Business Challenge story

何が起こっているのか”を把握し商品・サービスの改善につなげたい

三井住友海上では、「お客さまの声」を経営の原点ととらえ、お客さまからのさまざまな相談や照会内容を商品やサービスに活かす態勢を整えています。問合せ窓口である同社のカスタマーセンターでも、単なる電話取り次ぎではなく、会社の“表玄関”としての存在感を高めてお客さま満足度向上と増収増益に貢献していこうと、さまざまな取り組みを行ってきました。

しかし、2008年頃からお客さまの問い合わせ(コール)が急増し、現在は一般相談だけで年間約70 万件に及びます。これに伴い、オペレーターを増員し対応してきましたが、応答率はなかなか高まらず、応対品質に関する外部評価も伸び悩んでいました。

同社コンタクトセンター企画部の部長(カスタマーセンター担当)である栗林淳一氏は、このように話します。 

「お客さまからの問合せが増加している事実がある一方で、『何が起こっているのか』を誰も把握できていませんでした。契約の照会や更改、解約など、用件ごとの集計はしていましたが、事象の背景について一歩踏み込んだ分析は行っていませんでした」

損害保険ビジネスは代理店を介しての取引が主となるため、本社側はお客さまの声をダイレクトに受け取る機会が少ないという事情があります。その意味でもカスタマーセンターは重要なチャネルであり、ビジネスの戦力として強化が求められるのです。

お客さまデスクに入る保険の問い合わせは、人の動きや季節の特徴、防災週間や安全週間といった官公庁の施策推進・啓発によって、影響を受けます。問い合わせ内容はその時々で変わってくるのですが、従来のホームページの内容は年間を通じてほぼ同じで、よくある質問と回答(FAQ)なども整備されていませんでした。「大雪や台風・竜巻などの自然災害が発生したときに入電が増えるのですが、それに対する回答がホームページのどこにも載っていないような状況でした」と栗林氏は話します。

    Transformation

    さまざまな気づきが得られる分析機能とクラウドの導入スピードを重視してIBMの提案を採用

    いかなる手段によってお客さまの声を効果的に分析できるか――。この解決策として三井住友海上は、実証実験の結果、テキストマイニング・分析ツールであるWatson Explorer を活用したお客さまの声分析システムの導入を決定し、IBMコンサルタントの支援のもとプロジェクトが始まりました。

    選定におけるポイントとして栗林氏が示すのは、大きく次の3つです。

    ・レスポンス

    カスタマーセンターに寄せられるお客さまの声を数年分まとめると数百万件となるため、大量データの高速処理は不可欠。実証実験を行い、複数製品を比較した結果、Watson Explorer の性能が一番優れていた。

    ・分析のあり方

    単語の出現頻度を軸に分析を行う他社の検索エンジンやコンテ ンツ分析ツールに比べ、Watson Explorer はリッチ・テキスト 分析によってトレンドやパターン、相関関係を抽出し、さまざまな “気づき”を与えてくれるところに魅力を感じた。

    ・実績

    保険業界には専門用語が多く、問合せ内容の分析にあたっては辞書の作成が鍵になると考えられた。Watson Explorer は生命保険会社でも使われている実績があり、専門用語への理解もあるので安心感があった。

    さらに、Watson Explorer の使い勝手の良さに言及するのが、コンタクトセンター企画部 企画チームの課長を務める岩前孝佳氏です。

    「私は統計学の専門家ではなく、分析ツールを使うのも初めてでしたが、操作に戸惑うことはありませんでした。リストアップされた単語に当たりをつけながら、深掘り分析を進めていくことができます。勘所さえ養えば、十分に使いこなしていけると考えました」なお、三井住友海上は今回の分析システムの導入にあたり、運用基盤としてクラウド・サービスのIBM Cloud Managed Services を採用しました。

    「重視したのは導入スピードです。構築に時間をかけずに運用を始められることが、クラウドを選んだ最大の理由です」と栗林氏。

    また金融機関に厳しく求められるセキュリティーについては、「IBMの堅牢な仕組みのもと、オンプレミスと遜色ない安全性が担保され、加えて国内データセンターを利用するためカントリー・リスクもありません。FISC安全対策基準の適合チェックや社内からのネットワーク接続にもIBMの全面的なサポートを得ることができ、金融機関としてのシステム要件を完全に満たすことができました」と岩前氏は話します。

    これにより三井住友海上は、2014年4~6月の実質3カ月でインフラ構築を終え、サービスインを迎えることができました。

      Benefits

      お問合せの中身を見える化したことでカスタマーセンター全体の応答率を11.3%改善

      2014年7月に本番運用を開始したお客さまの声分析システムは、カスタマーセンターの基盤システムである「CONTACT-1」からコンタクト履歴などのデータを取り込むことで、分析を行います。

      コンタクトセンター企画部 企画チームの課長代理 久保順哉氏は、その手順について、「控除証明書」の問合せを例に説明します。

      「例えば、毎年10月から12月に『控除証明書』に関する問合せが急増するのですが、キーワードに注目すると、『初年度』『届かない』といった言葉と相関が高いことがわかりました。控除証明書は契約2年目以降のお客さまに送付するもので、初年度のお客さま用の控除証明書は保険証券に添付されています。それに気付かずにコールしてくるお客さまが多いという事実を読み解くことができました」

