Business Challenge story

知識伝承支援システム「ShareFast」に、フローの自動化の仕組みを取り入れたかった

東京大学大学院新領域創成科学研究科の人間環境学専攻に所属する産業環境学分野は、10年前には船舶工学科として本郷キャンパスで船舶の設計に関する研究を行っていました。柏キャンパスに移動してからは、船舶だけでなく、領域を越えたさまざまな研究活動を行っています。

新領域創成科学研究科教授の大和裕幸氏は、「ITをさまざまな産業に有効活用していくには、どうすればよいかという問題に取り組んでいるのが産業環境学分野です。一言にITといってもさまざまですが、我々は製造現場の作業員の行動を分析したり、作業員の持っている能力やスキル、ノウハウをIT化したりすることで作業効率を向上させることに取り組んでいます」と話します。

例えば、造船業で3,000人が1年間で船を作り上げる場合、資材の調達や人の手配、作業のローテーションなどを効率化する必要があります。また安全の確保も重要です。しかし現在、こうした分野は人手で管理されておりIT化されていません。

大和氏は、「ITは産業ロボットなどの単純な作業分野にしか適応できていないのが実情です。我々の研究は、人に関わる部分をもっとIT化させることが最大のテーマです」と話します。

そうした研究の一つの成果として、知識やノウハウを体系化する知識伝承支援システム「ShareFast」の開発が挙げられます。

ShareFastは、業務や作業のプロセスをフローの形式に整理し、各プロセスに関係する文書を関連づけて管理・共有することで、知識の習得を短期間で実現しようとするものです。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施した2005年度の未踏ソフトウェア創造事業のひとつとして開発され、オープンソースソフトウェアとして公開されています。ShareFastを利用する際には、まず現状の業務のプロセスを分析して、どこで、誰が、何をしているかを把握する作業から開始します。次に、図面や仕様書、作業手順書など、各プロセスで利用されているドキュメントを洗い出し、プロセスとドキュメントを組み合わせて管理する仕様を策定します。

ShareFastを発案した新領域創成科学研究科准教授の稗方和夫氏は、次のように話します。

「簡単にいえば、プロセスのフローを書き、それにひもづいた文書を管理するということです。業務全体の流れはフローで確認し、個々にやるべきことは関連づけられた文書で理解することで知識の伝承を実現します」。

ShareFastでは、URI(Uniform Resource Identifier)と呼ばれる識別子をベースに、相互の意味やワークフローに定義されている仕事に対する文書の関連づけなどの情報をメタデータとして管理しています。これにより、特定の仕事に対してのコメントや情報などを付加する場合に、クリックひとつで必要な情報を変化させることができるほか、新たに追加情報を記入することも容易にできます。

この知識伝承システムShareFastの機能を拡張していく過程で必要だったのが、複数の人にまたがる業務において、業務が終わったことを次の人に伝える「ワークフローの自動化」と、いつ始めていつ終わったという「予実管理」の仕組みでした。

これらの機能は、企業内で利用するには必須の機能といえます。産業界でのITの有効活用を研究する同科にとって、ぜひとも実現したい機能でした。そこで、検討されたのが、Lotus Notes/Dominoとの連携でした。

 

Transformation

Lotus Notes/Dominoとの連携で、多様なビジネスシーンで活用可能に

ここで、産業環境学分野とLotus Notes/Dominoとの関係について触れておきましょう。同分野が、Lotus Notes/Dominoを導入したのは2003年のことです。主な目的は、学生が実施していた研究論文などを一元化する文書管理でした。

人間環境学専攻の教授としての研究教育活動に加え、新領域創成科学研究科の研究科長も務めている大和氏は、「Lotus Notes/Dominoによる文書管理とスケジュール管理の機能は、様々な立場の業務をこなさなければならない大学教員を効率的にサポートしています」と話します。 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻技術専門職員の榎本昌一氏は、「研究論文などの文書は、学生のPCに保存されていたために、その学生が卒業してしまうと参照できなくなるものもありました。また複数の学生と、さまざまな研究を行っているので、ミーティングなどのスケジュールをいかに調整するかも大きな課題のひとつでした」と話します。

同分野の活動は、柏キャンパスと本郷キャンパスの2個所に分散しているため、それぞれの場所でミーティングを行う必要があり、メールによるスケジュール調整は困難でした。そこでLotus Notes/Dominoの基本機能である会議要求の機能を利用してミーティングのスケジュール調整を行うことで、効果的なスケジュール管理を実現しています。 こうしたLotus Notes/Dominoの優れたメッセージングやコラボレーション技術を体感していたことが、ShareFastとの連携を発想した原点になっています。

