Business Challenge story

データベースの構造やプログラムに精通したスタッフしか扱えないデータ分析環境が大きな課題に

広島赤十字・原爆病院は1939年に設立。「人道、博愛の赤十字精神のもと、人々に愛され信頼される病院を目指します」という理念を掲げ、地域がん診療連携拠点病院として地域医療に貢献しています。

広島赤十字・原爆病院では、医療の質向上、病院経営の安定などを目的として、各種医療情報の積極的な活用を推進しています。そのため、組織体制と人材育成には重点的に取り組んでいます。同院 事務部 事務副部長 兼 診療記録管理課長 西田 節子氏は、その取り組みについて説明します。

「広島赤十字・原爆病院は『医師に余分な負担を掛けない』ということを基本方針としています。つまり、医師が診療や研究に専念できるようにするため、情報の管理や必要なデータの抽出などは事務部がすべて担当しています。そのために、医療情報管理課のスタッフが情報に関する専門家として医師と対等に向き合えるように、人材育成を推進しています。医療情報管理課のスタッフは、医師からの依頼に基づいてデータを提示するだけではなく、そのデータを分析できること、さらにデータや分析結果を理解して、病院にとってどのような情報が必要であるのかを判断できる能力が求められますので、人材を育成することが非常に重要になってきます」

さらに同院 事務部 医療情報管理課 課長 黒川 一成氏は、人材育成の方向性について語ります。

「医療情報管理課のすべての現場スタッフが、病院幹部が求める情報を自発的に発信できるように育ってほしいと思っています。広島赤十字・原爆病院では新棟建築を予定していますが、それに向けてシステムをさらに充実させていく計画があります。そうなると院内に蓄積されるデータはさらに膨大な量となるので、このビッグデータをどのように活用していくかが課題となってきます。このことを視野に入れると、人材育成の重要性はますます高まっていくでしょう」

情報活用を積極的に推進している広島赤十字・原爆病院では、情報分析の環境に幾つかの課題を抱えていました。その課題について同院 事務部 医療情報管理課 主事島川 龍載氏は次のように説明します。

「広島赤十字・原爆病院では、何かの課題解決に当たっては、組織横断的にプロジェクトを立ち上げて取り組んでいます。その際、ほとんどの課題はITに関連することなので医療情報管理課のスタッフが参加することになります。その課題解決に際しては、院内のさまざまな情報を活用し、問題点を抽出しながら解決方法を模索するというアプローチを採っています。従ってデータ分析が非常に重要になってくるのですが、その方法としてこれまではデータベース・ソフトウェアを使い必要なデータを抽出するプログラムを組み、CSVやExcelのファイルに出力していました。しかし、この方法ではデータベース・ソフトウェアに精通したスタッフでなければ扱うことができないので非効率であったということが大きな課題となっていました」

さらにこのデータ分析環境ではデータベースの構造を理解していなければデータ同士をリレーションされることが難しく、データの正確性、再現性にも問題を抱えていました。また一度抽出・分析した作業のプロセスを共有することができないので効率が悪く、レポートも手作業で作成していたので、多くの時間を費やしていました。

Transformation

SPSS Modelerのクライアント版と併せSPSS Modeler Serverを導入することにより、大量のデータ分析にも対応

広島赤十字・原爆病院ではデータ分析環境の課題を解決するため、データ・マイニングと可視化を実現する新たなツールの導入を検討しました。

「幾つかのツールを比較検討した結果、SPSS ModelerとSPSS Modeler Serverの導入を決定しました。SPSS Modelerのクライアント版については、以前から1ライセンスを試験導入していましたので、その機能と使いやすさは理解していました。特に分析プロセスを把握できるという点は魅力的です。今回、SPSS Modelerのクライアント版を2ライセンス追加するとともに、膨大なデータをバッチ処置できるようにするためSPSSModeler Serverの導入も決定しました」(島川氏)

SPSS Modelerのクライアント版は、国内シェアトップの実績を誇るデータ・マイニング・ツールで、分かりやすいインターフェイスを備えた高度な分析機能によって、あらゆるデータからパターンや傾向をすばやくかつ容易に発見できます。一方SPSS Modeler Serverは、大量のデータ分析を短時間で行うことができ、バッチ・モードを利用してタスクの自動化を図ることを可能とします。

SPSS ModelerおよびSPSS Modeler Serverの採用は2012年12月に決定し、翌年3月までにデータ分析環境が整備されました。分析に活用する電子カルテ・システム以外の各種データは一旦分析用のデータベースに取り込まれ、そこからSPSS Modeler Serverが分析に必要なデータを抽出。電子カルテ・システムについてはあらかじめデータウェアハウスが整備されているので、分析用のデータベースを経由せずに直接SPSS Modeler Serverがデータを抽出します。

「SPSS Modeler Serverは参照元のデータベースのテーブル構造を意識することなくデータを収集することができます。例えばあるデータベースで項目が増え、テーブル構造が変更された場合でも、自動的に項目を追加した上でデータを収集します。こうしたSPSS Modelerの機能のおかげで、データベースと連携する仕組みは簡単に構築でき、稼働後のメンテナンスの手間も大幅に削減されます」(島川氏)

Benefits

従来は2名で行っていたデータ抽出作業を1名で行うことが可能に

SPSS Modelerが導入され、広島赤十字・原爆病院ではさまざまなデータ活用が積極的に行われています。分析結果が活用される典型的な場面としては、院長ヒアリングを挙げることができます。

