Business Challenge story

数百メガバイト単位のファイルを大量に処理する環境

「HAYABUSA ~BACK TO THE EARTH~」は、宇宙航空開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency)が2003年5月に打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」の活動を描いた臨場感あふれるフルドームデジタルプラネタリウムのCG作品です。はやぶさの目的は、小惑星イトカワまで飛行し、その表面の物質を採取して地球に帰還すること。その物質を分析すれば、太陽系が誕生したころの様子を知る手掛かりが得られます。このほかには、イオンエンジンによる飛行、地球から遠く離れた小惑星までの自律航法、カメラやレーザー高度計などによる科学観測も含まれています。CG作品ではこれらのミッションが1678万画素(4096×4096ピクセル)という高解像度によって表現されています。

「はやぶさのミッションを紹介した『「祈り」 -小惑星探査機 はやぶさ の物語-』というビデオ制作に携わり、これをご覧になった大阪市立科学館の方からのお話から、2008年3月に『HAYABUSA ~BACK TO THE EARTH~』を共同制作することになりました」今回の映像制作でプロデューサー、ディレクター、シナリオを担当した、有限会社ライブの代表取締役 上坂浩光氏は、制作のきっかけをこのように話します。

全天周360度に投影するフルドーム映像の制作は、通常の映像制作とは多くの点で異なっていました。例えば、ショットのフレーム(カメラの枠)が存在しないため通常の映像表現手法が使えなかったり、投影曲面に合わせるためにゆがめてレンダリング(描画)しなければならず、3Dソフトウェアのプレビューによるリアルタイムな確認ができなかったりしました。

さらに、1678万画素の解像度では1フレーム(1/30秒)のファイルサイズが最低でも8メガバイト程度になります。これに加えて、背景、はやぶさ、地球、イトカワなど、それぞれの要素が加わると、ファイルサイズはさらに数倍の大きさになり、1フレームで数十メガバイト、1秒間で数百メガバイトというデータ処理が必要になります。つまり、43分間の「HAYABUSA ~BACK TO THE EARTH~」の制作には、巨大なファイルサイズのデータを大量に高速処理できる環境や仕組みが必要でした。

「通常、CGを作るときには、ファイルサーバーにデータを置き、そこに制作者がアクセスして作業します。今回は、ネットワーク上でデータを受け渡すにはファイルサイズが大きすぎるため、この方法で作業できません。このため、シーンごとに用意した13台の専用サーバーで直接作業するようにしました。各サーバーには、シーンでのレンダリング結果やコンポジット(合成)結果などすべてを収め、できる限りサーバー間でファイルを移動させないようにしました。このような仕組みを採用することで、ようやく制作できそうだというめどが立ちました」(上坂氏)。

Transformation

社内と同じレンダリング環境をもう一つ構築

しかし、実際に作業を進めていくと、モデリングなどの作業に予想以上の時間がかかり、2009年3月の公開に間に合わせることが難しくなってきました。このような状況のときライブは、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)環境を必要なときに必要な分だけネットワーク経由で利用できるIBM CoDの存在を知り、制作効率の向上のためにその利用を検討し始めました。

「HAYABUSA ~BACK TO THE EARTH~」のプロジェクト・マネージャーであり、ライブでのプログラムやデザインの作業に加えてシステム運用も担当されている下山田和弘氏は、検討当初の心境を次のように話します。「最初にIBM CoDの話を聞いたときには、本当にできるのだろうかと考えました。インターネット経由でのデータ送受信は利用に耐えられないだろうと思いましたし、CGレンダリングで使うさまざまなプラグインがきちんと動くのか、レンダリング結果が社内でのものと違ってしまうのではないかという点を心配しました」 

このような下山田氏の心配は、IBM CoDを使った実際の作業が始まるときれいにぬぐい去られました。そればかりかIBM CoDを利用したことで、巨大なファイルサイズの大量データを高速処理できるレンダリングシステムを、ライブは短時間のうちにもう一つ手にできたのです。ライブは、IBMのデータ・センター内に設置したブレードサーバー「IBM BladeCenter HS21」14台にMicrosoft Windows Compute Cluster Server 2003を導入した環境に、レンダリングに必要なすべての機能を配置しました。そして、このシステム上で処理したデータを、インターネット経由で一括してライブ社内のシステムに引き渡すようにしました。

「必要なソフトウェアのインストール作業自体は、これまで社内で行ってきたものと同様でした。サーバーにインストーラーをコピーしておき、ライブ社内からリモートデスクトップで操作しました」と話す下山田氏は、実際の運用についても次のように続けます。「実際にIBM CoDで集中的に処理した期間は2週間くらいでした。ファイル転送に専用ソフトウェアを利用したため、当初インターネット経由でのファイルコピーに少しだけ戸惑いましたが、そのほかはまったく問題ありませんでした」

Benefits

高解像度のレンダリング処理を問題なく実行

IBM CoDを利用したことで、「HAYABUSA ~BACK TO THE EARTH~」の制作は無事に完了し、予定どおり公開できました。IBM CoDの効果について、上坂氏は次のように話します。「レンダリングのために必要な処理能力は、いわば最大瞬間風速のようなものです。これに合わせて機材をそろえることは合理的ではありません。この最大瞬間風速のときにだけ、機材を利用できるIBM CoDは非常に有意義でした」

また、下山田氏も次のようにIBM CoDの処理能力の高さを評価します。「コンピューター自体は安定していましたし、高スペックであるため処理自体も高速でした。また、リモートでアクセスしたのですが、それまでの社内での作業とまったく同じように操作できました。インターネット経由による遅延はありましたが、レンダリング処理は高速で問題なくスムーズに作業できました」

 

将来の展望

導入/運用コストと比較し有効なサービスと評価

今回の制作プロジェクトを通して上坂氏と下山田氏は、ともにIBMの対応にも好印象を持たれたようです。「解決が難しそうな問題が出たときには途中であきらめそうになりましたが、その都度適切なアドバイスをいただき、いろいろと助けていただきました」(下山田氏)。 1~2年の期間でマシンを入れ替えたり、その間のメンテナンスでのコストを考えると、IBM CoDは有効なサービスだとライブは評価しました。今後も制作全体のコストに応じて、ライブではIBM CoDの利用を検討していく考えです。

 

追加情報

 

お客様情報

コマーシャル、ゲームなどのエンターテイメントから学術的なものまで、幅広い分野の映像制作を手掛けるCGプロダクションです。CGの黎明期から制作活動を行い、リアルタイムな映像生成技術を実践するためのプログラムの開発・販売も手掛けています。CG映像には、通常の映像では表現できないものがあるという考えのもと、人々の気持ちに訴えかけるエモーションを創造しています。

 

テクノロジープラットフォーム

ハードウェア

  • IBM BladeCenter HS21

ソフトウェア

ソリューション

Solution Category

  • Other