Business Challenge story

グローバルの経営情報の把握に課題。システム統合には期間とコストの壁

ダイキン工業は、2015年を目標年度とする戦略経営計画「Fusion15(フュージョン・フィフティーン)」を策定し、パラダイムシフトの時代を勝ち抜く「真のグローバル・エクセレント企業」の実現を目指しています。その11の戦略テーマの一つに「IT武装の徹底推進」を掲げ、急激な環境変化へのスピーディーな対応、経営のさらなるグローバル化を支える情報武装の強化・刷新を推進しています。すでに海外売上高比率が6割を超える同社ですが、経営判断・意思決定のスピードにおける課題があったため、化学事業部では、その課題を早急に解決すべく、検討を開始しました。

ダイキン工業化学事業部では、従来、売上・利益・在庫などの各種情報を月次で集計し、経営判断に活用していました。ところが、月次ベースでは販売機会損失や在庫過剰、本来なら売れる地域での販売不振といった問題が徐々に顕在化してきていました。そこで、より早いタイミングで市場の変化を把握し、迅速に対応できる仕組みの必要性が認識されるようになりました。

同社化学事業部 企画部 IT・業務改革担当者は次のように話します。

「化学事業部では、これまで月に2回、グローバルの数字を集計して営業会議を行っていました。担当者がスプレッド・シートを使って徹夜で集計し、意思決定者は会議に出席して初めて情報を目にするような状況でした。そうした方法では、レポートを作って機会損失を防ぐ対策を講じても、すでに手遅れになっていることが多々ありました」。

この問題の原因は、世界各国に事業を展開していく中で、拠点ごとに独自の基幹業務システムを構築してきたことにあります。多種多様なシステムが混在し、コードもそれぞれ異なります。経営層が適切な判断を下したくても、データの集計に手間がかかり、迅速に数字をとらえることが難しかったのです。

そこで、化学事業部担当役員は、市場の変化に即応するために、売上・利益・在庫を日次でグローバルで把握できる仕組みが必要と考えました。しかし、基幹業務システムのグローバル統合を実現するには、各拠点で稼働するシステムを改修し、コードの統一を図らなければなりません。

「グローバルの情報が横串で見えるように、業務を標準化することを検討しました。しかし、全拠点で統合した基幹業務システムを構築するには、多大な時間と予算を要するため、課題解決は、かなり先になると思われました。そのような中、担当役員からは、精度が7割でもいいからタイミングを優先するように指示されました」。

Transformation

精度よりもスピードを重視し、「経営の見える化」に着手

2010年9月、IBMはダイキン工業化学事業部担当役員からグローバルの情報を即時に見えるようにしたいという要望を伺い、グローバル会計、およびグローバル・ロジスティクスのデータを「見える化」するソリューション・テンプレート「BAコックピット」をご紹介しました。このソリューションの特徴である「コード・チェンジ」機能により、基幹業務システムに手を加えずに「経営の見える化」を実現できます。

提案を受けた担当役員は、BAコックピットの導入を即断。IBMの支援により、経営の見える化に着手することになりました。

ダイキン工業化学事業部のこのプロジェクトは、世界各拠点の基幹業務システムを根本的に見直す本質的なコード統合ではありません。担当役員をはじめとする意思決定者が早期に現状・傾向を把握し、経営判断の材料になるように、見える化システム上でコード・チェンジを行うものです。

世界各拠点の基幹業務システム上のローカル・コードを統一するという従来のアプローチでは、基幹業務システムの改修が発生して実現まで長期間かかります。ビジネス環境が大きく変化する中、要件の変化が発生すれば、コストが増大するリスクもあります。それに対してコード・チェンジのアプローチは、“何を見える化するか”を定義して、必要なデータだけをコード・チェンジで統合するため、短期間で実現できます。さらに、将来の基幹システム再構築に合わせて、ローカル・コードの統一、業務の標準化を図ることも可能です。

ダイキン工業が最初に取り組んだのが、「売上・在庫の見える化」のための基盤づくりでした。2010年12月に現場ニーズを踏まえた現場中心の見える化をスタートさせ、2011年3月には国内の売上・在庫情報の見える化を実施、9月にはグローバル14拠点へと範囲を広げました。

さらに、プロジェクトが進む中、担当役員から新たなニーズが出てきました。

「当初は、情報を集計して見ることができれば完成だと考えていましたが、活用する側から考えると、経営者が必要な情報と担当者が必要な情報は全く異なります。経営者はとにかく世界中の情報を一覧表示してトレンドが把握できればよいので、1台2台の誤差は関係ありません。一方、担当者には、生の数字を活用できることが求められます」。

