Business Challenge story

20%30%TCO削減を達成する一方で『単純統合』による運用の限界に直面

「我々システム部門に求められているのは、お客様にとって付加価値の高いITサービスを提供することです。それを実現するためには、従来のIT投資の中でも、戦略的な投資、つまりお客様に付加価値を与える部分の投資比率を高めていかなければなりません。我々がITインフラの高度化、効率化に大きく注力している理由もここにあります。特にUNIXによる高信頼性が要求される領域の高度化は重要だと考えています」と切り出したのは、同行システム部 基盤第二グループリーダーの清水治彦氏です。

この考えのもと、同行は2003年より「AIX統合サーバープロジェクト」をスタート。以来、IBM POWER5プロセッサー搭載サーバーおよびIBMが提供するUNIXオペレーティング・システム「AIX」を活用しながら、第一期、第二期と段階的にサーバー統合を推し進めてきました。その成果となる現行仮想化統合基盤では、約160のLPAR(論理区画:仮想マシンに相当)を提供。現在も、さまざまな業務システムが仮想化環境で稼働しています。

同行システム部 調査役の溝上芳成氏は、「IT資産のみならずノウハウが行内のあちこちに散在していたため、第二期までは、ハードウェアと要員の集約を図り、とにかくコストを削減することを大きな目標としていました。OSの標準化、コンポーネントの共有化を中心に進めた結果、TCOを20%~30%削減できたことは評価できるでしょう」と振り返ります。

しかし、サーバー統合が狙いどおりの成果を生み出す一方で、新たな課題も浮上してきました。「統合された物理サーバーを保守する場合、その上で動く業務を一斉に止めてもらわないといけません。ところが、銀行の場合はサービス停止時間がほとんどありませんので、集約すればするほど、いつ保守すべきか、その調整が大きな問題になりました。また、時とともに変化する業務システムの必要性能や稼働時間、セキュリティーレベルの変化にも都度対応していかねばならず、統合したが故に、業務間での煩雑な調整が発生するようになりました」と溝上氏。

特に、同行が『単純統合』の限界を痛感する大きなきっかけとなったのが、旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行の勘定系システムを一本化する「Day2」プロジェクトでした。ユーザー数やトランザクション量は単純に2倍となる中、「止められない」という状況が深刻化しました。

清水氏は当時の状況を住居にたとえて、以下のように振り返ります。「第一期、第二期での仮想化基盤構築により、かつては戸建の一軒家だったのがマンションになり、効率化が進んだわけです。ところが、メンテナンスの際にエレベーターが止められないような状況も生まれてきたわけです。そこで、次の段階では、『単純統合』における課題をクリアする次世代の仮想化環境を構築することに焦点を当てました」

こうして同行は、統合基盤の抜本的な見直しに着手。さらなるリソースの有効活用によるTCO削減に加え、障害による計画外停止はもちろん、保守などによる計画停止をも最小化する高い可用性を備えた次世代統合基盤の検討を開始しました。

Transformation

先進の仮想化機能を駆使して投資効率と可用性に優れた基盤を構築

第三期に当たる仮想統合基盤構築に向け具体的な検討が進む中、同行が高い期待を寄せたのが、2007年に発表されたAIX 6.1とIBM POWER6プロセッサーの組み合わせによる先進的な仮想化機能「PowerVM」でした。

「第二期までは、仮想割当はプロセッサーのみ、これも1コア単位のほぼ物理分割に近い形でした。第三期のプロジェクトを始動するにあたり、これまでどおりプロセッサーの仮想化にとどめるべきか、多少のリスクを取ってでも、最新の仮想化技術を徹底的に適用して高い効果を狙うべきか、この点をあらためて議論しました。その上で、最新技術をどう適用すれば我々の課題が解決できるのか、さまざまな検証を通じてIBMと一緒にじっくり検討していきました」と溝上氏。

同行がまず注目したのが、プロセッサーの処理能力を0.01単位(最小0.1以上)でLPARに割り当てるだけでなく、稼働中のLPARに対してプロセッサーやメモリーの動的な増減が行える「マイクロ・パーティショニング」でした。同行は、この機能を活用してサーバー・リソース・プールを構成し、あわせてサイジング・ポリシーを見直すことにしました。

