Business Challenge story

キヤノンMJグループの「SOLTAGE」が始動。高い拡張性を重視したITサービス共通基盤

キヤノンITSがキヤノンMJグループのITサービス共通基盤の構築に着手したのは、2009年末のこと。2010年1月にキヤノンITS内でプラットフォームの要件定義作業を開始し、2010年4月にはグループ内に正式なプロジェクトが発足しました。

「キヤノンMJグループの強みには、『プリンティング』『イメージング』に加え、キヤノングループ全体で培ってきた社内アプリケーションを指す『グループIT』があります。これらをクラウド・サービス化し、お客様に提供するためのITサービス共通基盤がSOLTAGEです」(取締役 上席執行役員 クラウドビジネスセンター センター長 和田昌佳氏)。

このSOLTAGEというITサービス共通基盤の名称は、“ソリューションの舞台”を意味する「Solution Stage」から名付けられました。

SOLTAGE上で稼働するクラウド・サービスの開発も並行して行われました。現在は、中小企業向けIT支援サービス「HOME」、オンライン・パブリッシング・サービス「My-Promotion Web」などがSaaS(Software as a Service)として提供されています。

クラウド・サービスを支えるSOLTAGEを構築するにあたって、キヤノンITSでは、拡張性の高さと運用の自動化を第一に考えたと言います。

「SOLTAGEは、クラウド・サービスの利用者が数百ユーザーから数万ユーザーへ増えたとしても、十分に対応できるスケーラビリティーを確保し、システムの増加に対しても運用負荷が増加しないことを重視しました」(クラウドビジネスセンター テクニカルサポート部 部長 佐々木勝吉氏)。

システムの構想は、正式なプロジェクトが発足する前から始められました。メインとなるサーバーには、ブレード・サーバーIBM BladeCenter HS22を採用。ストレージには複数のメーカーの製品を採用するとともに、異機種混合環境下においてストレージ仮想化を実現するIBM System Storage SAN Volume Controllerを導入しました。また、ストレージ・ネットワークは将来の拡張性を考慮してFCoE(Fibre Channel over Ethernet)を標準としてシスコシステムズ製品を採用するなど、ハードウェア基盤はマルチベンダー環境で構成されています。

Transformation

ハイブリッド・クラウドを実現する基盤としてWebSphere Enterprise Service BusとTivoli Federated Identity Managerを採用

SOLTAGEを利用するSaaSアプリケーションの開発を支援する目的で認証やID管理、決済の仕組みなど共通機能をサービスやAPIで提供しており、ミドルウェアは、サービス間の連携を効率的に実現できるようにIBM WebSphere Enterprise Service Bus(以下、ESB)を導入し、SOA(サービス指向アーキテクチャー)によるアプリケーション実行環境が実装されました。

さらに、SOLTAGEの外部にある異なるクラウド・サービス、およびお客様のオンプレミス環境と連携し、ハイブリッド・クラウドで運用することも想定しています。

「キヤノングループには、ドキュメント・サービスをグローバルに展開する『Canon Business Imaging Online』など、SOLTAGEとは別のクラウド・サービス基盤があります。そうしたグループ内のクラウド・サービスに加え、Salesforce.comなど他社のパブリック・クラウドとの連携も考慮し、IBM Tivoli Federated IdentityManagerによる統合認証管理機能も用意しました」(佐々木氏)。

マルチベンダー環境に最適なプロビジョニング製品としてIBM Tivoli Provisioning Managerを採用

そして、プラットフォームサービスを迅速に提供するために欠かせないのが、ITリソースの割り当てと配備を自動化するプロビジョニング機能です。そのツールとして、キヤノンITSはIBM Tivoli Provisioning Manager(以下、TPM)を採用しました。

「TPMを採用したのは、サーバーにIBM BladeCenterを導入したからというわけではありません。プロビジョニング製品は、独立したものとして比較検討を行いました。その中でもハードウェア依存がなく、マルチベンダー環境に最適だったのがTPMでした。TPMはオープンな仕様を採用しており、カスタマイズが可能で、他社製品のようにハードウェアや動作環境に依存することがないところが、採用の決め手になりました。例えば、今はハイパーバイザーにVMwareを採用していますが、将来的に他社製の仮想化ソフトウェアを採用したとしても、ハードウェアやハイパーバイザーの種類に依存しないTPMならば、カスタマイズして拡張し続けることが可能です」(佐々木氏)。

