Business Challenge story

精神科医療に特化した電子カルテで医療部門と事務部門の相互で情報共有

2007年に地方独立行政法人として新たなスタートを切った岡山県精神科医療センターは、精神科と児童精神科の専門的医療拠点として、24時間の救急対応や民間病院では対応困難な患者様受入れなどで地域に貢献してきました。

2012年4月から始まった第2期中期計画では、多様化する精神科医療環境の変化や医療現場のニーズに対応するため、先端技術の導入や診療情報のIT化など、病院機能の高度化による精神科医療の充実と地域医療の連携強化に重点を置いています。その施策の中心となるのが、精神科に特化した電子カルテシステムの導入と最新の医事会計システムへの刷新でした。

両システムの導入により、院内の各部門での情報共有が進むとともに、情報伝達のスピードがアップします。このことは、患者様への的確な治療のほか、待ち時間の短縮、会計処理の迅速化など患者様側にも大きなメリットになります。さらに、蓄積されたデータを分析することで、医療の質的向上に役立つ新しい知見の発見にもつながっていきます。岡山県精神科医療センター 事務部長の松本安治氏は、次のように語ります。

「電子カルテ導入のコンセプトは“みんなのカルテ”です。従来は、医療部、リハビリ部、看護部、事務部など各部署がバラバラに書類と情報を抱えており、患者様の全体像が見えづらかったため、電子化にあたってはそれら全ての部署が閲覧できるカルテを目指しました。患者様の症状や過去の行動、生活環境などの情報がデータベースに蓄積されることで可視化が促進され、医療部門と事務部門の相互で情報共有が可能になると考えました」

岡山県では、医療の質的向上を目的に、電子カルテや画像情報などを開示し、地域の診療所からでも閲覧できる医療情報ネットワークの構築準備を進めています。しかし、松本氏は、精神科医療は身体科医療とはアプローチが大きく異なるため、県が進める医療情報ネットワークに精神疾患の患者様が同意するとは考えにくく、精神科医療機関向けの連携が必要であると話します。

また、電子カルテシステムを導入するにあたり、病院内にサーバーやストレージを設置し、担当者が24時間365日運用することは組織的に難しい上に、患者様データなどの重要情報を適切に管理し、定期的にバックアップを取ることも困難と判断されました。そのため、院外のデータセンターにシステムをハウジングし、クラウド環境による運用の効率化を考えました。

Transformation

電子カルテと医事会計に加えCognosでカルテデータを分析

そこで選択されたのが、株式会社ナイス(以下、ナイス)が開発した精神科病院向け電子カルテシステム「Medical Leader-Record Nozomi」(以下、Nozomi)と、同じく医事会計システム「Medical Leader-Account Megumi」(以下、Megumi)でした。

「NozomiとMegumiをデータセンターで運用することは初めてのチャレンジでしたので、クラウド利用に耐えるサーバー構成や台数の検討から始めました。インフラとして、サーバーには信頼性を重視し『IBM System xシリーズ』を採用。データベースは安定性を優先して『IBM DB2 9.7』を採用しました」と述べるのは、ナイス 営業本部 医療システム営業部 次長の吉村彰倫氏です。

また、今回電子カルテに移行した背景には、岡山県精神科医療センター内の情報共有を推進するとともに、データベースに蓄積させたカルテデータをDWH化し、BI(Business Intelligence)による可視化や分析を行う目的もありました。そのため、BIにはNozomiとMegumiとの連携が既に実証されていて、高度な分析力による迅速な意思決定が可能な「IBM Cognos 10」(以下、Cognos)が選ばれました。 

DWHの目的について、岡山県精神科医療センター ICT班 班長の森川公彦氏は次のように説明します。「1つは電子カルテ情報を一覧表として利用すること。個々の電子カルテでは見えなかった、外来やデイケア予約状況やキャンセルした患者様の洗い出しなど行ないます。そしてもう1つは、統計情報として利用すること。年間や月間の診療実績から傾向を見ることで、予防措置や患者様への効率的な治療に大きく役立てられます」。

現在Cognosは、クエリー機能とレポートオーサリング機能を中心に活用され、合計で20~30名ほどのユーザーが利用している状況ですが、今後は分析機能にまで拡張する予定です。

