Business Challenge story

永続的な安定稼働のためにバージョンアップが必須

川崎製鉄株式会社と日本鋼管株式会社の経営統合により誕生したJFEスチールは、新会社の業務基盤である新統合システムJ-Smileの運用を2005年度に開始しました。J-Smileでは、鉄鋼ビジネスの変化に柔軟かつ迅速に対応できるシステムとするため、Web、Java、オープンソース・ソフトウェアといった新しい技術が採用されています。また、J-Smileでは、ハードウェアのプラットフォームとしてIBM System zが採用されています。JFEスチール IT改革推進部長 原田敬太氏は、これらの採用理由を次のように話します。「J-Smileのような大規模なシステムでは運用性が確立されていることが重要です。また、Javaを使ったアプリケーションでどのくらいの処理能力が必要になるのか予測が困難だったこともあり、オープン系サーバーよりも能力の上方弾力性に優れたIBM System zを採用することが得策だと判断しました」。

さらに、J-Smileでは、クライアントPC環境への依存度を低く抑え、社外の商社系企業からもインターネット経由でアプリケーションを利用できるようにするため、JavaによるWebアプリケーションがz/OS上のIBM WebSphere Application Server(以下、WAS)上で動作しています。J-Smileのアプリケーション基盤を担当するJFEシステムズ株式会社(以下、JFEシステムズ)東京事業所 販生流システム開発部 基盤グループ長 加島靖蔵氏は、WASによる開発メリットを次のように話します。「実際にアプリケーションを開発するときには、まずPC上でJavaを使って必要なコードを作成し単体テストを行います。その後、UNIXサーバーに移して結合テスト、メインフレーム上で運用テストを順に行い、本番機に展開します。それぞれの場面でWASが動作し、作成したアプリケーションをそのままプラットフォーム間で移せるため、非常に効率よく資源を利用できています」。

z/OS上で稼働しているJ-Smileのアプリケーション規模は、Javaによるコーディング量が1,300万ステップ、COBOLも含めると2,000万ステップにもなります。また、現在でもJ-Smileのアプリケーションは、メンテナンスが施されたり、古くなったものが作り直されたりしています。しかし、運用開始から5年が経過し、使用しているバージョンのWASへのサポートが終了して、Javaも含めた新たな技術のJ-Smileへの取り込みが難しくなったことから、JFEスチールは基盤であるWAS、Java、オープンソース・ソフトウェアをバージョンアップすることにしました。「今後、アプリケーションが永続的に安定稼働し続けることを保障するために、基盤のバージョンアップは必須の作業でした」(原田氏)。

Transformation

バージョン間の非互換内容を調査

バージョンアップ作業は、通常の開発と並行して行われました。「今回のバージョンアップは、他の開発案件の谷間を有効に使い、無理な期間短縮はしないように考えました。最初に、基盤系の少人数のメンバーで、できるだけ効率良い方法を試行錯誤しながら考案し、最後に短期間で一斉に移行することにしたため、このようなスケジュールになりました」と、原田氏は話します。この方法により、進行中の開発案件を止めることなく、かつ、作業負荷の平準化も図れ、また、移行推進メンバー中心にノウハウやスキルの蓄積ができました。

バージョンアップ作業は、大きく4つのステップに分けて行われました。ステップ1で、根幹部分であるアプリケーション・フレームワークのJava SE6/Java EE5∗への対応を行いました。また、ステップ2ではバージョンアップによるアプリケーションへの影響個所を洗い出し、ステップ3ではアプリケーションの移行作業の品質および移行期間の短縮を狙って、修正個所の探索および自動修正を行う独自ツールを構築しました。そして、最後のステップ4では、すべてのアプリケーションでの稼働を検証し、本番機でのアプリケーションの切り替えを行いました。

このうちステップ2で行われたアプリケーションへの影響範囲の洗い出しでは、対象となるJavaアプリケーション(EAR: Enterprise ARchive)を絞り込んで調査が行われました。「J-Smileでは、60数個のEARがあります。これらすべてを調査のために稼働させることは、重複する個所が多いため現実的ではありませんでした。アプリケーション特性が異なるものをピックアップし、それらだけを稼働させて非互換の内容を洗い出しました」(加島氏)。

ステップ2での調査の結果、オープンソース・ソフトウェアのバージョンアップも含めて49パターンの非互換内容が見つかりました。これらのうち、インターネット上などで公開されていたパターンは20個で、残り29個は今回の調査で新たに見つかったものでした。「それぞれの非互換パターンにどのように対応するかをIBMとともに検討しました。IBM製品であるWASの非互換項目は数箇所でしたが、他の多くを占めるオープンソース・ソフトウェアの非互換部分に関しても共同で検討に当たりました。この方針検討に1カ月間程度かかりましたが、私たちだけではこの期間で検討を終えられなかったと思います」(加島氏)。