「当初、ShareFastはC#で開発したのですが、Lotus Notes/Dominoのバージョンが8になったのをきっかけに、Eclipseを使用してJavaに移植することにしたのです。移植にあたっては、従来からLotus Notes/Dominoのバージョンアップや運用でお世話になっていた、株式会社テクノソリューションと共同で開発を進めました」(稗方氏)。

Benefits

知識やノウハウを業務フローに関連付け、作業を標準化し、業務習得の時間を短縮

大和氏は、Lotus Notes/Dominoとの連携について次のように語ります。 「ShareFastに、Lotus Notes/Dominoのメッセージング機能を活用することで、複数の人にまたがる作業フローの自動化や、いつ始めていつ終わったという予実管理ができるようになりました。これにより、使い勝手が大幅に向上しました」。 ワークフロー機能を有するShareFastですが、稗方氏は、他のワークフローとの違いを力説します。

「従来のワークフローは、効率良く申請や承認を行うためのシステムであり、知識やノウハウを一緒に伝えることを前提としていません。ですから、作業の手順はわかっても、その作業を効率的に行うにはどうすればよいのかといった知識やノウハウは、誰か知っている人に聞くか、別のマニュアル等を参照するしかなかったのです。ShareFastを使えば、業務フローに従って作業を進めていく際に、常に必要な情報を参照しながら業務を行えるため、作業を標準化できミスも少なく作業時間の短縮も図ることができます。また、作業内容に変更があった場合にも迅速かつ容易に対応可能なため、常に新しい知識を共有でき、システムの陳腐化を防ぐことにもつながります」。

また、操作が簡単なことも、ShareFastの特長です。ITに関する深い知識を持たない人でも容易にワークフローを実現し、そこに知識を関連づけることができます。ワークフローの作成は、ShareFastの作業領域に作業内容を記述するボックスを設定し、それぞれのボックスを処理順序ごとに矢印でつないでいくだけで実現できます。 また文書の関連づけは、関連づけるドキュメントをボックスにドラッグ&ドロップするだけの操作で可能です。あらかじめ設定されたサーバーにドキュメントがアップロードされ、作成されたリンクをクリックすることで、登録されたドキュメントを利用することができる仕組みになっています。

 

将来の展望

企業内での知識やノウハウ伝承に、ShareFastを活用して欲しい

「Lotus Notes/Dominoを利用している企業は多く、そこには膨大な情報が蓄積されています。しかし、情報が膨大すぎてどの情報を利用すれば業務が効果的に行えるかを把握できなくなりつつあります。ShareFastを活用し、業務フローと知識・ノウハウを紐づけることで、こうした状況の一部は解決できるに違いありません」(稗方氏)。

共同開発した株式会社テクノソリューション取締役事業部長坂口憲一氏(中小企業診断士)も、企業でのShareFastの適応例を、次のように話します。

「ShareFastは、業務の手順書やマニュアル、品質保証における業務管理、パンデミック対策等における現場ノウハウの共有、コールセンターでのトークフローやマニュアルなど、企業内でもさまざまな活用シーンが考えられます。また、人事異動の際には、スムーズな業務引き継ぎや業務ノウハウの習得期間の短縮にもつながります」。 ShareFastとLotus Notes/Dominoの組み合せにより、多くの企業が、より効果的な知識やノウハウの伝承が行えるようになるに違いありません。  

お客様情報

東京大学は創設以来130年間、伝統的な学問分野を本郷キャンパスで探求し、新たな学際的領域を駒場キャンパスで開拓してきました。さらに21世紀に向けた新たな学問の発展を目指し1999年に柏キャンパスを開設しています。現在、柏キャンパスでは、「基盤科学系」「生命科学系」「環境学系」の3つの分野を中心に、教職員や大学院学生あわせて2,800名(2009年現在)を超える規模の新しいキャンパスになっています。

 

ビジネス・パートナー

1997年設立。教育の見える化を通じて、人と組織の成長を支援するシステム「教育カルテ」の開発・販売をはじめ、Lotus Notes/Domino関連の受託開発、Webアプリケーションの受託開発などを行っています。

 

テクノロジープラットフォーム

ソフトウェア

Lotus Notes/Domino 8.5

Solution Category

  • Social Business