Business Challenge story

病院内の各種データを適切に集計、分析し、医療スタッフと共有したい

病院経営は、民間企業のように営利を追求するものではありませんが、だからといって赤字経営が許されるわけではありません。もし、収益悪化によって存続が困難となり、病院閉鎖という事態になってしまうと、地域住民の福祉と健康が脅かされることになってしまいます。このため、医師、看護師をはじめとする医療従事者は、患者に対して最善の治療を行うように努めると同時に、医療に係るコストが適正であるかどうかにも留意する必要があります。

2009年、「診断群分類別包括制度(DPC)」に加入した前橋病院においては、こうした収益、コスト管理の重要性はさらに高まりました。DPCは、患者の病気の種類によって定額の診療報酬が得られる仕組みです。従来の「出来高払い」と異なり、適切な治療によって患者を早期に回復させた方が経費は少なくてすみ、利益が残ることになります。逆に、治療が長引けば長引くほど経費がかさむため、利益が削られてしまうことになります。したがって、DPCに加入している前橋病院では、収益、経費の現状を定量的に把握して、医療行為に関わる適切な判断を行えるように、医療スタッフに周知徹底する必要性が高まったのです。

また、DPCでは、医療行為が少ないほど経費がかからず利益が増える仕組みであるため、医療の質の低下を防ぐことが求められます。そこで、前橋病院では、医療の質を定量的に把握するための指標として、Quality Indicator(QI)を採用しています。そして、「病院はサービス業である」という認識の下に、患者に対するアンケートなどを通じて「患者満足度」の測定を行い、医療スタッフと共有する必要性も感じていました。

前橋病院の総務部長を務める綿貫靖氏はこのように説明しています。「無駄なコストを減らすことで確保した利益は、最新の医療機器の購入や病院施設の充実、優秀な医師、看護師ら医療スタッフの確保、待遇改善に再投資することができます。その結果、医療の質が向上し、患者さんに対する医療サービスをさらに充実させることができるのです。そのためには、わかりやすいデータを医療スタッフに提示する必要がありました」。

しかし、前橋病院では、院内に蓄積されているデータを多様な切り口ですばやく集計、分析し、医療スタッフにわかりやすく展開できるツールがないため、収益、コスト管理の重要性、またデータに基づく意思決定の重要性を医療スタッフに浸透させることができないという課題を抱えていました。

Transformation

統計の専門家でなくても統計的なデータ分析を行えるIBM SPSS製品を導入

前橋病院では、各種データをデータベースにいったん格納し、データの切り出しや加工を行っていました。こうした業務は、専門的な知識を必要とするため、広報・情報課 課長補佐、医療情報技師で、システムエンジニアでもある宮崎 宏貴氏が一手に引き受けていますが、必要に応じてその都度、プログラムを書く必要があり、データ処理に2カ月以上を要するケースもありました。

そこで、宮崎氏は、より迅速にデータ加工や集計、分析ができるツールを探したところ、2012年2月に実施されたリコージャパン株式会社群馬支社のセミナーでIBM SPSS製品を紹介されました。「統計の専門家でなくても、統計的なデータ分析が手軽に行えるツールはこれだ!」と即座に確信し、前橋病院への導入を強く推進しました。現在はIBM SPSS Modeler、IBM SPSS Text Analytics for SurveysとIBM SPSS Statisticsが導入されており、日々のデータ分析業務に活用されています。

Benefits

データ処理業務が大幅に効率化、積極的なデータ収集、活用が可能に

IBM SPSS製品の導入後は、一連のデータ処理プロセスはIBM SPSS Modelerを用いて簡単に設計できるようになり、従来利用していたツールを用いる必要がなくなりました。また、多くの場合、プログラミングが不要になったことから、データ処理期間も半月〜1カ月程度で完了できるようになり、業務の大幅な効率化を達成しています。

宮崎氏は「定型的処理などのためにプログラムを書く必要がある場合においても、まずIBM SPSS Modelerでデータ処理プロセスをいくつか試し、最適な処理方法を発見してからプログラミングしています。つまり、データ処理システムのプロトタイプをつくるためのツールとしてもIBM SPSS Modelerを活用しています」と話します。

また、人間ドック受診者向けのアンケート調査をはじめとする「患者満足度調査」も積極的に実施することができるようになりました。従来は、集計、分析に手間、時間がかかるため、患者対象の調査は年に1回程度しか行えない状況でした。しかし、現在はIBM SPSS Statisticsでスピーディーに集計、分析が行えるため、前橋病院に対する患者の評価や生の声を短期間で収集、分析できるようになったのです。

