アプリ・ユーザーのプロジェクト完了が最大で4倍高速化
エネルギー大手PETRONAS社、革新的なUPアプリで上流事業のデータを即座に提供
 海洋のオフショア・プラットフォーム
マレーシア政府が全額出資するPETRONAS社は、Fortune 500に名を連ねる世界的な石油・ガス会社です。同社は長年にわたって、データ管理の強化と意思決定のリスク回避に努めてきました。

「上流事業において当社が力を入れている重要事項の1つは、組織が直面しているデジタル化の課題をより適切に解決することです。デジタル化を活用して、特定のビジネス問題の解決に注力することは、成功要因の強化と拡大につながります」と、PETRONAS社の上流事業部門でセンター・オブ・エクセレンスの上流事業デジタル&テクノロジー責任者を務めるDzulkarnain Azaman氏は言います。「デジタル対応の企業になるという目標に向けて、私たちはデジタル、テクノロジー、データを重点領域に据える必要があります。私は、デジタルの世界は私たちの経済の仕組みと同じだと思うことがよくあります。健全な経済はシステム内のマネーフローにかかっています。デジタルも同様で、エコシステムのなかで可能な限りデータを流れさせることが肝心だと考えられます。デジタル化によって私たちは課題をうまく乗り越えられるようになります。なぜなら、データの適切な管理と適切な利用(適切なタイミング、適切なレベル、適切な品質)を実現すると、質の高い意思決定が可能になると考えられるからです」

「上流事業はデータ駆動型ビジネスです」と、PETRONAS社のデジタル・エクセレンス責任者、Shaharuddin Hamid Mustapha氏は説明します。「数十億ドル規模の意思決定を行うためには、ペタバイト規模の複雑なデータを集計して分析する必要があります」

石油・ガス産業における「上流事業」、つまり探鉱と生産は、原油田や天然ガス田を探し出し、石油やガスを地表に取り出すための油井やガス井の掘削と運用を担う事業部門です。

UPの開発と構築に携わった中心人物の1人であるShaharuddin氏は、データを意思決定者がすぐに利用できるように直接提供することがチャンスになると認識した決定的な瞬間について、こう振り返ります。「副社長の1人から、『当社は油田のモダナイズに何百万ドルもつぎ込んでいるのに、炭化水素の日産量を確認するだけでも、Eメールを検索しなければならない』と言われました」

PETRONASの上流事業部門の幹部が、信頼できるデータに基づいて行動のための意思決定を迅速に行えるよう、データ・プロバイダーとデータ・コンシューマーを協調的に連携させたいと同社は考えました。日産量、現在のトレンド、掘削の進捗状況など、データ駆動型ビジネスに関する質問への正確な答えが得られるセキュアなデジタル・ソリューションをチームは求めていました。

PETRONAS社は、IBMコンサルティングIBMハイブリッドクラウド・サービス)と協力し、IBM Garage方法論の要素である共創(設計)、共同実行(構築)、共同運用(スケール)に基づいて、Microsoft Azureのクラウド・プラットフォーム上で稼働する上流事業のデジタル・ソリューション「UP」を構築しました。このプロジェクトは、特定の種類のユーザー向けのモバイル・アプリから始まって、エンタープライズ・モバイル・アプリへと拡大し、さらにはマレーシアの石油・ガス業界にサービスを提供する戦略的なビジネス・プラットフォームへと成長していきました。

30,000人以上のユーザー

 

PETRONAS社のUPプラットフォームのユーザー数は30,000人以上

100の多彩な機能

 

UPのユーザーは100以上の多彩な機能を利用可能

UPのWebとモバイルは今や私たちの日常の一部であり、より迅速な意思決定を可能にしています。 Dzulkarnain Azaman氏 PETRONAS社、上流事業部門、センター・オブ・エクセレンス、上流事業デジタル テクノロジー責任者
上流事業の厳選データに高速でアクセス

プロジェクトの開始にあたって、PETRONAS社の上流事業デジタル・グループは、Enterprise Design Thinkingのワークショップに参加しました。PETRONAS社とIBMコンサルティングは、製品ストラテジスト、ユーザー・エクスペリエンス・デザイナー、ビジネス・アナリスト、アーキテクト、フロントエンド開発者、バックエンド開発者、データ・アーキテクトなど、多分野のエキスパートを集結させました。

