Business Challenge story

分散化したファイル・サーバーの効率的な運用管理のあり方を模索

「サッシ」から「窓」へ――。これまで美観や風通しの良さなどから語られてきた窓ですが、それに加えて現在では、断熱性や遮音性ほか高い性能が求められるようになりました。YKK APは、そうしたニーズの変化を先取りしつつ、ビジネス・モデルを進化させてきました。

同社の専門役員であり情報システム部長を務める中島隆利氏は、次のように話します。

「お客様の多様なニーズにお応えするためには、従来のようにサッシとガラスを別々に考えるのではなく、この二つが一体設計された窓を提供していく必要があります。当社は、そうした窓の自社生産をいち早く確立するなかで、その機能や付加価値を高めることに注力してきました。また、中国をはじめアジアの新興国への海外展開を進める中で、グローバルな販売体制を強化しています」

こうした中で浮上してきたのが、さまざまなビジネスで利用する技術情報の管理や保護といった課題です。

「特に重要な技術情報は、CADやPDM(Product Data Management:製品情報管理)などの専用システムで厳重に管理しているのですが、ドキュメントなどの関連情報は各部門のファイル・サーバーに分散して保存され、それぞれの権限のもとで運用されてきました。このような体制では、セキュリティー対策のレベルをはじめ、バックアップの範囲や頻度といったデータ保護にもバラツキが生じがちで、部門ファイル・サーバーを全社的に集約し、ガバナンスを徹底する必要がありました。最終的にはアクセス・ログも取得し、いつ、誰が、どの情報を参照したのか、監査にも対応できるファイル・サーバーの運用体制を整備すべきと考えました」と中島氏は話します。

そこでYKK APは、老朽化したサーバーから順次、情報システム部の管理下へ統合を開始。当初は数百台まで分散していた部門ファイル・サーバーを、2009年から2012年までの3年間で数十台に集約させました。

しかしながら、「この社内統合によって、問題が抜本的に解決されたわけではありません」と話すのは、同社情報システム部運用推進室の室長を務める小松敏之氏です。

「管理を一元化したとはいえ、数十台のファイル・サーバーを安定的に運用していくのは容易なことではありません。また、この統合化基盤も4~5年のライフサイクルでハードウェアを更新していく必要があり、常に重い作業負荷を背負うことになります」

そもそも、こうしたファイル・サーバーの維持管理は情報システム部にとってのコア業務ではなく、同社はより効率的な運用管理のあり方を模索していました。

Transformation

戦略的アウトソーシング・サービスの延長線上に、ストレージ・マネジメント・サービスを導入

ファイル・サーバーの統合を進める次のステップとして、YKK APが最初に検討したのは、大規模な容量を持ったNAS(Network Attached Storage)を導入し、より少数のハードウェアへの集約を図るという方法です。ただ、この方法では維持管理の負荷をある程度は軽減できても、解消するには至りません。

そこで同社が着目したのがクラウドの利用です。数社が提供するサービスを比較検討した結果、IBM SmarterCloudストレージ・マネジメント・サービス(SMS)の導入を決定しました。

この背景にあったのが、同社が基幹業務系システムの安定稼働とオペレーションの省力化、業務継続性の強化などを目的に、2005年から利用してきたIBMの戦略的アウトソーシング・サービスの実績です。

「当社では、基幹業務系サーバーをIBMのマネージド・クラウド・サービスに移行するとともに、各システムのオペレーションや業務アプリケーションの保守開発などの作業にアウトソーシングを活用しています。SMSの採用を決めた第一の理由は、これらの既存サービスの延長線上で導入が可能であったことです。例えば、当社とIBMのデータセンターを結ぶネットワークをそのまま利用できるため、追加コストはかかりません。また、ファイル・サーバーの構築に関しては、マネージド・クラウド・サービスとSMSを連携させた仮想的なプラットフォームを構成し、オペレーションを戦略的アウトソーシング・サービスに任せることで、柔軟なプロビジョニングやストレージ容量の拡張、バックアップの自動実行などが可能となります。すなわち、私たちが期待する“運用の高品質・高効率化”を最もスムーズに実現してくれたのがIBMによる一連のクラウド・ソリューションだったのです」と中島氏は話します。

さらに、SMSそのものが持つメリットについて、小松氏が次のように話します。

「SMSが魅力的だと感じたのは、パフォーマンス要件に応じて最適なストレージを選択できる3階層のサービスを提供していることです。統合を進めるファイル・サーバーに保管されているデータの大部分は、WordやExcelなどで作成されたオフィス・ドキュメントであり、データベース・サーバーやメール・サーバーほどの高パフォーマンスは必要としません。コスト容量比の高いTier3のストレージを利用することで、コスト削減にも貢献できると考えました」

