Business Challenge story

災害発生時の迅速で正確な情報共有と市民への的確な情報発信が課題に

盛岡市は、「人々が集まり・人にやさしい・世界に通ずる元気なまち盛岡」を基本目標に、安全・安心なまちづくりを優先課題のひとつに掲げて取り組んでいます。

2011年3月に起きた東日本大震災では、盛岡市は震度5強を記録し、約4,500人の避難者が発生しました。建物の損壊など大きな被害は少なかったものの、停電と燃料不足、それに伴う物流の停滞が起こりました。当時、市内の一部地域では防災行政無線が備わっていましたが、全市に向けて災害情報を提供する仕組みはなく、災害後、市からの情報提供の不足や遅れに対して、市民から改善を求める声が寄せられました。

一方、盛岡市の庁内でも、震災発生直後から情報共有を迅速に行えなかったことが反省点に挙げられていました。これまで職員間の災害情報のやりとりはメールが主体でした。例えば大雨警報が出ると、消防防災課の職員が、庁内メールで災害対策本部の立ち上げを告知して被災状況の報告を依頼。それに対して、担当各課が文書作成ソフトや表計算ソフトで資料を作成し、メールに添付して消防防災課に回答していました。

災害時の情報共有と伝達の仕組みの課題について、盛岡市総務部消防防災課課長長谷川晋也氏は、このように話します。

「災害対応の課題としては、まず正確な情報を収集し、的確な判断を下せるように庁内で情報共有することが特に重要です。また、市民への情報伝達の手段に防災行政無線がありますが、市内全域に整備する場合、多額の投資が必要とのことで、とても無理だと考えました。盛岡市の場合、過去の記録を見ると大規模災害はほとんどありませんし、最近ではテレビ、ラジオ、インターネットによる情報提供も行われています。そこで、それらの活用を前提にした上で、庁内での災害関連情報の共有と市民への情報伝達との両方を実現することを目指して、『災害情報連携システム』の構築を検討することになりました」。

Transformation

IBMの「災害対応情報システム」を選定。決め手は従量課金制のクラウド

盛岡市が目指したのは、個別に取得していた災害関連情報を連携させ一元的に収集・管理し、関係者間で速やかに共有した上で、外部に情報発信するシステムです。

具体的には、全国瞬時警報システム(J-ALERT)や県防災システム、地方気象台などの既存の仕組みや最新の情報収集端末を活用して、気象情報、被害状況、安否情報、避難所状況、道路災害情報、河川水位情報などを収集し、庁内で共有します。そして、盛岡市が住民に伝達すべき避難指示・避難勧告に関する情報をコミュニティーFMや各携帯電話会社の緊急速報メールなどのメディアに一括配信し、災害発生時の迅速な対応を支援します。一元化された災害関連情報と地図情報をひも付け、鳥瞰的な見える化を実現し、災害対策本部での意思決定をサポートするという構想です。

加えて、災害に備えた備蓄物資や救援物資の管理も要件に含まれました。盛岡市は東日本大震災の直後、甚大な被害を被った沿岸部(三陸地方)に物資を送る中継地になりました。全国から大量の救援物資が送られてくる中、それらを管理する仕組みがなかったために苦労した経験があったのです。

盛岡市では、これらの要件に基づき協力企業を公募。複数社の提案を検討した結果、IBMの「災害対応情報システム」を選定しました。その決め手はコスト面が一番大きかったと長谷川氏は明かします。

「開発費用だけ見れば、もっと安い案もありました。しかし、盛岡は沿岸部と違い、津波など大きな災害が予想される地域ではありません。今後長く維持していくためには、運用コストは極力抑えるべきと考えました。各社が災害に強いクラウド・システムを提案する中で、使った分だけ支払えばよいIBMの仕組みは合理的で、長期的に考えると、コストに大きな開きがありました」。

2012年11月に契約を行ってシステム導入プロセスに入り、IBMは消防防災課のさまざまな要望をシステムに反映させる形で、構築作業を進めました。前述の要件を満たした上で、地図情報と連携して、どこで何が起こっているのか、誰が何を求めているのかを市の災害対策本部でリアルタイムに情報を把握するための「地図情報連携※」や、タブレット端末やスマートフォンなどのさまざまな端末からの災害情報の収集を可能にする「マルチデバイス対応」なども実現しています(盛岡市災害情報連携システム概要図参照)。

その他、盛岡市が特に要望した点について、盛岡市総務部消防防災課主任吉田慎哉氏は次のように話します。「中高年の職員をはじめ、誰でも分かりやすく、簡単にシステムを使えるようにすることを最優先にお願いしました。また画面表示も、例えば対応状況について、対応済みは青、対応中は黄、未対応は赤と、色分けするなど、直感的にとらえられるようにしました」。

