Business Challenge Story

柔軟性向上とIT投資最適化を目指し、データベース・サーバーを入れ替え

私たちの生活に溶け込み、重要な顧客チャネルとして機能しているECサイト。「オンラインで商品を購入する」という行為は日常的なものになり、EC市場も次第に成熟期へと移りつつあります。これに伴いシステムに求められる要件も変化しています。黎明(れいめい)期・急成長期には急増するアクセスに対応するため、データベース容量や処理能力を増大させ続けることが最重要課題でした。しかし現在では、安定したサービスのための信頼性確保や、アクセス数の変動にきめ細かく対応できる柔軟性が求められるようになっています。

このような新たな要件を満たすため、オンライン受注サイト「オンラインパル」のデータベース・システムをIBM Power Systemsに移行したのが、パルシステムです。パルシステムは関東近郊1都8県の生協10法人が、組合員の生活文化の向上を目的に設立した事業連合組織。生協の原点である「人と人との助け合い」を21世紀型システムへと進化させ、組合員の生活を多様な商品・サービス・情報で支え続けています。

「オンラインパル」サービスの運用が始まったのは2001年。「最初は事務所に設置された1セットのPCサーバーから始まりました」と語るのは、パルシステム 執行役員 情報システム本部長の平井 健一氏です。その翌年に信頼性と処理能力を高めるため、複数のPCサーバーとロード・バランサーを組み合わせたシステムへと発展させ、設置場所もデータセンターに変更。2003年秋にはパルシステムの基幹システムを他社UNIXサーバーへと移行したのに合わせ、「オンラインパル」のデータベースもこのUNIXサーバーにリプレースされました。「これは当時世界トップ・クラスの性能を持つものでした。オンラインパルへのアクセスは年率20~30%の割合で増加していたため、十分な処理能力を確保すべきだと考えたのです」(平井氏)。

しかしこのデータベース・システムは、いくつかの問題も抱えていました。まずサーバー構成がクラスター型ではなかったことです。使用していたUNIXサーバーは単体で高い信頼性を実現していましたが、万一トラブルが発生した場合にはバックアップ機がないため、サービスが停止する危険性があったのです。「オンラインパルはデータベースにOracleを使用していますが、できればRAC(Real Application Clusters)構成にしたいと考えていました。しかしこの時使っていたUNIXサーバーはコストが高く、なかなか拡張に踏み切れませんでした」(平井氏)。

もう1つの問題は、サーバーの柔軟性が低かったことでした。長期的なアクセス増大を視野に入れた性能を確保するには、最初から高スペックな構成にする必要があったのです。そのためシステムは巨大になり、過剰な投資を強いられることになりました。実際サーバーを導入してから、ほとんどCPUの増強は行われていないといいます。「以前は年率20~30%だったアクセス増も、リーマン・ショック以降は落ち着きを見せはじめています」と平井氏。「システムの柔軟性を高めることで、IT投資を最適化すべきだと考えました」。

この2つの問題を解決するため、パルシステムは2009年10月にインターネット系システムの再構築プロジェクトに着手。まずフロント部分のネットワーク機能を強化し、2010年8月にサイトをリニューアルします。これと並行してデータベース部分のサーバー・リプレースも実施されたのです。

Transformation

他社と同等のコストでオンデマンド機能を提案。CPU単体能力が高い点も評価ポイントに

「オンラインパル」のデータベース・システム再構築に向けた提案依頼書(RFP)が提示されたのは2010年3月。主な要件は3つありました。保有コストの削減、柔軟なシステム運用、そして最新技術へのタイムリーな対応です。このRFPに対して3社が応札し、総合評価によりIBMの提案が採用されました。 IBMが提案したのは、高性能なPOWER7®プロセッサーを搭載したIBM Power 770です。CPU性能を高めることでOracleを少ないコア数で動かせるため、ライセンス料を削減できる可能性があります。またIBM Power Systemsはダイナミック論理区画(Dynamic Logical Partitioning :Dynamic LPAR)とマイクロ・パーティショニングの機能をサポートしているため、アプリケーションに対して最小0.1コアから0.01コア単位で、ダイナミックにCPUリソースを割り当てることが可能です。サービスをまったく止めることなく、リソース配分を変更できるのです。

パルシステム 情報システム本部 システム企画・運用部 日本橋データセンター長付次席スタッフの根本 和美氏は「CPUやメモリーを無停止で拡張できるのは大きな魅力です」と語ります。他社提案にはIAサーバーをベースにしたものと、UNIXをベースにしたものがありましたが、いずれも初期費用を抑制するためミッドレンジの製品を使用しており、IBMのような「オンデマンド」を可能にする提案にはなっていなかったと振り返ります。また単体CPUの処理能力も、IBM Power 770は他社の提案に比べ約2倍だったと指摘します。 しかし、それにもかかわらず「IBMが提案したシステム構成の初期費用は、他社提案と同じレベルでした」と話すのは平井氏です。「コストは他社提案と同等なのに、提案内容ははるかに優れていました。プレゼンテーションを受けた時点で、IBMに決まりだと思いました」。

すぐにIBM提案の採用が決定し、2010年4月には正式発注が行われます。その翌月にはシステム構築を開始し、9月末に基本システムが完成。その後データ移行が行われ、2010年11月にサービスインしています。

