Business Challenge story

大きな負担となっていた統計検定ツールのレンタル・コスト

農薬やさまざまな化合物の安全性を確保するために必要な各種試験を行う残留農薬研究所は、1970年に設立され、東京都小平市で試験を開始しました。その後茨城県に移転し、施設を拡充しながら多様な試験に対応。2012年には一般財団法人に移行し、安全な農薬の開発に貢献しています。

残留農薬研究所で行う安全性試験では農薬が与える影響について統計結果に基づく検定を実施しています。そのためには統計検定ツールが欠かせないのですが、SPSSと他社製品を併用していました。両者を試験によって使い分けていましたが、複数のツールが混在していることから操作方法をそれぞれ覚えなければならず、他社製品は年間レンタル契約であったため毎年膨大なコストが掛かっていました。またこの製品は一定の入力フォーマットでなければ処理できなかったため、統計データを基に人手を介して成形する必要があり、そこに多くの手間を要していました。さらに出力された結果についても人が確認して帳票に移さなければならず、その部分でも労力を要していました。

安全性試験は部署ごとに個別に行われ、それぞれが試験結果を管理するツールを用意していましたが、全体を統合的に管理する仕組みは整っていませんでした。また統計検定は各種検査装置から得られるデータを基に行う場合と、すでに帳票として出力されているデータを基にさらに統計検定を行う場合があり、両者のデータを統合するニーズが高まっていました。

こうした課題を抱えていた残留農薬研究所では、管理ツールが新しい検査機器に対応できなくなるなどの問題を契機にシステム全体を見直す取り組みに着手しました。

Transformation

統計検定ツールをSPSSに統一し、安全性試験システムと連携

こうした課題を解決するため、残留農薬研究所は複数のベンダーを対象にコンペを実施。その結果、統計検定ツールをSPSSに統一することを提案したケイレックス・テクノロジー株式会社(以下、ケイレックス・テクノロジー)が選ばれました。ケイレックス・テクノロジー 取締役 技術総括 川瀬 英路氏はその評価ポイントについて以下のように説明します。

「ほかのベンダーはSPSS 以外のツールに統一する提案をしていましたが、ケイレックス・テクノロジーはSPSSに統一する方法を提案しました。統計検定の中にはSPSSでは処理できないものがあったのですが、その処理を行うエンジンを別途開発してSPSSと併用する仕組みを提案したところ、その方法が採用されました。残留農薬研究所は可能であればSPSSに統一することを希望していたのですが、それはレンタル・コストの問題IBMお客様導入事例のほか、これまではSPSSの使用頻度の方が高かったので、SPSSに統合した方がデータ移行の手間が掛からないということも踏まえて、ケイレックス・テクノロジーのソリューションにSPSSを組み込みました」。

ケイレックス・テクノロジーの提案は、同社が開発した安全性試験システムで試験結果を一元管理し、SPSSと連携することで統計検定から報告書作成までの処理を自動化する仕組みを整えるものです。各種検査機器とはシームレスに連携するほか、目視で確認した検査結果についてもその内容を入力したデータを統合的に管理します。安全性試験システムはSPSSとの連携を前提としているため、その点からも残留農薬研究所の要望に応える提案となっていました。

ケイレックス・テクノロジー システム開発部 プロジェクトマネージャー 藤田 陽子氏は、提案に盛り込まれたセキュリティー対策について以下のように説明します。

「それまで紙で保管していたものについては、出力前のデジタル・データをGLP(農薬の毒性及び残留性に関する試験の適性実施について:農林水産省農林園芸局長通知)に適合した生データの状態でデータベースに保管することにしました。新しいシステムではユーザー管理機能が整備されているので、データごとに許可されたユーザーしかアクセスできない仕組みになっており、セキュリティーのレベルは格段に向上しています」。

新しいシステムの構築は2012年2月から始まり、同年末には基本的な仕組みが整いました。本格的な稼働は2013年12月が予定されていますが、統計検定ツールであるSPSSの利用は2012年末から開始されています。

Benefits

ランニング・コストを削減しつつSPSS の機能を活用して統計検定処理を自動化

検定ツールを統一した成果としては、まずは大幅なコスト削減が挙げられます。

「それまで他社製品の毎年のレンタル・コストが相当な額に及んでいました。今回のシステム刷新で新しいバージョンのSPSS Statistics Desktopを導入していますが、その導入コストを含めても将来的に大幅なランニング・コストの削減につながり、年数を重ねるほどにコスト削減効果は大きくなる見込みです」(藤田氏)。

