Business Challenge story

業務改革の推進に合わせて生産管理システムを刷新

哨戒機、輸送機、旅客機、ヘリコプター、ロケットなど、川崎重工業の航空宇宙カンパニーでは、さまざまな製品の研究、開発、製造を通じて、航空機・宇宙産業の発展に貢献。「世界に雄飛する航空機メーカー」を目指し、日本の航空宇宙業界のリーディング・カンパニーとして、ビジネスを推進しています。川崎重工業 航空宇宙カンパニー 企画本部 上級専門職 笹俣 愼吾氏は同カンパニーの事業内容について以下のように説明します。

「航空宇宙カンパニーでは、防衛省に納める哨戒機や輸送機をはじめとして、民間機、ヘリコプター、ロケット用部品など、空と宇宙に関するさまざまな製品を提供しています。機体の全体を製造するものと一部の部品のみを製造する分担生産のものがありますが、岐阜と名古屋の広大な敷地の工場において日々生産活動を続けています」

同カンパニーでは、旅客機などの民間向けのビジネスが増えるに従って、生産スピードを問われるようになってきたと川崎重工業 航空宇宙カンパニー 生産本部 生産管理部付 上級専門職 福島 誠氏は言います。

「川崎重工業では古くから防衛省に向けたビジネスを手掛けていますが、近年民間向けの仕事も増えてきました。防衛省向けの受注については比較的早い段階から需要が確定しているものが多いのですが、民間向けの場合は生産開始直前まで変更が入る可能性がありますので、スピーディーに変更などに対応できる生産体制が求められます。川崎重工業の国際競争力を強化するためには、そうした生産スピードに対するニーズにしっかりと応えていく必要があります。そこで2002年から業務改革の取り組みを開始し、生産リードタイムの短縮、在庫の抑制、間接作業の効率化などの実現を目指しました」

こうして外部の業務コンサルティングを交えながら業務改革の検討が進められましたが、そこで大きな課題が浮上してきました。それは従来の生産管理システムを、新しい業務プロセスに対応させることが困難であるということです。

「従来使っていた生産管理システムは、30年間にわたって改良を加えてきており、同業他社に比べ遜色のあるわけではありませんでしたが、業務改革を進める中で、新しい業務の進め方に旧システムでは対応できないということが分かり、システムの見直しを検討することになりました。旧システムは、日次のバッチ処理をするものだったのですが、その処理単位だと、業務のスピード・アップを図ることが難しかったのです」(笹俣氏)。

Transformation

アドオン開発を最低限に抑えることにより、開発期間とコストを抑制

同カンパニーでは、生産管理システム見直しの検討を進め、日次のバッチ処理をベースとしていた生産管理システムをリアルタイム処理に変えるために、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入を決定。製品としては、SAP ERPを選択しました。 「防衛省向けの製品を生産する工場では、一般の企業にはない独特な制約などがあることから、最初は手組みで独自の新しいシステムを開発することも検討しましたが、開発期間の観点、属人化されたシステムのノウハウがブラックボックス化してしまうという観点、最新IT技術を活用の観点などの理由から、市販のERPパッケージ・ソフトウェアを活用することになりました。製品としては、複数のものを比較検討しましたが、シェアが高く先々のサポートも安心できること、海外の航空機メーカーにおける実績が豊富であることなどの理由からSAP ERPを採用することにしました」(笹俣氏)。

その後、SAP ERPの導入ベンダー選定に当たっては、プロジェクトの理解度、機能要件の満足度、プロジェクトの進め方、開発体制、リスク対策、システム構成、性能要件に対する満足度、ベンダーの基盤・能力、保守体制といったポイントで評価した上で、RFP(提案依頼書)の内容よりさらに踏み込んだ提案をしたこと、SAP ERPと海外航空業界への豊富な導入実績などが評価され、IBMが選ばれました。導入プロジェクトでは、SAP ERPとユーザー要件の間では多くのギャップが明確になりました。ギャップを埋めるためのアドオン開発の過程について川崎重工業 航空宇宙カンパニー 企画本部 情報システム部 ITシステム開発課 課長 谷口 薫氏は次のように説明します。

「IBMの提案内容は、できるだけ標準機能を活用するために業務の見直しを行い、アドオン開発を最低限に抑えるというものでした。そのため、アドオン開発部分の見直しを図り、ユーザーの方々の意見もヒアリングしながら、必要最低限のものに絞り込みました。開発期限、予算、ユーザーからの要望など、さまざまな要素を勘案しなければなりませんでしたが、何とか調整して開発を進めることができました」

