Business Challenge story

戦略的な情報活用による農業改革が急務に

北海道農業協同組合中央会の電算機研究部を母体とし、1974年に設立されたJA北海道情報センターは、JAの経営改善に寄与すべく、一貫してシステム開発ならびに提供、データ処理を担ってきました。そして現在、同センターでは、道内83カ所のJAならびに関係事業体のユーザーに向け、勘定系システム(財務会計、組合員勘定、販売、購買、給与、固定資産など)や情報系システムを提供。これらのシステムを利用するクライアント数は約6,000台に達しており、年々増加している状況にあります。

同センター開発部の部長を務める藤岡健吾氏は、「農業もただ農作物を作れば売れるという時代は過去の話となっており、旧態依然とした方法では農家所得の拡大を図ることができません」と話します。

農業を取り巻く情勢は、WTO農業交渉やEPA交渉など国際化の進展、さらに昨今の原油高をはじめとする世界的な資源価格の高騰による農業用生産資材・配合飼料の高騰等から一層の厳しさを増す状況であり、JAごとの創意工夫が必須となっています。例えば、夕張メロンのように作物のブランド化によって付加価値を高める、あるいは作物の品種や出荷時期、出荷場所などを変更するといった戦略的な取り組みにより、収益には大きな差が表れてくるのです。

ただ、こうした市場の“読み”を、従来は各JAの専門家の勘と経験に頼っていました。より正確かつ迅速に市場の状況を把握し、的確なアクションをとるためには、統計的なアプローチからさまざまな情報を分析する仕組みが必要でした。そこで2003年、同センターは基幹業務システムをメインフレームからオープン系に移行したのに合わせ、BIシステムを構築しました。ただ、当初は順調な立ち上がりを見せたシステムでしたが、歳月を重ねるうちに次第に限界が見え始めました。

「私たちにとってはうれしい悲鳴なのですが、各JAでの利用頻度の高まりにつれて要求も高度化し、既存のBIシステムでは対応できなくなってきたのです」と藤岡氏。

また同センター開発部プログラム維持課の調査役を務める渡辺隆義氏は、次のように説明します。

「各JAの担当者から最も多く要求されていたのが、異なる複数のデータ・テーブルをつないで自由な検索を可能とするオブジェクト間結合の機能です。当時のBIシステムに用いていた基盤ソフトウェアはこの機能を有しておらず、ユーザーはデータウェアハウスから大量の情報を一括してダウンロードし、改めてExcelに再入力するといった手間をかけて分析やレポート作成を行わざるをえませんでした。このように機能面の制約が多く、抜本的な拡張も図れないという壁に直面していたのです」

Transformation

過去5年間の農業情報を自由に活用するBIシステムを再構築

そこで2008年10月、JA北海道情報センターはBIシステムの核となる新たな基盤ソフトウェアの導入検討に乗り出しました。

これまで各JAから寄せられてきた多様なニーズを要求仕様書にまとめ、複数のベンダーに開示。「ベテラン担当者による項目ごとの評価点数方式により、各ベンダーから提案されたソリューションを総合的に評価しました」と藤岡氏は話します。

こうした経緯を経て、同センターが採用を決定したのがCognos 8 BIです。

2003年のBIシステム導入時に構築されたデータウェアハウスには、各JAの経理情報はもとより、農作物の出荷から市場仕切り、生産、営農資材(肥料、飼料、温床資材など)の購入、農家の家族情報、信用情報に至るまで、多岐にわたる農業関連情報が過去5年間にわたって蓄積されています。また、これらの情報は参照用テーブルとしてデータマートに展開されています。Cognos 8 BIは、このデータマートの情報をデータ分析用の論理モデルや定形レポートとしてBIサーバー上に展開。さらに、イントラネットを通じて各JAに向けてサービス提供を行います。 <下記「参考資料」の「システム構成図」を参照>

各JAは仲間であると同時に、市場では独立した事業体としてライバル関係にもあります。また、提供情報の中には各農家の個人情報なども含まれます。従ってサービス提供にあたっては、厳重なセキュリティーを確保することも重要なポイントでした。

こうした新たなBI環境のもと、サービスを利用する各JAの担当者は、Cognos 8 BIが持つレポーティング、データ分析、データ検索などの機能をWebベースのユーザー・インタフェース上で活用。自由なデータ検索やレポートのカスタマイズを行い、マーケティング分析や経営分析、資産管理、農家向けの情報提供サービスなど、さまざまな業務に活用することができます。

例えば、過去の出荷実績から特定の農産物の時期による需要傾向を読み取り、さらにその生育過程で費やされる営農資材のコストを組み合わせて分析することで、「最も高い収益を得られる生産計画」を、各JAの都合や事情に応じて立案することなどが可能となります。