※ 地図情報については、IBMはESRIジャパン株式会社と協業してソリューションを構築しています。

Benefits

被害状況や対応状況の直観的な把握を実現。コミュニティーFMを自動起動させ、災害情報を流す

「災害情報連携システム」は2013年4月1日に稼働し、その後、全職員を対象とした操作説明会を実施するとともに、災害発生時のスムーズな活用を目指した操作トレーニングなどが行われています。

システム本体は、IBMのクラウド・センターに設置され、盛岡市はインターネット経由で利用します。平常時には必要最低限のサーバーだけを動かし、災害が発生しシステムが必要となった際のみ、他のサーバーを起動させます。IBMのクラウド・サービスは1時間単位の従量課金制のため、運用コストを抑えることができました。

庁内の情報共有および市民宛の情報発信については、次のような効果が期待されています。

  • 正確な災害状況の把握と情報共有の促進

「災害情報連携システム」は、庁内2,000人弱ほどの職員が、ID・パスワードを入力して利用します。情報が一元化されたため、災害情報連携システムにアクセスするだけで、関連する情報を統合的に利用できます。被害状況は直接入力すればよいので、今までのように、別のソフトで作った報告書をメールで送る必要がなくなったほか、備蓄品の管理や関係職員に参集をかける機能なども盛り込まれています。吉田氏は、「各課の対応状況が目に見える形で表示されるのは非常にわかりやすく、全体を把握する立場にある我々にとって、とても有益です」と評価します。

加えて、スマートフォンやタブレット端末を使って被災した現地の様子や避難所の状況などを写真に撮って登録することで、地図情報とともに確認することができます。

「今までは、市民からの連絡で被害現場の状況をつかんでいました。今後は、職員がパトロール中や災害現場に出向いた時に得た情報を、直接スマートフォンや携帯電話から送信できるので、迅速かつ正確な情報の集約ができるようになると思います」(吉田氏)。

  • 市民への情報提供

一方、市民に対する避難指示や避難勧告は一刻も早く届ける必要がありますが、このシステムにより、SNSや(財)マルチメディア振興センターが提供する情報基盤公共コモンズ経由による携帯電話各社からの緊急速報メール、そしてコミュニティーFM「ラヂオもりおか」で、一斉に情報を配信することができます。     「東日本大震災に遭い、ラジオの有効性を実感しました。マスコミでは各自治体の避難所の状況など細かな部分までカバーし切れない面もあるため、地域密着型のコミュニティーFMはそれを補う上で、大変重要だと思います」と長谷川氏。

そこで、盛岡市はラヂオもりおかと災害協定を結び、災害時の緊急放送ができるようにしました。災害対策本部でシステムの画面上に必要なテキスト情報を入力してボタンを押すと、ラヂオもりおかに配信され、そこで音声に自動変換されて、通常の放送に割り込む形で緊急放送が流れます。今回、盛岡市では災害時に自動起動するラジオを公共施設に備えました。

 

将来の展望

システムを運用しつつ、自主防災活動を強化し、安全・安心なまちづくりに取り組む

盛岡市では今後、防災訓練を積み重ねながら、構築した盛岡市災害情報連携システムの活用と改善に取り組んでいく予定です。システムをいざというときに活用できるようにする取り組みの一方で、地域における自主防災活動の取り組みを強化し、地域ごとに防災組織を育てていくことにも力を注いでいます。

「市議会に防災特別委員会ができて、一緒に神戸を視察しました。その時、阪神淡路大震災経験者が『震災の時に助けてくれたのは近所の人だった』と口を揃えていっていたのが印象的でした。そのことからも、災害に備えた、自助と共助の大切さがわかります。現在、自主防災推進員を置いて、地域での訓練や勉強会での講師を務めてもらっていますが、そうした活動を通して、自分たちの身は自分たちで守るという意識の醸成を図っていきます」(長谷川氏)。

盛岡市では盛岡市災害情報連携システムの運用を行いながら、自主防災推進活動の充実強化を図り、市民が安心して暮らすことができるまちづくりを進めていく考えです。

 

お客様情報

江戸時代南部氏の城下町として発展し、1889年、岩手県の県都として盛岡市が誕生した。1992年には南に隣接する都南村と、2006年に北に隣接する玉山村と合併を果たし、人口約29万人、面積886.47平方キロメートルの新生盛岡市となった。また、2008年4月には中核市へと移行し、県から民生や保健衛生、環境、都市計画などの行政分野における事務の移譲を受け、北東北の要となる拠点都市として、一層の発展を目指している。

 

テクノロジープラットフォーム

ソリューション

 

製品・サービス・技術 情報

当事例で使用されている主な製品・サービスは下記の通りです。

ソフトウェア

DB2 pureScale Feature for Enterprise Server Edition

ソリューション

WebSphere Application Server Hypervisor Edition, Govt: Public Safety and Security, Web Services

Solution Category

  • IBM Hybrid Cloud