さらに、事業継続/災害復旧計画を見直し、クラウドのデータセンターとナイス社内、岡山県精神科医療センター内の3カ所でバックアップを取り、データの保全と即時にリストアできる体制を組むと同時に、将来のデータ増大を見越したサーバー増強時にも、システムを止めることなく運用が継続できるようスケーラビリティーが強化されています。

Benefits

カルテの記事内容まで検索対象としキーワードで診療内容や傾向を分析

これら、電子カルテシステムと医事会計システム、DWHは、2011年11月に正式に導入が決定し、2012年4月から運用がスタートしました。新規に作成されるカルテはこの日を境に全て電子化しています。

「短期導入で研修期間が短かったにもかかわらず、大きな混乱もなく運用を開始できました」と振り返るのは、岡山県精神科医療センターの医師 高橋正幸氏です。医療現場で実際に電子カルテを運用する同氏は、診察や検査データ、看護師の面談内容など、どこにいてもリアルタイムに閲覧できるようになったことで、電話で聞くだけでなく文字や画像として正確に確認することが可能になり、情報共有が迅速になったと評価します。 「患者様の治療方針を関係者間で協議するカンファレンスの際には、その都度紙カルテを持ち出す必要があり、カルテが不在になるため看護師が困っていました。電子化後は参加者の端末にカルテ内容を表示させることが可能になったので、情報共有の手間と時間が大きく削減しました」(高橋氏)。

また、電子カルテは画面転送型のシンクライアントで運用するため、万一出先で端末を紛失しても情報漏えいの心配がないのも安心材料だといいます。一方、Cognosに関して、岡山県精神科医療センター 主事の三木恵美氏はこう話します。

「現在はまだ運用開始から間もなく、データを蓄積中で本格活用には至っていませんが、数値のみならずテキストデータであるカルテの記事内容まで検索対象にできるようになったことは非常に有効だと感じました。今後カルテ情報が蓄積していけば、キーワードで自由に診療内容や傾向を抽出し、さまざまな角度から分析できるようになるからです」

さらに高橋氏も、「Cognosなら必要に応じて患者様の情報をDWHから抽出できることも可能になるほか、退院や入院のスケジュールや、空きベッド数などの状況がリアルタイムに一覧で確認できるようになるので、事務作業が大きく効率化するはずです」と期待を寄せます。

 

将来の展望

地域医療ネットワークで電子カルテの共有を進める

今後、岡山県精神科医療センターでは、県内の精神科の医療機関にも電子カルテの活用を促し、精神科医療向けの「地域医療ネットワーク」を構築して、情報交換と連携の輪を広げることも視野に入れています。森川氏は、「電子カルテとクラウド環境の利用によって、病院同士を繋ぐ病病連携や、病院と診療所とを結ぶ病診連携を行えば、カルテ情報の共有化と診療の効率化が急速に進むはずです」と話します。

また、2013年度には、精神科医療に関する専門の研究部を設置する計画で、そこではCognosをより深く活用した取り組みが行われる予定だといいます。

そして松本氏は、「24時間体制で、重篤な患者様を受入れている当センターが電子カルテの運用を軌道に乗せれば、民間の精神科病院も電子化が容易になるはずです。この事例が岡山県方式として確立し他県も応用できるよう、精神科初の事例として道筋を示すことが私たちの役目だと考えています」と語ります。

 

お客様情報

1957年に岡山県立岡山病院の精神科として開設。2007年からは、地方独立行政法人 岡山県精神科医療センターとして、休日・夜間の救急対応や複雑困難な患者様受入れなどに加え、児童・思春期病棟や医療観察法に基づく司法精神科入院棟の開設などを推進。その長年にわたる医療活動と経営の安定性が認められ、2012年6月に「平成24年度自治体立優良病院」として表彰。また、東日本大震災後の緊急医療支援や心のケア活動などが評価され、厚生労働大臣から「メスキュード医療安全基金賞」を受賞しています。

 

ビジネス・パートナー

1973年に株式会社名古屋インフォメーションシステムズとして設立。1990年に略称だった「ナイス」を社名に採用しました。同社の医療機関向け各種パッケージソフトウェアは全国的に高い評価を受けているほか、電子帳票システム、水産卸売業向け流通システム、物流・生産管理システムなど、幅広い業種に対応したソフトウェアをご提供しています。

 

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