Business Challenge story

クラウド・アプリケーションを短期間で相互接続しサービスを開始

2012年3月にサービスが開始されたトヨタフレンドでは、電池残量などの充電情報、前月の燃費情報、工具の収納場所といったクルマに関する情報や、現在地や目的地の天気、おすすめスポットといったクルマの利用状況に応じた情報が、クルマの「つぶやき」としてオーナーのスマートフォンに送られます。また、クルマのオーナー同士がつぶやきを通して交流することもできます。これまでクルマに搭載されているセンサーからの情報は、メーターなどに数字やランプで表示されるだけでした。トヨタフレンドでは、あたかもクルマが人格を持っているかのようにスマートフォンを通して語りかけてきます。また、クルマのオーナーは、トヨタフレンドを介してディーラーとも柔軟にコミュニケーションできます。

トヨタの顧客向けIT事業会社であるトヨタメディアサービスで専務取締役を務め、トヨタフレンドの実現と運用に携わっている藤原 靖久氏は、トヨタフレンドのシステム概要について次のように説明します。「ディーラーの業務システムやクルマの情報を集めるテレマティクスの基盤は、すでに出来上がっていました。これらに加えて、マイクロソフトのクラウド・プラットフォーム『Windows Azure』をベースとしたエネルギー・マネジメント・システム、セールスフォース・ドットコムのSNS『Chatter』、イナゴ株式会社の自動応答プラットフォーム『NetPeople』といったサービスの機能を相互につないでトヨタフレンドを実現しています」。

しかし、トヨタフレンドを実現するためには、それぞれのサービスの機能を具体的にどのようにつなぐかという課題がありました。また、トヨタフレンドのコンセプトを決定し、プリウスPHVの市販が開始される1年後にはサービスを開始するという限られた状況での開発となりました。

Transformation

豊富なコネクターと利用実績の多さからIBM WebSphere Cast Iron Liveを選定

トヨタメディアサービスは、トヨタフレンドを構成する各サービスの機能をつなぐためにいくつかの製品を検討し、IBM WebSphere Cast Iron を選定しました。藤原氏は選定理由を次のように話します。「セールスフォース・ドットコムのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に対応したコネクターが用意されていることと、すでにさまざまなユーザーが使用している実績があることを重視しました。他の製品は接続の実績が乏しいものばかりでした。IBM WebSphere Cast Iron は、利用実績と必要なコネクターをどちらも備えていました」。こうして、トヨタメディアサービスは、クラウド・サービスとして提供されているIBM WebSphere Cast Iron Liveを導入しました。「できる限り初期の投資額を下げて、スモールスタートすることを目指しました。また、サービス開始後の状況変化に応じて能力を適切に増強していくため、企業内に導入する製品でなくクラウド・サービスとして提供されている製品を選びました」(藤原氏)。

Benefits

コネクターを利用し、新たな機能追加を極力抑えることで、短期間でサービスを開始

トヨタフレンドの開発は、プリウスPHVの市販開始に合わせるため、1年弱の短期間で進められました。「IBM WebSphere Cast Ironがなければ、トヨタフレンドを予定どおりに開始できませんでした。ディーラーとどのような会話をするのか。クルマが出すさまざまな信号に対して、オーナーにどのような言葉をつぶやくのか。オーナーが言ってきたことにどのように返事をするのか。こういったサービス要件と機能を整理し終えたのがサービス開始5カ月前の2011年10月でした」(藤原氏)。

トヨタフレンドでのIBM WebSphere Cast Ironの実装に携わった、トヨタのイントラネット構築・運用を手がけている株式会社トヨタデジタルクルーズ(以下、トヨタデジタルクルーズ)コミュニケーションシステム部 システム1G グループリーダー 小田 俊彦氏は、短期間でサービスを開始できた理由を次のように話します。「IBM WebSphere Cast Ironは、トヨタフレンドで利用するサービスのAPIを標準でサポートしていました。また、行いたい通信のコネクターも用意されていました。このため、それらに関してあらためて調査し検討する必要はありませんでした。品質のよいものをスピーディーに提供するため、IBM WebSphere Cast Ironでテスト済みのものを使って素早く作業していきました。この点がIBM WebSphere Cast Ironを採用して最もよかった点です。IBM WebSphere Cast Ironでなければ、納期を守ることは難しかったと感じています」。