宮崎氏が加工したデータの分析およびアンケート調査などの企画や、集計、分析を担当している広報・情報課の若林 綾子氏はIBM SPSS Statisticsの操作性について「一般的な表計算ツールだと難しくて手間がかかっていたデータ加工や集計が、IBM SPSS Statisticsではあっという間にできることに感激しています。誰かに教えてもらわなくても、ある程度直感的に操作できるのがありがたいです」と語ります。

IBM SPSS製品によって分析された結果にどのような意味があるのか、どんな意思決定を行うべきかについてアドバイスするのは、医事課主任 診療情報管理士の小幡 智佳氏の役割です。小幡氏も「IBM SPSS製品を活用することで、さまざまなデータを多角的に分析でき、分析結果から統計的な裏付けのある新たな発見が得られることがわかりました」と高く評価しています。

 

将来の展望

病院経営全般に役立つ、多様なデータの収集・分析にさらに注力

前橋病院ではIBM SPSS製品を用いて、これまで活用されずにいたデータから新たな知見を引き出すことに積極的に取り組んでいく予定です。例えば、前橋病院に救急患者が何月何日、何曜日の何時に運び込まれているかという救急医療データを分析することによって、曜日別でみると、金曜日の救急患者数が多く、季節別では、秋口から救急患者数が増加し、春先から夏に向けて減少していく、といった一定の傾向を見いだすことができました。こうした分析は、医療スタッフの勤務スケジュール作成に役立てることが可能であり、救急患者の受け入れ拒否を減らし、同時に無駄なコストを削減することにつながります。

また、前橋病院がカバーする地域の住民特性や人口動態、他の病院の診療科目や病床数などのデータを入手し、分析すれば、将来の来院患者数の推移や疾患の種類などが予測可能であり、病棟建て替え時における、診療科目の拡充、縮小や病床数などの決定のための判断材料を提供できます。

前橋病院は「地域医療支援病院」として、かかりつけ医(地元医師会、医院、診療所の医師)との連携を大切にしています。かかりつけ医の紹介によって、入院治療、手術などの急性期(緊急の治療を要する状況)の医療を前橋病院が受け持ち、一方、慢性期の疾患や日常診療は主にかかりつけ医が受け持つという役割分担の下で、地域住民の福祉と健康を守っています。

前橋病院と連携しているかかりつけ医からの紹介数をエリア別に分析することで、前橋病院とかかりつけ医との連携強化のための方策を立案することもできるようになります。

「今後は、医療サービスの質向上と、収益、コスト管理の徹底のため、IBM SPSS製品によるデータ分析結果をわかりやすい形で、タイムリーに医療スタッフと共有していきます。そして、各スタッフの担当部署における適切な意思決定に役立ててほしいと考えています」と綿貫氏は今後の取り組みについて説明します。

 

IBM Business Analytics について

IBMのビジネス・アナリティクス・ソフトウェアは、業績改善に取り組む意思決定者に対し、実践的な洞察を提供します。IBMは、ビジネス・インテリジェンス、予測分析と高度な分析、財務パフォーマンスと戦略の管理、ガバナンス、リスクおよびコンプライアンス(GRC)、そしてアナリティック・アプリケーションからなる包括的なポートフォリオを用意しています。

IBMソフトウェアは、ビジネスの傾向やパターンあるいは異常の発見、仮説に基づくシナリオの比較、潜在的な脅威や機会の予測、重要なビジネス・リスクの特定および管理、さらには経営資源に関する計画、予算および予測を実現します。IBMの世界中のお客様は、この充実したアナリティクスを使うことで、業績への理解を深める一方、成果への予測を高め、目標への確かな道筋をつけることができます。

 

お客様情報

全国で医療福祉事業を行っている済生会が運営する病院。1943年3月開設、病床数327床(2013年3月現在)。2009年4月に地域医療支援病院となり、また診断群分類別包括制度(DPC)に加入。地元医師会、行政、各医療施設などと連携して地域ぐるみで支えあう医療を目指し、24時間365日救急医療にも取り組んでいる。

 

パートナー情報

OA機器、通信機器および関連機材、消耗品などの販売と実務改善を含めたコンサルティングからシステム設計、アフターサービスまでのオフィスのトータルソリューションを提供するリコージャパン株式会社の群馬県内での事業を担当。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Solution Category

  • IBM Hybrid Cloud
    • HC: Analytics and Reporting
    • SPSS Modeler
    • SPSS Statistics