 システム管理本部 システム管理部 シニアプロジェクトマネージャ 平山 文昭氏

      「ログ出力などの機能が強化されたので、20ms程度かかっていたトランザクション処理が1桁のms単位まで高速化したり、2時間以上かかっていたバッチ処理が半分程度の時間で終わっていますので、夜間処理でも安心して朝を迎えられています」

       

      お客様情報

      首都圏および関西圏という2大都市圏を中心にリテール重視の事業を展開。個人顧客に対しては「トータルライフソリューション」を、法人顧客に対しては「成長・再生・承継ソリューション」を提供しています。

       

      テクノロジープラットフォーム

      ハードウェア

      • IBM zEnterprise EC12

      ソフトウェア

      Solution Category

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