リコーは、20年以上稼働してきた基幹システムの刷新と、保守・運用の高度化に取り組んできました。2015年から日本IBMと戦略的パートナーシップを築き、AIや自動化を活用した改革を推進しています。
複合機ビジネスで広く知られていた株式会社リコー(以下、リコー)は2020年、「デジタルサービスの会社への変革」を宣言し、従来のOA機器中心のビジネスモデルからの脱却を図ってきました。
M&Aや新たなデジタルサービスの展開を通じてグローバルに事業を拡大し、顧客のDXを支援してきました。また、20年以上稼働した過程で個別最適化した基幹システムを、段階的にSaaSを中心としたパッケージに刷新するなど、業務効率化と社内DXにも取り組んできました。
ITが担う領域が広がり、期待も高まる中で課題となるのが「保守・運用の高度化」です。システムはリリースされると同時に価値が下がっていくため、継続的に価値を高めていかなければ効果は得られません。しかし、保守・運用は事業継続型コストであることから、高度化や新しい価値を生み出す活動よりもコスト削減が優先される文化が根強く残っていました。
こうした状況を打破するため、リコーは保守・運用に戦略的な視点を持ち込み、意識改革を徹底することから着手しました。
リコーは、保守・運用の高度化に向けて、まず「意識改革」に取り組みました。保守・運用を単なるコストではなく、システム価値を高める戦略的活動と位置づけ、担当者の役割や期待値を明確化。「お金を使わないことを美徳と考えるのではなく、使うべきところに使ってシステムの価値を上げていこうと考えるようマインド・チェンジに時間をかけています」と、リコーのデジタル戦略部 プロセス・IT・データ統括副統括長兼コーポレートIT統括センター所長である浜中 啓恒氏は語ります。
さらに、パフォーマンス監視ツールの常時稼働や、継続的統合/継続的デプロイメント(CI/CD)、パフォーマンス管理などの最新手法を導入し、システムの可視化と改善を進めました。
IBMは2015年にリコーのIT変革を支援する戦略的パートナーシップを締結し、基幹システムの開発や保守・運用に伴走しています。第1フェーズではRPAによる定型業務の自動化や、アセットを活用したテストの自動化などを通じた生産性向上に加えて、継続的な運用品質向上にも取り組んできました。
第2フェーズでは、SAPを活用した生産基幹系のシステム刷新プロジェクトや、SAP環境全般に対する保守・運用の支援を新たに開始しています。安定的に支えることが当たり前になりがちな保守・運用において、戦略的な視点を持ち、積極的にシステムを支える国内外の人材がワンチームとなってサポートしています。
リコーは、AIや自動化を活用した保守・運用の高度化により、システムの安定稼働と迅速な障害対応を実現。IBMのAMS(アプリケーション保守・運用)を通じて、2015年9月から2025年10月の約10年間で、販売系・本社系の約90のアプリケーションにおける保守運用のフルタイム換算人員(FTE)を28%削減しました。さらにコスト削減だけでなく、IT部門の役割を戦略的な価値創出へと転換することにも成功しました。
本プロジェクトでは、国内外ハイブリッドのリソース活用に加えて、ペインもゲインも分かち合う「ペイン・ゲイン・シェアリング・モデル」や新たなソリューション活用によるコストダウンを図る「コストダウン・プログラム」といった共創フレームワークを通じて、継続的な価値創出を可視化・追跡。IT部門のモチベーション向上と、企業全体のDX推進力強化に貢献しています。
浜中氏は今後のさらなる高度化に向けて「重要なのは技術を使い倒すことですが、特に保守・運用とAIは相性がいいと感じています。IBMはAI分野にも造詣が深く、AI活用について多くの示唆をもたらしてくれています」と所感を述べます。
今後リコーは、生成AIやエージェント型AIを活用し、IBMとの共創を進めていく方針です。IBMは「IT変革のためのAIソリューション(AI for IT)」や、自社を「ゼロ番目」のクライアントと位置付け、自社業務を最新テクノロジーで変革する「クライアント・ゼロ」で培ったノウハウ、アセットを提供し、日本・インド・フィリピンのチームを統合したグローバルハイブリッド体制で、持続可能な運用基盤の構築を支援していきます。
株式会社リコーは、かつて会社の代名詞であった複合機ビジネスからの変革を図り、「デジタルサービスの会社」へ大きく舵を切りました。デジタルサービスによるお客様への価値提供の実現に向けて、AIや自動化技術を活用した業務改革や新たな価値創出に取り組んでいます。
© Copyright IBM Corporation 2025. IBM, IBMのロゴは、IBM Corp.の商標であり、世界の多くの管轄区域で登録されています。本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国または地域であっても、特定の製品を利用できない場合があります。
引用または説明されているすべての事例は、一部のクライアントがIBMの製品を使用し、達成した結果の例として提示されています。実際の性能、コスト、削減効果、またはその他の結果は、運用環境によって異なる場合があります。