SAP ERPを稼働させるサーバーには、IBM Power Systemsが採用されました。同カンパニーでは、膨大な種類の資材(材料、部品など)を扱う必要がありますが、サーバーには600万件ほどのMRP(material requirements planning)の処理できる能力が求められます。高性能のサーバーのスペックを引き出すため、SAPとIBM Power Systemsをチューニングしました。その様子について川崎重工業株式会社 航空宇宙カンパニー 企画本部 情報システム部 IT企画・運用課 主事 高島 和也氏は以下のように振り返ります。

「東京のIBMの事業所においてサーバーのテストとチューニングを行いました。最初パフォーマンスのテストでは、サーバーの能力を活用しきれず、目標時間内でMRP処理を完了することができませんでした。3回にわたるテストとチューニングをIBMの強力な支援を得ながら協同で実施し、SAPの開発部門も巻き込んでチューニングを施した結果、稼働可能な状態を実現することができました」 しかし、MRP、アドオン機能の増加などにより負荷が増加し、さらに処理スピードの向上を図る必要に迫られたため、本番稼働直前にサーバーの切り替えを実施。川崎重工業株式会社 航空宇宙カンパニー 企画本部 情報システム部 ITシステム開発課 上級専門職 鎌田 直人氏はそこでもいきさつについて説明します。

「チューニングの結果ある程度のレベルまではパフォーマンスを引き出すことができましたが、処理時間に関して課題が残りました。そこで本番稼働を間近に控えていましたが、2009年3月に、最新のPOWER®プロセッサー(プロセッサー・コア)を搭載したPower Systemsに切り替えました。切替後、予期せぬ不具合が発生したのですが、本番稼働に影響が出ないよう日夜IBMのスタッフの方々に徹底的に問題解決対応をしていただいたおかげで、エラーの原因が判明し、無事本番稼働を迎えることができました」

Benefits

膨大な量のマニュアルを作成し、十分なトレーニングを実施

SAP ERPのシステムは、2009年8月より本番稼働を開始。それに先だって、ユーザーの方々に向けた綿密なトレーニングと詳細なマニュアルが作成されました。

「トレーニングには、当初外部の教育機関に依頼することも検討しましたが、そのためには、社内業務をすべてその外部機関に教えなくてはならないという問題がありましたので、社内のスタッフによって3年近くの期間をかけて行いました。結果的には満足できるまでトレーニングを繰り返し行うことができましたし、マニュアルや手順書の作成および手直しも十分に行うことができました。また稼働開始後の問い合わせに対応するため、教育メンバーがヘルプデスクとしても活躍しました」(福島氏)。

2010年9月現在では、業務改善の成果は、数字としては表れていません。これは航空宇宙カンパニーのビジネスの特性によるものだと笹俣氏は言います。 「航空宇宙カンパニーでは、1年で必要になる資材の7割ほどを5月に一括手配しています。従って新システムに移行されてからまだサイクルが回っていないので、成果が表れるのはまだ先になります。また、サービスインの時点では、データの移行を間に合わせるということを最優先の目標としていましたので、現在もシステムの中身と実際の業務との相違部分を合わせていく調整を行っています。そうしたことが進んでいけば、今後大きな成果につながっていくのではないかと期待をしています」

またシステムの運用面から効果も上がっています。 「以前のシステムでは、夜間処理中にトラブルが発生することがあったのですが、SAP ERPになってからは、そうしたトラブルが大幅に減少しました。これは運用面からすると大きな効果ということができるでしょう」(鎌田氏)。

 

将来の展望

システムの改善と人材の育成をセットで今後も継続

今後の展望としては、まずはシステムと業務実態がより効果的にかみ合うように、システムの調整とユーザーの意識改革を進めていくことが大切だと福島氏は言います。

「現時点では、新しい業務プロセスやシステムの考え方になじめないユーザーもまだ多いという実態があります。これは、システム側の改善も必要かもしれませんが、ユーザー側の意識を変えていく取り組みも大切なのだと思います。両者を進めていってうまくかみ合うようになれば、SAP ERPを導入した効果はさらに高まるでしょう。それを目指して、今後もさらなる業務改革を推進していきたいと考えています」

さらに笹俣氏は、システムの構築には、人材育成をセットで行うことの大切さを強調します。「システムを構築するだけでは、本当に有効に機能することは難しいでしょう。それを使いこなす人材を育成することも非常に大切になってきます。現在はこの人材育成を着々と進めている段階ともいえますので、今後システムを使う人材が育っていけば、より大きな成果につながっていくのだと思います」

川崎重工業 航空宇宙カンパニーにおけるSAP ERPの導入は、国内の航空機製造業の中では最先端の取り組みとなります。このようにリーディング・カンパニーとしての同社は、今後も力強くビジネスを推進していくでしょう。

 

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