Benefits

資産を持たずに柔軟にストレージ資源を調達、リードタイムも数カ月から1週間程度にスピード化

YKK APは2012年4月よりファイル・サーバーのSMSへの移行を開始し、同年9月の時点で全体の約3分の2にあたる20TBのデータの移行を終えました。並行して運用を開始しており、各部門や工場のユーザーに対して安定したサービスを提供しています。

「当社にとってファイル・サーバーは、基幹系と同等に重要なシステムとなっています。仮にシステムが停止すると、その間ユーザーの業務もストップしてしまうため、クラウド・サービスの信頼性は大前提です。IBMの戦略的アウトソーシング・サービス、マネージド・クラウド・サービス、そしてSMSの一連のサービスはトラブルを起こすこともなく、私たちの期待に十分に応えてくれています」と小松氏は評価します。

さらに、同社が強調するのが、ビジネスのスピードアップへの貢献です。

オンプレミスでファイル・サーバーを運用していた当時、例えば新規プロジェクトのために専用のファイル・サーバーを用意してほしい、あるいはストレージ容量を増設してほしいといった依頼を受けた場合、煩雑な手続きや作業を行う必要がありました。ベンダーへの見積もり依頼、社内の稟議・承認、機器の搬入やネットワークの設定、ソフトウェアのインストールを経て、実際に運用を開始するまでに3~4カ月を要することも珍しくなかったのです。

「現在、このリードタイムはわずか1週間程度に短縮されており、業務部門からの要求に迅速に応えられる体制が整いました。しかも、SMSでは最初は最小限の構成からスタートし、追加容量が必要になったときにシステムを停止することなく拡張することが可能であるため、無駄が生じません。容量単位の課金によって、コストを変動費化することができたのもメリットです」と中島氏。

小松氏も「当初からの大きな課題であったセキュリティー対策やデータ保護に関しても、IBMの一連のクラウド・ソリューションの中で包括的に行われており、各部門のユーザーは安心して情報を活用できるようになりました」と話します。

YKK APは、業務部門に対して提供するファイル・サーバーを“サービス化”することで、運用管理の負荷軽減と全社的なパフォーマンス向上を両立させているのです。

将来の展望

ノン・コア業務から脱却し、社内サービス・プロバイダーへ、ビジネスへのさらなる集中を目指す

オンプレミスに残るファイル・サーバーの移行を進める一方、同社は新たなSMSの利用にも踏み出しました。それは「デスクトップ・クラウド」と呼ばれる取り組みで、各ユーザーのPCのデスクトップ・イメージ(Cドライブ)を仮想化してSMSに集約することで、シン・クライアントによる運用形態へ移行しようとしています。

「短期的にはクライアント環境のコスト削減を狙いとして始めたのですが、将来的には社内のサーバー、デスクトップ、ストレージの3つをすべてクラウド化し、IT資産を極力持たない形でやっていきたいと考えています」と中島氏。社内にはシン・クライアントのみを残し、業務で必要とされるあらゆるITサービスを、必要なときにネットワーク経由で利用できるようにするのが理想的な姿だと話します。

「社内にシステムが残っている以上、日常的な監視のために専任のスタッフを付けたり、ハードウェアの老朽化やサポート切れの問題への対処に追われることになります。こうしたノン・コア業務からできる限り早く脱却し、社内のサービス・プロバイダーとなってビジネスを支援していくことが、今後の情報システム部門に求められる姿だと思います」と小松氏も続けます。

「災害対策などのリスク管理面も含めて、システムを信頼できる、安心・安全な状態に保つためには、インフラのクラウド化は非常に助かる部分です。そして、社内の人材は、アプリケーションや業務など、事業に直結するところにより集中させて、ビジネスへのさらなる貢献を目指していきます」と中島氏。

「窓」の専業メーカーとしてトップを目指すYKK AP。専業への集中が着々と進められています。

お客様情報

YKKのファスナー製造で培ったアルミ合金の生産技術を応用してアルミサッシの製造を開始したところから建材ブランドYKK APが誕生した。“窓”を通じて、より豊かな社会づくりに貢献していくことを目指して、建築物の開口部の建材を中心に事業を展開。時代の変化に合せてお客様が求める商品を、独自の設備開発(技術)によって製造・販売し、中長期にわたり健全な成長を図っていくという事業モデルのもと、暮らしと都市空間に先進の快適性を届けている。

テクノロジープラットフォーム

ソリューション

Solution Category

  • Other