60年以上前に導入されたCOBOLコンピュータープログラミング言語は、今でも多くの金融機関や政府組織のメインフレームシステムで使われています。しかし、ほとんどの大学ではCOBOLを教えなくなり、多くのCOBOLプログラマーが退職し、COBOLユーザー達は「リスクが大きくなりすぎる前に、どれくらいCOBOLを実行し続けることができるのか」という疑問を抱くようになりました。
「当社の人事部門では35年前のCOBOLシステムを使っていました」とオレゴン州の最高人事責任者Madilyn Zike氏は言います。「また、その設計者一人がオペレーションと保守も同時に担当していました。率直に言って、まるでシステムから歯車が脱落してしまうような、リスクの高い状況だったと言えます。」
技術サポートの問題に加えて、オレゴン州のHRシステムでは、成長を続ける州政府にとって必要な適応性が提供されていませんでした。「黒い画面に緑色の文字のシステムで、変更できるのはフォントの色だけでした」とオレゴン州のHRシステムおよび情報マネージャーのTwyla Lawson氏は振り返ります。「マネージャーや従業員にとってセルフサービスというのがまったくなく、これを克服する必要がありました」
オレゴン州は長年にわたり、HRシステムの最新化を5回試みましたが、プロジェクトの複雑さと州の予算編成サイクルに合わせる必要性によって、何度もその取り組みが妨げられてきました。「人々がよりデータ主導型になり、テクノロジーに慣れ親しむようになってきていた中、ようやく予算が利用可能になったことで、これを実現するのに最適な時期と場所となりました。」とZike氏は説明します。
IBM WorkdayのコンサルティングサービスによるWorkday HRプラットフォームの導入は、41,000人を超える州職員と90以上の州政府機関にサービスを提供しています。
Workdayによる人事採用の最新化は、新入社員のオンボーディング/研修に役立ちます 従来の紙ベースのプロセスよりも50%高速化
HRシステム変革の取り組みを開始する前に、オレゴン州行政サービス局(DAS)の管理者たちは、前途に待ち受けるさまざまな課題を検討しました。最大の要因は、プロジェクトの範囲が広範であり、41,000人もの従業員、18の労働団体、政府3部門すべてを代表する90以上の機関を含む実に多くの関係者のニーズを満たさなければならない点でした。また同州の要求により、新しいHRシステムは800以上の要件を満たし、40以上の重要なビジネスプロセスを管理する必要がありました。
「当社で使っていた従来のツールは、人事システムと呼べるようなものではありませんでした。実際には、人事情報が含まれているデータベースのようなものでした」とZike氏は言います。「人事情報は散在しており、不完全で、大規模な雇用主が行うべき中核的なビジネス機能を実行することがとても難しい状況でした。公的な記録を作成し、当社で実践する内容に一貫性を持たせることも非常に困難でしたね。」
「私たちには柔軟性が欠けていて、新しいプロセスを導入することは不可能でした」とオレゴン州DASプロジェクトマネージャーのJoyce Martinez氏は言います。「当時そのツールにアクセスできる人はほんのわずかで、画面上にはフィールドを追加するためのスペースがありませんでした。その時点では、ほとんどのHRプロセスは代理店全体で紙ベースで行われていました。」
「企業レベルで、私たちが答えられないデータの提供を求められるのは日常茶飯事でした」とLawson氏は言います。「議員らは情報や報告を求めてくるけれど、私たちには『これは答えられるけど、この情報はない』のような返事しかできない状態でした。なので、タイムリーに情報のニーズを満たす必要性を実感し、変革に向けた大きな推進力となりました。」
州がシステム変革の予算を計上するとすぐに、DASマネージャー達は、現在の要件を満たし、将来の成長に向けてスケールアップできるクラウドベースのHRプラットフォームを探し始めました。「オレゴン州には非常に堅牢な調達プロセスがあるので、提示された多くの代替案を評価するために多くの人を呼びました」とZike氏は言います。「また、他の州政府とも話し合い、参考資料を得ました。そこから最終的にWorkdayが選ばれました。」
オレゴン州のDASチームは、Workdayユーザーコミュニティの一員になることで、運用上の重要な利点も得られることを認識しました。「他の事業体と話し合ったり、ベストプラクティスを探ったりできることは、大きなプラスでした」とZike氏。「また、規制の変更に合わせて定期的に更新されるシステムがあることで、変更に対応するために自分たちのシステムをどのようにプログラムしなければならないかをいちいち考える必要がなくなり、ずっと効率的です。」
Workday HRソリューションをオレゴン州の複雑なシステム環境に統合するパートナーを選択する際、DASは州との実績があり、協力的な業務関係にも尽力している企業を探しました。「私たちは、IBM社員がその中でも特に優秀な人達で、その分野の専門家であることも知っていました」とMartinez氏は言います。「しかし一方で、彼らが私たちの意見にも耳を傾け、一緒になって取り組んでくれることも明らかでとても魅力的でしたね。」
IBMがシステム統合パートナーとして選ばれたもう1つの要因は、政府機関との協力経験でした。「システムが政府をどのようにサポートできるかについて基本的な理解を得ることができるのは非常に役立つと感じました」とZike氏。「提案内容に加え、私たちが取るべき方向性についても実に明確でした。」
デプロイメントの前に、IBMは新しいHRプラットフォームが特定の顧客のニーズを確実に満たすことを保証するために、デザイン思考ワークショップを実施しました。かんばん方式を使用してプロセスを視覚化・計画し、現実世界のユーザーエクスペリエンスを中心に開発を方向付けるためにペルソナが作成されテストされました。「さまざまな代理店や仕事の種類から集まった多様なチームがいました」とLawson氏は説明します。「彼らの視点を理解するのに『Design Thinking』が役立つツールとなりました。」