また、そもそもJA北海道情報センターがBIに着目した背景には、「各JAの要求に沿って作成している膨大な類似帳票の維持管理をなんとか省力化したい」(藤岡氏)という思いがありました。Cognos8 BIは、複雑な帳票レイアウトや分析も直感的な操作で行うことができるため、対応をこれまで以上にエンドユーザー自身に任せられます。その結果、爆発的に膨らんでいく個別要求からの“手離れ”を実現できるのです。

なお、基盤ソフトウェアとしてCognos 8 BIを採用した背景には、IBM製品ならではのサポートやサービスに対する信頼もあったといいます。

「検討段階では各ベンターに同じ課題を提示し、サンプルのレポートを作っていただきましたが、Cognos 8 BIは見た目の表現力でも他社製品をリードしていました。また、IBMは単に結果のみではなく、そこに行き着くまでの作業プロセスについてもしっかり説明してくれました。BIシステムは現場のエンドユーザーが主体となって活用するツールであるだけに、さまざまな技術情報や運用ノウハウの提供を含めた手厚いサポートが欠かせないのです」と藤岡氏は話します。

Benefits

導入効果

Cognos 8 BIで多様なユーザー・ニーズに応えるとともにシステム管理負荷も軽減

Cognos 8 BIをベースにした新BIシステムの導入プロジェクトは2009年1月にスタートし、1年後の2010年1月に本番稼働を迎えました。タイトなスケジュールでしたが、仮想化・冗長化を含めたサーバー構成、データベースとの協調設計など、困難が予想された作業も計画どおりに進みました。

「IBMの貢献は非常に大きかったと思います。例えば、プロジェクト体制はユーザー現場(札幌)、開発協力会社である株式会社ジール(東京)、管理統制拠点(東京、札幌)など、複数のロケーションに分散していたのですが、管理ツール(IBM Rational Portfolio Manager)を駆使して情報を共有化し、作業の進捗状況を可視化してくれました。また、開発現場で毎週定例会議を開いてユーザーからの要求事項を確認するほか、月例報告会でも進捗報告はもとより課題解決に向けた説明、各JAのエンドユーザーに対する研修会のアドバイスなどもしてくれました。きめこまかいプロジェクト・マネジメントに心から感謝しています」と藤岡氏は振り返ります。

そして、運用開始から約半年が過ぎた現在、JA北海道情報センターの新BIシステムは安定した稼働を続けています。

「システムの性能評価として、最大ピーク時間帯でもユーザーにストレスを与えることなく、データ分析やレポート作成ができるレスポンスを維持しています。利用状況について調査分析したところ、新BIシステムの利用頻度は確実に増えており、ユーザー層そのものも広がってきているように思います。また、Cognos 8 BIの導入により、プログラムを開発することなしに、レポートと分析の双方に対する多様なニーズに応えられるようになり、システムの管理負荷を軽減できました」(藤岡氏)

さらに、渡辺氏が次のような手応えを語ります。

「サービスインを目前に控えたころ、プロジェクト・チームとしてはベストなBI環境を整えたと自信を持っていたものの、本当にJAのエンドユーザーに受け入れられるだろうかと不安を感じていました。しかし、新BIシステムの導入以降、『難しすぎて使えない』『もっと簡単にしてほしい』といった要求は全く聞こえてきません。もちろん、最大の課題であったオブジェクト間結合の要求にも応えています。そういう意味でもCognos 8 BIは、操作性の点からもデータ分析のスキル・レベルの点からも、現場にマッチしたBI基盤ソフトウェアであったと言えます」

 

将来の展望

将来を予測する意思決定支援システムとしてBIを発展させる

新たなBIシステムの稼働に漕ぎ着けた現在、そのメリットを各JAの現場にさらに深く浸透させ、活用を促していくことが、今後の最大のテーマとなります。

BIの本質は、エンドユーザー自身が能動的に情報を選り抜き、より使いやすい形に磨き上げていくことにあります。さらに言えば、過去のデータが大事なのではなく、過去の流れの延長線上に将来を予測するところにBIの価値が生まれます。

「従来からのデータ分析の担当者だけではなく、役員や管理職など、各JAの経営や事業に携わっている方々にもBIの利用を広げていきたいと考えています。具体的にどんなアクションをとれば収益の向上につながるのか、本当の意味での意思決定支援システムとしてBIシステムを役立ててほしいというのが私たちの思いです。そこで一人ひとりが行動を起こせるように啓蒙を行うとともに研修会なども開催し、Cognos 8 BIをベースに構築した今回のBIシステムが、より一層利用されるよう工夫していきたいと思います」と藤岡氏は、今後に向けて意を新たに語ります。

情報を起点とした農業改革がまさに今、北海道の地から始まろうとしています。

 

お客様情報

北海道農業協同組合中央会の電算機研究部を母体とし、1974年に設立。北海道における系統農協の情報処理センターとして、各農業協同組合(JA)の経営や農家の生活の向上に役立つ情報とシステムを提供している。

 

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