「院長ヒアリングでは各部長が院長と面談し、今後の診療体制や患者数などの状況について話し合うのですが、その際データ分析結果に基づいて各種対策を検討します。客観的なデータに基づいての話し合いになるので、問題点をお互いが共有することができ、改善策について前向きに判断することが可能になりました。入院期間の短縮、各種材料の節約、急患の受け入れ体制の変更などを、患者本位の視点からさまざまな改善活動が実現しています」(黒川氏)

広島赤十字・原爆病院でのデータ分析の活用例としては、入院患者数の推移予測が挙げられます。広島赤十字・原爆病院では新棟建築の予定がありますが、その際どのぐらいの数の病床を用意することが適切であるのかという判断が困難でした。そこで過去数年の入院患者数の推移をベースに、時系列分析(時系列ノード)を実行。そこから未来予測におけるモデルを生成し、今後の入院患者数予測をグラフにまとめました。この結果を活用することで、新棟でどの程度の病床を用意すれば適切かということを客観的なデータに基づいて判断することが可能になりました。

別の例としては、紹介元の医療機関のマッピングが挙げられます。この活用については以前から多くの要望がありましたが、手間が掛かるため定期的な報告が難しかったのですが、SPSS Modelerにより簡単に作成することが可能になりました。こうした経営関連の分析にとどまらず、臨床研究分野においてもさまざまなデータ分析が行われています。こうしたデータ分析結果の活用が活発に推進されている背景には、データ分析作業が大幅に効率化されたことがあります。

「従来は、医師などからのリクエストを受けてデータを抽出する作業を2 名のスタッフで担当していましたが、現在は1 名で対応可能になっています。これまではリクエスト内容によっては複雑なプログラムを組まなければならず、大きな手間と時間がかかっていたのですが、SPSS Modelerを使えばビジュアル化された画面上で簡単に操作できることから、経験の浅いスタッフがデータ抽出作業を素早く行うことが可能です」(島川氏)

実際のデータ抽出作業を担当している同院 事務部 医療情報管理課 主事 石本 友里恵氏はSPSS Modelerの操作性について以下のように評価します。

「現在の職に就いて2年目なのですが、それ以前はデータ分析に関する知識はほとんど持っていませんでした。SPSS Modeler導入以前の環境では、自分で抽出するプログラムを組むことができなかったのですが、SPSS Modelerは操作方法をすぐに覚えることができ、ほとんどのリクエストに応じたデータ抽出することができるようになりました」

 

将来の展望

さらに有効なデータ活用を実現するため、経営的な視点を持った人材の育成に注力

「今後はデータの見える化をさらに推進したいと思っています。SPSS Modelerとグループウェアを連携し、作成したレポートをそこに自動的にアップロードすることにより、データ分析結果をフィードバックするなど、多くのスタッフと共有することができる環境整備を進めたいと思います。そのほかにもBSC(balanced scorecard)作成へのデータ活用、新棟でのシステム整備に向けたアンケート結果の分析なども検討しています。分析環境については、分析用のデータベースを1 つのデータウェアハウスに統合したいと思っています。そこからデータマートを整備し、分析のためのデータ抽出をさらに効率化することを検討しています。また現在は分析のプロセスは担当者のみが保存している状況ですが、分析プロセスを共有可能な環境を構築し、データ・マイニングを理解した上で、ビジネス・アナリティクスの可能性を引き出していきたいと考えています」(島川氏)

また西田氏は今後の人材育成について次のように語ります。

「現在はデータ抽出がメインの作業になっていますが、今後は経営的な視点を合わせ持つことにより、出力したデータのどこに問題があるのか、それをいかに分かりやすく経営層に提示するのかということまでを自発的にできるように育ってほしいと思っています。日本赤十字社では、事務系のスタッフを育成するために、経営学修士の資格取得を支援する取り組みを推進していますが、これを活用することも有効だと考えています。また広島赤十字・原爆病院ではクリニカル・インディケーターを整備する取り組みを推進しています。診療にかかわる各種指標を整備し、より質の高い医療の提供を目指す取り組みなのですが、この指標作成には各種データの活用が必要になってきます。それを見据える上でも、今回データ分析環境を整備したことは有意義だと考えています」

広島赤十字・原爆病院では今後も積極的にデータ活用を促進し、よりクオリティーの高い医療の提供を実現していくでしょう。

 

お客様の声

“クリニカル・インディケーターを整備するためには各種データの活用が必要になってきますので、それを見据える上でも、今回データ分析環境を整備したことは有意義だと考えています”

広島赤十字・原爆病院 事務部 事務副部長 兼 診療記録管理 課長

西田 節子氏

 

“客観的なデータに基づいて病院経営について話し合うことにより、問題点を共有することができ、改善策について前向きに判断することが可能になりました”

広島赤十字・原爆病院 事務部 医療情報管理課 課長

黒川 一成氏

 

“従来は、医師などからのリクエストを受けてデータを抽出する作業を2 名のスタッフで担当していましたが、現在は1名で対応可能になっています”

広島赤十字・原爆病院 事務部 医療情報管理課 主事 上級医療情報技師

医用画像情報専門技師 公認医療情報システム監査人補 個人情報保護士

島川 龍載氏

 

“SPSS Modelerは操作方法をすぐに覚えることができるので、経験の浅いわたしでもほとんどのリクエストに応じたデータ抽出することができるようになりました”

広島赤十字・原爆病院 事務部 医療情報管理課 主事

石本 友里恵氏

 

お客様情報

広島赤十字・原爆病院は1939年に設立。「人道、博愛の赤十字精神のもと、人々に愛され信頼される病院を目指します」という理念を掲げ、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院として地域医療に貢献しています。

 

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