Business Challenge story

高い信頼性のもと、ITサービスを容易かつ迅速に提供できる共通基盤が必要に

キヤノンMJグループは現在、中期経営計画に基づく新たな重点戦略として、複写機を中心とした「ドキュメント・サービス」、カメラを中心とした「フォトイメージング・サービス」、医療用診断機器を応用した「医療支援サービス」、さらには生産管理や経理に至るまで、広範なソリューションをカバーするITサービス事業の拡大を推進しています。

この事業を支えるグループの中核企業として全体システムのインテグレーションを担っているキヤノンITSは、各ソリューションの最適な運用形態を模索。社内外のユーザーに向けて、利便性の高いサービスを最新のクラウド・コンピューティング技術を活用したSaaSモデルで提供していく、ITサービス共通基盤の構築プロジェクトを2010年4月に開始しました。

同社の取締役執行役員であり基盤ソリューション本部の本部長を務める和田昌佳氏は、その狙いを次のように話します。

「さまざまなアプリケーションを一品一様で立ち上げるのは、あまりにも効率が悪く得策ではありません。ビジネスとしてのアジリティー (俊敏性)や効率性をいかに高め、なおかつ運用コストを抑えることができるかという観点から標準化ならびに無人化を目指し、チャレンジしているのがITサービス共通基盤です」

通常、ITサービスを提供するまでには、サーバー資源やストレージの割り当て、ネットワークの設定変更、OSやミドルウェアの導入、 個別のアプリケーションの設定など、煩雑な作業と多くの時間が必要となります。そこでキヤノンITSは、サーバーやストレージな どを仮想化し、ITサービスを容易かつ迅速に提供できる仕組みを積極的に取り入れていくという基本方針のもと、基盤の構築を 進めています。

なお、このITサービス共通基盤は自社管理下でシステムを運用する、いわゆるプライベート・クラウドとして構築されています。和田氏は、その理由として「信頼性」「セキュリティー」「データ保全」「事業継続」の4つの要件を挙げつつ、次のように説明します。

「運用コストをより低く抑えるため、パブリック・クラウドを利用するという選択肢がなかったわけではありません。しかし、我々が担うサービスは、グループ会社のユーザーのみならず、広く外部のお客様に提供するものです。24時間365日止められない、求められるIT資源の規模が予測できないという前提がある上、SLAを明確に定義すると同時に、データの保存場所やコピーや消去の証跡を確認できるなど、ガバナンスが行き届いたものでなければなりません。そうした考えから、やはり最初のステップはプライベート・クラウドをベースにすべきと判断しました」

Transformation

クラウドの骨格を構成する主要コンポーネントに求めたのはオープンであること

構築にあたってキヤノンITSがクラウドの“骨格”となる要所に採用したのが、IBMのソリューション製品群です。

まず、クラウド環境に仮想化されたITリソースを供給する階層では、ブレード・サーバー「IBM BladeCenter」ならびにストレージの仮想化を実現する「IBM System Storage SAN Volume Controller」を導入。加えて、シスコシステムズのスイッチング ・システム「Cisco Nexus 7000/5000/4000シリーズ」を採用して、イーサネットやSAN(Storage Area Network)といった異なるネットワークを1つの物理ネットワークに統合するFCoE(Fibre Channel over Ethernet)技術を活用し実装しています。

また、ミドルウェアとして、マルチベンダーのIT資源のプロビジョニングを実現する「IBM Tivoli Provisioning Manager」を採用。

さらに、クラウド内に構築された多様なサービスを疎結合によって連携させるSOA(サービス指向アーキテクチャー)基盤を、サービス・バスの「WebSphere Enterprise Service Bus」やビジネス・プロセス自動化エンジンの「WebSphere Process Server」によって実現しています。

このほか、さまざまなアプリケーションをユーザーに提供するWebアプリケーション・サーバーとして「WebSphere Application Server」ならびに「WebSphere Portal Server」を、社外クラウドを含めたサービス間の認証連携(シングル・サインオン)を実現するフェデレーション機能の軸として「Tivoli Federated Identity Manager」を採用しています。

しかし、キヤノンITSはIBM製品ありきでソリューションを選定したわけではなく、適材適所の考え方で他社製品も導入しています。 和田氏は、最も重要なのは“オープンであること”と話します。

「あるベンダーの製品を導入することで他の選択肢が狭められてしまうのは本末転倒であり、柔軟で自由度の高い基盤の拡張性 を確保する上での阻害要因となります。将来的に特定ベンダーにロックインされるのは、絶対に避けたいことでした。その点、IBM 製品は標準的なプロトコルによって他社製品とも柔軟に連携をとることができるなど、一貫してオープンな設計がなされています。我々にとってのあるべきクラウドを追求していく中で、結果としてコア・コンポーネントに採用されたのがIBM製品だったのです」