また、JFEスチールは、バージョンアップ作業に伴う課題管理のために、アプリケーション支援メンバーや基盤技術リーダーとともにIBMからの技術支援メンバーを含めた体制を敷き、ステップ4の期間中は毎日会議を行いました。このように頻繁に会議を開催した理由を、原田氏は次のように話します。「進捗把握のための会議はオーバーヘッドでしかありません。開催した会議は、各チームで出ている課題を素早く共有するためのものです。J-Smileの開発時にも同様の体制を敷きました。コミュニケーションの頻度を上げることで、効率よく課題を解決できます。この会議はそのためのものです」。

∗ Java SE : Java Standard Edition、Java EE : Java Enterprise Edition

Benefits

短期間のメンテナンス凍結でバージョンアップを完了

ステップ3までの検討の結果、バージョン間での非互換49パターンにおいて、その99%を占める45万個所への修正は、ツールによる自動変換で対応できることが分かりました。

「すべてのアプリケーションの稼働を検証して本番機のアプリケーションを切り替えるステップ4では、アプリケーションのメンテナンスを凍結しなければなりません。この期間が数カ月間にも及ぶと、その間アプリケーションをメンテナンスできません。このため、ステップ4の期間はできるかぎり短くする必要があります。また、ステップ4で必要となる作業人数も多数になります。この部分をツールによって短くすることが、今回のバージョンアップでの重要なポイントでした」(原田氏)

実際に、JFEスチールは、1.5カ月という短期間でステップ4の作業を終え、1,300万ステップのJavaアプリケーションへの対応を終えました。

バージョンアップ後のアプリケーション利用でも、ほとんど問題は発生しませんでした。バージョンアップしたWASでは64bitのJava VM環境が提供され、それまでの32bit環境に比べてアプリケーションがより広範なメモリ空間を使用できるようになりました。このメモリ空間の広がりとJavaの新しいメモリ管理により連続域が確保され、メモリに起因する問題が発生しなくなりました。これらに加えて予定していた以上の効果もありました。

「パフォーマンスが良くなりました。すべてのアプリケーションで以前の環境よりもパフォーマンスアップが見られました。ハードウェアは変わりませんので、ここまで効果があるとは思っていませんでした。しかも、CPU使用量が20~30%も削減され、処理能力に余裕が出ました」(加島氏)

 

将来の展望

同様のシステムを利用するグループ会社や他企業にノウハウを提供

今後、JFEスチールは、バージョンアップによって獲得した新しい技術をJ-Smileのアプリケーションに適用していきたいと考えています。また、「EJB 3.0(Enterprise JavaBeans 3.0)を適用して機能アップを図りたいと思っています。フレームワークによる柔軟な構造を採用しているため、これまでの資産を有効活用しながら、アプリケーションを成長させていきます」(加島氏)

また、バージョン間での非互換内容やそれらを自動的に修正するツールなど、今回の作業でJFEスチールとJFEシステムズは数多くのノウハウを蓄積しました。今後、このノウハウを、グループ会社や他企業にも提供していきたいと考えています。

「J-Smileのフレームワークを使ったJavaによるシステムがグループ会社のいくつかで稼働しています。これらのバージョンアップも順次行っていこうと考えていますが、今回開発したツールを活用することで、数カ月で終えられると見込んでいます。また、J-Smileと同じようにJavaで基幹システムを作り上げ、バージョンアップを迎える企業も世間にたくさんあると思います。私たちのノウハウがそのような企業の役に立てば良いと考えています」(原田氏)

 

お客様情報

JFEスチール株式会社は、2003年4月に川崎製鉄株式会社と日本鋼管株式会社が経営統合して誕生しました。同社は、常に世界最高の技術を持って社会に貢献することを企業理念として掲げ、変化に対して挑戦し続ける21世紀のエクセレントカンパニーを目指しています。

 

パートナー情報

JFEシステムズ株式会社は、2004年12月、それまでの川鉄システム開発株式会社から社名を変更して誕生しました。同社は、情報システムのインテグレーション、運用、保守を事業の中心に据えています。また、2011年4月に、JFEスチール株式会社およびグループ会社向けアプリケーションの開発、保守事業を株式会社エクサから承継しています。

 

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ハードウェア

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  • IBM Cloud