S/4HANAの実装による標準化の向上とガバナンスの強化
神戸製鋼所は、鉄鋼、アルミニウム、鍛造、溶接、機械、エンジニアリング、建設機械、電力など、多様なビジネス・オペレーションの中で、各部門ごとに個別に最適化された業務プロセスと基幹システムを運用してきました。
SAP ERPは本社会計部門に導入されましたが、本社の会計分野だけで約400のアドオンを開発したため、システムは複雑になりました。その結果、バージョンのアップグレードと保守性の点で問題が発生し、モダナイゼーションの妨げとなっていました。また、会計処理が複数のシステムに分散され、紙ベースの様式が出力され、オペレーションが特殊化され、非効率的になっていました。
SAP ERPの保守期限が近づくにつれ、既存の老朽化したシステムでは、ビジネスの変化に迅速に対応し、将来に向けて拡張することが困難になりました。全社的なデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させるためには、新しい共通ERP基盤を構築することが急務でした。
神戸製鋼所は、老朽化して断片化した基幹システムを刷新し、KOBELCO-SAPと呼ばれる全社規模のERPプラットフォームを構築しました。IBMは、構想から実装、導入までのプロセス全体を通じてサポートを提供し、プロジェクト管理においても中心的な役割を果たしました。SAPの最新製品であるS/4HANAを中心に、ビジネス・プロセスとシステム機能の配置が全面的に再設計されました。ビジネス・トランスフォーメーションは、Fit to Standard(F2S)の原則に基づく標準機能を活用することによって主導されました。
当初は、各部門が個別にSAPの導入プロジェクトを進める計画でしたが、実装と保守コストの観点から、単一のSAP環境を共有していたエンジニアリング、電力、本社の事業部門は、1つのインスタンス構成内で同時運用することを目指して進めていくことになりました。IBMは、ベンダー間のプログラム・マネージャーとして、実装ポリシー、管理方法、マスター・デザインおよびオペレーション・システムの統一を推進し、事業部門間のコンセンサス構築とオペレーションの成功に貢献しました。
インフラストラクチャーに関しては、基幹システムはAWS上に構築され、2つのリージョンにサーバーを設置することで、セキュリティーと災害防止の両方を実現しました。サーバー管理をAWSにアウトソーシングすることで、運用負荷とITコストも軽減されました。
このプロジェクトは、神戸製鋼所にとって最初の部門横断的なERP標準化プロジェクトであり、KOBELCO-SAPを使用した新システムの本番運用はスムーズに進み、神戸製鋼所が直面していた主な構造的ビジネス課題を解決することに成功しました。
具体的には、SAP機能の使用率は、前回の6%から82%へと大幅に上昇しました。本社の会計部門では、約400に増えていたアドオンの数が100にまで減りました。この徹底した標準化により、新規開発と保守のコストが大幅に削減され、将来のバージョンのアップグレードや拡張に対する柔軟性が向上しました。
同時に、フォームやオンライン決済オペレーションのデジタル化により、同社は紙ベースの文化から脱却し、柔軟な働き方のサポートが増えました。これまで別々だった本社システムの統合により、部門間の連携や確認業務が不要になり、リアルタイムのデータ・アクセスが可能になり、待ち時間が短縮されました。さらに、ワークフローの導入とマスター・マネジメントの再設計を通じて、ガバナンスとビジネス・コントロールの強化が促進されました。
この取り組み全体で注目すべきポイントは、事業部システムを導入している神戸製鋼所でさえも、アプリケーション領域における全社的な共通インフラストラクチャーの保守と運用において、IT企画部門が中心的な役割を果たしたことです。同部門は、会計部門や各事業部門と連携しながら、トランスフォーメーションを支援しました。これまで、同社は情報インフラと情報セキュリティーの分野で共通インフラストラクチャーをサポートしてきましたが、このプロジェクトをきっかけに新たなガバナンス・システムを構築したことで、結果として最も重要な成果をもたらすことができました。
さらに、コア・ビジネス・インフラストラクチャーの開発により、将来のAIの利用や高度なデータ分析など、次世代のDXポリシーにスムーズに対応できるシステムが整備されています。神戸製鋼所のDX推進パートナーとして、IBMは運用と保守の継続的な支援に加え、IBMプログラム管理手法をSAP以外のアプリケーション分野にも適用することで、トランスフォーメーションを支援し続けます。
神戸製鋼所は1905年創業の日本の総合メーカーで、鉄鋼・アルミニウムなどの素材事業、機械・エンジニアリング・建設機械などの機械事業、および電力事業の3本柱を有しています。これらの事業を通じて、同社はグローバルな事業展開のために国内外に多くの拠点を置き、社会的課題の解決と産業の発展に貢献しています。さらに、同社は将来に関して「私たちは、現在そして将来も、人々が安全で豊かな生活を享受しながら希望や夢を実現できる世界を思い描いています」という見解を持っています。これは、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組むうえで、基本となる企業原則です。
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