Business Challenge story

食の安全・安心をシステムで支援するために災害対策のあるべき姿を追求

「食を通して人を幸せにする生活関連企業となる」という経営ビジョンを掲げるスターゼングループ。そのシステム分野を担当するジーコスでは、システムによる食の安全・安心を確保するために、早くから独自のトレーサビリティー(*)・システムの開発に取り組んできました。同社の代表取締役社長の本多芳樹氏は「BSE問題が発生してトレーサビリティー法が成立する前から、他社に先駆けてトレーサビリティーを確保するシステムを開発してきました」と話します。

食肉を扱うスターゼンの業務プロセスは独特です。「部品を組み立てる製造業と異なり、生体を市場で解体し、小分けにして販売していくという業務プロセスに対応し、かつトレーサビリティーを確保するために、自社で仕入、小売、在庫システムを開発してきました」とジーコスの専務取締役 業務本部長の雨宮達雄氏は話します。同社ではこれらの基幹システムに加えて、会計システムやグループ各社の事業拠点を結ぶネットワークなど、業務システム全般を運用してきました。これらの取り組みにより、同社のトレーサビリティー・システムは2006年に「業界の特筆すべきアプリケーション」と評価され、iSUC&IBM System i Innovation Awardsを受賞しています。

同社が運用するシステムは、スターゼングループの業務全体を支えるシステムです。そのため、止まることは許されず、以前から災害対策は強化されていました。2001年ごろから東京本社にある本番システムのバックアップ・システムを大阪南港にある日本IBMのデータセンターに配置し、ホットスタンバイ(多重化して信頼性を向上させる)を実現する「ビジネス・リカバリー・サービス(BRS)」を利用していました。「万が一に備え、システムの基幹部分についてはバックアップ・システムでカバーし、お客様にご迷惑がかからない仕組みを構築していました」(本多氏)。

しかし、企業活動のITへの依存度が高まるにつれて、バックアップ体制についてさらなるレベルアップが必要と考えられるようになりました。「リプレイスのタイミングでもあったので、システムの増強と同時に、災害対策のあるべき姿を検討するためのプロジェクトをスタートさせました」と雨宮氏は語ります。それが2010年12月のことでした。東日本大震災が発生したのは、まさにプロジェクトを進めている最中でした。

(*)トレーサビリティー

トレース(追跡)とアビリティー(可能性)の合成語。食品の生産から加工・流通・販売までの過程を明確に記録し、商品からさかのぼって確認できるようにすること。

Transformation

本番システムをあえて遠隔地に配置するという斬新な発想でバックアップ体制を構築

次世代のプラットフォームを考えるこのプロジェクトのメンバーには、各部署から若手が集められ、検討を重ねていました。「当初は単純なリプレイスを前提に、すべてのシステムをバックアップするために、本番システムとバックアップ・システムの機種を同じ大きさにするかどうか、といった議論を進めていました」と雨宮氏は話します。

しかし、東日本大震災がこのプロジェクトをさらに進化させることにつながりました。同プロジェクトで企画面を担当した熊谷武光氏は「東日本大震災が発生したときも検討会議の真っ最中で、ちょうど電気設備について議論していたところでした」と当時の様子を語ります。災害対策の重要性があらためてクローズアップされる中で、災害発生時によりスムーズに対応するにはどうしたらよいのか、という視点を含めて検討が重ねられました。

この結果出された具体的な実施策は、従来のように本番システムを本社に置くのではなく、本番システムを遠隔地に配置し、本社にバックアップ・システムを置くというものです。「どちらにも同じ機種を置くのであれば、システム要員がいる本社の方が災害時に対応しやすいと考えました。もちろん本番システムのリモート操作が可能で、システムが止まる心配がないことが前提です。しかし、技術的な問題はクリアできるだろうし、長年トラブルなく使ってきたIBM i 搭載 IBM® PowerSystemsであれば信頼できると思いました」(雨宮氏)。

本番システムを配置するデータセンターについては、2カ月ほどかけて候補を検討し、これまでバックアップ・システムを預けていた大阪南港センターに決定しました。「大阪南港のデータセンターであれば、建物や電源などの施設・設備面は整っていますし、IBM Power Systemsに慣れているオペレーターもいるので二重の面で安心でした」と熊谷氏。技術面からの検討を担当した下野貴之氏は「何よりハードウェアに詳しい技術者が常駐していたのが大きかったです」とメリットを挙げています。

もうひとつの課題は、バックアップ・データを格納するテープ・ドライブをどうするかでした。IBM Power Systemsは多くの区画に分けて利用しているため、テープ・ドライブもたくさん必要になります。そこでIBM i のユーザーでは日本で初めて仮想テープ・ドライブ「ProtecTIER」を採用。テープ媒体と手動のテープ・マウント作業を削減し、リモート操作でのバックアップを可能にしようと考えました。下野氏は「いままで人手で対応してきたデータのバックアップをストレージに変更することで遠隔操作を実現しました。どうしても必要なテープへのバックアップは、本社のバックアップ・システムに転送されたデータから落とすことにしました」と話します。

このデータやオブジェクトのシステム間の同期に使われたのが、以前から導入されていたHABPソリューションのデータ転送ツール「Bitis HA」です。このツールは災害対策用でありますが、今回のシステム移行でも貢献しました。ホットスタンバイを実現するために活用されてきたBitis HAを使って新旧4台のサーバーで同じデータを共有し、段階的にシステムを切り替えることができたのです。