Benefits

アプリケーションの拡張性と運用コスト削減を重視

高度な仮想化・標準化・自動化技術を活用して、インフラ・コストを大幅に削減

今回のSaaS基盤は、サーバーはもちろんのこと、ストレージ・ネットワークを含めたインフラ基盤の全階層の仮想化技術を採用しています。これにより、サーバーだけでなく、ストレージ・ネットワークを含めたハードウェア・リソースの共用化が可能となり、コスト集約と高い拡張性を実現できます。特にネットワークに関して、従来はデータ入出力の高スループットが求められる場合LANとSANを別々に準備する必要があり、管理の煩雑化や運用コストの増大を招いていました。そこで、ITサービス共通基盤ではFCoEの最先端技術の活用により、サーバーの入出力インターフェースやネットワーク・スイッチ・ケーブルを共通化。安価で高速な統合ネットワーク環境を実現しています。

さらに、バックアップや監視、ポータルサイトや資産管理など、サービスの運用や提供時に必須となる機能を標準化し、可能な限りの 自動化が考慮されている点も大きな特長となっています。

SOAやフェデレーション機能を軸に、シームレスなサービス連携が可能な仕組みを実現

また、課金管理やユーザー管理といったクラウド・サービスのビジネス機能やSOA技術を採用することにより、アプリケーション間 を効率よく相互連携させることが可能なスケーラブルなITサービス共通基盤を実現しつつあります。和田氏はクラウドとSOAは相性が良いと話します。

「SOAはアプリケーションの拡張性を考えた場合に非常に優れた概念です。今回の仕組みでは、同一共通基盤にさまざまなアプリケーションを載せ、それぞれを多様なシステムと連携させるために、疎結合というか、サービス・レベルの結合するかたちで設計をして います。新たなサービスを立ち上げる際にも一から開発し直すことなく、新しいサービス・コンポーネントを追加する、あるいは該当 個所だけ修正すれば済むような効率的なアーキテクチャーとなるのです」

キヤノンITSはプライベート・クラウドに留まらず、外部のクラウド・サービスとの連携も視野に入れています。 ユーザー認証についてはフェデレーション機能を活用し、「例えば、ITサービス共通基盤の中で一旦ユーザー認証を行うと、以降は グローバル・キヤノンとして展開しているすべてのプライベート・クラウドに自動的に認証が引き継がれ、サービスがシームレスに 連動していきます」と和田氏は強調します。これにより、エンドユーザーが外部の多種多様なシステムをあたかも一つのシステム のように扱えることが可能となるのです。

さらに和田氏はIBMのソフトウェアについて次のように評価します。 「現在のところ、1社でここまでのレベルのSOA基盤やフェデレーション機能を整えられるのはIBMだけです。IBMには外部システム との連携含めたSOAの数多くの実績があり、高い技術ノウハウが蓄積されています。IBMと協力することで、われわれの開発スキル を補い、柔軟で拡張性の高いSaaS基盤の実現に向け取り組んでいきたいと思っています」

 

将来の展望

プライベートとパブリックを融合したハイブリッド・クラウドへの展開を目指す

プライベート・クラウドとしてのITサービス共通基盤の完成度を高めていくことでキヤノンITSは、仮想化・サービス化といった技術を活用し、ハードウェアからアプリケーションの階層まで運用管理やプロビジョニングを含めた作業の“あくなき無人化”を追求しています。さらに同社はプライベート・クラウドとパブリック・クラウドの融合によって実現されるハイブリッド・クラウドへの展開を目指します。ハイブリッド・クラウドついて、和田氏は次のように話します。

「プライベート・クラウドは今後もさらに進化を遂げていくと予想されますが、その基盤を国内で運用している限り、不動産や電力コスト、人件費などの問題から、サービスの提供コストを下げていくには限界があります。一方、パブリック・クラウドでプライベート・クラウドと同等のセキュリティーやサービス・レベルを担保しようとしても無理があります。そこで、ハイブリッドというアプローチが重要な意味を持つのです。例えば、ユーザー固有のデータをプライベート・クラウドの厳重なセキュリティー体制のもとで運用する一方、共有コンテンツなどのデータは暗号化した上でパブリック・クラウドで運用し、一つのサービスとして連動・連携できる仕組みを将来的に実現したいと考えています。

さらに、他社が展開しているクレジット決済システムとITサービス共通基盤のサービス連携を図ることにより、これまで煩雑な管理や事務処理を要求された、B to Cサービスにおける課金の課題を解消することも可能となります。今、利用しているサービスやアプ リケーションがプライベート・クラウドにあるのかパブリック・クラウドにあるのか、ユーザーは全く意識する必要ありません」

そうしたハイブリッド・クラウドの世界を指向し、キヤノンITSはITサービス共通基盤の発展と進化のために全力を注いでいます。

 

お客様情報

キヤノンマーケティングジャパングループにおけるITソリューション事業の中核企業。コンサルティングから開発、構築、運用・保守、アウトソーシングまで、システムのライフサイクル全般をサポートする事業体制を築く。2009年に中国ソリューション事業推進室を設置するなど、海外事業の強化にも積極的に乗り出している。

 

テクノロジープラットフォーム

ハードウェア

ソフトウェア

Solution Category

  • IBM Cloud
  • Systems Hardware