また、トヨタメディアサービスは、トヨタフレンドのサービス開始に遅れが生じないよう、IBM WebSphere Cast Ironでの機能追加をできるだけ抑えるようにしました。「IBM WebSphere Cast Ironに機能を追加していくと、開発全体のコストが上昇し納期が遅れる要因ともなります。実際にサービス要件や機能を整理している段階では、手間がかかる要件や機能をIBM WebSphere Cast Ironで何とか対応してほしいという要望もありました。しかし、IBM WebSphere Cast Ironでは、基本的に各サービスのAPI同士をつなぐことだけに徹することにしました」(藤原氏)。

トヨタデジタルクルーズとともにIBM WebSphere Cast Ironの実装に携わった、日本情報通信株式会社 SIサービス事業部 インフォメーションマネージメント テクノロジーセンター センター長 内藤 剛氏は、次のように話します。「IBM WebSphere Cast Ironは各サービス間の中間に位置するため、例えば接続する双方のサービスに存在しない業務仕様を担うべきかといった議論も繰り返されました。単純に接続する役割にとどまらず、アーキテクトやクラウドインテグレーションの点で、この部分をどのようにコントロールするかが短期間のサービス開発では重要です」。また、内藤氏は、IBM WebSphere Cast Ironが多くのクラウド・サービスのAPIをサポートし、細かな所でも柔軟に対応できる点が今回の開発で重要であったと話を続けます。「トヨタフレンドでは、クルマや人とのコミュニケーションが行われます。そのときには、リアルタイム性が重視されるものや、少し緩やかなタイミングでコミュニケーションしてもよいものなど、どのタイミングで何を返すかが大切です。このようなサービスのコントロールをIBM WebSphere Cast Ironで実装しています。さまざまな場面に柔軟に対応できるのも、Cast Ironのメリットと感じました」。

 

将来の展望

他の車種への展開、異業種とのコラボレーションに大きな期待

2012年3月にサービスを開始したトヨタフレンドの将来の展望について藤原氏は次のように話します。「今後、より多くのディーラーとつながるようになれば、クルマが故障する前に予防保全したり、定期検査などの点検に関して連絡したりといったコミュニケーションも取りやすくなります。また、トヨタの開発部門からも、実際のお客様の使われ方や要望は『宝』であり、それらを集めて今後の開発に生かしたいとの意見をもらっています。しかし現在のトヨタフレンドは、仕組みや仕掛けができ、プリウスPHV向けにスタートしたばかりの状態です。今後は、まず対象を他の車種に拡大していきたいと考えています」。

また、トヨタメディアサービスは、異業種とのサービス連携にもトヨタフレンドを生かしていこうとも考えています。トヨタフレンドを通してユーザーの行動パターンを知ることで、さまざまなサービスを提案したり、新たなサービスを提供したりすることができます。さらに、海外市場への展開も視野に入れています。「ビジネスモデルやサービスモデルを日本国内で完成させ、それを海外に展開していきます。まだ始めたばかりですが、これは自動車ビジネスの新しい形です」と藤原氏はトヨタフレンドの将来に大きな期待を寄せています。

 

用語の説明

  • テレマティクス

テレマティクスは、「テレコミュニケーション(Telecommunication=通信)」と「インフォマティクス(Informatics=情報工学)」を組み合わせた造語で、カーナビやGPSなどの車載機と移動体通信システムを利用して、さまざまな情報やサービスを提供します。

 

お客様情報

トヨタメディアサービス株式会社は、個人、企業、社会のそれぞれが抱く想いを伝えるために最適なメディアを提供していくことが重要な役割の1つだと考えています。同社は、Webマーケティング、テレマティクス、ディーラーインテグレーション、ディストリビューターサポートなどの事業を営んでいます。

 

パートナー情報

日本情報通信株式会社は、システム開発、製品やサービス、ネットワークサービスの各分野で、お客様の経営にかかわるソリューションを提供しています。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Solution Category

  • Systems Software