インドの経済力の陽光は、着実に地平線からその姿を現し始めています。その陽光の上昇を支えているのは、人々の力です。その力は、インドのみならず、世界中の企業活動を支える源泉でもあります。今やインドの人々の暮らしは豊かさを増しており、国内のコミュニティーには様々な新しい機会が創出されています。

世界銀行の報告書(ibm.com外部へのリンク)には、「インドは世界最大の民主主義国であり、過去10年間、世界経済に統合されてきた中で、経済成長が続いています。現在インドは、世界的なプレーヤーとして台頭しています」と記されています。

インドステイト銀行(SBI)は200年以上の長きにわたり同国最大の公的金融機関であると共に、同国の金融基盤になってきました。近年、多くの顧客の資産増加に伴い富裕層の経済的自由度が増し、新たな機会を探索する動きがあることを同行は認めていました。またこの経済成長が、グローバルな金融勢力としてインドの将来を強力に支えられるとも認識していました。

その未来を実現する鍵はデジタル戦略ですが、今日はその重要度が特に増しています。「デジタル金融包摂は、新型コロナウイルス感染症以前からの開発優先事項でしたが、現在では短期の救済策としても、包括的かつ持続可能な復旧の取り組みにおける中心的な要素としても、必要不可欠になっています」と世界銀行は報告しています(IBM.com外部へのリンク)。

SBIのグローバル副CTOであるAmit Saxena氏は、「インドでは、人口の60%が35歳に達していません。しかも、その層に属している人達は、毎日オンラインで買い物をしています」と述べています。

そのためSBIは、単なるデジタル銀行を超えたビジネスについての構想を立てました。その構想では、4つの柱を持つ包括的なオンライン・プラットフォームが想定されました。すなわち利便性の高いデジタル銀行、投資その他の金融サービスを提供する金融スーパーストア、パートナー企業からのライフスタイル製品を取扱うオンライン市場、さらにこれらすべてをエンド・ツー・エンドで組み合わせて、各種の分析を基に総合的なデジタル変革を成し遂げるという構想です。

「当行には顧客体験の変革が必要でした。当行ではこの改革を、「必要な物はただ一つ」(You Only Need One)という頭文字から、「YONO」と呼んでいます」とSaxena氏は言います。YONOの目標としては、まず様々なサード・パーティー製品からデータを統合して顧客体験を合理化するためのプラットフォームを構築します。次にそのプラットフォームを使用して、単一のモバイル・アプリケーションに、各種のサービス、製品、機能をまとめます。これが実現すれば、同行には非常に高い市場優位性がもたらされます。

とはいえプロジェクトの開始当初は、特に表立った作業はありませんでした。数百万もの画面に対応するために、複数のシステムを調整する必要があったのです。

同行の顧客は4億9100万人に達します。さらに従業員が26万人、本店が管理する支店は世界中に22,500店舗あり、地方主要事務所は17カ所、地方事務所は101カ所、海外の事務所は36カ国に208カ所存在します。Saxena氏は「当行がYONOを構築し始めた当初は、ほんの一部の話し合いだけでも約76の事業部について議論する必要がありました。

このようなデジタル変革の試みは、当行ような伝統ある銀行にとって、始めた頃は本当に大変でした。開始した当時のことを思い出すと、未だに鳥肌が立ちます」と述べています。

アプリケーションのダウンロード数

64
百万

1日当たりのログイン数

9
百万

飛躍へ

数百万人もの顧客にサービスを提供しながら、モバイルの金融市場を根本から創出するため、同行は卓越した能力を備えた実績あるパートナーを必要としていました。

Saxena氏は、「多くの検討を重ねた結果、当行はグローバルな専門知識と技術スタックのメリットを得ることのできるIBMをパートナーとして希望しました。おかげ様で当行は、IBMから最新かつ最良のサポートを得られています。当行としては、こちらのプロジェクに不案内なパートナーや、こちらから教育する必要のあるパートナーとは組むことができませんので」と述べています。

現場の声から洞察や専門知識を得ることを重視した結果、IBMとSBIチームは顧客のパートナー企業、IBMのパートナー企業、代理店、コンサルタントなどの利害関係者で構成された、包括的なグループを結成しました。

銀行業の枠を越えた幅広い顧客の様々なニーズにお応えできるサービスを提供するために、同行はIBM Garage設計者、アーキテクト、アナリストと密に協力し、プロジェクトのあらゆる面でコラボレートしながら、アジャイルで顧客中心のIBM Garage™ Methodologyを適用しました。利害関係者がIBM Garage Enterprise Design Thinking™に参加したことによって、顧客が歩むそれぞれの道のりが「ジャーニー」に変わりました。そしてこの手法を活かしたデザイン思考、アジャイル開発、およびデリバリーの拡大から得られた戦略により、迅速にジャーニーが開始されました。

