Business Challenge story

東日本大震災によるシステム停止を契機にデータのバックアップ体制を全面的に見直す

株式会社山形丸魚がデータのバックアップ体制の強化に取り組んだきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災でした。同社の管理本部 システム課 課長の岩渕誠氏は「震災をきっかけに、システムをどう守るのかを真剣に考えるようになりました」と語ります。同社では1990年代の終わりに当時のIBM AS/400を導入し、営業所ごとに分散していたシステムを本社のサーバーに集約しました。しかし、震災当時はそれほど強固なバックアップ体制は確立されておらず、岩渕氏は「今回の震災では、幸いにも設備面での大きな被害はなかったものの、システムの継続的な運用に大きな不安を感じました」と話します。

「影響が大きかったのは停電です。本社では、地震発生直後の2日間と4月の大きな余震時の半日間の2回にわたって停電になりました。専用線経由でデータを受け取る本社のサーバーが停止したことにより、被害のなかった営業所などでも業務が停止するなど業務の遂行に影響が出ました」(岩渕氏)

本社のメインサーバーであるIBM System i では、販売管理、在庫管理、売掛管理、仕入れ先管理、さらには電子オーダーシステムも稼働していました。しかし、それらが停止したために、市場では取引伝票が発行できなくなり、量販店からの注文が受け付けられなくなりました。営業所だけでなく、得意先からのクレームもあったといいます。岩渕氏は「無停電電源装置は導入していましたが、それでは対応できませんでした」と話します。

もうひとつの不安は、本社のサーバー・ルームそのものの堅牢性でした。処理されたデータは日次で備え付けのテープにバックアップされ、1カ月ごとに記録したテープを棚に保管していました。「しかし、事務所が津波で流されてすべてのデータが失われた三陸の取引先の話を聞き、もし当社がそうした災害に遭ったらと考えてぞっとしました」と岩渕氏は話します。

サーバー類はラックに収められていましたが、特に耐震化が図られていたわけではありません。東日本大震災発生時は、ラックが倒れないように手で支え、その後はガムテープで補強するという応急処置を取っていました。こうした状況の中で「とにかく“バックアップを強化しよう”と、そればかりを考えるようになりました」(岩渕氏)

バックアップ体制を強化したいと考えた岩渕氏は、日本IBMのパートナー企業である日本アバカス株式会社の第二営業部 主任の佐藤快斗氏に相談を持ち掛けました。「日本アバカスさんとは以前から取引があり、リプレイス予定だったIBM System i の機種選定について震災前から話を進めていました」(岩渕氏)

Transformation

システムを守るためにデータセンターを活用し、データを守るためにバックアップ体制を強化

相談を受けた佐藤氏は、震災当時は転勤によって福島県で勤務していたため、バックアップの重要性を痛感しており、「山形丸魚様のニーズを真摯に受け止め、きちんとした提案をしたい」(佐藤氏)と考えました。「停電対策では自家発電という手段もありますが、コスト的には見合いません。そこでIBM System i 自体を停電にも強く、免震性能の高いデータセンターにアウトソースすることを提案しました」と佐藤氏は話します。

提案された岩渕氏は、「これまではすぐ隣にあったサーバーを遠くに置いても大丈夫なのだろうか」と当初は漠然とした不安を覚えたようです。「ただ、冷静に考えてみると、それほどサーバー自体には触っていなかったことに気付いたんです。サーバー自体が故障することはほとんどないので、触るのは月に一度のテープ交換のときぐらいでした」(岩渕氏)。そこで、データセンターの活用に向けて前向きな検討が始まりました。

佐藤氏はデータセンターについて複数の候補を提案し、その中から本社から一番近いデータセンターが選択されました。「選択の理由としては、何かトラブルが発生した際に、車で駆け付けることができる距離であることと、同じ県内であればネットワークの通信費用を抑えることができる点でした。ただ、本社との距離が近いので、同時に被害を受けるという恐れがあることはわかっていました」と岩渕氏は話します。

そこで佐藤氏はさらなる“保険”として、クラウドを使ったデータのバックアップを提案しました。「データだけでも遠隔地にバックアップを取っておくことが重要ではないかと考えたのです」と佐藤氏。岩渕氏も「データを確実に守るにはどうするべきなのかと考えていました。データセンターだけではデータを守れないという説もあり、その提案に納得しました。システムを堅牢にすることと、データを守ることは別々にとらえるべき課題です」と話します。

佐藤氏が提案したのは、日本IBMが提供しているIBMリモート・データ保護でした。IBMリモート・データ保護はサーバーのデータをネットワークを通じて自動的にバックアップするクラウド・サービスで、バックアップ・データは安全性の高いIBMのデータセンターに保管されます。利用料はお客様サーバー側のデータ量に応じて課金されるため、手軽に始めることができます。「従来のテープによるバックアップでは、データセンターにアウトソースしても運用の手間が掛かります。そこでネットワークを利用したバックアップを取り入れたかったのです」と佐藤氏は話します。