従来、同行は3年~5年後の必要量を考慮した上で、約30%の余裕率を見たサイジングを行っていました。また、高可用性クラスタリング機能「PowerHA」により正副構成をとっている場合は、バックアップ機にも同じだけのリソースを確保していました。これを、新基盤では1年後の必要量のみを割り当てる方式に変更。使用状況を常時モニターしておき、実際にリソースが不足したときに初めて「マイクロ・パーティショニング」で動的に遊休リソースを追加することにしました。

これとあわせて、同行は、障害時や保守時も考慮しつつ、最適なLPAR構成を実現するプランニング・ツールを独自で開発。どの物理サーバーにどのLPARをいくつ収容するのが最も効率的か、LPARごとに必要なリソースを時系列でシミュレート。3年後・5年後を見据えた最適な投資計画立案を可能としました。

また、一般的にリソース・プールを構成する場合、当初は使わないプロセッサーやメモリーをあらかじめ導入しておかなければならず、初期投資が膨らむ傾向にあります。しかし、同行は実際に必要となったプロセッサー分だけ支払う従量制課金の仕組みを導入。先進的な仮想化機能を搭載したリソース・プールを構築しつつ、初期投資を抑制できたことについて、溝上氏は、「ファイナンス・ソリューションも含め、総合力に優れたIBMならではだと思います」と評価します。

次に同行が注目したのが、稼働中のLPARをダウンタイム無しで他の筺体へ移動できる「Live Partition Mobility(以下、LPM)」でした。LPMを本番環境の運用に採用することで、サービスを止めずに物理サーバーのメンテナンスやアップグレードを可能としたのです。さらに、当初の想定以上にパフォーマンスが必要となる業務があった場合も、動的にLPARを再配置することが可能となりました。

LPMとあわせて、同行は仮想I/O機能を提供する「バーチャルI/Oサーバー(以下、VIOS)」を全面採用。それまで仮想マシンごとに占有で割り当てていた物理ポートを仮想化して共有化することで、物理I/Oアダプター数を削減するとともに、物理リソースにとらわれない自由な環境構築を可能としました。このVIOSを実装するにあたり、同行は行内の高信頼性ネットワークに対する厳格な接続ルールを守りつつ、ハードウェア障害に起因する業務サービスへの影響を減らすにはどうしたらよいかIBMとともに検討を重ね、複数の方式を検証しました。溝上氏はIBMのサポートについて、次のように語ります。「IBMは我々の要求や、開発期間中に出た製品障害に対しても、海外の開発元と連携して、バックエンドでの障害の再現、修正版の作成や、新しい方式の提案など迅速に対応してくださいました。高い技術力を生かした手厚いサポートに、大変感謝しております」。

Benefits

第二期を上回る50%70%TCO削減と開発生産性や可用性向上を実現

こうして第三期の統合プロジェクトでは、最新の仮想化技術を駆使した統合基盤が完成し、2010年2月より本稼働がスタート。本番環境で新たに稼働を始めたのは、業務システムのサービス・ノード群を収容するIBM Power 570 6台、主にバックアップ・サーバーと基盤管理システムを収容するIBM Power 520 6台の計12台。一方、一足先に稼働していた開発環境は、IBM Power 570 3台、IBM Power 520 6台で構成されています。同行では、すでにサービスインした2システムを皮切りに、既存の業務システムを順次展開していく計画です LPAR数は現時点ですでに90区画を超え、第一期、第二期の2倍以上のペースで増えつつあります。2010年前半には200区画に届く勢いだといいます。

長期にわたる入念な検証作業が実を結び、統合の成果も顕著に表れています。まず、マイクロ・パーティショニングやLPMを駆使してリソースの効率利用を追及したことで、サーバー集約率が大幅に向上。これにより、TCOは50%~70%、電力コストは最大80%の削減と第二期を大きく上回る効果を上げることができました。この数字にはソフトウェア・ライセンスの削減分は含まれておらず、プロセッサー数が50%~70%削減されたことを考慮すると、さらにこれに上乗せでコスト削減できたと同行では見ています。収容計画の高度化に向けた緻密な努力と、それを可能にするIBM Power Systemsが、この結果に貢献したことは間違いありません。「開発ボリュームが約1.5倍に膨らみながら、物理筺体数は4分の1に圧縮され、かかるコストは半分と、投資効率は飛躍的に向上しています。これだけの集約ができたのも、マイクロ・パーティショニングのおかげでしょう」と溝上氏。

