生成AIで「お客様の声」を業務運営に活かすDXを推進

あんしん生命は、「お客様の声」の分類・分析にIBM watsonx.aiを活用し、顧客理解の高度化と業務効率化を実現しました。

An Asian working lady is checking documents at a café
「お客様の声」分類業務の効率化・分析高度化に挑む

東京海上日動あんしん生命保険株式会社(以下、あんしん生命)は、「お客様本位の業務運営」の実現に向け、「お客様の声」を業務改善やサービス品質向上に活用する取り組みを進めてきました。

電話、ホームページ、アンケートなど、様々な顧客接点から収集される「お客様の声」は、年間1万8000件にのぼります。これらの非構造化データの読み込み・分類業務は、最近まで一件一件目視で行われていました。膨大な時間がかかることはもちろん、人的判断による分類のばらつきも課題となっており、「お客様の声」を迅速に活用し業務に反映させるための壁となっていました。

過去に生成系ではないAIによる分類も検討されましたが、従来型の機械学習では大量の学習データの準備や再学習の手間が大きいことなどから、想定していた精度を維持し続けるのは困難な状況でした。

約75% 「お客様の声」1件あたりの読み込み・分類における処理時間が約75%短縮され、7〜8分から2〜3分に 500時間 削減された年間あたりの作業時間
プロジェクト成功のポイントは共創、柔軟性、スピードにありました。今回の取り組みを横展開するとともに、新しい領域にも生成AIの活用を広げていきたいです。
今給黎 宏治 氏 東京海上日動あんしん生命保険株式会社 IT企画部 デジタル支援グループ課長
共創・柔軟性・スピードで課題を克服

この課題に対し、あんしん生命はIBM Client Engineeringと共創し、IBM® watsonx.ai を活用した分類・分析モデルの開発に着手しました。プロジェクトは、ビジネス部門とIT部門が連携し、両者の知見を融合させながら進行。ビジネス部門が要件定義とユーザーテストを、IT部門がプロジェクトマネジメントとアーキテクチャー設計を担当し、IBMは実装案の提示と生成AIに関するナレッジ提供を行いました。週次サイクルでアジャイル開発を進めることで、スピード感のある取り組みが実現しました。

第一段階では「業務効率化」に焦点を当て、電話などの「お客様の声」データを生成AIに取り込み、業界共通の約40種のコードに分類。第二段階では「分析の高度化」を目的に、自社で設定した重要キーワードをハッシュタグとして抽出し、クラスター分析を行うことで、これまで困難だったテキストデータの分析が可能になりました。

分類・分析の精度においては、watsonx.aiの自然言語処理技術と検索拡張生成(RAG)を組み合わせることで、高精度と柔軟性の両立を実現。セキュリティー面でも、IBM Cloud上でwatsonx.aiを稼働させているため、安心して個人情報を扱うことができました。

プロジェクトの円滑な進行を支えたのは、ビジネス部門とIT部門がタッグを組む「アプリケーションオーナー制度」という枠組みです。PoCからスモールスタートで本格開発へと進めることで、必要な機能の見極めと適切なリソースの投入が可能になりました。また、精度は最初から完璧を求めず、70〜80%を目安に「まずは動かしてみる」という姿勢で挑むことで、取り組みが活性化し、スピード感を保ったままプロジェクトを前進させる一助となりました。

今回のプロジェクトを担当した、あんしん生命IT企画部 デジタル⽀援グループ課⻑の今給黎 宏治 (いまきいれ こうじ)氏は、プロジェクトを円滑に進めるポイントについて次のように語ります。「生成AIに対し、『何でもやってくれる万能ツール』という過信を避けつつ、かつ過小評価にも陥らないよう、各部署の期待値コントロールが鍵になります。そのためにも、週次のアジャイル開発で実際に動くプロダクトを用いながら都度ユーザー検証を行い、改善を重ねていくことで、ユーザー部門の皆さんにも納得感を持ってプロジェクトに取り組んでもらうことが大切です」。

業務効率化と同時に、見えなかった傾向までも明らかに

生成AIの導入により、業務効率化・分類標準化・データ活用・メンテナンスの4つの観点から以下の改善が見られました。

  • 業務効率化
    実証実験では、手作業で7〜8分かかっていた分類・承認作業が2〜3分に短縮され、約75%の効率化を達成。年間500時間(約20営業日)に相当する時間が創出されました。
  • 分類標準化
    AIが判断根拠を提示することで根拠の「見える化」を実現。これまで課題だった担当者による分類判断のばらつきが解消されました。
  • データ活用
    キーワード抽出によるクラスター分析や関連キーワードの可視化により、非構造データから有益な示唆を得られるように。従来の分析では見えなかった「お客様の声」の傾向が明らかになり、仮説立案や施策検討の精度向上につながっています。
  • メンテナンス
    システムプロンプトとRAGの活用により、新商品のローンチや情報更新の際にファインチューニングを通す必要がなく、メンテナンスの手間削減へ繋がりました。

今給黎氏は、「今回の取り組みにより、あんしん生命社内でも生成AI活用の機運が高まっています」と言います。同社では、生成AIの本番導入後もプロセスの見直しを積極的に行い、さらなる業務効率化に動き出しています。実際に、分析段階のPoCでは200種類以上のコードが使用されていましたが、本番運用後はそれを使用せずスリム化した運用を検討中。「生成AIを使う前までは分類業務だけでも膨大な時間がかかっていたので、効率化まで考える余裕がありませんでした。現在は他の既存プロセスの見直しを行う余裕ができています」と今給黎氏は話します。

あんしん生命 取締役 山本 弘二氏は、「これまで気づけなかったお客様の声の傾向が見えてきたので、今後はそれに対する仮説を立て、効果的な打ち手が出せるようにしたいと考えています」と展望を語ります。

今後、あんしん生命はこの仕組みを他部署にも展開し、生成AIの可能性を新しい領域で試し、チャレンジを続けていく方針です。

あんしん生命は生成AIの活用を通し、多様化していく顧客ニーズをいち早く読み取り、事業戦略に柔軟に反映できる仕組みづくりを進めています。そして、この成果を本番環境へ移行することにより創出される人間の仕事の価値発揮を通じて「お客様本位の業務運営」を強化し、顧客対応・商品・サービスの拡充を進め、保険業界に新たな価値を創造することを目指しています。

IBMロゴ
東京海上日動あんしん生命保険株式会社について

東京海上日動あんしん生命保険株式会社は、東京海上グループの一員として、生命保険を通じて人々の安心を支える企業です。お客様の信頼をあらゆる事業活動の原点におき、生命保険事業を通じて「あんしん」を提供し、豊かで快適な社会生活と経済の発展に貢献しています。

製品・サービス IBM® watsonx.ai IBM Client Engineering IBM® Consulting
watsonx.aiで、ビジネスの未来を切り拓く

顧客対応の効率化からワークロードの軽減まで、 IBM watsonx.ai で日々の業務にAIを活用しましょう。 AIをシンプルかつスケーラブルに構築できる統合AI開発スタジオです。

watsonx.aiで業務効率化 無料評価版を試す
法務

© Copyright IBM Corporation 2025. IBM、IBMのロゴは、IBM Corp.の商標であり、世界の多くの管轄区域で登録されています。本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国または地域であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

引用または説明されているすべての事例は、一部のクライアントがIBMの製品を使用し、達成した結果の例として提示されています。実際の性能、コスト、削減効果、またはその他の結果は、運用環境によって異なる場合があります。