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お客様事例
オーストリア連邦国防省(BMLV)
オーストリア連邦国防省(BMLV)は中央文書局(ZentDok)を運営しており、ユーザーの信頼性と透明性を特に重視しています。ZentDokは、人間による介入が依然として必要であることから、人間参加型の原則に従いつつも、品質保証を可能にするAIソリューションを探していました。同局は、どのようなソリューションであっても、情報源が追跡可能であること、ハルシネーション(幻覚)のリスクを最小限に抑えられること、情報源の品質、関連性、信頼性をユーザーに通知できること、を条件として求めていました。それに加えて、同局はカスタマイズ可能なユーザー・インターフェイスと使いやすいアクセス管理を提供する必要がありました。
このような要件に対応できる「既製の」業界ソリューションは存在しないため、IBM Austriaは、複数の専門家から成るIBM® Client Engineeringチームを派遣し、ZentDokチームと協働しました。彼らは協力して、最小実行可能製品(MVP)を開発し、要件の実現可能性を検証しました。こうして誕生した「ChatZentDoc」は、以下の機能を備え、他のソリューションとは明らかに一線を画していました。
IBM Client Engineeringの手法では、専門家の指導の下、使用する製品に精通することができるというメリットがお客様に提供されます。ZentDokはデータ収集に長年IBMのテクノロジーを利用しており、また2016年からは、自然言語処理(NLP)にIBM® Watson Explorerソリューションも利用しています。そこで、BMLVはIBM® watsonx.aiのAIスタジオ・テクノロジーを導入することにしました。
ChatZentDocでは、NLPを利用して事実に基づいた回答を提供するインターフェイスが登場しました。特別に開発されたフロント・エンドでは、ユーザーはデータベースにクエリーを実行し、フィルター・オプションを使用して回答を抽出することができます。そしてその回答は、ソース・ドキュメントとともにエクスポートできます。ChatZentDocは、必要な適時性を確保するため、毎日更新される情報を使用して実行します。こうして、いわゆるOSINT(オープンソース・インテリジェンス・ツール)が作成されました。このツールは、行政の他のアプリケーションにも使用できます。
野心的なスケジュールにもかかわらず、非常に効率的なコラボレーションを実現
ZentDokを率いるKlaus Mak大佐は、IBMとのコラボレーションを、大きな効果をもたらす、非常にプロフェッショナルなものだったということで、次のように述べています。「最初のプレゼンテーションの質の高さに、私たち全員驚きました。これほど迅速に成功を収めたプロジェクトは他にはありません」
次のステップは、他の部署のユーザーがこのツールの機能を検証できるようなテスト環境を作ることです。そのためには、生成AIとNLPに対応するためのトレーニングと教育が必要です。「私たちは今、まったく新しい世界に入ろうとしています。ユーザー・プロンプトが不可欠であり、ユーザーの能力は今後ますます重要になります」
溢れんばかりの圧倒的な量のデータが存在する時代に行動する能力
IBMのBenedikt Klotzは、「オープンソース・インテリジェンスは、大量の非構造化データを検索、分析する必要がある分野で広く使用できます。公共部門向けのAIソリューションは、GDPR、ITセキュリティー法、EU AI法といったセキュリティーや規制条項に関して、常に特定の課題をもたらしました。このパイロットで得られた経験は、機密データを扱う他のビジネス分野にも役立てられます」と説明します。
Mak氏は、AIをハイブリッド脅威に対処するための強力なツールであると考えています。「人間の知能を使って大量のデータを観察することはできますが、評価することはできません。ただし、そのようなデータの評価と分類は、リスク・シナリオに照らして行動するための前提条件と言えます」
オーストリアのIBM Client Engineeringチームは、このAIプラットフォームを他の環境にも導入できるよう開発を続けています。IBM® Consultingの協力を得ることで、MVPへの取り組みが継続され、ZentDokはさらなる要件を評価できます。提携の次のステップとして、watsonx.aiを信頼できる生成AI用のプラットフォームとして使用することを計画しています。Mak氏は、このツールに大きな可能性を見いだすと同時に、法的にも安全な方法でこのツールを導入し運用するためにトレーニングを行う必要性も感じています。
AIの導入を推進する姿勢とは対照的に、Mak氏はこのソリューションが、生成AIの文脈において懸念されることの多い雇用の喪失につながるとは考えていません。人間参加型の原則では、生成AIが非構造化データから抽出する洞察は、常に最終決定権を持つ意思決定者をサポートするものとして理解されています。したがって、Mak氏によれば、高い能力を持つ人材は、少なくなるどころか、むしろより多く必要とされます。「これを実現できたことをうれしく思います。このプロセスを迅速かつスムーズに実行してくれたIBMに感謝しています」と彼は述べています。
オーストリア連邦国防省(ドイツ語:Bundesministerium für Landesverteidigung、略してBMLVまたはVerteidigungsministerium)(ibm.com外部へのリンク)は、軍事、特にオーストリア軍に関連するすべての業務を担当する省庁です。
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引用または説明されているすべての事例は、一部のクライアントがIBMの製品を使用し、達成した結果の例として提示されています。他の運用環境における実際のパフォーマンス、コスト、節約、またはその他の成果は異なる場合があります。