さらに同行システム部 上席調査役の藤田淳氏は、「以前はプロジェクト開始時に開発環境から本番環境まですべてのサーバーを揃える必要がありました。今はテスト環境で性能検証を行って、本番環境で必要となるリソースを正確にサイジングすることができます。その上で、本当に必要な分だけ本番環境のリソースを従量課金制で購入していけばよくなりました。その点でもまったく無駄がありません」と語ります。

また、可用性の確保については、「仮想化環境においても、当行が個別のシステムで求めてきた99.99%もしくは99.999%の可用性を実現できます。これは素晴らしいことです」と溝上氏。さらに清水氏が、「我々がAIXに要求してきた信頼性のレベルを確実に維持した上で、仮想化技術が内包されています。ここがIBM Power Systemsに期待する重要なポイントの一つです」と強調します。

LPMをはじめとするこうしたIBM Power Systemsの先進的な仮想化機能は、開発環境にも大きなメリットをもたらしています。共に開発にあたった三菱UFJインフォメーションテクノロジーの宇田川恵司氏は、「これまで開発環境で性能検証や障害テストを行う場合は、開発環境をその業務で占有する必要がありました。しかし今は、その必要はなくなりました。動的なリソース割り当てやLPMを活用することで、限られたリソースの中でもあらゆるテスト・ニーズに柔軟に対応できるようになりました。さらに、開発したアプリケーションを本番反映する際もLPMが活躍しています。開発環境にあるテスト済みシステムをLPARごと本番環境用の別筺体に移動させるだけでよく、移行リハーサルや移行後の稼働テストも最小限で済みます。今後は、本番環境の保守や最適なLPAR配置の見直しの際にも、LPMを活用していく方針です」と説明。現在LPMを最も活用しているのが開発環境であり、当初の期待どおり、開発効率の向上に重要な役割を果たしているといいます。

今回のプロジェクトを通じて、あらためて最新のIBM Power Systemsの優位性を確認したという同行は、「これだけ最新技術を駆使して、先進的なことをやろうとすると、普通は不具合などにより、運用回避しなければならないところが出てきます。その点、IBM Power Systemsの場合、リソースの変更などは機械任せです。事前に設定したシナリオどおりに動いてくれますので、ほぼ手離しで運用できてしまいます」(宇田川氏)。

 

将来の展望

今後もIBMの最新テクノロジーを取り込みつつITインフラの高度化への挑戦を継続

清水氏が「ようやくここまで仕上がってきた」と語るように、IBM Power Systemsの進化と歩みを一つにしてきた「仮想化AIXサーバー統合基盤」は、第三期の統合を機に完成形に近づきつつあります。

「業務開発チームに対しても、5年後まで使えるかどうかではなく、直近のニーズだけを見ておけばよい、いつでも増強できるから心配はない、と自信を持って言えるようになりました」と溝上氏。さらなる効率化に向けた今後の課題にも触れ、「多数の業務を集約することで、各業務のピークがずれることにより、まだまだ余剰リソースが生み出せるはずです。それを効率的に使い回す手法を確立したいと思います。また、将来的には、IBM POWER7による性能や集約率のさらなる向上、VIOSの拡張、次期AIXでの仮想化機能の強化にも期待しています」と意欲をのぞかせます。

また、行内クラウドの構想を進める同行にとって、今回のサーバー統合はその重要なステップになろうとしています。「今回、自動化を実現するサービス層はあえて作りこんでいませんので、クラウド環境そのものとは言えないでしょう。しかし、今回リソース・プール構築において培われた仮想化の使い方や、実装における課題、配置ポリシーなどのノウハウは、今後行内クラウドを構築する際にも大いに役立つと考えています」と溝上氏は語ります。 「当行の場合、開発環境がたった一日止まっても膨大なロスにつながります。開発に対して必要な環境を迅速に提供していくことはシステム部の責務であり、サーバー統合に伴う運用の難しさを言い訳にすることはできません。抜群の信頼性と柔軟性を兼ね備えた高品質なITインフラを維持していく上で、今後もIBM Power Systemsが大きく貢献することになるでしょう」(清水氏)。 揺るぎない信頼性を保証しながら、仮想化によるメリットを最大限に引き出すIBM Power Systems。そのアーキテクチャーの進化とともに、三菱東京UFJ銀行のITインフラもまた、さらなる高度化への挑戦が続きます。

 

お客様情報

国内外に800余りの拠点を持つ、日本屈指のメガバンク。株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの一員として、グローバルに業務を展開。

 

テクノロジープラットフォーム

ハードウェア

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  • Systems Hardware