海岸から見た、インドのムンバイにあるバンドラとワーリをつなぐ斜張橋

「最初の日は、それぞれが達成したい内容について話をしました」とSaxena氏は振り返ります。翌日はチームでソリューションを設計し、3日目にはUI/UXを完成させました。4日目には各依存関係についてチームで評価し、5日目にはそのプレゼンテーションを行い、6日には承認を受けて7日目には遂にそれを構築しました。「そのため複雑なジャーニーを除けば、ほとんどのGarageは7日で完了です」

IBM Garageのジャーニーでは、資金の移動、請求書や税金の支払い、支出の分析などの主要な銀行業務に取り組みました。さらに顧客には、カード不要なATMからの現金引き出しサービスも用意されています。このプランでは、YONOが顧客にワンタイムコードを提供し、顧客がATMでそのコードを入力すれば、キャッシュカードを使用しなくても現金を引き出せます。これは、家族が遠隔地に住んでいる顧客が、その家族に現金を渡したい場合に最適です。

またこのジャーニーでは、住宅、自動車、学校、農業のための融資申し込みなどの融資業務や、保険、投資信託、証券などの金融サービス業務、さらにクレジット・カードと小切手の管理といったその他の業務や、ショッピング、製品のフィルタリング、YONOユーザーのための特別な取引などの市場業務にも取り組みました。

このような包括的なデータ統合を行う中で、同行は新規システムのセキュリティーを最優先にしました。Saxenaw氏は、「セキュリティが最も重要でした。当行は新規の技術スタックを中心とした新しい変革のジャーニーに着手していたため、セキュリティーは非常に大きな懸案事項でした。これはぜひ強調させてください」

柔軟でありながら堅牢

SBIがIBM Garageを使用してお客様のジャーニーを開発した際に、IBMは同行と協力してインテリジェントなワークフローを設計し、セキュリティーと安定性において堅牢なシステムを構築することにより、ソリューションの支援も行いました。現在のインテリジェントなワークフローでは、AI、自動化、ブロックチェーン、5G、高度な分析機能、クラウドなどのテクノロジーが採用されています。これにより、高い可視性やリアルタイムの洞察が得られるだけでなく、各種のビジネス機能に影響を与える問題を修復する能力も備わり、SBIの業務の方向性や内容に変化がもたらされています。

実績のあるセキュリティーとデータ統合プラットフォームを柔軟なシステム全体で確立するために、同行はIBM® DataPower® Gatewayソリューションを選択しました。YONOのデータは、拡張が容易なIBM Cloudant®分散データベース上でホストされ、IBM DataStageソフトウェアは、複数のシステムでデータの抽出、転送、ロード処理を実行します。

また同行は、YONOでお客様の期待するパフォーマンスを提供すると同時に、膨大な量の分散データにアクセスできるようにするために、IBM Cloud® Application Performance Managementソリューションを活用しています。

そしてYONOの取り組みとして最後にご紹介するのは、動的なデータ統合と分析をバックグラウンドで行うことです。この取り組みは、IBM Cognos® Analyticsソリューションで実現されているため、IBM SPSS Statisticsソフトウェアで各種の洞察とパターン検出が得られるだけでなく、専用のIBM Db2® Databaseで分析ストレージも利用できます。YONOでこのような各種の分析機能を活用することで、SBIはターゲットの顧客に、より効果的で関連性の高いオファーをお届けできるようになります。

カラフルなショッピング袋の隣に座ってベンチで携帯電話を使う人物

しかし、YONOの真のポテンシャルは、多くの人々の力になることです。経済的な自由度が高まりつつあるインドの人々だけではなく、銀行外のパートナー企業がYONOプラットフォームで新規アプリや機能を構築できるようにすることが目標です。IBM WebSphere® Application Serverは、開発者がアプリケーションを作成、接続、最適化できるコア・プラットフォームを提供すると同時にIBM FileNet® Content Managerは、新しいクラウド・ベースのアプリケーションを構築するためのローコード・ツールを提供します。このようなアプリケーションをセキュリティー機能が充実した環境で直感的に接続するために、IBM® API ConnectソリューションはAPIを収益化するための専用機能を提供し、IBM App ConnectとMQを使用して確実な配信を実現しています。

YONOが安全に安定して作動するためのインフラストラクチャーが整備されると、IBM Garageチームは早速アジャイルなアプローチを取り、各銀行サービスの柱となる最小実行可能製品(MVP)を驚くほど短時間で完成させました。