そこで、ダイキン工業化学事業部ではIBMの支援により、経営層、管理職、現場担当者のそれぞれに応じたマネジメント・サイクル(PDCAサイクル)を実現するための見える化に取り組みました。具体的には、ポータルやダッシュボードで業績概況ほか各種レポートを提供するとともに、タブレット端末でいつでもどこでも利用できる仕組みを構築しました。これにより、「売上・在庫の見える化」は2012年6月にほぼ完了し、活用が進んでいます。

Benefits

経営判断を的確に下せる仕組みにより、業務効率化と売上アップに貢献

今回の経営の見える化プロジェクトにより、グローバルの生産・販売・在庫情報を即時に把握し、意思決定者が経営判断を的確に下せる環境が整いました。

さまざまなユーザーがその数値を使ってアクションを起こすことを想定し、見せ方も工夫しています。例えば、経営層には確定した売上情報を提供するのに対して、現場の担当者向けには未確定受注分も表示し、アクションを促します。新規コードから既存コードへのドリルダウンも可能で、ポータルやダッシュボードを使ってピンポイントで見たい個所に着目し、詳細に分析することができます。それにより、予算との対比による販売見通し傾向を把握し、目標に向けて先手を打つかたちで施策を実施できるようになりました。

社内で起こった変化について、IT担当はこう話します。

「今回の仕組みは、経営者から担当者まで、社内の評判は上々です。特に集計作業にかかわる戦略企画部や営業部の管理担当者にとっては、集計作業の工数や資料作成・分析の負荷が大幅に軽減したため、本来の業務に集中できるようになりました。特に大きく変わったのが営業会議です。以前は会議の場で数字を確認し、結果を分析してから対策の話に入っていましたが、現在は対策に絞って議論ができるようになりました。経営者から担当者まで同じ数字を見て議論できるようになったことは、業務の効率化と質の向上いう点で大きな効果です」。

また、その効果は業務の効率化にとどまりません。もともと月次決算に基づく数字を見ていたところが、月末着地の予測を含めて日次で情報を確認できるようになりました。月中でも意思決定が可能となった点が、利益の拡大や機会損失減に寄与しているといいます。

「別途実施した営業支援システムの変革と合わせて、情報共有のスピードがめざましく速くなりました。事業部長からは、見える化の仕組みを作ったことで数十億円の売上拡大につながったと言われました」。

さらに、担当役員からは、グローバルに拠点在庫が見えるようになり、利益率の高い取引先に積極的に製品を提供できるようになったことなどから、2011年度の実績で売上が約10%成長したと評価されています。これは、顧客を需要家として名寄せして分析をしたり、グローバル全体で拠点在庫を把握して需要家別の利益率を明確化することで、利益率の向上に貢献しているためです。

 

将来の展望

今後は「調達の見える化」を推進。将来的には全社で標準化へ

ダイキン工業化学事業部では、2012年6月から本番運用を開始した「売上・粗利・在庫の見える化」に続き、新たな取り組みを始めています。

「見える化の範囲を広げたいと思っています。今は、販売や在庫の実績を可視化しただけですが、それに予算やグローバルの調達情報を組み合わせれば、真のグローバル・オペレーションに近づきます。経営層は、どこで調達してどこで作り、どこで売るかというグローバル・オペレーションの実現を目標に掲げています。そのためには、調達情報の見える化が必須になっていくと考えます。ただ、市況や景気動向等、さまざまな要素が絡んでくるため、調達の見える化は大きなチャレンジになります」。

ダイキン工業化学事業部が「経営の見える化」を実現したことにより、同社の他事業部も大きな関心を示しているそうです。

「業務標準化と経営情報の見える化は、化学事業部だけでなく全社の方針です。ただし、実際に実行できているのは化学事業部だけで、現状では標準化に向けて次々と大きな投資をしていくことは難しい状況にあります。しかし、Fusion 15で目標に掲げる2015年に向けて、システムの老朽化やIFRSへの対応といったタイミングに合わせて、順次標準化を進めていく計画です」。

ダイキン工業の進化はこれからも続きます。

 

お客様情報

空調事業と化学事業を主軸に展開するグローバル・メーカー。空調事業では、日本初のエアコンを開発して以来、インバーター技術を駆使した業務用エアコンを中心に業界をリードしている。化学事業でも日本で初めてフッ素化学に取り組んだパイオニアとして、自動車や太陽光発電、半導体、産業資材など、幅広い分野に向けて1,800種類以上のフッ素化合物を送り出す。強みである環境技術をはじめ、各事業で培った高度な技術を幹に、新しい豊かさの創造に挑戦している。

 

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