Oxford Cancer Biomarkers (OCB)
最先端の診断とAIテクノロジーを組み合わせて、がん患者の治療を改善
開口数0.14の顕微鏡の拡大図

ステージIIの大腸がん患者が手術後に再発するかどうかを予測することは困難です。しかし、重篤な副作用が生じる可能性があるにもかかわらず、多くの患者に化学療法が行われています。一部の患者では、致命的となる可能性があります。Oxford Cancer Biomarkers社は、Meridian IT社と連携してIBM PowerAI Visionを導入し、腫瘍微小環境における新しい診断バイオマーカーを開発し、早期の診断と治療の意思決定を支援することを目指しています。

ビジネス課題:

OCB社は、大腸がんを早期に発見し、化学療法による不必要な過剰治療を減らすことで、ヨーロッパだけでも数十万人の命と数十億ドルを救える可能性があることに気付きました。

概要と経緯

OCB社は、Meridian IT社と連携して、IBM Power Systemサーバー上で実行されるIBM PowerAI Visionを導入し、大腸がんの再発リスクを予測するために、腫瘍のデジタル画像の分析を加速しました。

成果 月単位から時間単位に減少
再発リスクを予測するモデル構築に要する時間の改善
実現できたこと
画期的な診断、患者の治療の改善、効率の向上
加速させる
ソリューションの拡張と展開により、OCB社がサービスをグローバルに展開できるように支援
ビジネス上の課題の詳細
医療のパーソナライゼーション

がんは世界で死因の第2位となっています(ibm.com外部へのリンク)。喫煙、飲酒、不健康な食事、運動不足が癌の主要な危険因子であるため、ライフスタイルの改善に取り組むことで、病気の発症を予防または軽減できます。一般に、がんの診断は早ければ早いほど治療の成果は良くなるため、癌の遺伝的素因や初期段階での兆候を特定することが腫瘍学研究の優先事項となっています。

2012に設立されたOxford Cancer Biomarkers(OCB)社は、大腸がんとその治療に焦点を当て、腫瘍学におけるパーソナライズされた医療を推進するためのバイオマーカー(患者の臨床状態を把握するための定量的な生物学的パラメーター)開発しています。

同社のCEO(最高経営責任者)であるDavid Browning氏は次のように言います。「患者の状態に関する情報をできるだけ多く臨床医に提供することで、がん治療の画一的なアプローチから脱却したいと考えています。既存の方法よりも迅速かつ費用対効果が高く、侵襲性の低い方法で、インサイトが得られるスクリーニング検査の開発を目指しています」

治療に関する意思決定の迅速化

OCB社は、化学療法のデメリットに着目しました。がん患者の一般的な治療プロセスは、腫瘍を切除する手術と、その後にすべてのがん細胞を確実に破壊するための化学療法のサイクルです。しかし、最も頻繁に使用される化学療法薬の5FU(またはカペシタビン)で治療すると、がん患者の20~30%で重篤な副作用が生じます。

さらに、患者の約1%は、この薬によって生命を脅かされるリスクにさらされています。大腸がん患者の30%がステージIIの腫瘍であることが報告されています。このうち、化学療法が必要なのは、約33%に留まります。残りの患者は、化学療法を受けずに生存する可能性が高く、生命を脅かす可能性のあるリスクを避けることができます。しかし、臨床医は、ある程度の確実性を持って、この30%の患者を正確に特定することはできません。治療プロトコルは国ごとに異なりますが、有害性のリスクを高める慎重なアプローチですべての患者を治療する国もあれば、強力な科学的バックアップなしに選択する国もあります。OCB社は、個人に合わせてパーソナライズされた医療を提供できるようにしたいと考えていました。

「多くの患者が5FUを処方されています。これまで、手術後に再発する可能性が高い患者を予測することが極めて難しかったからです」とBrowning氏は言います。「再発のリスクを特定するためにバイオマーカーを組み合わせて、切除した組織サンプルの検査を開始しました。

「病理学者はこれまで、顕微鏡を使ってサンプルを分析する必要があり、1日あたり約10人の患者しか評価できませんでした。適切なテクノロジーを活用して、分析の規模とスピードを劇的に改善する機会があると考えて、その実現に向けた専門性を模索し始めました」

IBM PowerAI が稼働しているのを見てすぐに、組織サンプルの処理能力に重大な影響を与えることがわかりました。以前は、新しいモデルの構築とテストに数か月から数年ほどかかっていましたが、今では数時間でできるようになりました。 David Browning CEO Oxford Cancer Biomarkers
概要と経緯の詳細
AIを活用したデジタル・パソロジーの開発