「IBMは提案内容だけではなく、プロジェクト管理も優れていました」と平井氏。システム構築期間は毎週ミーティングを行っていましたが、毎回目標を明確に提示し、着実にプロジェクトを前進させていったと振り返ります。「他社はミーティングに2時間くらいかけるのですが、IBMは私たちに最小限のことしか求めてきません。最後のミーティングはわずか30分。非常にスマートなプロジェクトの進め方だと感じました」(平井氏)。

Benefits

以前より少ないコア数でRAC構成を実現。運用が容易でトラブルもなし

現在のシステム構成は、16コア構成のIBM Power 770が2台導入され、AIX®の上でOracle RACが組まれています。Oracle RACは本番用と検証用の2セット用意され、本番用に1.9コア、検証用に0.1コア割り当てられています。これに加えてデータ・バックアップ用に1コア、仮想I/Oサーバー用に1コア割り当てられており、1サーバーあたり合計4コア、全体で8コアが稼働しています。物理的には合計32コアが実装されていますが、コストは8コア分しかかかりません。負荷が増大した場合にはオンデマンドで稼働コア数を増やせます。事実、サービスイン直前に本番環境を0.9コアから1.9へ追加する際もほんの数分の作業で完了しました。なおストレージには、IBM System Storage® DS3400が採用されています。

「導入してから約2カ月が経過しましたが、まったく問題はありません」と話すのは、パルシステム 情報システム本部 システム企画・運用部 日本橋データセンターの平川 大介氏です。IBM Power Systemsは初期不良もなく、AIXには対話型の運用管理ツール「SMIT」があるため運用も簡単だと説明します。「運用のためにシステムを止める必要がなく、トラブルもありません。このようにトラブルもなくオンデマンドに対応できるシステムは初めてです」(平川氏)。

OracleをRAC構成にしたにもかかわらず、稼働コア数が削減されたのも注目すべきポイントです。以前はRAC構成ではないOracleを6CPU(6コア)で動かしていましたが、現在ではRAC構成を4コアでサポートしています。RAC構成は通常に比べて2倍のCPUリソースが必要になるため、従来の3分の1で同じサービスを実現できたことになります。パルシステムでは現在も組織全体でのシステム見直しを進めているため、すぐにOracleライセンス数を削減するという対応は行っていませんが、ライセンス料を大幅に削減できるポテンシャルは手に入れたことになります。

CPU数が削減されたこともあり、必要な設置スペースは半分になりました。また消費電力の削減にも貢献しています。「現在はまだ定量的な比較を行っていませんが、来年度までにはシステム全体で定量比較して、環境負荷軽減の効果を評価したいと考えています」と平井氏は話します。

パフォーマンスも改善されました。以前のシステムではデータベースのレスポンス時間が平均2.5秒でしたが、現在は1.5秒にまで短縮されています。

将来の展望

新たなサービスの開発も積極化。柔軟な基盤が取り組みを後押し

今後はこの基盤の上で動く、新たなアプリケーションの開発を積極的に進めていく計画です。現在の「オンラインパル」は会員からの受注機能に特化していますが、今後は紙のカタログと連動したキャンペーン情報の提供や、生協独自のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)との連動が検討されているといいます。また現在の受注システムは従来のOCR用紙を電子化した形になっていますが、本格的なショッピング・カート・システムを導入することも視野に入れています。

「これまでは年末に来る受注ピークへの対応や、キャンペーンによる受注増大への対応を、早い時期から行う必要がありましたが、今では処理能力を柔軟に変更できるので、その必要はなくなりました」と平井氏。新たなサービスの実装にも、安心して取り組めるといいます。オンデマンドなシステムの効果は、IT投資の最適化だけにとどまりません。パルシステムのサービスをさらに素晴らしいものにする上でも、大きな貢献を果たすことになるでしょう。

お客様の声

パルシステム生活協同組合連合会 執行役員 情報システム本部長 平井 健一 氏

「コストは他社提案と同等なのに、提案内容ははるかに優れていました。プレゼンテーションを受けた時点で、これはIBMに決まりだと思いました」

パルシステム生活協同組合連合会 情報システム本部 システム企画・運用部 日本橋データセンター長付次席スタッフ 根本 和美 氏

「単体CPUの処理能力が他社に比べて2倍近く高い。CPUやメモリーをオンデマンドに無停止で拡張できるのも大きな魅力です」

パルシステム生活協同組合連合会 情報システム本部 システム企画・運用部 日本橋データセンター 平川 大介 氏

「運用のためにシステムを止める必要がなく、トラブルもありません。このようなシステムは初めてです」

用語の説明

  • PowerVM

    Power Systems仮想化テクノロジーの統合名称。仮想化に関連する機能を包括。

  • Virtual I/O Server(VIOS)

    LPAR間で物理I/Oアダプター、テープ装置、光学デバイスの共有ができる機能。「PowerVM Express Edition」「PowerVM Standard Edition」「PowerVM Enterprise Edition」など3つのEditionから選択可。

お客様情報

1977年に「首都圏生活協同組合事業連絡会議」として発足し、1990年に「生活協同組合連合会首都圏コープ事業連合」へと法人改組。2005年に現在の名称になりました。関東近郊1都8県の生協10法人から構成され、加盟組合員数は約127万人。生協の原点である「人と人との助け合い」を21世紀型システムへと進化させ、独自の個人対応型くらし課題解決事業によって、組合員一人ひとりの「くらし課題解決」に貢献し続けています。

テクノロジープラットフォーム

ハードウェア

  • IBM Power 770

ソフトウェア

  • AIX
  • Virtual I/O Server(VIOS)

Solution Category

  • Systems Hardware