Saxena氏は、「私たちはデジタル銀行のモバイル市場におけるエンドツーエンドを、わずか3 カ月の作業で立ち上げました。IBM Garageの方法論がなければ、とても不可能だったでしょう」と述べています。

チームは、完成されたMVPを繰り返しながら、規模を拡大し続けました。IBM Garageは顧客中心の設計を重視し、SBIは顧客体験を最優先にしているため、チームは数週間かけてユーザー向けのテストを実施し、ユーザーからのフィードバックを取り入れました。

チームが金融および消費者向け製品を扱うYONOマーケット・サイトの完全リリースに踏み切ると、システムは多くの人々の力で満たされました。このインテリジェントなプラットフォームの最終目標は、SBI従業員のスマートな業務を実現するだけでなく、顧客に卓越した体験を提供できるよう支援することです。

すべての人々の力

多くの人々に素晴らしい成果をもたらしました。

YONOの構想が功を奏し、インド内外の数多くの人々をつなげることに成功しました。また、最初の立ち上げを強力に行ったことにより、時間の経過とともに一層多くの力を集めることができました。

  • YONOの立ち上げ以来、100を超えるお客様のデジタル・ジャーニーが実施され、オンライン・バンキング、財務、消費者に関する幅広いオプションが提供されています
  • YONOのモバイル・アプリのダウンロード件数が6,400万件を突破(内523万件が最初の5カ月間のダウンロード数)
  • YONOのログイン数は一日当たり900万件を突破
  • カードを使わないATMの引き出し件数は1,000万を突破
  • YONOによる投資信託の取引件数は65万件
  • YONOによる銀行口座の開設は年間700万件を突破
  • YONOを使用した生命保険契約の売却は40万件

Saxena氏は、「お客様はYONOを素晴らしい体験と認めてくださったようで、温かく受け入れられています」と述べています。

さらにe-コマースのパートナーは、直感的な製品やサービスを提供するYONOエコシステムの拡大を支援してきました。21のカテゴリーにわたる100社以上のパートナーが、モバイル・プラットフォームの成功を加速する、重要なアプリ、サービス、YONOのユーザー割引を開発しています。Saxena氏は、「顧客の囲い込みを成功させるには、常にお客様の心を躍らせて夢中にさせるような新たな提案を継続する必要があります。だからこそYONOは、とても素晴らしい製品なのです」と述べています。

またSBIがIBMとの提携を継続する理由として、数々の新しい金融オプションが用意されていることがあげられます。「IBMのご支援により、当行では顧客を対象とする数々の新規ジャーニーを毎月構築しています。顧客との関係維持に、本当に役立っています。

当行は多くのパートナー企業とのおつきあいがあり、今回の試みにおいても各企業から多大なサポートをいただいていますが、IBMは他のどの企業と比べても違いがあるのです。IBMは当行のすべての要求に対して、期待を上回るサポートを提供してくれました」と、Saxenaは述べています。 SBIはビジネス・ワークフローとビジネス・プロセスを再定義してデジタルYONOエクスペリエンスに移行すべく、IBMと協業してきました。新規のIBM Garageのジャーニーは、既存の情報を利用するため、簡素化されています。さらに多くのプロセスがオンラインのジャーニーに移行するに従い、同行は不要な手順と従来のペーパーワークを廃止しました。

YONOの基盤にあるデジタル変革は、SBIとIBM間の戦略的なコラボレーションを促進しました。戦略的同盟としてIBMは、先進的な分析を使用するデータ主導の専門知識を提供することによって、数十憶米ドルのビジネス価値をYONOと銀行全体にもたらすことに役立ってきました。

Saxena氏は言います。「現在YONOは、400億米ドルから500億米ドルの評価を得ています。それを3年で築くことができたのも、IBMのようなパートナーから支援を得られているお蔭です」

SBIのロゴ

インドステイト銀行(SBI)について

SBI(ibm.comの外部へのリンク)は、インドのムンバイに拠点を置く、多国籍の公共部門における銀行および金融サービス会社です。同行は、1806年にカルカッタ銀行として設立されました。現在の顧客数は4億9,100万人、従業員数は26万人、世界中に2万2,500もの支店があり、年間売上は520億米ドルに上ります。SBIには、投資、クレジットカード、生命保険商品を提供する子会社もあります。

製品・サービス

IBM API Connect®
IBM Cloud® Application Performance Management
IBM® Cloudant®
IBM Cognos® Analytics
IBMコンサルティング

IBM DataPower® Gateway
IBM DataStage®
IBM Db2® Database
IBM FileNet® Content Manager
IBM Garage
IBM SPSS® Statistics
IBM WebSphere® Application Platform

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2022年3月

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