“ Belle II実験やJ-PARCでの実験からの膨大なデータを消失することなく蓄積できるストレージ・システムの信頼性と高速性能を実現し、国際協調で行われる研究活動のホスト国としての責務を果たしていく体制を確立することができました ”
— 高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター 准教授, 村上 晃一氏
ビジネス上の課題
KEKは、Super KEKB加速器および、衝突点に設置した最新のBelle II 測定器を用いて、電子と陽電子の衝突データを取得・解析し、従来の標準理論では説明できない新しい物理現象を探索することを目的とした素粒子実験プロジェクトBelle II 実験のPhase 3を2019年3月11日に開始しました。Belle II 実験が本格化した際には1日あたり200テラバイト以上のデータが生成され続けることが見込まれており、この膨大なデータを一切漏らすことなく確実に保存することが求められるKEKのITインフラストラクチャ―は加速器の性能向上に遅れをとることがないよう、最新の技術トレンドを取り入れながら継続的に設計を見直し、4年サイクルで更改を繰り返しています。
背景と概要
新ストレージ・システムの検討は2016年頃から開始されました。従来から採用しているIBMのソリューションに加えて、他社のソリューションも含めて技術的な検討を行い、パフォーマンス要件を唯一満たすものとして、今回もIBMのソリューションが選択されました。新階層型ストレージ・システムでは、IBM TS1160テープ・ドライブを搭載するIBM TS4500テープ・ライブラリーを採用して、大量データの長期保管に費やすコストを削減、テープ・カートリッジの運用管理の簡素化を実現しています。研究者がテープを意識することなく、快適にデータにアクセスすることができるように、高速分散ファイル・システム、IBM Elastic Storage Server/IBM Spectrum Scaleと階層型ストレージ管理ソフトウェアのHigh Performance Storage Systemを採用し、テープ上のデータを必要時にディスクにステージングすることで高速アクセスを可能にしています。
効果と今後の展望
新階層型ストレージ・システムは、2020年9月より本格的な稼働を開始します。Belle II実験やJ-PARCでの実験からの膨大なデータを消失することなく蓄積・分析できるストレージ・システムの信頼性と高速性能を実現し、国際協調で行われるさまざまな研究活動のホスト国としてのミッションを果たしていく体制を確立することができました。KEKでは、すでに4年後の2024年に行われるITインフラストラクチャ―更改を見据えた次期ストレージ・システムの検討にも着手し、指数関数的に増大していく実験データを管理していく新たな技術やアーキテクチャーを導入したイノベーションを追求していきます。
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