Benefits

プロセス・サーバーとの連携により完全自動化を実現。システム構築基盤の準備がわずか3日間に

SOLTAGEのプロビジョニング機能は、TPMのフレームワークをベースにキヤノンITSが独自に作り込みました。一般的なプロビジョニングでは、システム構築に利用する仮想サーバーを割り当てるだけの場合も少なくないのですが、SOLTAGEでは複数の仮想サーバーやストレージ、VLANの構成までを含め、完全なシステム基盤として切り出す仕組みになっています。

「SOLTAGEでプロビジョニングされるシステム構成のひな型を、当社では『システムテンプレート』と呼んでいます。Webサーバーを何台作成するか、DBサーバーを冗長化するかといったパラメーターをWebインターフェース上で選択すると、その情報がESBを経由してプロセス・サーバーに伝わります。プロビジョニング機能は、指定されたリソースを確認して、必要な台数の仮想サーバーを作成するとともに、仮想サーバーに割り付けるディスクをストレージのリソースから切り出します。また、ネットワークの独立性を持たせるためにVLANにロードバランサー、ファイアーウォールを割り当てます。これら一連の流れを、表ではプロセス・サーバーによるBPELエンジンが、裏ではTPMによるワークフロー・サーバーがコントロールするという仕組みで、自動化されています」(佐々木氏)。

こうしてITリソースの自動割り当てが完了すると、専用ポータルのURLを記載したメールが配信され、ポータルに表示された情報でOSがインストールされた仮想サーバーにアクセスできる状態になっています。

「システムテンプレートのワークフローは、機械的には1時間以内に終了します。ただし、この先に契約や承認のワークフロー・システムがあるので、現在はそれらを含めてトータル最短3日程度でシステム構築基盤を提供しています」(佐々木氏)。

このように短期間のうちにシステム構築基盤を用意できる点が、TPMによるプロビジョニング機能を導入した最大の効果です。

「これを人手で行った場合、キャパシティー・プランニングからサイジングの設計、ハードウェアの調達、構築までのフェーズを踏んでいくと、通常は約半年、最短でも3カ月はかかります。それが3日になるというスピード感がSOLTAGEの大きな特徴と言えます」(佐々木氏)。

将来の展望

将来的にはSOLTAGEの共通基盤を外部に展開。TPMによるプロビジョニングのノウハウも提供

SOLTAGEでは、2011年9月の時点でクラウド・サービスを提供しているシステム基盤に加え、管理用システムや試験・開発用システムなど、約140の仮想サーバーが稼働しています。

「現在は、キヤノンMJグループの中で新しいアプリケーションによるビジネスを立ち上げ、それをSaaS化して提供するためのITサービス共通基盤として使われていますが、2013年ころをめどに、外部のお客様にもクラウド・サービスを提供するためのシステム基盤として利用していただく準備を進めています」(和田氏)。

また、キヤノンITSではSOLTAGEの構築・運用によって蓄積されたノウハウを活用したビジネス展開も視野に入れています。

「当社には、SOLTAGEを自社で構築したという強みがあります。すべてのお客様が自社でクラウド基盤を構築することは難しいので、SOLTAGEで提供しているサービスの一部をお使いいただいたり、SOLTAGEのノウハウを活用したプライベート・クラウドの構築をお手伝いしたりといったビジネスの展開を予定しています」(基盤ソリューション事業部 パートナー営業部 部長 山岸弘幸氏)。

もちろん、そうしたビジネスの中にはTPMによるプロビジョニングのノウハウも含まれます。

「当社は長年、IBMのディストリビューターとしての経験があり、とりわけTivoli製品に関してはIBMに統合される前から扱ってきた歴史があります。そうした実績にSOLTAGEで培ったプロビジョニングのノウハウを加え、SIerのお客様に対してプライベート・クラウドを構築する際の運用管理の仕組み作りを、積極的にお手伝いしたいと考えています」(山岸氏)。

お客様情報

キヤノンマーケティングジャパン株式会社グループの中核企業であり、コンサルティング・企画から設計・開発、運用、保守まで、システムのライフサイクル全般におけるITソリューションを提供するトータル・サービス・プロバイダー。キヤノングループが保有する各種ソリューションを最新のクラウド・コンピューティング技術で運用、提供することを目的に、ITサービス共通基盤の整備を進めている。

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