OCB社は、IBMビジネス・パートナーのMeridian IT社と連携して、IBM PowerAI Visionをベースとした既存のColoProg(ibm.com外部へのリンク)プラットフォームを強化する、画像分析アルゴリズムの開発を継続しました。Meridian IT社がホスティングするIBM Power System AC922アクセラレーテッド・サーバー上で実行される機能拡張は、OCB社独自のDNA ploidy(腫瘍細胞内のDNA含有量の指標)および間質含有量(腫瘍細胞が増殖できる細胞外マトリックスを提供できる非悪性細胞)分析を強化するためにディープラーニング・モデルを利用して、切除された組織サンプルを分類しています。Power System AC922サーバーは、POWER9 CPUとNVIDIA Tesla V100をNVLink GPUと組み合わせて、ハイパフォーマンス・コンピューティング、ディープラーニング、人工知能ワークロードに大規模なスループット機能を提供します。

同社はこれらのバイオマーカーを組み合わせて、患者を大腸がん再発の低・中・高リスクのグループに分類することで、臨床上の意思決定を支援しています。

「IBMとMeridian IT社のチームに会ってすぐに、互いの専門性のギャップを埋めることができると感じました。当社は臨床的背景を提供でき、IBMとMeridian IT社は最先端テクノロジーを当社のユースケースに適応させる方法を知っていました」とBrowning氏は言います。「IBMとMeridian IT社は、いずれもAIイノベーションの最前線に立っているため、パートナーとして相応しいことを確信していました」

画像分類用に設計されたIBM PowerAI Visionには、直感的なツールセットと最も使用されているディープラーニング・フレームワークが備わっています。これらの機能により、Meridian IT社はOCB社のモデルを迅速に構築することができました。同チームは、NVLink GPUを備えたNVIDIAを搭載したIBM Power Systemsサーバーが提供する高スループット能力を活用してモデルのトレーニングを促進し、強化されたColoProgを予想よりも早く稼働させました。

「IBM PowerAI VisionとIBM Power Systemサーバーは、AIの課題に対する最適な組み合わせです」とBrowning氏は言います。「新たな分野で画期的な進歩を遂げるためにテクノロジーを推進してきましたが、失望させられたことはありません。Meridian IT社は反復的なプロセスで当社チームと緊密に連携し、私たちのアイデアに挑戦して洗練させ、最善の結果を提供してくれています」

現在、ColoProgはステージIIの大腸がん患者約1,000名、合計約2,500名の大腸がん患者で臨床的に検証されています。このプラットフォームの成功により、OCB社はコベントリー大学病院およびWarwickshire NHS Trustや他のリーディング・グループと共同でPathLAKE(ibm.com外部へのリンク)プロジェクトの入札を勝ち取りました。PathLAKEは英国政府のイニシアチブであり、デジタル病理学および画像処理の5つの新しいセンター・オブ・エクセレンスを立ち上げる予定です。

医療分野おけるIBMの世界的な実績とMeridian IT社のAI ソリューションに対する深い知識により、当社は最先端の高精度の診断検査を世界中の市場に提供することができます。 David Browning CEO Oxford Cancer Biomarkers
成果の詳細
命を救う情報の提供

OCB社は、IBM AIを活用した画像分析を通じて、患者のリスク・プロファイルを構築する能力を変革しました。Browning氏は次のように思い出します。「IBM PowerAI が稼働しているのを見てすぐに、組織サンプルの処理能力に重大な影響を与えることがわかりました。以前は、新しいモデルの構築とテストに数か月から数年ほどかかっていましたが、今では数時間でできるようになりました」

OCB社は、より多くの情報に基づいた手術後の臨床決定を支援するインサイトを提供し、患者の治療を改善しています。化学療法による過剰治療を最小限に抑えることで、治療費を抑えることもできます。

「がん治療においては、時間が極めて重要です」とBrowning氏は言います。「IBMのテクノロジーを活用することで、患者の再発リスクや化学療法に対する反応の可能性に関する情報を臨床上の意思決定者に迅速に提供できるため、命を救える可能性があります。また、医療従事者がリソースをより効率的に使用できるように支援しています」

OCB社は、Meridian IT社とIBMと連携して、強化されたColoProgプラットフォームの市場投入までの時間を短縮することで、患者に価値を提供し、より早く収益を生み出しています。同社はすでに、このソリューションを乳がんや前立腺がんにどのように応用できるかを検討しています。

Browning氏は次のように締めくくりました。「大腸がんの診断と治療の問題に取り組むために、IBMとMeridian IT社と提携することは、明るい未来へのコラボレーションの始まりにすぎません。医療分野おけるIBMの世界的な実績とMeridian IT社のAI ソリューションに対する深い知識により、当社は最先端の高精度の診断検査を世界中の市場に提供することができます」

Oxford Cancer Biomarkers社のロゴ
Oxford Cancer Biomarkers (OCB)

オックスフォード大学からスピンアウトして設立されたOxford Cancer Biomarkers(ibm.com外部へのリンク)は、がんリスクの早期予測とがん治療の精度向上、そしてパーソナライズされた医療の推進を目指しています。研究開発チームとパートナーからのバイオマーカー・ベースの技術を組み込んだプラットフォームがその中核を担っています。

次のステップ
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脚注

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