チームはユーザー・ペルソナを作成し、最小実行可能製品(MVP)を設計しました。このMVPは、最初に副社長がShaharuddin氏に伝えた悩みに対処し、ビジネス・リーダーが自らの担当事業における炭化水素の日産量などの情報を得られるものでした。ビジネス・リーダーはこのMVPから、健康、安全、環境(HSE)に関するインシデントの情報や、担当事業でインシデントが発生しなかった日数、その他の財務指標に関する情報も得ることができます。

PETRONAS社とIBMコンサルティング・チームは、「知る」「行動する」という2つの重要な目的に関してユーザーを支援することを狙いとしたモバイル・アプリを共創しました。「知る」とはビジネス上の質問を指します。例えば、特定の油田の石油産出量、特定の国の埋蔵量と資源などです。「行動する」とはアプリのコンテンツに基づいてアクションを起こすことを指します。例えば、特定の領域のパフォーマンスを向上させるためのアクション・プランの作成と更新、技術レビュー会議の予約、提出された技術文書の承認などです。

ユーザーはこのアプリで次のようなことができます。

  • 目的に合った信頼できるデータにアクセスし、適切なデータ所有者とつながることができます。
  • いつでもどこでもコラボレーションを行い、コンテンツやアクションを作成および更新して、特定のビジネス成果を達成できます。
  • ユーザーのアクションを必要とするイベントの通知を受け取ることができます。
  • ビジネス成果を達成したことや組織の価値を実証したことを評価できます。

最初のMVPは上級幹部のペルソナ向けの設計でしたが、アプリの対象のペルソナは徐々に増え、複数の領域にわたるあらゆるレベルのリーダーやビジネス・チームを取り入れていきました。この拡張を進めるなかでも、ユーザーの「知る」「行動する」を支えるというアプリの目的は堅持されました。

アプリのデザインは直感的でユーザー・フレンドリーです。「アプリの使い方や必要性について教える必要はありませんでしたし、もちろんトレーニング・マニュアルも不要でした」とShaharuddin氏は言います。

このアーキテクチャーは、オープンソースのフロントエンド、ハイブリッドクラウド・プラットフォーム上のミドルウェア、バックエンドのセキュアなデータベースを使用しています。PETRONAS社がUPの導入を通じてクラウドに移行したことは、同社のデジタル・トランスフォーメーションにおける大きな一歩となりました。ワークロードを簡単に拡張できるようになり、クラウドベースのデータを利用して、より俊敏な動きが可能となったからです。UPの導入とあわせて、デジタル・ポリシーを再検討し、複数の除外項目を加えました。Shaharuddin氏は言います。「当社のデジタル・プロジェクトやデータ・プロジェクトの進め方が一変しました。このアプリをクラウド上に構築するために、当社はこれまでの限界をあらゆる方向に押し広げました」

上流事業デジタル&テクノロジー・チームは現在までに、かなりのワークロードをハイブリッドクラウド・プラットフォームに移行しました。この結果、アプリ開発はシンプルになり、スピードが上がりました。同社は機密性の高い本番データをオンプレミス・データベースからクラウドに移行し、これによって同社のテクノロジー・インフラストラクチャーの成熟度が高まりました。またShaharuddin氏は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの際の中断を最小限に抑えられたのは、クラウド・テクノロジーを採用していたおかげだと考えています。

IBMコンサルティングはこのプロジェクトに、強い責任感、情熱、コミットメントをもたらしました。私たちをお客様扱いするのではなく、私たちの一員になりました。 Shaharuddin Hamid Mustapha氏 デジタル・エクセレンス責任者 Petroliam Nasional Berhad社

「現時点でデジタル・トランスフォーメーションは、ITインフラストラクチャーの強化、データ管理の改善、クラウドによる処理能力の向上という点で、上流事業のビジネスにプラスの効果をもたらしています」とDzulkarnain氏は言います。「このようなデジタルとテクノロジーの変革は、従業員の作業効率の向上と意思決定の強化につながりました。さらに、こうした作業効率の向上によって、従業員のワークライフ・バランスが継続的に改善され、従業員のパフォーマンスが向上しました」