      また、システム面についても「パフォーマンスは抜群。思考を妨げないスピードでドリルダウン分析を行えます」と評価します。

      成果は、ビジネスにおいても表れ始めています。頻繁に寄せられる問合せ内容を把握して入電をある程度予測し、ホームページの内容を変更したり、自動音声応答(IVR)システムを通じて回答を提示するといった先手を打つことができます。その結果、入電を抑制することができ、適正な人材配置に役立てられるようになりました。

      「これによりカスタマーセンター全体の応答率を11.3%改善することができました。以前は繁忙期に短期契約のオペレーターを増やして対応していたのですが、現在はその必要もありません。カスタマーセンターの業務が効率化され、運営が安定してきた結果として、私たちのような企画担当の社員にも増収支援などの外向きの仕事に向かう余力が生まれてきました」と栗林氏は話します。

      実際に、分析結果を本社各部や代理店に向けて発信する試みも始まりました。三井住友海上では、お客さま応対の際には、相談や問い合わせ内容に的確に応えるだけでなく、そのお客さまがどのような背景でコンタクトをされてきたのかを考慮し、寄り添った受け答えをする「感動品質」の提供を目指しています。代理店でもカスタマーセンターと同様の問い合わせが寄せられるため、分析システムで掴んだ入電の傾向や「お客さまに寄り添うトーク例」などを紹介することで、サービス向上、お客さま満足度向上に役立ててもらおうとしています。

      さらに、そこから新たに打ち出された施策の一つに、「カスタマーセンター11(イレブン)」という代理店向けサービスがあります。「営業スタッフの電話対応力を高めたい」「代理店業務をもっと効率化したい」「増収のために新規開拓や補償アップに取り組みたい」といった代理店経営者が抱えている悩みごとに対して、カスタマーセンターで培ったノウハウをもとにしたサポートを提供し、課題を解決していくフレームワークです。

      こうしたさまざまな取組を重ねた結果、外部評価としてもHDI(ヘルプデスク協会)の2014年「問合せ窓口(カスタマーセンター)」部門において最高評価の三つ星を獲得しました。

      「Watson Explorer を使って分析を行うようになって、カスタマーセンターがノウハウの宝庫であることを実感しました。原石(お客さまの声)を宝石(知見)へと磨き上げ、代理店の皆さまを強力にバックアップしていきます」と岩前氏は話します。カスタマーセンターをコスト・センターから提案型のプロフィット・センターに転換させていくという目標に向かって、三井住友海上の革新が始まりました。

       

      将来の展望

      多様なチャネルに分散するお客さまの声を一元化して横断的な分析を実現する

      カスタマーセンターの革新を本格的に軌道に乗せていくためには、お客さまの声分析システムのさらなる拡張を図っていく必要があります。より多様なチャネルからお客さまの声を取り入れていくことも、そこでの新たな目標の一つです。先述のとおり、現時点で分析システムに取り入れている主なデータはCONTACT-1のコンタクト履歴ですが、実はお客さまの声は、他のシステムにも分散して蓄積され、管理されています。

      「例えば、事故受付を行うコールセンターもありますし、間接的な意味では、社内の営業スタッフからの問い合わせに対応するコールセンターもあります。これらの声も一元的に管理し、横断的な分析や活用ができる仕組みを作ってほしいという要望も寄せられています」と栗林氏は話します。

      この延長線上で将来的には、音声認識技術の活用にもチャレンジしたいという構想も持っています。

      「現在は現場のオペレーターが手作業でテキスト化したデータを利用しているため、どうしても割愛されてしまう部分もあります。そこに音声認識技術を適用することで、お客さまの声をすべてテキスト化できれば、より深い意図や背景を読み取ることが可能になるのではないかと考えています」(栗林氏)

      また、分析システムから得られたノウハウを、人材教育にも活かしていこうという機運も高まってきました。 

      「代理店の人材教育にも活かしていこうと考えています。教育ツールはたくさんあるのですが、これまでは裏打ちされたデータが少ないことから、どうしても教科書的な内容になりがちでした。お客さまの生の声を題材として活かすことができれば、こんなケースではこう応えるべきといった、より具体的かつ実践的な教育を行うことが可能となります」と岩前氏は話します。

      三井住友海上のビジネス全体に付加価値をもたらす基盤として、カスタマーセンターならびにお客さまの声分析システムは、今後も大きな前進を続けていきます。

      注:Watson Explorer は IBM Watson Content Analytics と IBM InfoSphere Data Explorer を統合したソリューションです。本システムでは IBM Watson Content Analytics V3.5 (旧称 IBM Content Analytics V3.0)を採用しています。

       

      製品・サービス・技術 情報

      当事例で使用されている主な製品・サービスは下記の通りです。

      ソフトウェア

      • Watson Content Analytics

      ソリューション

      • IBM Cloud Managed Services, FSS: Insurance - Front Office - Data & Analytics

      Solution Category

    • Other