手動プロセスから自動システムへの移行は、職場文化にとって大きな課題でした。「管理職の多くは、自動化されたシステムで作業をすることを要求されたことがなく、人事の業務では紙に頼っていました」とZike氏。「Workdayのようなシステムに入り、テクノロジーを使うことを要求されるのは、彼らにとって実に異質なことだったのです。そのため、変更管理が非常に必要でした。」
「IBMから専任の変更管理担当者が来てくれて、とても助かりました」とMartinez氏は振り返ります。「このプロジェクトはオレゴン州にとって実に大規模なパラダイムシフトだったのです。これまではトランザクション・システムでしたが、現在はビジネス全体のプロセス・システムへと移行されました。」
DASはWorkdayモジュールを段階的にデプロイし、Core HR、Compensation、Recruiting、Absence Management、Talent Suiteのモジュールから始め、最近ではLearningのモジュールも導入しました。「Workday Learningの導入は、私がこれまでのキャリアで経験した中で一番簡単な導入でした」とZike氏は言います。「何かがうまく行かなくなるのではと半信半疑でしたが、すべて問題なく進みました。みんなからも好評です。」
「オレゴン州は、提供できるあらゆるものにWorkdayを活用し非常に良い結果につなげました」とWorkdayの地域セールス・マネージャーChad Duffy氏は言います。「私たちWorkday、IBM、DASの3者は、誰が関与する必要があるのか、彼らのニーズにどのように対応するのかを決定し、州が価値を認識していることを確認するために共同で取り組みました。」
2020年3月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがオレゴン州を襲ったとき、Workday HRモジュールいくつかがほぼ1年にわたって稼働していました。これにより、DASはリモートで働く多数の州職員をサポートすることができました。「もし、コミュニケーションをとり、取引を処理できるシステムがなかったら、紙のフォームが行き交い、とんでもないことになっていたでしょう」とZike氏は言います。「Workdayは素晴らしいツールです。私たちの多くがいまだに自宅勤務なので余計にその素晴らしさを実感できます。」
DAS、Workday、IBM間のチームワークにより、Workday導入の初期段階は予算内に収まりました。また、州が2020年から2021年にかけて1,000名の空きポジションを埋める必要があったとき、人事部門はWorkdayプラットフォームのおかげで、従来の紙ベースのシステムよりも約50%も早く新入社員を採用することができました。
「リーダーや経営陣は、従業員に何が起こっているかを確認するためにデータが必要な場合やレポートが必要な場合にそのメリットを実感しています」とZike氏。「どこをクリックすればよいかを伝えることも、簡単なレポートを作成することもでき、古いシステムでは2週間かかっていた作業が、現在では20分で完了するため、沢山の分野で素晴らしい結果が出せています。」
システムのデプロイメントから3か月が経った後、DASは州職員がWorkdayをどのように使用しているかを測定するスナップショット調査を実施しました。「結果は非常に良かったです」とLawson氏は言います。「ほとんどの月に40,000人の従業員がログインしており、その多くは複数回ログインしていました。結果はデータを見れば一目瞭然です。」
DASは2022年12月に、Workdayの給与モジュールと時間追跡モジュールを実装することにより、HRシステム変革の最終段階を完了する予定です。「当社では30年前の従業員報酬システムにまだ接続している状態で、このシステムが最後に移行される機能となります」とLawson氏。「当社のオンボーディング・プロセスが給与プロセスに完全に統合されたら、採用までの時間が改善されることでしょう。それを本当に楽しみにしています。」
「オレゴン州は、HR 企業全体にわたるフルスイートのWorkdayソリューションを導入した最初の州となりました。州中のさまざまな人々から、このプロジェクトで最も良かったのは、その価値を全面的に得られたことだという声が聞かれています。」
オレゴン州でのHRシステム変革における先駆的な取り組みにより、他の州政府もDASにアドバイスを求めています。「州政府と協力して大規模なプロジェクトを軌道に乗せることがどれほど難しいか、そしてそれを正しく進めることがいかに重要であるかを私たちは把握しています」とMartinez氏は言います。「当社は機会があれば他の州とも喜んで話し合いを進め、その過程で支援を提供できれば幸いです。」
Workday導入の取り組みにおいて、Zike氏はIBMとの協力について振り返ります。「Workdayを発展させ、今後もさらに強化し続けるには、パートナーシップが鍵でした」と彼女は言います。「IBMはこれまでにも常に協力してくれていましたが、IBMチームが『この問題は厄介すぎる』とか『これはそちらで解決すべき問題だ』などと言うことは一度もありませんでした。私たちのパートナーシップでは、IBMが当社にとっての選択肢を考え、示してくれるという形が成り立っていました。IBMチームは当社の成功を心から望んでこのパートナーシップを引き受けてくれたのだと感じました。」
DAS(ibm.com外部へのリンク)は、州知事と立法府による政策と財政の決定を実施するオレゴン州政府の中央行政機関です。DASは、強力で安定した管理インフラストラクチャーを提供することで州政府機関をサポートし、オレゴン州が税金を生産的に使用できるように高いアカウンタビリティーを設定しています。
IBMビジネス・パートナーのWorkday(ibm.com外部へのリンク)は、人事および財務向けのエンタープライズ・クラウド・アプリケーションの大手プロバイダーで、変化する世界に顧客企業が適応し成功できるようサポートを提供しています。財務管理、人事、計画、支出管理、分析のためのWorkdayアプリケーションは、中堅企業からFortune 500の50%以上に至るまで、業界を問わず世界中の何千もの組織で採用されています。
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2022年5月アメリカ合衆国で制作
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