新しいバージョンであるSPSS Statistics Desktopには新たな機能が充実していたこともシステム構築に際して有効であったと川瀬氏は言います。

SPSSで処理している検定手法

  • 一元配置分散分析
  • Kruskal‐Wallis の順位検定法
  • Dunnett の多重比較検定法
  • Student のt検定
  • Aspin‐Welch の検定
  • Mann‐Whitney のU 検定法
  • Fisher 検定
  • Chi‐square 検定
  • 生存時間解析(Kaplan‐Meier 法、Logrank 法)
  • Jonckheere の傾向検定
  • 直線回帰分析

「SPSS Statistics Desktopでは機能が充実していたため、処理可能な検定手法の種類が増えていました。当初SPSSでは処理できない部分は別途開発する予定でしたが、機能が増えたことにより当初の想定よりも作り込む手間が削減されました」。

新しいシステムでは、データベースの情報をファイルに書き出し、SPSSを起動させつつそのファイルを引き渡して統計検定を実施。その結果はSPSSのファイルとして出力され、解析された上で帳票として保存されます。こうした一連の処理はシステムが自動的に行うため、統計検定の過程では人手を要することはありません。従って正確な処理が効率的に行われ、セキュリティー・レベルの向上も実現しています。この自動化はSPSSのバッチ起動の機能を活用して実現しています。この機能がなければ検定ツールの起動部分を手動で行う必要があり、完全な自動化は実現できません。

「SPSSに引き渡すファイルは標準的なフォーマットに書き出せばいいので、データベースから書き出す際に特別な加工処理を加える必要はありませんでした。従ってSPSSと連携する仕組みの構築は非常にスムーズに進みました。検定は一度で終わるとは限らず、その結果を基に再度検定を行うケースも珍しくありません。検定結果を人が確認して再検定を行うというプロセスでは時間を要してしますので、決定木の仕組みを活用して、再検定の過程をすべて自動化しています。また従来の環境の場合、再検定を行うデータを紙から再度手入力していた場合もあったので、その手間を削減すると同時に検定の精度向上にも貢献しています」(川瀬氏)。

このように新しい仕組みが整ったことにより、検査装置からデータを取り出し、統計検定の処理から帳票出力までの過程を従来は3 名で行っていたところ、現在では1 名で担当する体制になっています。

 

将来の展望

さらなる効率化を促進し、農薬やさまざまな化合物の安全性向上に寄与

SPSSと連携した新しいシステムが整ったことで、残留農薬研究所では、必要なデータが電子化された状態で一元管理されるようになりました。こうしたデータが蓄積されれば、新たなデータの活用方法を検討するなど、試験・研究成果のさらなる広がりが期待されます。また今後はSPSS Statistics Desktopのライセンス数を増やし、さらに効率的な統計検定の実現を見据えています。

今回、残留農薬研究所では安全性試験についてのシステムを整えましたが、現在ケイレックス・テクノロジーの協力の下、タブレット型端末を用いたデータ収集システムの開発も進めています。そこでもSPSSとの連携を行い、データの一元管理、処理過程の自動化を実現する予定です。

「こうした新しいシステムを開発するに当たってはSPSSの機能がより充実すればさらに作り込みの手間が削減されスムーズな連携が実現しますので、今後の製品の充実には期待しています」(川瀬氏)。

こうした取り組みを重ねることにより、残留農薬研究所ではさらなる効率化を図り、精度の高い試験を通じて農薬などの安全性向上に寄与することでしょう。そして人々が安心して暮らすことのできる社会づくりを強力にサポートしていきます。

 

お客様の声

“SPSSに引き渡すファイルは標準的なフォーマットに書き出せばいいので、データベースから書き出す際に特別な加工処理を加える必要はありませんでした 。従ってSPSSと連携する仕組みの構築は非常にスムーズに進みました”

ケイレックス・テクノロジー株式会社 取締役 技術総括 川瀬 英路氏

“今回のシステム刷新で新しいバージョンのSPSS Statistics Desktopを導入していますが、その導入コストを含めても将来的に大幅なランニング・コストの削減につながり、年数を重ねるほどにコスト削減効果は大きくなる見込みです”

ケイレックス・テクノロジー株式会社 システム開発部 プロジェクトマネージャー 藤田 陽子氏

 

お客様情報

農薬やさまざまな化合物の安全性を確保するために必要な各種試験を行う残留農薬研究所は、1970 年に設立され、東京都小平市で試験を開始しました。その後茨城県に移転し、施設を拡充しながら多様な試験に対応。2012 年には一般財団法人に移行し、安全な農薬の開発に貢献しています。

 

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先端テクノロジーをベースにアプリケーションソリューショ ン、装置ソリューション、半導体ソリューションなど、さまざま な分野のソフトウェア開発をサポート。確かな技術力を駆使 して、お客様のニーズに高い次元で応えるソリューションを提供している。

 

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