PETRONAS社は新しい働き方を受け入れ、アジャイルの手法でUPを共創しました。アジャイル開発のプラクティスを通じて、チーム全体に構造、整合性、品質、透明性がもたらされ、アプリ開発は超高速で前進を続けました。「週に1~2回は新機能を本番環境にリリースしていました」と、IBMコンサルティングのマレーシア・ハイブリッドクラウド・トランスフォーメーションのアソシエイト・パートナーで、UPデリバリー・パートナーを務めるIrene WM Howは言います。「一般的なアジャイルよりも速く進みました」

スクラムのセレモニーとアジャイル・ツールによってプロジェクトが順調に進むなか、アジャイルの主要なメリットは、チームが常にビジネス成果に意識を向け、その成果の達成を妨げるあらゆる障害を取り除けることでした。

最初のアプリが非常に好評だったことから、PETRONAS社とIBMコンサルティングはアプリの機能と範囲の拡大に直ちに着手しました。UPは、社内外のユーザー向けにWebとモバイル・アプリのチャネルを備えた、戦略的なエンタープライズ・ビジネス・プラットフォームへと成長しました。UPのユーザーは、ビジネス・ドメイン全体で厳選されたコンテンツにアクセスし、そのデータに基づくアクションを実行できます。

例:

  • PETRONAS社の取締役と幹部は重要な財務データにアクセスし、戦略的な計画立案やコラボレーションを支援しています。
  • マレーシア石油管理部門と業界パートナーが同社資産の設備投資と運用支出の技術レビューに協力しています。
  • 各セクターは日産量とパフォーマンス・データをモニタリングできます。
  • PETRONAS社の上流事業部門のユーザーは、日々の掘削活動や上流事業の人員移動の情報にアクセスできます。

PETRONAS社とIBMの共同チームは、UPの新機能の提供とイテレーションを迅速に進めることに常に専念しました。「IBMは、単なる地域担当チームではないことを証明しました。大企業としてのリソースを活用し、必要な機能を取り入れています」とShaharuddin氏は言います。「IBMコンサルティングはこのプロジェクトに、強い責任感、情熱、コミットメントをもたらしました。私たちをお客様扱いするのではなく、私たちの一員になりました。私たちは1つのプロダクト・チームでした」

上流事業部門のビジネスでは直感的なアプリを日々使用しています。

UPはPETRONAS社の上流部門にとって欠かせない存在になりました。現在では、ユーザーは30,000人以上で、100の機能があり、70のコミュニティーと事業単位が参加しています。このプラットフォームを利用することで、ユーザーはデジタル・プロジェクトを最大4倍の速さで完了できます。以前は6~12カ月かかったプロジェクトが、現在では1~3カ月です。

PETRONAS社の社長兼最高経営責任者は、グローバル・タウンホール・ミーティングのステージでこの点を証明しました。UPをスクリーンに映し出し、直感的なアプリの使い方を実演して、定期的にアクセスする重要な情報がこのアプリで得られると説明しました。

Shaharuddin氏は、UPがPETRONASの最高幹部に認められる様子を目にしたのはインパクトがあったとしつつも、次のように話しています。「何より大きなポイントは、UPが違いを生み、非常に多くの人々にメリットをもたらしたのだと実感できたことです。そして、PETRONASとIBMの双方の情熱によってこれが実現されたことも大きなポイントです」

    PETRONAS社のロゴ
    Petroliam Nasional Berhad(PETRONAS)社について

    PETRONAS社(ibm.com外部へのリンク)は、50カ国以上に拠点を置く世界的なエネルギー・グループです。マレーシアのクアラルンプールに本社を置く1974年設立の石油・ガス会社で、マレーシア政府が全額出資しています。PETRONAS社のエネルギー・ソリューションには、上流の探鉱、下流の石油精製、再生可能資源が含まれます。従業員数は約48,000人です。

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      脚注

      © Copyright IBM Corporation 2023.IBM Corporation, IBM Consulting, New Orchard Road, Armonk, NY 10504

      2023年3月、米国で作成。

      IBM、IBMロゴ、ibm.com、Enterprise Design Thinking、およびIBM GarageはInternational Business Machines Corp.の商標であり、世界中の多くの管轄区域で登録されています。その他の製品名およびサービス名は、IBMまたは他社の商標である可能性があります。IBM 商標の最新リストは、ウェブ上の「著作権および商標情報」 www.ibm.com/jp-ja/legal/copytrade.shtml で入手できます。

      本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

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