従来、IBMリモート・データ保護はIBM System i には対応していませんでした。しかし、このプロジェクトを検討していた2011年8月、その問題を解決するソリューションが発表されました。三和コムテックが提供するバックアップ・ソフトウェア「LaserVault Backup」と組み合わせることでバックアップができるというのです。「発表によれば、LaserVault BackupによってIBM System i のデータを圧縮しながらPCサーバーに落とすことができるという話でした。実現できれば、今後もいろいろな展開が考えられます。これしかないと思い、早速IBMリモート・データ保護の無料トライアルを申し込みました」と佐藤氏は当時を振り返ります。

提案を受けた岩渕氏は「LaserVault Backupについては以前から知っており、こうしたバックアップ・ソフトウェアが使えればいいのではないかと考えていました」と語ります。サーバーのリプレイスというタイミングも良かったといえます。新しいサーバーをデータセンターに設置し、日本アバカス側で1カ月間にわたって検証が進められました。

「検証とテストにより、バックアップデータを本番システムに戻すことも実証でき、自信をもって移行作業を進めることができました」と佐藤氏は話します。IBM System i のデータをIBMリモート・データ保護によって遠隔でバックアップできる新しいソリューションの登場が、今回のプロジェクトの完成度を高めることにつながりました。

Benefits

“もうデータの心配はいらない”。コストを抑えて万全なバックアップ体制を構築

「導入効果として大きいのは、“もうデータの心配はいらない”と言い切れることです。従来のテープによるバックアップに加え、LaserVault BackupによるPCサーバーへのバックアップ、そしてIBMリモート・データ保護による遠隔バックアップ、と3つのバックアップ・データが存在することになります。しかも、LaserVault Backupを活用することにより、業務に支障を来すことなくバックアップが行えます」と岩渕氏はその効果を語ります。

コスト面での効果もありました。テープでは200ギガバイトあったバックアップ・データの容量が、LaserVault Backupによって43ギガバイトまで圧縮されました。IBMリモート・データ保護の料金体系はお客様サーバー側のデータ容量に基づく従量制のため、同社の場合は最低限の料金で利用することができました。このように、データ容量の圧縮は、コストの圧縮にもつながります。「全体のボリュームが約5分の1になったことで、データ転送にかかる時間が短縮されただけでなく、IBMリモート・データ保護のコストを大幅に削減することができました」と岩渕氏は話します。

こうしたメリットを引き出せたのも、リプレイスと同時に進めたことが功を奏したといえます。「新サーバーをデータセンターに設置して1カ月間のテスト期間を設けることができたことにより、LaserVault Backupの機能を最大限、引き出すことができました。これは大きな成果だったと思います。また、バックアップ体制の強化に掛かる費用をリプレイスによって削減される保守運用費などの差額で収めることができたため、経営陣にも説得しやすかったですね」と岩渕氏は話します。

 

将来の展望

タワー型のPCサーバーもクラウド・サービスでのバックアップを考えたい

リアルタイムにデータをバックアップするには、サーバーの二重化しかありません。それはさらに先の話になります。現在のIBMリモート・データ保護による運用に問題がなければ、今後はIBM System i 以外のPCサーバーについてもIBMリモート・データ保護を活用したいと考えています」と岩渕氏は今後について語ります。

これらのPCサーバーはタワー型のもので、データセンターに移すと費用も掛かるため、現在も本社のサーバー・ルームに置かれています。「バックアップは従来のテープによるものだけですから、今後はクラウドも視野に入れてバックアップの強化を図っていく予定です」(岩渕氏)。

また同社では、2012年4月に大きなイベントが控えています。それは、山形中央水産株式会社(同社のグループ会社)との合併です。両社間で重複する業務や販路などの効率化を図ることが合併の目的のひとつとなっているため、システム面での改修も避けてはとおれません。岩渕氏は「合併に向けてプログラムのメンテナンスも進めながら、今後のシステムの姿を考えていきます」と話します。新たに構築されたバックアップ体制もあり、安心してシステム改変に取り組むことができそうです。

 

お客様の声

IBM AS/400以来の伝統である高品質と資産の継承を続けてほしい

入社以来18年間にわたって同社のシステムを担当してきた岩渕氏は、「IBMのサーバーはAS/400時代から使い続けていますが、ディスク・クラッシュなどの故障もなく、可用性という面での信頼性は高いですね。この品質の高さはぜひとも維持し続けてほしい」と話します。

「新しいサーバーになってもアプリケーション資産は使い続けられるという思想は素晴らしいと思います。これは基幹系システムには欠かせない条件です」と話し、リプレイスについても「幾つかのポイントをチェックするだけでスムーズに移行できるのが良いところです」と指摘します。長年のユーザーだけに、リプレイスに当たっての勘所も心得ているようです。

また、IBMのパートナー企業である日本アバカスについても「当社のことをよく理解してくれており、何かあれば適切にサポートしてくれるので助かっています」(岩渕氏)と話します。4月の合併に向けた課題解決でもその支援に期待しているとのことでした。

 

お客様情報

山形県内の個人問屋が集まって作られた組合から発展。昭和28年に株式会社化され、生鮮水産物および加工品、一般加工食品、飲料、瓶缶詰、調味料などの卸売業を展開。天童市の本社敷地(約1万2000坪)内で常温から-55度までの全温度帯の商品を取り扱っているほか、県内の主要都市7カ所に水産物卸売市場を開設し、生鮮水産物をはじめとした食品の卸売を行っています。

 

テクノロジープラットフォーム

ハードウェア

サービス

Solution Category

  • IBM Cloud