2011年12月中旬には、本社にある既存の本番システムから既存のバックアップ・システムだけでなく、大阪南港に導入された新しい本番システムにもBitis HAを使ってデータを転送するようにしました。この時点でデータを持っているサーバーは3台になります。さらに12月下旬に本社に置かれた新しいバックアップ・システムと新しい本番システムの間でミラーリングを開始しました。この時点で既存のバックアップ・システムを切り離します。そして、切り替え本番では、既存の本番システムを休止することで新システムへの移行ができました。

実際の移行作業は、業務への影響が最も少ない2011年の大晦日から正月にかけて行われました。「切り替え自体はスムーズにできました。データの移行を確認して旧システムを落とし、新システムの稼働を確認する程度で済みました。移行作業自体は1時間から2時間で完了し、朝5時には何の問題もなく新しい構成での運用が開始されました」と下野氏は話します。

このIBM i 搭載 IBM Power Systemsのリプレイスに伴い、PCサーバーのインターネット接続環境などのネットワークも拡充され、財務会計やEDIシステムなどのアプリケーションやPCサーバーなどの周辺システムも大阪南港に移されています。

Benefits

万が一、災害が発生した場合でも業務に支障を来さない体制を確立

本番システムをデータセンターに、システム全体の運用は災害対策全般をサポートするIBMの災害対策マネージド・サービスに移行して、より安全で安心な体制が確立されました。熊谷氏は「大阪南港センターでの運用は10年の実績があり、安心です。商用電源も東京と大阪の2系統(50Hz/60Hz)に分けることができました」と話します。雨宮氏も「本社が品川ですから、新幹線で行けば意外と近いんです。大阪へは航空機も使えますから、経路が二重化されているという安心感もあります」とメリットを指摘します。これらも大阪南港のデータセンターが選択されたポイントです。

また、熊谷氏は「計画を取りまとめるまでは大変でしたが、導入段階以降のプロセスは日本IBMの協力のもとで問題なく実行できました。今後は災害があった場合に、いかにスムーズにバックアップ・システムに切り替えることができるかが課題になります」と話します。2012年3月には本社のバックアップ・システムで業務を処理する切り替えテストが計画されています。これは本番を想定した実証実験です。下野氏は「丸一日バックアップ・システムで実際の業務に対応することを計画しています。本番システムとしてやらなければならないことを洗い出して、手順書などのドキュメントを含めて準備を進めています」と話します。

 

将来の展望

安心できるITインフラを前提にワンランク上のシステム活用を目指す

今後について本多氏は「バックアップのインフラが整備されていても、いざとなったら実際にやる人の対応力が鍵になります。それだけに、現場の人の教育や訓練は定期的に行っていかなければなりません。今後も年に2回はテストを実施して、そのうち1回は実際に業務に対応して確認していきたい」と話します。

また、安心できるインフラができたことは、今後のIT活用を考えると重要な部分だといえます。本多氏は「これを機会にシステムのランクアップとアプリケーションの拡充を図り、より万全な体制の確立を目指していきたい」と話します。生鮮食品を扱い、止まらないシステムに対する要望が強いスターゼングループにあって、同社が積極的にIT活用を進めるためには、今回の災害対策マネージド・サービスへの移行の意味は大きかったといえるでしょう。

 

お客様の声

プロジェクトへの取り組みをとおして次世代を担う若手が育成できた

「正直、ここまでできるとは思っていませんでした」と雨宮氏はこのプロジェクトを総括し、その上で「このプロジェクトにはもうひとつの狙いがあったのです」と語ります。それは同社を担う次の世代の人たちを育てること。本多氏も「世代交代の一環としてとらえて、あえて各部署から若手のリーダーを集めました。結果として大きなトラブルもなく進められてほっとしています。今回構築したシステムを活用していくのは、次の世代の人たちです。だからこそ、現場で活躍する若手にプロジェクトのリーダーになってもらいました。同時にこれから活用できるノウハウも、プロジェクトをとおして身に付けることができたのではないでしょうか」とその意義を強調します。

「この大きなプロジェクトの企画の取りまとめを担当したことで自分自身も成長できたと感じています」と熊谷氏。下野氏も「切り替え後のトラブルもなく安堵しています。今後は、誰でも緊急時の対応ができるようにドキュメントなどを仕上げていきます。今回のプロジェクトをとおして、システムを作る面白さがいままで以上に実感できました」と話します。

雨宮氏は「日本IBMに助けられた部分は多いものの、自分たちにノウハウを蓄積することができてよかった」と話します。本番システムを遠隔地に預け、手元にはバックアップ・システムを置くという斬新な発想で“次世代につながる大規模な災害対策のスキーム”を作った今回のプロジェクトは、システムの災害対策のみならず、若手の育成という面も含めて体質強化をもたらした好事例といえるでしょう。

 

お客様情報

お客様名:スターゼン株式会社

URLhttps://www.starzen.co.jp/ (外部サイトへリンク)

東証一部上場の食肉卸売商社、食肉の加工・販売、食肉製品・食品の製造・販売等

お客様名:株式会社ジーコス

スターゼン株式会社(旧社名:株式会社ゼンチク)100%の子会社。スターゼン株式会社のコンピューター業務を引き継ぐ形で設立し、1999年に株式会社ゼンチク・コンピューター・システムから、その頭文字を取って、株式会社ジーコスへと社名を変更。難しいといわれている食肉業界のコンピューター化に取り組み、業界に先駆けたさまざまなシステム開発を行っています。

※最新情報については、株式会社システム・サービス・センターのサイトをご覧ください。

株式会社システム・サービス・センター(外部サイトへリンク)

 

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